モバイルサイト構築のユーザビリティいろは

モバイルメールマガジン配信前に押さえておくべき3つのポイント(第5回)

モバイルのメールマガジン配信前に注意すべき点を紹介
タイトル画像:モバイルサイト構築のユーザビリティいろは

この連載では、PCのWebサイトとは異なるモバイルならではのユーザビリティに特化して、モバイルサイト構築におけるユーザビリティの基本、成果を出すためにはどうすればいいのか。制約の多いモバイル端末だからこそ求められるモバイルサイトのユーザビリティ、そのポイントをお伝えします。

TEXT:株式会社IMJモバイル モバイルユーザビリティ研究所

第4回では公式サイトなどの会員制をとるサイトにおけるユーザビリティ上のポイントについて紹介しました。第5回では、モバイルマーケティングにおいて重要な役割を果たすメールマガジンを配信する際に押さえておくべきユーザーの利用シーンやニーズを考慮した配信スタイルについて紹介します。

安易なメルマガ配信は逆効果。
配信前にユーザーの傾向やニーズを理解する

サイトで提供している情報やコンテンツをユーザーにいち早く伝える効果的な手段の1つとしてメールマガジンの配信が挙げられます。メールマガジンの活用方法もさまざまで、単にサイトへ誘導するケース以外にも、メールマガジン自体をコンテンツとして活用するケースも多いでしょう。

しかし、安易にモバイルのメールマガジンを配信することで逆効果になってしまうこともあります(詳しくは後述)。モバイルのメールマガジンを効果的に活用するためには、配信内容や配信頻度をユーザーの目的に沿って設定することが大切なポイントとなります。またメールマガジン登録時のフローにおいても、迷惑メール対策をはじめとして、ユーザーがスムーズに安心して登録できる流れを作ることも重要です。

そこで今回は、モバイルメールマガジンを配信するうえで意識したい、ユーザーの傾向やデコメールとテキストメールのメリット/デメリットを中心に紹介します。

モバイルメールマガジン配信時の3つのポイント
  1. ユーザーが望むメールマガジンの傾向は
  2. ユーザーが希望する時間に配信できる仕組みがユーザビリティを高める
  3. テキストで送る? デコメールで送る? 双方の効果とポイント

1.ユーザーが望むメールマガジンの傾向は?

モバイルのメールマガジン(メルマガ)によってサイトでの掲載情報やサイト登録の特典をユーザーにアピールする際に、「ユーザーはどんなことがきっかけでメールマガジンを購読しているか」「どのようなメールマガジンを望んでいるか」を知ることは、メールマガジンを配信するうえで大切なポイントとなります。

まずはIMJモバイルにて行った調査をもとに、ユーザーがメールマガジンをどのように利用しているのか、その傾向をまとめたので見てみましょう。

※調査概要

  • 調査方法:インターネットリサーチ
  • 調査地域:全国
  • 調査対象:15~49歳の3G端末を保有し、モバイルでメルマガを受信している男女 ※調査会社が保有する調査パネル
  • 有効回答数:312サンプル
  • 調査期間:調査期間は2009年3月19日~3月20日

1-1.メールマガジン登録のきっかけは?

IMJモバイルにて調査を行ったところ、アーティスト情報系、ニュース系サイトでは「欲しい情報だったから自分から登録した」人が6割以上と最も多く、次いでグルメ・ドリンク系、ブランド系サイトの「プレゼントへの応募」に付随しての登録が約3割、という結果でした(図1)。

図:メルマガ登録のきっかけ(複数回答)
図1 メルマガ登録のきっかけ(複数回答)
出展:(c)2009 IMJモバイル「携帯電話のメールマガジンに関するユーザビリティ調査」

1-2.メールマガジンを受信して起こした行動は?

