最短時間で読み手を満足させることを考える
最短時間で読み手を満足させることを考える
渡辺 ちなみに「文章」を書く上で気をつけていることがあるんですが……。言ってもいい?
いしたに もちろんです!
渡辺 (1) 1文字でも少なくする。全体を短くする、ということではなく「吉田さんから言われた」を「吉田さんが言った」にすれば、2文字減る。
いしたに (耳が痛すぎる……)
渡辺 (2) しかし、すべてあまりに短くするとリズム感が崩れるので、リズムを失わない程度に、無駄な語尾などを足す。
いしたに なるほど
渡辺 時間がないと適当になっちゃいますけどね。
いしたに でも、確かに私も一度勢いで書いて、そういう整理はしていますね。
渡辺 (3) 文章は流し読みできるスピード感が大事。漢字だけ眺めても、雰囲気が伝わるように。
いしたに 言われてみるとそうですねえ。最近は企業でブログを書くケースも増えてきていますが、千賀さんの書く秘訣は役立ちそうですね。ちょっと乱暴な言い方になるんですけど、ブログって基本まずはざざっと読みますよね。そして、気になると読み込む。千賀さんの「書くときに気をつけていること」というのは、そういう読み手のことを考えてのことだなあと、また感心してしまった。
渡辺 仕事に関するようなことであれば、最初の段落で結論が書いてあったほうがいいですね。できれば最初の一文。
いしたに うわあ、ホントそう思います、まず結論!
渡辺 そそ。ブログに限らないですけど。
いしたに 興味ない人はそこで読む読まないを判断できる。
渡辺 みんな忙しくてじっくり読む時間なんかない、という前提で書かないと。逆説的ですが、そうすることで、ブログが「sticky」になる。stickyは直訳すると「ネバネバする」ですが、ここでは「何度も見に来たくなる、離れられなくなる、依存症のようになる」という感じのニュアンスです。最初にまずそのエントリーの結論をズバッと書いちゃう。結論を書くと、当然ながら「そっかそういうことを書いているのか」といって、そこだけ読んで最後まで読まない人もいるけど、それでいいと思うんです。というのは、
いしたに うんうん。最短時間でその人を満足させることがれば、そういう人は必ずまた読みに来るんですよね。それでいつの間にか、stickyになってリピーターになるんじゃないかな。
渡辺 私もどちらかと言うとコグレさんの「まずは書いてみる」に近いのですが、ブログマーケティングをやってみたい、ブロガーと何か仕掛けたいと思っている企業のWeb担当者には、まず自分でブログを書いてみることをオススメします。書いているうちに、だんだんと読む人のことが気にかかりだします。数ももちろんですが、数だけでなく「読む人はどういう状況で読んでいるのか?」「自分のブログに何を求めてきているのか?」を考えるようになるはずです。会社で仕事をしていると、よく「ユーザーの視点に立って発想しろ」とか言われるわけですが、言われてすぐにできるわけではない。でもブログを書いていると、自然と「読む人はどう読むかな?」と考えるようになるのです。
いしたに 確かに、私も少し書いてみては読み手の立場になって読み返して、おもしろいからこれでいい、とか、ちょっと退屈するからここは段落をカットして早めに展開しようとか、いろいろ考えます。
渡辺 読み手にとっておもしろい内容というのは、結局のところ読み手の予測や想像を上回る内容なのかもしれませんね。私の場合は、普段から考えることが周りの人とずれていて、実生活では「変な人」「そんな考え方する人いない」といわれ続けてきたんですが、それがブログを書く上では役に立ったようです。実際、ブログを書き始めたころは「私もそう思う」といった類のコメントをもらうたびに驚きました。それまでの人生で同意されることはほとんどなかったので。
いしたに 読み手の予想や想像を裏切ることが「普通」でない人は、「読み手の予測」を予測して、それを超え、驚かせ、満足させ、納得させるような記事を書こうとしてそれを繰り返すことで、自然と「ユーザーの視点に立って考える」ことが、自分の思考パターンの中に刷り込まれていく。だから、ブログマーケティングをやって見たいと思っている人は、まずはブログを書き、そして読み手を引き付けるstickyなブログにするにはどうするか、悩み続けることをオススメしたいですね。
この連載の第1回の結論が「まずは書いてみる」、第2回が「ブログを読め、区別しよう」、そして今回が「読者のことを考えよう」といういい流れになりました、ありがとうございます。
大ヒットした『ヤバい経済学』も実はブログ発
いしたに 千賀さんにはいつも読んでいる「英語」のブログを選んでもらいました。簡単に理由を教えていただけますか?
渡辺 「Freakonomics」は、同名の本も書いている人のブログ。アメリカに経済学ブームを巻き起こし、170万部のベストセラーになりました。日本語訳のタイトルは『ヤバい経済学』でしたっけ。日本でもかなり売れたみたいですね。もともと独立していたのがNYTに吸収された。経済に関するあれこれおもしろいことが載っている。
「BLOG.PMARCA.COM」はfuck you money(世の中の誰に嫌われてもまったく怖くないだけのお金)を手に入れたMarc Andreessenの本音がちらつくブログ。ちなみにMarc Andreessenは本人を上回る資産家の奥さんがいます。
「fakesteve」は、シリコンバレーのオタクが全員読んでいる、というのは大げさですが、まぁそれに近い。Steve Jobsの偽者が、まるでSteve Jobsのように書いているブログ。笑えます。実は本職の記者の人が書いていて、最初は偽名だったのがばれてしまった。その後有名になり本も出ました。
いしたに なるほど、どれもとてもおもしろそうですね。ありがとうございます。
次のゲストは
では、最後に、コグレさん→田口さん→千賀さん、と続いているのですが、次回は誰がいいでしょうか?
渡辺 ごめんなさい、シリコンバレー在住の方でもいいですか? 日本語のモノあまり読まないので…。
いしたに できれば、日本在住の方もいると嬉しいのですが。ご紹介いただいたブロガーの方も含めて、ご意見は参考にさせていただきながら考えます。今日はありがとうございました。
渡辺 こちらこそ。
まとめ: 悪口を書かれることを恐れない
最後に、千賀さんからこの連載を読んでいるWeb担当者に向けてのアドバイスをいただきました。ブログマーケティングを考える際に大事なのは、それは悪口を書かれること過度に恐れない、ということでした。
企業のブログが炎上したり、2ちゃんねるでバッシングされたりと、最近はネットでの口コミ、書き込みが企業のサービスや商品の評価に直結することが多くなりましたが、それを恐れて何もしないのは、大変もったいないことです。
同じ商品でもとても喜んでくれるユーザーもいれば、たまたまあまり気に入ってもらえないユーザーもいるのは、至極当然のこと。「悪いことを書かれても、いいことを500書かれれば、悪い評判は自然と打ち消されるはず。長い目で見れば良貨は悪化を駆逐するのだから、目先の評判にそれほど一喜一憂しなくてもよい」という心強いメッセージをいただきました。自社でブログを運営している方や、これからブロガーさんと何か仕掛けたいと考えている担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
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