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YouTubeの人気CMランキング ベスト10とその4つの特徴

9 years 6ヶ月 ago

YouTubeの動画を再生しようとすると出てくるコマーシャル。気になる動画を見るはずが、コマーシャル動画をしっかり見てしまった。そんな経験はありませんか?

そんな魅力あふれるコマーシャルを再生数順に、ランキング形式で紹介していきます。

BREAKER社協力の元、「Tubular」というYouTube解析ツールで4/25 – 5/8の間、算出したものです。

10位 東京モノレールTVCM HKT48「やるじゃん!モノレール」メイキング / HKT48[公式]

CMの流れは、アニメーション+実写の組み合わせ。そのため、顔部分以外をグリーンの服で撮影しております。かわいらしい表情をCMで使う裏でこんな光景が存在しているのですね。

CM撮影の裏側が気になっていたのは私だけじゃないみたいです。

9位 広瀬すず、新CMで先輩に告白?華麗なバスケのシュートシーンも 「レオパレス21」新CM

レオパレス21のCM。「夢中で頑張る君にエールを」でお馴染みのCMソング。メイキングもついています。一人暮らしを始める青春1ページを切り取った作りとなっております。

可愛らしい演技とテンポが良く、勢いのあるCMとなっております。

8位 ソフトバンク CM 白戸家「ギガでかストラップ」篇(30秒)

ソフトバンクのお父さんシリーズ。ギガが登場してから元々立場の弱かったお父さんがどんどん追いやられています。お父さんシリーズは2007年から始まったCMとしては長期シリーズ物。初代お父さんはカイ君、今は二代目の海斗くんにバトンタッチしたようです。お父さんの世代交代があったとは、全然気づきませんでした。

7位 乃木恋 CM

 思春期の少年が描く淡い恋。学校でアイドルと恋人関係になる、そんな夢の詰まったゲームのCM。「本気で恋するスマホゲーム」のキャッチフレーズが直球でわかりやすいのもポイント。学生時代にときめきそうなシチュエーションが目白押し!

乃木坂ファンはもちろん、乃木坂ファンじゃない人も気になってしまうインパクトのある作りとなっています。

6位 おいしい水 プラス CM「プラス登場」編 15秒 中村勘九郎

自然豊かな場所で飲む冷たい水は間違いなく美味しい。そんな中でも、計算してではなく、思わずでた「あっ!」と言ってしまう水。それはもう気になります。キーワードになる7つの健康素材にはCMでは触れ無い所がミソ。いったい何が入っているのだろう…?そう思わせる多くは語らない系のCMです。

5位 再現CG【HOT LIMIT】T.M.R. 2020 発売告知CM

このCMを見た人は、え?え?と困惑して始まり笑いに終わる見事な作り。多くの人が知るT.M.Rの名曲「HOT LIMIT」に違和感の塊とも言えるCG再現。何だろうと思って覗き見ると映し出される「生足魅惑のマーメイド!」そりゃ“漁師も思ってたのと違う“と突っ込みたくなると言う物。技ありのCMです。

4位 【日本赤十字社】2016年度赤十字運動月間CM(30秒ver.)

世界の様々な場所で起きている社会問題を凝縮したCM。平和な日本から視点が伸びていき、それぞれの地域の問題を拾っていくとても30秒とは思えないボリュームのCMとなっています。カメラの表現も独特で、日本の画像からズームするような表現方法のインパクトが大きいです。

3位 『あんさんぶるスターズ!』CM プロデューサー就任会見〜知らなかったわ編(WEB)

こちらはシリーズ物でランクイン。プロデュース編やメンズに夢中編などいくつかのバージョンが上がっており、再生数も似ています。このことから何となくCMを再生したのではなく、意図的に見ていたのがよく分かる結果です。男女関係なくアイドルを追いかけるのは今も昔も変わりません。

