コンテンツの内製化に求められるものは「コスト」か「安心感」か

日々の業務で「脱アドビツール」を使っているユーザーが2年半かかって確信できたこと…。企業の広報担当者はツールに予算をかけずに他のことにお金を使うべきで、今はそれが比較的簡単にできる時代ということをお伝えします。
※この記事は読者によって投稿されたユーザー投稿のため、編集部の見解や意向と異なる場合があります。また、編集部はこの内容について正確性を保証できません。

2019年の1〜5月にかけて業界を騒がせた「アドビ令和の変」
突然の価格変更に始まり利用規約の変更により、法人だけでなく全てのAdobe CCユーザーに影響を与えたこの騒動も、その原因はといえばDolbyに対してアドビ社がライセンス料を支払っていなかったことによるものだったという、我が目を疑うようなお粗末な騒動だったことを覚えている方はまだ多いかと思います。

僕はといえばその騒動の直前にAdobe CCを解約、その顛末を書いた記事「脱Adobe。解約から4ヶ月、得たもの、失ったもの」は想像していなかったほどの反響をいただき、今でも僕のサイト内では常に最も読まれる記事となっています。
その時お声掛けいただいた有志の助力のおかげで僕が立ち上げていたPhotoshopやIllustratorの代替ツールとなり得るAffinityスイートに関するユーザーグループ「Affinity User Group JAPAN」も同ソフトをテーマとするグループとしては日本最大級となり、日々多くの方が意見を交換する場へと成長しました。

僕自身としてはその後、変わらず日々の業務にAffinity PhotoAffinity Designerがグラフィックやwebデザイン、そして映像制作にと大活躍しており、それと併せて愛用している動画編集ソフト「DaVinci Resolve (ダビンチリゾルブ)」に関しては、ありがたいことに発売元であるBlackmagic Design社からの直接のオファーにより認定トレーナーに就任。つい先日、そのDaVinci Resolveに特化したオンラインスクール「kyokuti creator school」をオープンし、そこで無償・有償で様々な動画教材を販売しています。

kyokuti creator schooトップイメージ

今は扱う教材がDaVinci Resolve関連のみとなっていますが、近いうちにAffinity PhotoやAffinity Designerも加え「脱アドビ」での制作環境を模索する制作者 - 個人だけでなく企業 - にとって最良の道しるべとなれるよう拡張していく予定です。

本記事では僕が日々の業務の中で得たツールに対する考え方や発見に関してシェアさせていただきます。昨今よく耳にするようになった「内製化」を推進されている企業内担当者の方々の参考になれば幸いです。

1人完結型のワークフローを軸とした「脱アドビ」だったが…

約2年半前にAdobe CCを解約したというのは冒頭に書きましたが、そもそもの動機としては10年ほど前からアドビ製品の代替製品を探していて、その過程で出会ったDaVinci Resolve・Affinity Photo・Affinity Designerの3つのアプリの習熟度を高めていくにつれ、それに比例するカタチでアドビ製品を利用する頻度が減っていたためです。

そこにあった想いはアドビ製品そのものがイヤだというものではなく、アドビ社がユーザーの声を聞かずに改善ではなく肥大化の一途を辿っていたからというものでした。

広告制作やwebデザインに必要な機能はAffinity DesignerとAffinity Photoで代替できるというのはかなり速い段階で感触として掴んではいたものの、動画編集に関してはAfter Effectsに替わるソフトが長らく見つからず移行できていませんでしたが、それもDaVinci Resolveの進化とともに解消され、Adobe CCを解約した時点でそれらソフトを完全な業務レベルで使える程度にはなっていたと記憶しています。

僕は個人事業主、それも広告代理店などとの契約を一切せずに活動しているので必然的にひとつのプロジェクトで関わる企業の数はそう多くはありません。
それでもクライアントからPhotoshopやIllustratorデータは支給される機会はそれなりにあるわけですが、過去を遡ってみてもアドビ製品以外を使うことによる互換性のトラブルは一度も経験していません。

解約したての頃は互換性の問題が発生した時はアドビ製品を持っている知り合いに頼んで変換してもらえばいい、もしくはその人に外注してしまえばいいと考えていましたが、Affinity PhotoやAffinity Designerは業務に支障のないレベルですんなりとアドビ製品のファイルを開いてくれたことにはとても助けられました。

メリットだらけの様々な「コスト」

Affinityスイートはアドビ製品ととても似通ったUI、使い勝手を実現していて習得するのに時間はかかりません。なんならYouTubeでPhotoshopやIllustratorのチュートリアルを観てもそれなりに応用ができるため、経験者であれば長くて3日もあれば完全に慣れることができるでしょう。
それでいて価格はたったの1アプリあたり6,100円です。これは月額費用ではなくたった一度きりの支払いです、一度支払ってしまえばその後費用が発生することはないので安心です。

ここで考えて欲しいのは制作ツールを導入する費用や維持コスト、そしてさらには学習コストの3点です。
Adobe CCなら個人用として1アカウントあたり月額6,000円程度で、それとほぼ同額でAffinityスイートのどれか1製品が購入できるということになりますが、こちらはその後の維持コストゼロ、学習コストはアドビ製品とほとんど変わらないとなれば無視するには惜しいと思わないでしょうか?

