先日、地下鉄の車内アナウンス(「次は池袋~」というやつ)が、ノイズだらけでほとんど聴き取れないことがありました。
そのときは車両が最新型の形式だったにもかかわらず、車内放送がブツブツと切れていたので気になったのですが、実際のところ、地下鉄でもJRでも、社内アナウンスが聴き取りにくいことは多いものです。音が小さすぎたり、滑舌がわるかったり、早口すぎたりして、結局ホームの看板を見るまで次の駅がどこなのかわからないことは、しばしばあります。
鉄道会社の人は、客車に乗っている状態で自分のアナウンスがどう聞こえるのか、音量やしゃべり方による聞こえやすさをチェックしないものなのでしょうか。聴き取れない社内アナウンスを耳にするたびに、「別の手段で確認しなければいけない情報なんて、情報として出す意味がない」と思ってしまいます。
でも、振り返ってWebサイト運営のことを考えると、意外と似たような状況になっているものです。
- 記事で伝えたい意図が明確に読者に伝わらない書き方になっている
- 表現のメリハリ不足のため、注目してほしい部分に読者の意識が向かない
- セミナーに申し込んでほしいのに、開催概要や内容などの情報が不足している
- 商品を買ってほしいのに、送料や納期などの情報が書かれていない
- そもそも文字が小さすぎで読む気にならない
鉄道会社にとって、優先度が高いのは運行スケジュールや安全性であって、社内アナウンスの聴き取りやすさの重要性は比較的低いことが考えられます。それと同様に、Web担当者にとって、限られた予算や人員でスケジュールどおりに公開することや社内の調整といった目の前の課題が山積みで、情報のわかりやすさやサイトの使いやすさは後回しになることも多いでしょう。
しかし、少なくとも、そのページによって達成するべきビジネス目的にユーザーを導くために必要な情報が欠けていないか、客観的に確認するステップを設けることは、非常に重要です。
電車の社内アナウンスの場合、車両内での乗客の入り具合や走行中のガタゴト音まで含めて実際の環境を再現してテストを行うのは大変な作業になるでしょう。しかし、Webサイトのコンテンツの場合は、自分が客観的な視点で改めてチェックするか、だれかに「セミナーに申し込もうかどうか判断する視点でチェックしてくれ」と頼む手間は、さほど大きくはないはずです。
ユーザビリティテストを行わなくてもチェックできる「必要な情報が足りているか」「意図したように理解される表現になっているか」などの項目は、しっかりと客観的な視点でチェックするようにしましょう。そういった地道なユーザー視点の取り入れを積み重ねていくことで、ユーザーの満足度を向上できるのですから。
この記事は、メールマガジン「Web担ウィークリー」やINTERNET Watchの「週刊 Web担当者フォーラム通信」に掲載されたコラムをWeb担サイト 上に再掲したものです。
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