2位 『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』 テレビCM ゲームプレイ画面篇30秒

ゲーム動画ランキングでも登場したタイトル『アンチャーテッド』のTV版CM。同じタイトルで15秒バージョンも大人気でした。映像の真ん中に白文字で「これはゲームのプレイ画面です。」と書かれているのが印象的。

ゲームだけに分類されず、色んなCMを含めたランキングの中でもノミネートされたことから、世間の注目の高さが伺えます。ムービーシーンだけ力を入れるゲームは、今まで多々ありました。しかしプレイ画面でこちらのクオリティの高さは驚きです。

1位 めちゃコミック CM めちゃ犬 旅編 春

犬の出演するCMが人気の中、フレンチブルドックの「めちゃ犬」の登場するMCです。目の前でいちゃつくカップルを眺め、慌てて目をそらす可愛らしい演技。動物の表情豊かなCMは見ているだけでも和みます。

また、日常でよくある気まずさから目をそらし、携帯を操作するという自然な動作を犬がすることでより親近感がわきます。

YouTube上で人気のCMの特徴とは?

ランキングの入れ替わりが激しいCM動画ですが、今回のランキングを見ても、いくつかの特徴があるように思います。

まず一つの特徴は「シリーズ物」です。シリーズ物は元々ある知名度を武器に、初速を上げることが出来るため、人気になりやすいです。ソフトバンク、レオパレス、めちゃコミックなどがそれに当たりますね。

次の特徴として「動物モノ」が挙げられます。理由は言わずもがなですが、可愛くて癒やされるからです。ソフトバンクの「お父さん」や、「めちゃ犬」がそれに当たります。

次の特徴としては「アイドルもの」です。HKTや乃木恋、あとアイドルではありませんが、広瀬すずもこれに分類していいかもしれません。これらが人気なのは、元々いるアイドルファンがYouTubeで検索したところからの流入で見られていることが予測できます。

最後に紹介する特徴は、アプリやゲーム系CMです。乃木恋、アンスタ、アンチャーテッド、めちゃコミックなどがそれです。これらが人気なのは、これらのCMを投下している広告主がオンライン・マーケティングに積極的で、ネット上でCMが再生されるノウハウを持ち、ネットメディアにどんどん予算投下しているからでしょう。

これまでYouTube上で人気のCMランキングを見てきました。動画広告市場がこれから成長することが見込まれる中、どんなCMが人気となっているのか、メディア業界関係者の皆さんにおかれましては、参考にしていただければ幸いです。
(文=柳内 啓司)

関連サイト

YouTube広告の制作はCrevoにお任せ
柳内 啓司; メディア・プロデューサー

YouTube動画シェア数ベスト10(3月バラエティ部門)

9 years 7ヶ月 ago

人気動画を定点観測することは、マーケッター・クリエイターにとって必須科目になる

「どんな動画が世の中でたくさん再生・シェアされているのか?」というデータを定点観測していくことは、これからの時代のマーケッターやクリエイターにとって、必須な作業でしょう。

なぜなら、これらのデータこそが動画制作に大切な予算を割く時の重要な指針になるからです。メディア企業が動画コンテンツを作る時、または広告代理店が動画広告を制作する時に、どんなテーマの動画がたくさん再生され、シェアされるのかを知っているかどうかで、その動画のパフォーマンスには雲泥の差が生まれます。データを持たずして、動画を作ることは、地図を持たずに冒険に出かけるようなものです。

実際、Netflixは、自社でドラマ制作をする際に、既存ドラマをジャンルや出演者ごとに徹底的に分析し、どのジャンルのドラマが当たりやすいかを調べたといいます。

というわけで、本記事では「動画シェア数ランキングBEST10(※)」をお送りします。トレンドの把握や動画制作時の参考資料にご活用い。

BREAKER社協力の元、「Tubular」というYouTube解析ツールで算出したもの

10位 マジンガーZ×ハローキティ×超合金 オリジナルショートアニメ(1404シェア)

