明日の会議に間に合うWeb 2.0虎の巻

明日の会議に間に合うWeb2.0虎の巻:Web 2.0時代のウェブ担当者に求められること

Web 2.0時代のウェブ担当者に求められること

あなたの仕事も大きく変わるこれからの企業ウェブサイトの意味と可能性

あなたは、「Web 2.0時代」と言われたとき、果たしてどのような印象を受けるだろうか。ネットベンチャーの世界の話だと思ってはいないだろうか。自分には関係ない未来の話だと思ってはいないだろうか。
Web 2.0というキーワードだと、あいまいで実感がわかないかもしれないが、Web 1.0的な世界からWeb 2.0的な世界に変化することで一番影響を受けるのは、実は実際にウェブサイトを企画/運用している担当者なのだ。

徳力 基彦
アリエル・ネットワーク株式会社
ブログ「ネットコミュニケーションの視点」(http://blog.tokuriki.com/

まず、次の簡単なチェックリストをつけてみてほしい。

あなたのWeb 1.0度はどれくらい? 判定チェックリスト

□ ウェブサイトは基本的に業者に作ってもらっている。
□ ウェブサイトの更新はシステム部か広報部のみで行っている。
□ ウェブサイトの更新は年に数回である。
□ ネット広告の予算は上限が決まっている。
□ ネット広告以外の効果測定はしていない。
□ 自分の会社やサービスがどれぐらい話題になっているかわからない。

このリストで3つ以上チェックが付いたとしたら、あたなはWeb 1.0時代の呪縛に囚われてしまっている可能性がある。ぜひともこの記事を読んで、今後の参考にしてほしい。

Web 1.0時代から変わりつつある
Web 2.0時代のウェブサイト構築

これまで、ウェブサイトの構築やメンテナンスというのは、非常に手間やお金がかかるものだった。

何しろ、HTMLのタグを1つずつコツコツと書いてページを作成し、それぞれのページのリンクをメンテナンスしなければいけなかったのだから、ある意味職人仕事の領域だったといってもいいだろう。

当然、ウェブサイトの構築には専門知識が必要であり、企業パンフレットを制作するように、企画からデザイン、運営までのすべてを、システム担当やウェブサイト制作事業者に丸投げして任せていたという企業も少なくないだろう。ウェブサイトの中で頻繁に修正や更新が加えられるのはプレスリリースのページぐらいで、それ以外のページも新製品が出たときや社長が交代したときぐらいしか変化がない。そんなウェブサイト運営方針の会社もまだ多いはずだ。

もちろん、これまでは競合他社も似たようなサイトしか作っていなかったし、結果としてそれで問題はなかった。ただし、Web 2.0と呼ばれる現在、その状況が大きく変わり始めている。

消費者が作成したコンテンツが
ネット上で急速に増えつつある

変化としてまず大きいのは、ブログに代表されるように一般の人でも手軽にコンテンツを作成できるネットサービスの登場によって、CGM(Consumer Generated Media)と呼ばれる「消費者が作成した情報」がネット上に大量に発生しつつあるという点だろう。

ここでブログと聞くと、「ネット上の日記でしょ? そんなのうちの会社に関係ないよ」と思う方も多いかもしれないが、それは大きな間違いだ。確かに1つ1つの消費者の声(=書かれたもの)は小さいかもしれないが、その集合体には大きな価値と力がある。そこに製品やサービスに対する反応であったり、新しいニーズであったり、他の消費者に与える影響というものが存在しているからだ。

これまでは、情報の発信源は新聞やテレビなどマスコミが中心であり、そのマスコミに取り上げられるまではどんなに重要な情報であっても広がるまでにある程度の時間がかかるのが常識だった。

しかし、ブログやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)などの新しいツールの支えもあって、消費者の口コミの規模や速度というのは、これまでとはまったく新しい次元で無視できない存在になりつつある。

ネット上で生まれている反応に
いかに早く気づけるかが勝負

たとえばある日、誰かのブログであなたの会社のサービスの隠れた問題点が指摘されたとしよう。

その内容が話題性のあるものであったとすると、他のブログも同じ話題について取り上げ始めるかもしれない。さらにそれがより多くのブログや有名なブログで取り上げられるようになると、それらのブログを通じてマスメディアの記者の目にとまるのは時間の問題だ。

