『ウェブ進化論』で語られなかった大切なこと

総表現社会に企業はCGMをどうとらえるべきか

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倫理に適った手法ですか?

横山氏は、「恣意的なものをネット上の風評に紛れ込ませるようなことをするのではなく、広告として自分たちの語る言葉でお客様にメッセージを伝えたい」と言う。

確かに、マス広告を大規模に利用している企業ならばそういう選択肢もあるだろう。しかし、宣伝予算を潤沢に確保できない企業は非常に多く、そういった企業にとっては、ブログでクチコミを流布させるサービスは魅力的だろう。今まで世の中に情報を出す機会が少なかった企業にとって、ネットを新たなマーケティングのチャンネルとして活用しようとすることは当然だろう。そういう意味でも、冒頭に提起したようなマーケティングを目的にブログなどでクチコミを流通させるサービスを一概に否定するつもりはない。

しかし、どんなサービスでも問題ないわけではない。クチコミプロモーションで失敗しないためのサービス選びのポイントは次のとおりだ。

  • 記事を書くブロガーが実際に商品やサービスを利用してから記事を書くか。
    →実体験のないクチコミはやらせでしかない
  • 企業はブロガーに対して有利な内容を書くように要求していないか。
    →良いものも悪いものも含めて消費者の意見を真摯に受け止めるべきだ
  • 3.ブロガーは金銭(またはそれに類するメリット)を企業から得ていることを読者に対して告知する義務があるか。
    →報酬を得ているならば明示するべきだ

大切なのは、CGMは本来「個人やコミュニティの場」であることを尊重し、企業の宣伝活動をそこに侵入させる場合には、それを明示することだ。

あるサービスでは、報酬を得るためには、ブログへの「報酬の内容や支払い条件」「どういった経緯でその記事を書いたか」を記述することが禁止されている。つまり、ブログの読者には、記事が企業の宣伝のために書かれたものなのかどうかがわからないようになっている。また、あるサービスでは、誹謗中傷するような内容のものには、報酬を支払わないとしている。

米国クチコミマーケティング協会(WOMMA)では、倫理規定として「消費者に報酬を渡しながら、企業との関係を明らかにすることなく、商品推奨を依頼する行為をしない」「消費者同士のクチコミにおいて、サクラを起用したり、覆面マーケティングを行ったりしない」といった項目を挙げている。ネット上でのクチコミ促進サービスを利用する場合には、消費者を欺くような手法になっていないか確認しておく必要があるだろう。

ネットに拘泥することなかれ

ネットの発展にともなって起こっている「大変化」とともに、企業活動やマーケティングは変化していることは確かだ。ここでもCGMを活用したクチコミの促進を否定するつもりはない。しかし、ネットでのマーケティングにどっぷりと浸かってしまっていないかと横山氏は警鐘を鳴らす。

「マーケティング的なことに関して、インターネット時代から始めた人と、それ以前からやっている人の間には大きな意識の違いがあるようです。オンラインマーケティングを考える際には、それだけでなく、ネット以外のマーケティングも理解しておくべきではないでしょうか。オンラインマーケティングはあくまでも1つの手段であって、そこだけで完結するわけではないのですから」

企業と消費者のコミュニケーションを考えるならば、ネット以外の世界にも、マス広告、屋外広告、折り込みチラシ、交通広告などさまざまな手法がある。『ウェブ進化論』に書かれているように、世の中の人がすべて何かあればすぐにインターネットで検索する時代が来たとしても、それは変わらないだろう。

「企業の担当者としては、そこの比率を今後どう考えていくのか、どう使い分けるのかという点です。でも、それはWeb 2.0時代だからではなく、インターネットの普及率が上がってきた段階で考えていたはずのことですよね。

もちろん、CGM的なことが要素として大きくなってきているので、そこをどう考えるかというのは1つのポイントです。しかし、結局はマーケティング全体の中でのインターネットの活用の仕方ですよ。それぞれの中での役割だとか表現方法だとか、使い方が違ってくるわけです。商材に応じた最適なチャンネルと手法を考えるのが担当者の使命。商材が違えば、その先にいるお客様が違うのですから」

利用者数・利用時間ともに伸びを示すCGM

Web広告研究会の消費者メディア研究ワーキンググループでは、CGM市場規模調査として、CGMを“個人HP”“ユーザーレビュー系掲示板”“主要ポータルの掲示板”“2ちゃんねる”“ブログサービス”“SNSサービス”に分類して、それぞれの市場規模、利用者数、利用時間などを調べている。

2006年の調査結果は11月下旬にリリースとしてWeb広告研究会のウェブサイトなどで発表される予定だが、横山氏によると、主要なCGMサイトの利用者数やウェブ全体に占める利用時間シェアは着実に拡大しており、特にSNSの利用時間やページビューが非常に伸びているという。

また、同ワーキンググループでは、CGM効果実態調査として、購入の際にどれぐらいウェブサイトやCGMの声を参考にするのかを商材の種類別に調査している。こちらはまだ分析中だが、以下のような傾向が見えているという。

商材種類別のCGMやサイトの影響力

効果大旅行・宿泊、飲食店
効果中化粧品、音楽、書籍、PC類
効果小ビール、飲料

Web広告研究会

※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウVol.3』 掲載の記事です。

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