ハローキティの超合金バージョン発売を記念した、マジンガーZとのコラボアニメが第10位にランクイン。キティちゃんとマジンガーZという’意外な組み合わせ’に反応したユーザーのシェアを多く獲得しました。

9位 「コリラックマと新しいお友達」テーマ(1743シェア)

若い女性を中心に人気の「コリラックマ」に新しい友だち「こぐまちゃん」が出来るという癒し系動画。ユーザーから「かわいい」「癒される」という数多くの声を獲得し、第9位にランクインです。

8位 「みんながみんな英雄」 フルver.  /AI【公式】(1990シェア)

テレビCMでもおなじみのAUのCMシリーズで、AIが歌う「みんながみんな英雄」のフルバージョンがランクイン。人気CMシリーズと人気シンガーのコラボで長い期間多くの人に愛された動画になっています。

7位 UNCOVERED:FINAL FANTASY XV Trailer [JP](2427シェア)

人気ゲームシリーズ最新作「FF15」のトレーラーがランクイン。ユーザーからは「楽しみ!」「すごいクオリティ!」などの反応が出ていました。

6位 Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 PV第1弾(2846シェア)

 

5位 世界初かわいい味噌汁/Definition of Japanese Kawaii(2857シェア)

味噌メーカー「マルコメ」と、KAWAII(カワイイ)を世界に発信するアソビシステムがコラボした動画がランクイン。ぶっ飛んだアーティスティックな世界観に、女性たちが文字通り「カワイイ!」と反応しました。

4位 ガリガリ君「値上げ篇」(60秒)(3413シェア)

ガリガリ君が25年間守り続けてきた60円という価格を、70円に値上げするにあたって制作された「謝罪動画」。たった10円の値上げを、仰々しく、コミカルに描いたのがウケて、4位にランクイン。ネットユーザーからは「このCM見たら、逆に可哀想になった」「シュールで面白い」といった評価を受けています。

3位 マクドナルド「未来のワタシ」篇(5067シェア)

マクドナルドのクルー募集アニメが3位にランクイン。ネットユーザーから大人気のAKB48「横山由依」「岡部麟」の両名を声優に起用したことが人気に火をつけました。アニメ制作はスタジオコロリド。

2位 氷結 あたらしくいこう WEB限定スペシャルムービー「さかなクン×スカパラ」(6690シェア)

いつもにこやかな「さかなクン」が一転、クールなサックスプレイヤー「GYO」に変身し、東京スカパラダイスオーケストラのメンバーに加わりセッションする「氷結」のCMが第2位にランクイン。そのギャップにユーザーたちが驚き、たくさんのシェア数を獲得しました。

1位 RUN -Japanese Ver.- / 防弾少年団 (Official MV)(7215シェア)

第1位はTwitterフォロワー数45万人を超える人気韓国アイドルグループ「防弾少年団」の新曲でした。まだ知らない方も多いかもしれませんが、既に熱狂的ファンを多く抱えている彼らの人気を証明する結果となりました。

たくさんシェアされる動画の特徴

このようにランキングを見ていくと、シェアされる人気動画の特徴として、以下の要素があることが言えます。

1.人気キャラまたはタレントが出演している

2.動画の中にサプライズがある(予想外のコラボや事件)

3.動画そのもののクオリティが高い

 

「人気キャラ・タレントを出演させること」はそもそもの予算がかかるものなので、簡単に実現できるものではありません。しかし、「サプライズ」や「クオリティ」については、今の時代なら知恵を絞れば、低予算であっても実現できる余地が大いにあるでしょう。

また、大きな予算をかけて動画制作をする際も、企画している動画が上記のような特徴を捉えているか、チェックしていくことも「企画の打率」を上げていくのに重要な作業となります。

今後もこういった形でランキングを定点観測できればと思うので、メディア・広告関係の皆様は、動画制作時の参考にしていただければ幸いです。
(文=柳内 啓司)