もしあなたが、記者の書いた記事を通じてようやくその問題を知ったとしたら、それから社内で対策を会議で検討して、顧客へのメッセージの掲載をウェブサイト制作業者に依頼して……と対応するまでさらに時間がかかってしまう。

しかし、逆に最初のブログが書かれた時点、もしくはいくつかのブログがその話題に注目し始めた時点で問題に気づくことができていれば、早めに対策を練ることができる。
さらにこれは、製品に不具合が見つかったときの話だけに限らない。自社の製品の評判がよくて世の中で話題になり始めているのに気づかないと、需要があるのに在庫を切らしてせっかくのビジネスチャンスを逃してしまうかもしれないし、顧客のニーズが変化し始めているのに気がつかなければ、次の製品でニーズの変化に対応するのが間に合わなくなるかもしれない。

臨機応変な対応が求められる
広告予算の捉え方

Web 2.0時代になると変わってくる典型的な例として、検索キーワード広告の予算に対する考え方がある。たとえば、あなたの会社がある健康食品の販売をしていたとしましょう。ある日突然、取り扱っている健康食品の1つが話題になったとする。Yahoo!やGoogleなどの検索エンジンで、関連するキーワードの検索数が急激に跳ね上がり、その広告を通じてサイトにやってくる顧客も急増し、売り上げも跳ね上がる。しかし当然、キーワード広告には来訪者数に応じたお金(=クリック単価×クリック数)がかかっている。

もし、たったの1日で今月分として予定していた広告予算を使い切ってしまったらどうだろう。“従来どおりの広告費”の考え方をするならば、そこで今月分は予算の上限に達したということで、来月分の予算申請を増額することを考えるかもしれない。しかしその場合、今月の残りの期間に何もアクションを行わないとすると、今月得られるかもしれないさらなる売り上げをみすみす見逃すことになる。その健康食品が話題になっているのはまさに「今」であって、来月も話題になっているかどうかはまったくわからない。今月分の広告予算を増額するという対応をせずに、ここで「今」の勢いを取り逃してしまうと、もう二度とチャンスはやって来ないかもしれないのだ。

CGMの盛り上がりを力に変えて
顧客との新しい関係を築く

つまり私たちは、消費者や顧客が自分たちのサービスや製品についてどのような反応を見せているのか、ネット上の動向を日々注視しておく必要がある。

「そんな面倒なこと」と思う方も多いかもしれないが、実はこれは、見方を変えればすばらしいことなのだ。何しろ、これまで手間をかけてアンケートやグループインタビューなどをしなければ手に入らなかった顧客の生の声を、手軽に手に入れられる可能性が開けてくるのだから。また、企業自らが消費者の口コミをうまく活用すれば、高価な広告に頼らなくてもターゲットとなる顧客に対して自社の製品やサービスを効率的に伝えることもできる。

たとえば、製品に関するブログを立ち上げて、そのブログを通じて顧客とコミュニケーションをとるというのも1つの手だ。ただし、ブログを通じた情報発信は、これまでのテレビコマーシャルや雑誌の広告のように一方的な情報提供ではなく、双方向のコミュニケーションになる。ただし注意したいのは、製品のことをよく知らない人が、顧客と適切なコミュニケーションをとろうとするのは非常に難しいという点だ。したがって製品ブログの運営は、広報部やウェブサイト制作会社に丸投げしていまうのではなく、できるだけ製品に近い人が担当となって情報提供できるような仕組みを作っていくことが必要になる。

Web 2.0時代のウェブ担当者の役割は
これまで以上に大きく重要なものに

このようにWeb 2.0時代においては、これまでのWeb 1.0時代に常識と考えられてきたことの多くが非常識なことになってくる。これまでの手法に慣れていた方にとっては、最初は大変な時代になると言えるのかもしれない。しかしその反面、担当者個人ができることというのが非常に大きくなってきている。さまざまなツールをこれまでにない低コストで使うこともできるし、さまざまな情報やデータも入手しやすい。

Web 2.0時代においては、ウェブサイトを担当するあなたの活躍がビジネスを成功に導く鍵を握ることになる。

Web 1.0時代からWeb 2.0時代へと変化することで、企業ウェブサイトの使い方にも大きな変化が訪れている。

※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウ vol.1』掲載の記事です。

用語集
CGM / HTML / SNS / Web 2.0 / キーワード広告 / マスメディア / リンク / 検索エンジン
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