リサーチ/データのリテラシー入門——調査統計の基礎知識

社会人に必要なリサーチ/データリテラシー5原則——調査・リサーチ・統計の基礎その1

リサーチ/データのリテラシー入門——社会人として恥ずかしくない調査統計の基礎知識

リサーチ/データリテラシーはWeb担当者の必須スキル

インターネットが生活や仕事に欠かせないものになってきた現在、私たちの周りには数字や調査データがあふれています。昔からあったテレビの視聴率や人口統計をはじめ、ネット利用人口や携帯利用者数、1日の平均ウェブサイト閲覧時間など、数え上げれば切りがありません。

でも世の中には、おかしいデータが山のようにあります。決算数字の粉飾もありますし、耐震強度の計算を偽装することもありました。自説を主張するために、ウソに限りなく近い数字を使うことは日常茶飯事です。

マスコミ、政府など信頼に足ると思われる情報ソースですらそうです。いや、むしろ彼らのほうが、自分の主張に近いデータを選択して使うことが多いかも知れません。お役所は自分の責任になるようなことにはしたくありませんし、マスコミは自分の主張に沿ったデータを集めてくるでしょう。

こうした環境のもと、Web担当者も、そういった数字に騙されないための「リサーチ/データリテラシー」を身につける必要があります。「リサーチ/データリテラシー」とは、数字やデータを理解するための基礎知識のことで、リサーチ/データリテラシーなしに統計の数字や調査データを読もうとするのは、運転免許をもたずに車を運転するようなものです。これを知らずに数字やデータを判断すると、大きく判断を誤る可能性があります。仕事上の重要なデータだったら致命的な大事故につながるかもしれません。

数字は客観的なものでなく、主観的なもの

リサーチ/データリテラシーの説明に入る前に、まずは「数字は主観的なものである」ということを覚えておいてください。「アクセス数」「ページビュー数」「コンバージョン率」「平均滞在時間」「クリック率」などの客観的に見える数字でさえ、基本的には自分の主張を相手に理解してもらうために利用するものなのです。

いったん数字を離れて別の例でお話ししましょう。次の絵を見てください。

ルピンの壺

心理学などを学んだことのある方はご存知だと思いますが、デンマークの心理学者エドガー・ルビンによる、「ルビンの壷」や「ルビンの花瓶」と呼ばれる絵です。あなたには花瓶が見えていますか、それとも、向かい合った2人の人の顔が見えていますか? そうです、同じものが人によって、まったく違うものとして見えるという例です。「娘」か「老婆」のどちらかに見える「娘と老婆」(英W.E.ヒル)も有名ですね。

現場と上司のわかりあえない理由

数字も同じことが言えます。例を挙げましょう。

グラフ1

どうでしょうか。2007年の売り上げ実績が良くて現場の営業担当者は大いばりです。2006年の売り上げ実績の傾きより2007年の傾きも上がっています。でも上司は浮かぬ顔をしています。何故だかわかりますか? 下図をご覧下さい。

グラフ2

折線グラフを1つ加えてみました、理由はおわかりですね。好業績なのですが、それを上回る予算のため、予算未達成なのです。最初からこんな予算は無理だったんだと後悔しても、後の祭りです。

担当者は伸び率を評価してもらいたくて、予算の値を書き込んでいません。確かに相当ながんばりだったでしょう。しかし上司の目からすると、予算という基準に対して未達成という結果なので、管理職としては厳しい評価を下さざるを得ません。

同じ数字に対して2人の見方はまったく逆となりました。担当者はがんばった結果、これだけ成果が出ましたとプラス評価を主張しますが、上司は予算未達成でマイナス評価だと判断します。数字は客観的で絶対的なものと思いがちですが、こうした1つの決まった数字やデータですら、実際は主観的で相対的なものであり、視点を変えれば意味が変わってしまうものなのです。