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柳内 啓司; メディア・プロデューサー

ブレイク直前!「360カム」映像が今年のトレンド

9 years 9ヶ月 ago

ビデオカメラ市場は急速な勢いで縮小しています。

5年前ならば、春と秋には大量のビデオカメラが新製品として登場していたのに、日本の場合、今期は全社合わせても数モデルしかありません。

海外の家電イベントなどでも、ビデオカメラの展示スペースは極端に狭いものになっています。

その理由は、スマートフォンやデジタルカメラに押されて需要が減ったこと、そして、「GoPro」に代表される「アクションカム」に需要を奪われたことです。

特にアメリカ市場では顕著で、ビデオカメラ市場のトップは、すでにソニーやキヤノンではなく「GoPro」。

世界的に見ても、最大のビデオカメラブランドになりました。

しかし、そのGoProですら、2015年後半から、急速な退潮が伝えられています。新製品の評判が良くないこと、アクションカムの需要が一巡したことなどが理由として挙げられていますが、その地位を脅かす、と言われている製品群がすでに存在しており、2016年は新製品ラッシュとなりそうです。

その製品とは「全天球カメラ」「360カム」などの名称で呼ばれる製品です。
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これまでのカメラは、すべて目の前のある範囲をさだめ、そこを映像や写真として切り取るものでした。

しかし360カムは、その名の通り、カメラの周囲全体を一度に記録します。

例えば結婚式の映像を撮影した際、通常のカメラでは、目の前のカップルに合わせて記録することになります。

が、360カムだと、同時に、自分の後ろの席で涙ぐんでいる列席者まで記録できます。見る時に、自分が見たいところを選んで見るわけです。

こうすることで、いままでの写真や動画では残しておけなかった「その場の空気感」のようなものを記録できるのが特徴です。

360カムがアクションカムの後継と言われる理由は、どちらも「据え付けた場所で撮りっぱなし」であることです。

似たような使い方でありながら、撮影できる映像の新鮮さでは360カムがずっと上。そして、ハードウエアの価格も、アクションカムと360カムは近いものになっています。

360カムは、2013年にリコーイメージングが発売した「THETA」が元祖、と言われています。

当時のものは画質も荒く、撮影できるのも静止画に限られていましたが、普通のカメラでは撮影できない画角の実現で、先進的なユーザーの間では話題になっていました。

しかし、2015年年末に発売した「THETA S」では画質が大幅に向上、動画への対応も強化されました。

他社製品も増え、1月にらベガスで開催された展示会「CES 2016」には、数え切れないほどの360カムが展示される状況となりました。

2月22日からバルセロナで開催されたモバイル関連の展示会「World Mobile Congress」では、サムスン電子やLG電子、ソニーモバイルなどが相次いで360カムを発表しています。

こうしたブームの背景には、360カム同様、今年ビジネスの拡大が期待されている「バーチャルリアリティ(VR)」との関係があります。

VRでは、専用のヘッドマウントディスプレイ(HMD)をつけ、視界を実景からディスプレイ内の映像に置き換えます。

そこに360カムの映像を流すと、その映像が撮影された場所に立っているような感覚になります。首を振って見たい場所を見る普段の行動が、そのまま、360カム映像の表示場所を変える行為となることで、より一層「そこにいる感じ」が高まるのです。

VRはより多様な体験を指す言葉なので、360カム映像=VR、と考えるのは正しくないのですが、コンテンツ不足が懸念されるVRにおいて、360カムはまたとないパートナーと言えます。

360カムの映像は、エンターテインメントとして優秀であるだけではありません。

不動産物件の情報提供に広く使われているほか、工事現場や工場など監視が必要な場所の映像提供、貴重なイベントや文化財の映像の記録、アスリートのフォームや視界を学習するスポーツ分野など、アイデア次第でビジネスにも広く応用が可能です。

