『ウェブ進化論』で語られなかった大切なこと

総表現社会に企業はCGMをどうとらえるべきか

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『ウェブ進化論』で語られなかった大切なこと

総表現社会に企業はCGMをどうとらえるべきか

恣意的なクチコミをCGMに混ぜ込むには
炎上を回避して全体最適化する心得

Web 2.0という概念を構成する大きな要素として、ネットに積極的に参加するユーザーの存在がある。特に日本ではブログサービスを利用してのブログ記事の執筆が盛んだ。企業はブログやSNSなどのCGM、つまり消費者主導のメディアをどうとらえ、どう対応していくべきなのだろうか。ネット上での風説に「恣意的なクチコミ」を紛れ込ませることは是か非か。総表現社会を前に、改めて考えておく必要があるのではないだろうか。

編集部
協力:横山 和幸(アサヒビール/Web広告研究会)

ブログに書かせることが本来の目的?

このところ、ブログに特定商品に関する記事を書いてクチコミを広げるというサービスが急激に増えてきている。サービスに登録したブロガーに対して、ブログの記事で製品に言及すれば1記事あたり数百円~数千円が支払われるといったものだ。企業にとってこういったサービスは魅力的なのだろうか、それとも手を出してはいけないパンドラの箱なのだろうか。

アサヒビール株式会社の横山 和幸氏は「クチコミはあくまでもコミュニケーションの1つのはずなのに、それを目的にしてしまっている感があります」と語る。

横山 和幸氏
アサヒビール株式会社
酒類本部 マーケティング本部 宣伝部
プロデューサー
Web広告研究会 新テクノロジー委員会
消費者メディア研究WGリーダー

横山氏はアサヒビールの宣伝部でプロデューサーを務めるかたわら、社団法人日本広告主協会 Web広告研究会で、消費者メディア研究ワーキンググループをリードしている。

「Web広告研究会で行っている調査でも、オンラインのCGMが影響力を増してきていることはわかっています。しかし、私はCGMを『コントロール』するようなことはするべきではないと思っています。

我々のようなモノを作る会社からすると、お客様が実際に飲んでみて、すごくおいしかったと感動してクチコミに書きたくなるような商品を作るのが使命ですよね。まずはしっかりとしたマーケティングを展開することです。ブログという情報の出口の部分だけ気にして無理に書いてもらっても、説得力も違いますし、広がらないのではないかと思います」

実際に商品を利用した実感が書かれたり、TVCMに対して「あのCMおもしろいよね」「これ知ってる? すごいよ」と言われたりという形で自然発生的にクチコミが広がるのならばわかる。しかし、「ブログの宣伝効果はすごい」という意識ありきで「ブログに書かせる」ことが目的になってしまっては、本末転倒だとも言えるだろう。

炎上の危険性を理解していますか?

恣意的なクチコミをCGMに潜り込ませることは、本末転倒なだけでなく、企業の信頼性にもかかわるトラブルを引き起こす危険性もはらんでいることにも注意が必要だ。

なぜならば、そういった恣意的なものを敏感に感じ取る消費者は確実に存在するし、疑惑を感じたり矛盾点を発見したりすると、それをブログなどで書きたくなるものだからだ。そうなれば、無関係の人たちも集まってきて、騒ぎが大きくなる。いわゆる「炎上」だ。実際に、日本でもネット住民によってやらせが判明して炎上した事例もある。

また、最近ではソーシャルブックマークやソーシャルニュースのような、「話題の情報を簡単に見つける手段」が発展してきているため、炎上の火種は驚くほどの早さでブログ界を駆けめぐる。オンラインでのクチコミが効果的になってきた背景にはブログの普及があるが、それを裏返して見れば、企業にとって悪い情報が広範囲にわたってすばやく広がる舞台をも形成していることを忘れてはいけない。

もちろん炎上せずに続いているプロモーションもあるだろう。しかし、それはうまくいっているのではなく、単にばれていない、つまり注目されていないことを示すのではないだろうか。

「お客様は、企業の言うことをさまざまな側面から知りたいと考えていらっしゃいます。ですから、本当に商品を利用している人の声を、良いものも悪いものも含めて真摯に受け止めて、それを公開していくという覚悟でやるのならばいいんじゃないでしょうか」(横山氏)

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