BOOK REVIEW Web担当者なら読んでおきたいこの1冊

“インターネットは儲かる”の幻想を打ち砕く/書評『御社のホームページがダメな理由』

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『御社のホームページがダメな理由――98%は死んでいる』

評者:山川 健(ジャーナリスト)

ウェブサイトで売り上げが上がらない原因を
ネット担当者の常識を覆す考え方で解説する

『御社のホームページがダメな理由 98%は死んでいる』の書籍画像
  • 竹内 謙礼 著
  • ISBN:978-4-8061-2991-2
  • 定価:1,400円+税
  • 中経出版

ビジネスを行ううえで、なくてはならないツールになったウェブサイト。会社概要や商品・サービスの紹介、オンライン販売などさまざまに活用されている。目的はいずれも、企業の収益向上。しかし、当初もくろんだ効果が得られないケースも多い。SEO(検索エンジン最適化)を施してアクセス数は増えたけれど通販利用者はいない、とか、新聞や雑誌に取り上げられてもそのときにアクセス数が伸びただけ――。最近、こんな話を直接耳にする。商品・サービスに魅力がない場合は論外だが、決してそうは言い切れなくてもウェブが売り上げアップにつながっていない現実がある。何が問題なのか。

「『お客さまが好きなときに、好きな量だけ情報を得ることができる』、これだけ」。本書は冒頭で、ウェブサイトの役割をこう位置付ける。さらに「お客さまが情報を得るのに適したメディアのひとつであって、決して、お金儲けに直結するような営業ツールではない」と断言する。そもそもウェブサイトによって直接利益を上げようとする姿勢が間違っている、との認識。ウェブサイトの役割を考えると、売り上げ増という効果が得られていない現状は当然の結果かもしれない。

筆者は、動画、ライブカメラ、コミュニティサイトなど最新スペックを取り入れたウェブサイト制作にコストをかけるくらいなら、チラシや看板、イベントを充実させた方が売り上げに直結する、と水族館を例に挙げて強調し、売り上げに結び付けるにはウェブサイトの制作よりウェブサイトに人を集めることを重視すべき、と持論を展開。この考えは、ビジネス規模や業種業態にもよるが、実は当たり前のことなのだろう。すばらしいウェブサイトの制作が目的ではない。完全な本末転倒。「インターネットの最新機能を取り込んでいては、いつまで経ってもホームページ制作業者や悪質システム会社の思うまま」。著者は明快に言い切る。

検索エンジンから人を集める基本的な手法として注目されているSEOについても手厳しい。「お金や時間まで使って、わざわざ手をつけるほどの戦略ではない」として、最終的には検索エンジンの“裏”をかく戦略であり、“裏”をかいている以上いつか見抜かれて上位表示から削除される、などと訴える。そして「弱点が露呈したノウハウにもかかわらず、検索で上位表示されることが、インターネットビジネスのすべてだと言わんばかりにセールストークをする業者が、非常に多いのが問題」と指摘する。

本書は、ネットマーケティングに携わる人たちの常識を次々に覆す。それに加えて、焦りと無知に付け込んで売り上げに結び付かないサービスを売り込む悪徳業者を糾弾する。すべては、インターネットは儲かるという大前提でウェブサイト運営を考えることによる弊害。著者は言う。「『インターネットは必ず儲かる』ではなく、『インターネットは、もしかしたら儲かるかもしれない』」

著者はオンラインモールの楽天市場にネットショップを出店して成功した経歴の持ち主。そのためか、さまざまな問題の最終的な解決策として楽天市場のシステム利用を勧めている。自ら「気持ち悪いくらい楽天市場を褒めて、まるで楽天市場の“公式本”」と認めるほど。楽天市場の活用の是非は読者それぞれが考えればいいことだし、著者が否定するSEOで実際に効果を上げている企業が存在するのも事実だ。本書の内容をすべてウのみにする必要はないかもしれない。しかし、そうしたことを差し引いても本書は、ウェブサイトで効果が上がらないと悩む経営者や担当者の処方箋になることだけは間違いない。

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