フレーミングもなく、撮影は簡単に思えますが「いつどこで撮影するのが適切か」といった判断には、相応のノウハウが必要なジャンルでもあります。

アイデアとノウハウは、まだ蓄積段階なので、いいものを作れればビジネス価値が高まる「チャンスにあふれた市場」と言えます。
(文:西田 宗千佳)

関連記事

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2016年デジタルマーケティングトレンド予測

西田 宗千佳; ジャーナリスト

ニュースリリースと動画の親和性

9 years 10ヶ月 ago

2016年はWeb動画が本格的に来る!と言われていますが、ニューズ・ツー・ユー社サービス「News2uリリース」でも数年前からニュースリリースに YouTube 動画を埋め込んで配信できる仕組みを取り入れています。

テキストに比べて圧倒的な情報量を誇る動画は、短時間で多くの情報をわかりやすく伝えることができ、抜群の訴求力があります。

でも、ニュースリリース内に動画を入れることのメリットは何でしょうか? 今回は、事例を参考にしながら「ニュースリリースと動画の親和性」について考えてみました。

テキストや画像だけでは伝わりづらいモノやコトをわかりやすく

例えば、下記アペックス様のニュースリリースは「ケーキサーバー発売中」をお伝えするリリースですが、初めてこの形のケーキサーバーを目にした人は、写真だけを見てもケーキサーバーの使い方がよくわかりません。

地上波テレビで紹介されたあのケーキサーバーなど北欧ブランドmagissoの便利なキッチン雑貨、好評発売中!
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もちろんニュースリリース内には説明文も明記されていますが、ニュースリリース内に配置された動画を見るほうが一目瞭然で、「なんて便利なケーキサーバーなんだ!」ということが、よくわかります。テキストや画像での商品説明も必要ですが、さらに動画も一緒に配信することで、使い方を伝えつつ、その使用方法で閲覧者に驚きを与えることができていると思います。

臨場感や雰囲気を伝える

イベントやカンファレンスの開催レポートをニュースリリースで伝えることは、参加できなかった人にとって、当日の詳細を知ることのできる重要なコンテンツになります。

その際、写真とテキストのみの開催報告では、イベントの温度感や雰囲気まで伝わりづらい場合もあります。そんな時に動画を使ってレポートを作成することで、来場できなかった人にも、その場の雰囲気や臨場感を伝えることができ、よりそのイベントへの理解も深まるのです。
【Z会】優勝おめでとう!開成高等学校!日本一の天才高校生を決める大会「超難問コロシアム2015」決勝を開催し、ニコニコ生放送で4.8万人が生中継に参加。
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【動画レポート】パナソニックの「光ID」技術を用いた世界初の体験イベントの添付ファイル一覧
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顔が見えるコミュニケーション

もう一つ、動画リリースの利点は、動画に企業の中の人を登場させることで企業のブランディングにも役立つという点です。

岡三オンライン証券は、日々の投資情報を社員が説明する動画を毎日制作し、ニュースリリース配信しています。

インターネット証券でありながら、動画による投資情報配信という形を選んだのは、お客様と Face to Face でのコミュニケーションを大切にしているからだそうです。
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ニュースリリースは企業のFact(事実)を伝える公式文書ですが、社員が自分の言葉で説明したり、想いを伝えたりする動画を添付することで、企業への理解も深まり、より信頼感を得られるのではないでしょうか。
written by ネットPR.JP

crevoAdmin

BtoBの注目動画広告事例はこれ!基本を押さえて有効活用!

9 years 10ヶ月 ago

今や動画を使ったマーケティングは珍しいものではありませんが、なんとなくBtoC(※1)で使われるように思っていませんか?