リサーチ/データリテラシーの5原則

ここで、調査データを読むために必要な、リサーチ/データリテラシーを構成する5つのポイントを紹介しましょう。これが、リサーチ/データリテラシーの5原則となります。

  1. 調査対象者の抽出(サンプリング)
  2. 誤差と偏り
  3. 回答の収集とデータチェック
  4. 集計方法と指標の定義
  5. 外部環境

インターネット視聴率やアクセス解析といった調査データに無関係な方は、項目3や項目4は、自分には関係ないと思うかもしれませんが、そんなことは決してありません。これらの項目は、数値データを扱うためのより根本的な原則を扱っているもので、私は「データリテラシー」と呼んでいます。経理や財務といった会社経営に必要な数字にも応用できますし、耐震強度のデータといった高度に専門的な分野でも役に立つはずです。

数字をみるときにはまずこの5原則に立ち戻り、どこかに落とし穴がないかを確認するのがいいでしょう。また現実的には、これらの各項目すべてにおいて何の落ち度もない調査データというのはめったに存在しませんから、各項目での危ない点を理解した上で数字をみるという姿勢が大事です。

もちろん、あらゆる数値データにこの5つのチェックが必要なわけではありませんが、これらを知っておけばまずは十分だと言えます。これ以外にもグラフ化する際に視覚的に騙す表面的なトリックなどもありますが、それはまた別の機会に取り上げることにして、この連載では、これから5回にわたって、まず根本的な原則を1つずつ説明していきます。

調査データはこれからもますます身近になる

インターネットにかかわる仕事では、自分の周りや自分自身で数字を扱わなければならない時間がどんどん増えています。インターネットの出現で、会社はもとより個人がメディアをもったということ、そして説明責任というプレッシャーがそれを加速しているのです。

これまでは、メディアリサーチの代表格であるテレビ視聴率のデータや各種マーケティング調査などは、時間をかけて外部の調査会社に依頼して、報告書を受け取るという形、つまり受動的なかかわり方が主流でした。

しかしインターネットの出現で、安く早いインターネット調査が手軽に行われるようになりました。また、自社サイトのアクセスデータなどは自分で分析しなければなりません。つまり能動的に扱わなければならないデータの量が激増しているのです。

自社にあった測定基準、計測モデルを構築するために

今やウェブサイトの重要性は経営陣に理解されていますが、それでも、十分な予算を獲得するためには、その投資対効果(ROI)を示さなければなりません。

ウェブサイトのアクセスデータは測定可能ですし、インターネットを絡めたキャンペーンでは、その効果測定が比較的容易です。そのため、PDCA(Plan-Do-Check-Action)のサイクルを早く回すことができるのはいいのですが、次の施策を実行する承認をもらうためには、やはりここでも説明が必要になります。経営者も株主への説明責任がうるさく言われるようになってきましたので、その投資の根拠を説明することが求められています。

すべてが直接的な効果測定ができるというものでもないのに、「このバナー広告はクリック率が低い」といった局所的なデータが出てくることで、Web担当者は細かい判断を数多く迫られていることでしょう。現在はまだ、インターネットマーケティングの測定基準というものがまだ確立されていない過渡期であり、各社がそれぞれ、自社にあった計測モデルを構築していかなければいけないのです。

◇◇◇

私はメディアリサーチに約20年たずさわってきている実務家です。直近の10年はインターネット視聴率とアクセス解析に軸足を置いています。この2つもメディアリサーチだと考えています。

現在も日々、インターネットのマクロデータ(インターネット視聴率調査)とミクロデータ(さまざまなサイトのアクセスデータ)をみていて、自分のブログで、インターネット関連の全世界の各種公表データやデータ利用例などを紹介しています。この連載では、Web担当者のみなさんが目的に沿った形で正しく数値データを扱えるようになるためのポイントを、私の現場での経験を交えてお話していきますので、よろしくお願いします。

次回は「リサーチ/データリテラシーの5原則」1つ目の「サンプリング」について話をします。

まとめ
  • リサーチ/データリテラシーはWeb担当者の必須スキル
  • 数字は客観的なものでなく、主観的なもの
  • 現場と上司のわかりあえない理由
  • リサーチ/データリテラシーの5原則
  • 調査データはこれからもますます身近になる
  • 自社にあった測定基準、計測モデルを構築するために
  • 数字を正しく扱うためには、技術が必要
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