Affinity Photo
Affinity Photoの操作画面。Adobe製品とそれほど違いありません。

もちろんAffinityスイートにも欠点はあります。
巷でよく言われている「縦書きができない」というのがその代表格ですが…皆さんそんなに縦書きを使われますか? 僕はグラフィックデザイン業務でも縦書きのデザインを作る機会なんて数年に一度程度しかありません。もしこれが出版関係者などであれば話は違ってきますが僕程度の利用頻度であれば一文字ずつ縦書きに並び替えてやるだけであっという間にこの問題は解決できてしまいますので、欠点というには少し弱いかなと感じています。

そして、そういう欠点が他愛もないと思えてしまうほどAffinity PhotoやAffinity Designerには素晴らしいメリットがいくつもあります。
「動作が軽快でストレスなく使える」「使い方がシンプル・モダンで効率的」「iPad版でもほとんど同様の使い勝手を実現」などがそれですが、他にも豊富な機能があり、グラフィックデザインやwebデザイン、映像制作などにいくら使っても不満らしい不満が出てきません。

この記事を読まれている方の中には印刷物のデザインをされている方もいらっしゃるかもしれませんがご安心ください、僕の運営しているユーザーグループのメンバーはこれまで何度もプライベート・仕事を問わず印刷所にPDFデータを入稿していますが、それでトラブルになったという事例はこれまで一度も出てきていません
メンバーの中にはAffinity Designerによる入稿に正式対応を謳う印刷会社の代表者もいますし、そういった印刷所は今後増えていくことが予想されます。

たったの12,200円で高度な制作物を作ることができる時代はすでに到来している

ここまで読んでくださった方にはもう十分にAffinityスイートの魅力は伝わっているかと思いますが、ひとつサプライズがあります。
確かにAffinityスイートは素晴らしく業務にも十二分に通用する機能を持ち合わせていますが、ここ数年間で大きく需要を伸ばしてきた「動画編集」はできません。

今や企業の広報活動における「内製化の枠」に動画編集・配信を含んでいるというところはあるでしょうが、アドビ社でいえばPremiere ProやAfter Effects、Auditionあたりが動画編集には必要になるところが、僕が最初に紹介したDaVinci Resolveならそれら全てが1つのソフトの中で「完全・完璧に」完結します。それも「無償で」です。

DaVinci Resolve
DaVinci Resolveの操作画面。他の動画編集ソフトと使い勝手が似ています。

DaVinci Resolveはオーストラリアに拠点を置くBlackmagic Designという企業が作っているソフトでハリウッド映画制作の現場でも頻繁に利用されている業界御用達のハイエンドツールですが、全ての機能が使えるStudio版と、無償でも使える無印なDaVinci Resolveのふたつがあり、なんとこの無償版でも有償版に搭載された機能の約95%を利用することができる上に商業利用が可能です。

僕はこのソフトを10年近く使ってきていますが、その上で言わせてもらうと控えめに言っても「世界最高峰の映像制作ソフト」なのは疑いようがありません。そのことについてここで細かく書いてもしょうがないので省きますが、本来であれば販売価格数百万円してもおかしくないようなソフトの機能を95%も無償で利用できるわけですから一般ユーザーが一生かけてもその機能性に不足を感じる場面はほぼないと思います。

このDaVinci Resolveを無償で使うと仮定した場合、これまで紹介してきたAffinity PhotoとAffinity Designerを購入してしまえば企業の広報活動を続けていく上で必要なクリエイティブアプリはたったの12,200円で済むということになります。
Adobe CCだと2ヶ月分の費用のみで半永久的にそれらの素晴らしいツールたちを使い放題となればコストを比較する必要すらないのは明らか、浮いたお金をもっと多くのプレスリリースに使うなどといったことができるようになります。

3つのアプリ

最後に、今回紹介してきたソフトを使って作った制作物を他社(者)に渡して二次的なコンテンツを作ってもらおうと思った時のことについて軽く説明させてもらいます。

まず、Affinityスイートならデータ書き出しの設定を変えてやることでPSDやEPS、PDFなどに変換して相手との互換性を担保できますし、DaVinci Resolveの場合であればXMLなどを書き出すことによって相手との互換性をある程度担保することができるので安心です。

以上です、一見すると高額だと思われがちな制作環境の構築もここ数年で激変しています。特にAffinityスイートとDaVinci Resolveの台頭によりそれが加速している今、少し立ち止まって身の回りの制作環境を見渡してみてはどうでしょうか。

AffinityスイートやDaVinci Resolveを使ったワークフローの構築に関するアドバイスも行っています、ご興味があればご相談ください。

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