実は、BtoB(※2)でもかなり動画の活用が広がってきているのです。

もしあなたがBtoBマーケティング担当者で「動画はB2Cのもので自分とは無関係だ」と思っているのなら、考えを改めるべきです。

今回は、なぜBtoBで動画マーケティングが必要なのか、3つの基本をおさえ先人たちはどのように活用しているのかを見ていきましょう。

※1 BtoC (B2C)
“Business to Consumer“の略。企業(Business)が一般消費者(Consumer)を対象に行うビジネスのこと

※2 BtoB (B2B)
“Business to Business”の略。企業(Business)が企業(Business)を対象に行うビジネスのこと

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B2Bマーケティングの“キホン”の“キ”

マーケティング戦略や方法論の多くが、B2Cを前提としています。

「動画マーケティングはB2Cのもの」という感覚は、この段階から植えつけられているのかもしれません。

そもそも、B2CとB2Bは、何が違うのか。

それは「顧客」です。

B2Bは一般消費者ではなく、企業が顧客になります。

企業が顧客であるとは、どういうことなのか。3つのポイントを押さえましょう。

①顧客が商品の専門家である
B2Bの顧客は、企業の買い付け担当者であり、当然、自分が担当している商品について専門的な知識を持っています。

例えば家具メーカーの買い付け担当者が釘を買うとします。

長さや太さはもちろんの事、使われている素材や原産地、コーティング剤など、細かく検討します。

一般消費者はどうでしょうか?多くの方は、長さと太さを見るくらいで、コーティング剤や産地までチェックする方は稀でしょう。

B2Cで商品を販売するよりもはるかに詳細な部分の情報が、B2Bビジネスでは求められるのです。

②顧客の購買決定プロセスに複数の人間が関与する
B2Bで営業をかけるとき、顧客サイドの買い付け担当者が窓口となります。

しかし、担当者の一存で購入が決まることは、滅多にありません。

多くの場合、上司や他部門の承認を得て、初めて購入が決まります。

B2Cにおける一般消費者の日常的な買い物では、たいてい一人の意志だけで購買決定がなされます。

③顧客が買いに来るのではなく、自ら売りに行かないといけない
B2Bビジネスでは、ほとんどの場合、営業が顧客にアプローチして売り込まなければなりません。会社で待っていたらお客さんが来てくれるというケースは、滅多にないでしょう。

B2Cでは逆で、顧客側がお店やネットショップなどで、自分の欲しいものを探すのが主流です。

もちろん例外はありますが、多くの場合、この3点が当てはまります。

動画と相性抜群だったB2B

前述のとおり、B2Bの顧客は、B2Cと異なります。

B2Bの場合、「顧客は専門家」であり、「決定プロセスに複数人数が関わり」、「営業がアプローチしなければ売れない」のです。動画が活躍できる条件がそろっているといえます。

B2Bビジネスでの動画の使い方としては、大きく二つ考えられます。

一つ目は「営業ツール」として使う場合。

動画は商品の良さを伝えるツールとして、非常に強い力を発揮します。

例えば、商品の性能を分かりやすくまとめた動画があったとします。これを使えば、入社10年目のベテランも、入社1週間の新人も、同じレベルで商品の説明ができます。

また、利用者のポジティブなコメントをまとめた動画は、営業が口頭で伝える商品説明よりもはるかに説得力があるでしょう。

しかも、これらの動画は顧客が社内で上司や他部門の承認を得るときにも使えるという優れモノ。

こういった用途では、華美なクリエイティブは必要なく、比較的低コストで作れることも大事なポイントです。

二つ目は「マス展開」、すなわちTVCMやWeb動画広告です。

マス展開の大きな目的はただ一つ。

知名度の向上です。

例えばTVCMを行い、企業や商品の知名度が上がったとします。これは会社にとっても、営業にとっても、非常に大きな追い風となります。

新規顧客開拓の際に、相手に話が通じやすい。顧客側で商品を知った人が導入を望む声を上げるかもしれません。名前が通ることによって、優秀な社員の確保にもつながります。

知名度向上のメリットを挙げれば、きりがありません。

営業ツールとしてもマス展開においても、B2Bにおいて動画は大きく活躍する可能性を秘めています。

事実、マーケティング先進国の北米で実施された調査では、既に76%ものマーケターがB2Bマーケティングにおいて、動画を活用しているとの結果がでているのです。

日本での比率はもう少し低いかもしれませんが、だからこそ、先手を打って導入すべき、ともいえるでしょう。

営業ツールとしての動画って?