また、メールマガジンに対する経験・意識を尋ねた調査では、メールマガジンがきっかけでサイトを訪問したことがあるユーザーは8割以上と高く、コンテンツの利用経験も約6割と半数以上の経験がある結果となりました。

そして4割以上のユーザーが送られる形式(デコメールかテキストか)や配信日、配信時間を選びたいと考えていることがわかりました(図2)。

図:メルマガに関する経験・意識(複数回答)【n=312】
図2 メルマガに関する経験・意識(複数回答)【n=312】
出展:(c)2009 IMJモバイル「携帯電話のメールマガジンに関するユーザビリティ調査」

1-3.メールマガジン受信理由

メールマガジンの受信理由を尋ねたところ、ニュース系サイトでは「日課になっているから」が6割弱、飲食・ドリンク系サイトでは「プレゼント応募や特典などのお得感があるから」が約6割、アーティスト情報系サイトでは「いち早く情報を知ることが出来る」が5割強という結果となり、それぞれのサイトで異なる受信理由であることがわかりました(図3)。

図:メルマガ受信理由(複数回答)
図3 メルマガ受信理由(複数回答)
出展:(c)2009 IMJモバイル「携帯電話のメールマガジンに関するユーザビリティ調査」

一方でメールマガジンの解約経験は9割以上という結果も出ており、メールマガジンの配信を行う際はメールマガジンの登録画面遷移の中でユーザーと配信者側のギャップが起こらないように考慮することはもちろん、配信内容や配信頻度を購読するユーザーの立場に立って設定することが、長くメールマガジンを楽しんでもらうポイントになると言えるでしょう。

調査結果の詳細は以下よりご覧いただけます。

(株)IMJモバイル調査「携帯電話のメールマガジンに関するユーザビリティ調査

なお、IMJモバイルではメールマガジン以外にも「モバイルユーザー動向定点観測2009」など、モバイルユーザーの生活や意識に関する調査レポートを発表しています。

2.ユーザーが希望する時間に配信できる仕組みがユーザビリティを高める

PCのメールマガジンの場合、ユーザーがPCのメールソフトを開くタイミングで初めてユーザーへ情報を届けることができますが、モバイルのメールマガジンはユーザーが常に持っている携帯電話に配信することになります。そのため、モバイルメールマガジンは届けたい情報をユーザーにすぐに知らせることができる確率が非常に高い点が利点といえます。また受け取ったユーザーもすぐに内容を確認し次の行動を起こしやすいので、ユーザーへの訴求力は大変高いと考えることができます。

しかし、ユーザーの状況を問わず、すぐに手元に届いてしまうため、ユーザーの立場に立った配信時間を設定する必要があります。

2-1.早朝・深夜は避ける

一般的に早朝や深夜と思われる時間に配信を行ってしまった場合、ユーザーの生活の邪魔をしてしまうことになりかねません。配信される情報がユーザーにとって有益な情報であっても、配信したこと自体が迷惑な行為につながってしまうのです。配信する企業やサイト自体の信頼を失ってしまう可能性もありますので、配信時間には十分注意しましょう。

※1 編注

たとえば、メールマーケティング基礎講座で紹介した「MailPublisher Mobile」はモバイル向けの大量配信機能を有している。その他のメール配信ASPサービスも、時間指定や配信エラー後の再配信設定などが可能だ。

また、最近は迷惑メール対策の一環として、同アドレスからの大量のメール配信を行うと迷惑メールの一種であると判断され、キャリア側でブロックをかける仕組みが取り入れられています。ブロックされるのを避けるために、配信の仕組みによっては一度に配信できるメール数が限られてしまうこともあるでしょう。その場合は、配信開始時刻や終了時刻の想定をしっかりと行いましょう。

メール配信ASPサービスのなかには配信終了の時刻を設定できるものもあります。終了時刻以降になって配信されずに残ったメールは、自動で翌日の配信とする、などの細かい設定ができるサービスもありますので、大量の配信を行う可能性がある場合は、こうしたサービスの導入を検討するのもいいでしょう※1

2-2.ユーザーの希望時刻に配信する

早朝や深夜を避けるといっても、配信する内容によってはそれらの時刻に配信する事が望ましい情報もあります。たとえば、天気予報や毎日の占いなど、各ユーザーの生活リズムと関連性のある情報は、タイミングが異なると情報自体の意味がなくなってしまう場合もあります。そのような場合は、ユーザー自身で配信時間を設定できるような仕組みを取り入れるといいでしょう。

