コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の弐十壱
前日売り上げを把握していない店長
アクセス解析していますか? アクセス解析することで訪問者の嗜好や動向をチェックして運営に活かすことができます。
ところが商売用として活用されないところに尋ねると大半の答えが「何ですか? それ」というもので、「アクセス数のことですよね?」と聞きかえす方でも、全体のPV(ページビュー)しか把握していません。
語弊を恐れずにいうなら前日のアクセス数は総売り上げで、どのページのアクセスが多いかは個別商品の売れ行きです。つまり、アクセス解析をしていない商売用ホームページは、前日の売り上げも、どの商品が売れているかも把握していないスーパーマーケットということです。
とはいえ、結構忘れがちです。そこで今回は三日坊主にしないためのアクセス解析の「仕掛け」についてです。
グーグルアナリティクスは重労働?
最近ではアクセス解析に「Google Analytics」を利用している方も多いかも知れません。
行列ができる焼き肉屋「スタミナ苑」に台北からのアクセスがあったり、私のホームページに上海からの訪問者を発見したりと楽しみました。どの場所のクリックが高いかなど、無料のツールとしてはさすがグーグルといったところです。
・・・ところで毎日見ますか? 私は三日で飽きました。典型的な三日坊主です。
ブックマークに入れていても、探してクリックするというのは意外と重労働・・・面倒なのです。
客を「見せる」ための方法
ガランゴロンと扉が開けば、お客さんが訪れたことがわかります。「アクセス解析」とはお客さんを見ることです。
おじさん達をだまくらかすための小難しい表現が必要なら「訪問者の可視化」と企画書に入れるといいでしょう。コンバージョンのような聞き慣れない言葉より「一昨日は60人で昨日の訪問者は80人」と「エクセル」でグラフにして見せてあげれば、「なるほど20人増えたのか」とおじさん達は見ることができます。
第4回の「成功のキーマンは社長」で触れたように、戦うべき相手はネットだけはなく社内にもいるということをウェブ担当者は忘れてはなりません。
直接この目で見られないホームページへの訪問者を「見える」ようにすることが、アクセス解析のはじめの一歩です。
実は私の飯の種
ネットに理解を示さない人の多くは、拒否しているのではなくわからないことが露呈するのを恐れています。若手にとって知らないことはさほど恥ずかしいことではありませんが、年をとるととても恥ずかしいことなのです。
解析によりまとめられた「エクセル」は「わかりやすい実績」となります。
今日明日で結果を出しにくい、商売用ホームページだからこそ「お客さんは来てますよ」と「実績」を教えてあげることが大切です。
実は私の今があるのはアクセス解析のお陰です。結果を出せば次の依頼につながる稼業ではありますが、実績を出すまでの時間をつないでくれたのがアクセス解析を活かした「仕掛け」だったのです。
必要は発明の母。さぼり心が父親
ホームページ専業に切り替えた当初、顧客数も少なかったことからアクセスログを自分で集計して、一週間ごとにまとめてクライアントに送ることにしました。自社のホームページに興味を持ち続けて貰うことがこの商売の成否を分けるポイントだと見ていたからです。
ところが、ここでも三日坊主の本性が首をもたげます。3回目ぐらいから面倒になりました。手作業は大変で飽きました。そして今後顧客数が増えたときにどうするかと考えると大問題でした。
そこでサボるために考えた「仕掛け」が「アクセス速報」です。
目覚まし時計を分解する子供だった私は、なんでも自分流のものを作る癖があります。アクセス記録(カウンター)も自作しました。
決まった時間にログ(記録)から前日のアクセス数を集計してメールで送れば、クライアントは前日の訪問者を見ることができ、自動処理にすれば私が楽になるだろうと考え作ってみました。
前日のアクセス記録を集計してメールを送る。これが「アクセス速報」です。
最初は訪問者数を知らせるだけでしたが、それでは「つまらない」ので、すぐに前日の「検索キーワード」がメールで届けられるように改造しました。いま、使っているものは日報・週報・月報が「速報」として届き、そこに記されたリンクをクリックすると「解析スクリプト」が起動され、こちらでは被リンクや滞在状況などもチェックできるようにしています。
毎朝届くモーニングコール
導線、コンバージョン、被リンク。
どれだけ優れた概念もスポンサーが理解できなければ飯は食べられません。会社組織では評価です。
現在の速報は「PVと訪問者数とキーワード」だけです。何ページ見られて、何人来て、どんな言葉で多く探されたかというシンプルなものです。
この速報をクライアントのウェブ担当者の他、社長、役員にまで届くようにしています。「可視化」により、訪問者が来ているというイメージが湧きますし、昨日より何人増えた、どんな言葉で探されているかと、自社サイトへ意識を向けさせることで善循環が生まれるのです。
管理しているサイトの「速報」は毎朝私の所にも届きます。はじめは恋人からのモーニングコールのようで楽しみです。どんな言葉で探されているのかわくわくしてメールをチェックします。
しばし後。これが「とっとと仕事しなさいよ」に変わります。が、まぁケツを叩いてくれる「速報」のお陰で三日坊主でも忘れることはありません。
仕事でパソコンを使っていれば必ずメールはチェックするので、半ば強制的にアクセス数やキーワードの変化に気がつくことができるとっとおきの「仕掛け」です。
アクセス解析三日坊主な人には、メール配信に対応したツールがお勧めです。
♪今回のポイント
アクセス解析は社内理解を得る最初のツール。
上司説得は数字+グラフで。
メール受信で三日坊主を阻止せよ。
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