B2Bで動画活用が効果的だと言われても、なかなか実感がわきづらい所もあるかと思います。

いくつか事例を見てみたいと思います。

Google Japan 「Google Adwords活用事例のご紹介 ver.1」

Google Japanが自社サービスGoogle Adwordsの活用事例をまとめた動画です。実際にサービスを使った企業の声を、ドキュメンタリー風にまとめています。

見た人が「Google Adwords」のなんとなくの概要を理解し、さらにユーザーベネフィットを理解できるような内容です。

同じことを、ホームページにテキストと写真で載せても良いですし、営業がセールス時に口頭で紹介しても良いでしょう。

ただ、動画の中で実際の利用者が語っているほどの説得力は、出ないでしょう。

さらにB2Bビジネスでは、業界トップの企業が採用したサービスを、中堅企業が追従して採用するということも多いです。

ここで業界リーダーの声を集めることができれば、なお一層、強力な営業ツールになるのは間違いありません。

JOINTEX 「昇降式テーブル CN 5W SNA」

こちらはオフィス用品の販売を手掛けるプラスジョインテックスカンパニーの動画です。口頭や紙資料だけでは伝わりづらい商品を、動画を使って説明しています。

この動画では昇降式テーブルを紹介しています。

言葉だけで使用感を説明するのは難しいし、かといって実物を持ち歩くわけにもいきません。

そんな時、この動画を使えば営業担当者のレベルに関わらず、分かりやすく説明できるのです。

商品の説明を目的としたこの動画は、非常に簡素なつくりになっています。

B2Bで顧客に伝わる動画のクリエイティブは、必ずしもコストがかかるものではないのです。

B2BのTVCM展開

営業ツールとは別に、B2Bでマス展開をする場合もあります。

Sansan 「面識アリ」篇

こちらは名刺管理ソフトを展開しているSan SanのTVCMです。社内で名刺共有ができていれば、というシチュエーションをコミカルに映像化しています。

豪華俳優陣をキャスティングし、ストーリーも愉快で、シリーズ化されているので、記憶に残っている方も多いのではないでしょうか?

その一方で、このTVCMを見るまで、San Sanという会社を知らなかった人も多いと思います。

そもそも社内で名刺を共有するという発想自体、なかった人もいるでしょう。

つまり、このTVCMを通じてSan Sanは、企業の知名度だけでなく、新しいサービスの認知度を向上させているということになります。

企業としての知名度が上がると、営業活動は容易になり、優秀な社員が確保できるようになります。

サービスの認知度が上がると、ニーズがあった場合、先方から問い合わせが来るケースも考えられるのです。

もちろん、TVCMは、制作にもメディアバイイングにもお金がかかります。

TVCMで視聴者に印象を残すには、クリエイティブの質も重要になります。出稿量もある程度は確保しなければなりません。

しかし、営業チャンス拡大と優秀な社員獲得ができることを考えると、十分コストに見合った効果が見込まれるケースもあるのではないでしょうか。

まとめ

B2Bビジネスにおいて、今後も当分は、営業が顧客にアプローチするスタイルが主流でしょう。

特に日本では、昔ながらの足を運ぶ営業がまだまだ当たり前です。

営業の力で、売上が大きく変わるのです。

しかし、だからこそ、動画が力を発揮する場面があります。

動画を使って商品説明をすることで、営業トークの一部分を均質化することが可能です。

利用者の声を動画にまとめておくことで、説得力のある営業サポートができます。

TVCMを通じて知名度を上げれば営業のしやすさは向上し、優秀な社員を確保することだってできます。

動画は強力なツールです。決してB2Cだけのものではありません。

B2Bにおいて、動画を有効活用することが、営業の効果・効率を上げることにつながるのです。
(文:Scott Nomura)