たとえば、天気予報のメールマガジンを送るとします。ユーザーごとに生活のリズムは異なるため、天気予報を確認したい時間も異なるでしょう。そのような場合、配信を行ってほしい時間をあらかじめユーザー自身が登録時に設定できるようにすることで、ユーザーの生活に沿った配信を行えるようになります。

また、夜の時間帯限定のキャンペーンなど、日常的な情報の配信ではなく不定期な配信を行いたい場合も、ユーザーによっては快く思わない可能性があるため、必ず事前に配信時間をしっかり明記しましょう。

3.テキストで送る? デコメールで送る? 双方の効果とポイント

メールマガジンには画像や文字色を使って配信するデコメール形式のメールマガジンと、テキストのみで配信するメールマガジンの2種類があります。それぞれ特徴がありますが、次にあげるメリットとデメリットを踏まえたうえで、配信するメールの内容にあわせてデコメール形式とテキスト形式を使い分けることができれば、より効果的なメールマガジン配信が行えると考えられます。

デコメール形式のメリットとデメリット

メリット

  1. 画像を挿入できるため、ユーザーに商品やコンテンツの画像を見せて、具体的なイメージを持たせることができる
  2. 文字色の利用も可能なので、ユーザーに伝えたい事柄を色彩的に強調できる
  3. メールマガジン自体にデザインを入れられるので、サイトの世界観を踏襲したメールマガジンの配信ができる
  4. クリックできる箇所の表現が画像やテキストリンクとなり、テキストメールのように長いURLの表記ではなくなるため、ユーザーへのクリックを促しやすく、読みやすいメールになる

デメリット

  1. 画像を利用するためにメール自体の容量が大きくなってしまい、パケット代金の負担が大きいと感じるユーザーがいる
  2. 端末によってはデコメールで添付された画像がデータフォルダに自動で保存されてしまうことを敬遠するユーザーがいる

デコメールによるメールマガジン作成時の注意点としては、全体の容量を考え、ユーザーに伝えたいポイントに重点をおくようなデザイン構成を組むことです。サイトのデザインと同様に見やすい色合いや配置にすることも大切です。

図:デコメール形式のメールマガジンのレイアウト例
図4 デコメール形式のメールマガジンのレイアウト例

テキスト形式のメリットとデメリット

メリット

1.テキストのみとなるためメール全体の容量が少なくなり、ユーザーのメールマガジン受信の負担が軽くなる

特に画像を必要としないニュースなどの情報を配信する場合や、定期的に配信するクーポンや特典など、ユーザーがあらかじめ内容をある程度把握している場合には、テキスト形式のメールが適しているといえるでしょう。

デメリット

  1. テキストだけでは伝わりにくい商品やコンテンツを紹介する際に、文字色の変更や自由なレイアウトができないため、具体的なイメージを伝えにくい
  2. コンテンツの表現が制限されるため、ユーザーへのインパクトがやや弱い

テキストメールマガジン作成時には、文字ばかりが並んだ窮屈なレイアウトにならないように心がけましょう。また記号文字を利用して強調したい箇所を飾ったり、バランスよく改行を入れたりするなど、ユーザーにとって読みやすい構成になるよう工夫しましょう。

図:テキストメール形式のメールマガジンのレイアウト例
図5 テキストメール形式のメールマガジンのレイアウト例

デコメール形式、テキスト形式それぞれのメリットとデメリットを把握し、配信するメールマガジンの内容や受け手であるユーザーのニーズを考慮し効果的に使い分けて配信しましょう。また、ユーザー側にテキスト形式とデコメール形式どちらでメールマガジンを受け取りたいかを事前に聞いて、それに沿った配信をする仕組みを取り入れるのもいいでしょう。

◇◇◇

今回は、モバイルによるマーケティングを実施する際に重要なモバイルのメールマガジンに関するユーザーの認識やメールマガジン本文の作り方として、デコメール形式とテキスト形式のメリット/デメリットについて紹介しました。

次回は具体的なメールマガジン本文や入退会の画面フロー作成時のポイントを紹介する予定です。

用語集
ASP / キャリア / キャンペーン / デザイン / モバイル / ユーザビリティ / リンク / 携帯 / 訪問
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