ECサイトで感じた不満トップ11
[コラム]カスタマーエクスペリエンスで
道は開ける
~フォレスター・リサーチのWebサイト方法論
by ジョナサン・ブラウン
フォレスター・リサーチのシニア・アナリストであるジョナサン・ブラウン氏によるウェブコラム。
主にカスタマーエクスペリエンスとマーケティングの側面から企業のビジネスをサポートしているジョナサン氏が、企業サイトにおけるユーザー志向の考え方や方法論をさまざまな切り口で解説します。
「あなたが最近使ったECサイトでの経験を思い起こすと、そのサイトにどれくらい満足しましたか?」有名企業のWebサイトの利用に関する消費者の満足度について、フォレスターは2008年末に、ヨーロッパでアンケート調査を行いました。対象は英国、イタリア、ドイツ、フランス、オランダ、スウェーデン、デンマークの7か国です。
その調査結果から明らかになったことは、有名な会社のサイトを使っている消費者のほとんどが、そのサイトに満足しているということです。イギリスでは、63%の消費者が「非常に満足している」か「満足している」と回答したのです。
サイトごとに見てみると、最も満足度が高かったのはAmazonで、83%の消費者が「非常に満足している」か「満足している」と回答していました。
しかしながら、使ったWebサイトに関して不満を述べた消費者にその不満の理由を聞いたところ、ほぼ万国共通の回答が出てきました。どの国でも、最も回答が多かった不満の理由は、「そのサイトでは探していた製品を見つけられなかった」「そのサイトには探していた製品がなかった」の2つでした。これらは、どちらかと言えば基本的な欠点ですよね。
実は、ほとんどの国では、トップの理由が「そのサイトでは探していた製品を見つけられなかった」でした。ちなみに、フランスだけは、「そのサイトには探していた製品がなかった」が47%と一番多かったのですが、自分が製品を見つけられなかったということはサイトにその製品は存在しなかったと想定するフランス人のマインドについては、私はイギリス人としてノーコメントですが……(笑)。
このデータから導かれる1つの知見として、
サイトに満足できなかった場合、その本当の原因は、消費者の立場からは判断、評価しづらいものだ
というものがあります。もちろん顧客の満足度が非常に大事で、顧客からのクレームは、サイトデザイナーにとって改善のヒントになるでしょう。しかし、Webサイトの何をどういうふうに改善すべきなのかを確実に評価するためには、顧客の声だけを判断の基準にするのではなく、他の手法も使う必要があるということなのです。
そのために利用できるテストの手法はいくつかありますが、目的に応じて、どれをいつ使うかを考えることが大事です。
ツールの種類 | 利点 | 注意すべき点 |
---|---|---|
アクセス解析 | 問題がある場所を特定できる | 何が問題なのか、なぜ問題なのかは特定できない |
アンケート | 顧客の満足度を測れる | 顧客の意見がベースになっているため、顧客の意識に顕在化していない問題は明らかにならない |
エキスパートレビュー | 特定の問題を見つけ出せる | ユーザー行動様式の変異や環境の変化に起因する問題は明らかにならない場合もある |
ユーザーテスト | 特定の問題を見つけ出せる | コスト(費用・時間)がかかる |
それぞれについて、説明しましょう。
アクセス解析――多くのユーザーが1ページだけ見てサイトから離脱してしまっている(直帰している)状況や、特定のリンクをクリックしている人が多いことなどを、データの分析により知ることができます。また、ページデザインの候補が2つ以上ある場合、どれを選ぶべきか決めるためにA/Bテストを行って、アクセス解析によりどのデザインが成功率が高いかを知ることができます。ただし、どのページに何らかの問題があることはわかっても、何が問題なのかをアクセス解析のデータだけでは知ることはできません。
アンケート――顧客の満足度を測ることができます。顧客にサイトに来た目的は何かを聞くことによって、その顧客のサイトに対する期待度を知ることができます。また顧客がサイトに訪問し、その目的が達成されたかどうかを聞くことができます。しかしながら、ユーザーに「どういうふうにデザインしたら良いか?」と聞いても、良い答はもらえないでしょう。一般消費者はそのアドバイスができませんから。
エキスパートレビュー――フォレスターが良く使うヒューリスティックレビューに代表されるように、顧客の立場からサイトにある問題を探す手法です。利点としては、多くのサイトに共通して見られる問題を、最も早く、最もコストパフォーマンス良く見つけられることがあります。しかしながら、今までなかったようなインターフェイスの場合、実際のユーザーの行動を見る必要がある場合もあります。そのために、時々はユーザーテストを行う必要があるのです。
ユーザーテスト――本当のお客様をラボ(テスト用の部屋)に招待し、課題を与えて、カメラで観察する手法で、「ラボテスト」とも呼ばれます。ラボでは、顧客がゴールを実現するまでにどういった問題にぶつかるのかを注意深く見るといいでしょう。ただし、ラボテストには時間と費用がかかるので、定常的に行うことは難しくなります。前述のエキスパートレビューならば、社内の担当者にトレーニングを行って必要なスキルを習得させれば、リニューアルのたびに担当者がレビューを行うことができます。そのため、普段はアクセス解析やエキスパートレビューなどで改善を行い、年に1~2回程度ユーザーテストを行って本当のユーザーに評価してもらうようにするといいでしょう。
このように、それぞれの手法(メソッド)の強みを理解し、サイト評価と改善プランを実行することをお薦めします。できればすべて使ったほうがいいですが、それだけでなく、それぞれの手法を適切に使い分けることが重要です。
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