BOOK REVIEW Web担当者なら読んでおきたいこの1冊

『ウェブ2.0バカ』

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BOOK REVIEW ウェブ担当者なら読んでおきたいこの1冊

『ウェブ2.0バカ』

評者:山川 健(ジャーナリスト)

実体のないキーワード「ウェブ2.0」に踊らされないための方策
ポイントは地に足の付いた泥臭いリアルなアナログ的ノウハウ

  • 信國 大輔 著
  • ISBN:978-4-7561-4964-0
  • 定価:本体1,200円+税
  • アスキー

考えてみれば、そもそも奇妙な現象だった。ウェブ2.0、ウェブ2.0と言葉ばかりが先行し、その実、具体的なことはよくわからない。それでもウェブ2.0の波に乗り遅れてはならないと、各企業は新しいウェブの取り組みを始める。だからといって、それが決して成功する訳ではない。一体、ウェブ2.0とは何なのか。

本書は一見、悪ふざけに見えるタイトルであり、本文中にもおもしろおかしい表現が登場する。しかし極めて真面目に書かれ、的を射た内容の読み物になっている。ウェブ2.0とは、実は単なるキャッチコピーに過ぎず、中身のないキャッチコピーに踊らされた企業も少なくなかったと実状を暴露。失敗した「おバカさん」の例や、ときには成功例も挙げながらウェブ2.0の本質を解き明かす。ウェブ2.0は、新しいウェブサービスを指す範囲の広いキーワード。SNS、ブログ、SEO対策、ロングテール、リッチコンテンツなどが代表例。著者はそれぞれについて手厳しい意見を展開している。

SNSは娯楽のためのコミュニケーションの仕組みで、セールスには不向き。更新頻度が低いサイトにブログは不要。コストが高騰しているSEOよりも、費用対効果は他の広告の方が高い。強固な物流システムと莫大な集客数がない限りロングテールは無理。無意味なリッチコンテンツより、問い合わせ先電話番号を大書した方が効果的である……。そして大手広告代理店、システム会社などのセールストークの罠にはまると、本来の売上高、利益アップという目的が、いつの間にかウェブ2.0への対応にすり替えられると警鐘を鳴らす。

「社会に必要とされる商品やサービスを生み出すために、粛々と努力を積み重ねること」これが著者の言う一番のウェブ2.0対策だ。ビジネスを行ううえでの基本中の基本。人を食った結論に思える。しかし、SNSやブログで誰もが意見を言えるようになり、企業側の小手先のごまかしがきかなくなった状態、それがウェブ2.0という背景があっての考えなのだ。

どんなに進化しても昔からある人付き合いやビジネスの本質は変わらない。世間でちやほやされているウェブ2.0戦略は非現実的で、しっかり地に足を付けて当たり前のことを当たり前にやるべきだという、著者の考えには大いに共感できる。泥臭いリアルなアナログ的ノウハウ。年齢を経た人の考えのようだが、著者は1977年生まれの若さ。職歴もほぼIT業界だけ。それだけに、逆に説得力がある。

ここにきて一時の過熱したブームは去りそうな感もあるウェブ2.0。とはいえ、2.0という言葉は、その響きから変化や先進性が感じられるため「ドコモ2.0」をはじめIT業界を中心にさまざまな言葉に転用されている。次はウェブ3.0なのか、あるいは別のキャッチコピーが登場するのか。専門用語を駆使しながら新しい概念を連呼して顧客を獲得するのが業界の常なのだから、新しいキーワードは必ず現れる。

ウェブ2.0に踊らされないための効果的な方法として著者は、ウェブ2.0という言葉を使わないようにする、とアドバイスしている。新しいキーワードが出てきてもその言葉に簡単に反応しないこと、これが惑わされないための最良の対策なのかもしれない。

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