講座8 書き言葉と喋り言葉、検索されるときどちらが多い?
文:鈴木綾香 監修:紺野俊介((株式会社アイレップ))
「印章」? 「印鑑」?
突然だが、あなたは「印章」が何かをご存知だろうか? おそらく、ほとんどの人がピンとはこないだろう。では、「印鑑」ならどうだろう。これなら誰でもわかるはずだ。
そもそも、「印章」は「はんこ」本体のことを指している。そして「印鑑」は、はんこを押して紙に出たインクの形のことである。しかし一般に「はんこ」を買いたいと思ったときには、「印章」ではなく「印鑑」で検索するだろう。実際に、オーバーチュアツールのキーワードアドバイスツールで検索数を調べてみよう(図1)。「印章」よりも、「印鑑」のほうが圧倒的に検索数の多いことがわかる(図2)。
キーワード | 検索数 |
---|---|
印鑑 | 46890 |
印章 | 1620 |
「印章/印鑑」の例に限らず、「青空/晴天」「本/書籍」など、普段から私たちは同じものを指しているときでも、書き言葉と喋り言葉といった違いから、複数の呼び名を使っていることがよくある。特に検索時には、喋り言葉をそのまま検索窓に打ち込んでいることも多いだろう。さらに業界用語・社内用語と一般用語との違いもある。業界・社内では普通に意味が通じたとしても、一般ではそうでない場合も多い。
キーワード広告でも、つい企業視点になってしまい、業界用語・社内用語のみをキーワードとして登録してしまいがちだ。これでは、多くの見込み客を逃すことになりかねない。
業界内や社内で当たり前に使っている言葉が一般的に使われているとは限らない。しかし一般的な言葉が絶対によいかといえばそうとも限らない。キーワード広告では、「ユーザーがどのようなキーワードで検索するか」まで考えることが重要なのだ。
広告がクリックされるかは数秒で判断される
「ユーザー視点のキーワード」を考えよう
普段の慣れから、ついタイトルや説明文に業界用語・社内用語を使って出稿してしまうことがある。しかし、それではユーザーが検索してきたときに、一見して自分の探し求めているものだと判断できない。ユーザーは検索結果を見てほんの数秒で自分の求めている情報なのか判断すると言われているから、わずかな違和感でさえ致命傷となりかねないのである。
もちろん、業界用語・社内用語で検索してくるユーザーも存在するから、そのキーワードを含んだ文章を出稿することは必要だ。しかし「印鑑」の例のように、一般的な用語、喋り言葉などのほうが検索数の多いこともある。
一般的な用語で検索するユーザーに対して、その単語を含んだタイトル&説明文を出稿することも必要だ。ユーザーが検索する言葉、ユーザーの普段から使っている言葉にも注目しながらキーワードを出稿するのはもちろんのこと、ユーザー視点のキーワードを含んだタイトル&説明文も考えていこう。
では、ユーザー視点のキーワードは、どのようにしたら見つけられるのだろうか。それにはいくつかのステップを踏んでいけばよい。まずは、「業界人でない人が思いつくような呼び方」を探すことである。
「これは特に一般性が強い」とされる呼び方を想定して、関連ブログを閲覧したり、社外の人に直接聞いてみたりしてもいいだろう。さらに、業界内でも違った呼び方をする場合もあるから、競合サイトの閲覧も必要だ。こうして導き出された複数キーワードについて、それぞれどのぐらいの認知度なのかをオーバーチュアのキーワードアドバイスツールで調べればいい。こうして順を追っていくことで、漏れのないキーワード登録ができるだろう。
同じ言葉でも扱いが異なる
「キーワードの言い換え」を考えよう
また「デジタルカメラ」→「デジカメ」など、略語の言い換えを登録することも忘れてはならない。「デジタルカメラ」と「デジカメ」はオーバーチュアでは同じ単語と見なされているが、グーグルのアドワーズ広告では別単語と認識される。またオーバーチュアのスポンサードサーチでもすべての言い換えが同じとみなされるわけではない。
また、略語だけでなく、間違い入力・明らかな覚え違いなども視野に入れる必要がある。間違い入力は、たとえば「ヒアルロン酸」と打とうとして「ヒアロン酸」と打ち込んでしまうといった場合である。こうした間違い入力もよくあるので登録を検討すべきだろう。
覚え違いもある。たとえば「キャノン デジタルカメラ」と「キヤノン デジタルカメラ」は、オーバーチュアの辞書では同じと見なされない。正しい社名表記は「キヤノン」(大きいヤ)なのだが、実際の検索数は圧倒的に小さいヤの「キャノン」が多い。これは、間違い入力というよりは、明らかな覚え違いだろう。実際の文字は「キヤノン」だが、音の読み方としては「キャノン」になるため、こうした現象が起きていると考えられる。こういった場合には、「キャノン デジタルカメラ」と「キヤノン デジタルカメラ」の両方を登録しないとかなりの数の見込み客を逃してしまう恐れがある(図3)。
キーワード | 検索数 |
---|---|
キャノン デジタル カメラ | 27819 |
キヤノン デジタル カメラ | 6744 |
このように、言い換えにもいろいろな視点があるので注意が必要だ。登録しようとしているキーワードの言い換えがオーバーチュアの辞書で同じとされているか否かは、キーワードアドバイスツールで判断できるので、こうした言い換えにも注目していこう。
ユーザーの検索するキーワードを考える上で、忘れてはならないことがある。それは、ユーザーの検索キーワードは日々進化しているということだ。
たとえば、ひと昔前であればパソコンを買いたい人が検索するときは「パソコン 購入」や「パソコン 買う」などで検索するのが主であっただろう。しかし最近は「パソコン 販売」というキーワードでの検索数が圧倒的である。これは時代の流れと共にユーザーのリテラシーが高まり、直接ネットでパソコンを販売しているところを探すようになったことの表れだろう。こうなってくると、今まで「パソコン 購入」で出稿していた人は「パソコン 販売」でも出稿する必要が出てくる(図4)。
キーワード | 検索数 |
---|---|
パソコン 販売 | 40637 |
パソコン 購入 | 5421 |
パソコン 買う | 527 |
このように、ユーザーの検索キーワードは確実に変化している。ユーザーが今日検索しているキーワードが、明日検索するキーワードとは限らない。こうしたユーザーの変化にも常にアンテナを張っていくことが、キーワード広告を成功させるためには不可欠なのだ。
そして「ユーザーとは誰か」を考える
いままでキーワード広告ではユーザー視点のキーワードを考えることが重要だと説明してきたが、では結局「ユーザー」とは誰なのだろうか?
それはビジネスモデルによっても違うだろう。たとえば、転職業界なら「転職を希望している本人」と「求人をしたい企業の担当者」の2つのユーザーが考えられる。転職業界から見るユーザーは、転職を希望している本人だけでなく、求人側企業の担当者もいるというわけだ。そして、転職を希望している本人は「転職 サポート」、求人側企業の担当者は「転職 支援」という検索をする傾向がある。キーワード広告では、ユーザーとは誰かを考えた上で、ユーザーの検索するキーワードの選出をする必要があるのだ。
あなたにとってのキーワードがみんなのキーワードとは限らない。
さまざまな軸から検討するために、周りをよく見て無駄なく選定しよう。
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