関連文献

大ヒット動画を制作することが正義なのか? – ブランディングとその先にあるユーザーの消費行動を考える
Webスタートアップとの相性抜群? スポット広告の事例と特長
マーケティング・プロデューサーの時代

参考文献

CONTENT MARKETING INSTITUE / Marketing Profs : B2B CONTENT MARKETING 2015 Benchmarks, Budgets, and Trends – North America

Scott Nomura

【Facebookは終わるのか?】2016年 アメリカの10代が”イケてない”と言った4つのサービス

9 years 10ヶ月 ago

日本は少子化が進む一方で、アメリカでは新たなテクノロジーやサービスに敏感な若い世代が多く生まれています。

その中でも最近特に注目されているのが、現在18才以下のジェネレーションZ。

アメリカ国内において、ミレニアル世代とジェネレーションZを合わせた37歳以下の若者は、全人口の半分以上を占めています。

サービスの成功は、若者ユーザーに響くかどうかが大きな鍵となっています。

年齢別にみるアメリカの人口の割合

年齢別にみるアメリカの人口の割合


今回は13~18歳の、アメリカ人60人を対象に実施したアンケートをもとに、アメリカ人10代に使われなくなった4つのサービスと、愛されている6つのサービスを紹介します。

もう”イケてない”と言われた4つのサービス

Facebook
facebook
【回答】
・時代遅れ(14歳)
・自分の親や友達の親に投稿を見られるから使わない(16歳)
・Facebookは、イベントを開くときにはいいけど、ちっともお気に入りのアプリではない(15歳)

【なぜイケてないのか】
調査対象だった10代の大半がFacebook登録者にもかかわらず、Facebookはお気に入りのアプリではないと応えました。

親に見られる心配や、広告でごちゃごちゃした見た目が理由です。

しかし、鬱陶しいと思うことと、Facebookを持たないこととは別なようです。

「Facebookアカウントを持ってるでしょ。あなたもだよね?」という社会からのプレッシャーがあり、アカウントを持たない場合、その理由を毎回、説明しなければなりません。

Google+
google-
【回答】
・そもそもGoogle+を使うときがいつなのか知らない(16歳)

【なぜイケてないのか】
言われてみれば、たしかにGoogle+をメインで使っている人を見たことがありません。Google+を使わずとも、他のSNSで足りているという印象が強いです。

以下のグラフを見ても、そもそもGoogle+を利用している人が少なく割合も減少しているのが分かります。

アメリカのソーシャルメディア利用状況

アメリカのソーシャルメディア利用状況

Whisper
whisper
【回答】
・単純にもう誰も使ってない(17歳)

【なぜイケてないのか】
Whisperは、他のユーザーと匿名で秘密を共有できるアプリです。2013年に大流行しましたが、ブームはすでに去りました。

学校や友達などの酷い悪口を言うことが多く見受けられ、「マイナスな発言がたまるSNSは人気が長続きしない」ことを裏付けました。

またWhisper利用にあたって社会的に注意するべきことが多く、煩雑だと感じられているようです。これは、Facebookにも当てはまる傾向です。

Vine
vine
【回答】
・Vine動画はみるけど、自分も友達も誰も動画を投稿したことがない(16歳)

【なぜイケてないのか】
6秒の動画をアップするサービスとして人気を博したVineですが、観ることはあっても自分で動画をアップする機会は「ほとんどない」という意見が目立ちました。誰もが参加者になれないと熱は冷めてしまうのかもしれません。

そんな中、人気を独占する6つのアプリ・サービスとは?

ここまでは、「流行」「廃り」が早いのかと感じさせる辛辣な回答が並びました。

そんな辛口な彼らを魅了するアプリはどんなものでしょうか。大体予想はついているかもしれませんが、理由と共に見ていきましょう。
Snapchat
snapchat
【回答】
・スナップチャットは私のコミュニケーション方法の1つといってもいい(15歳)
・テキストメッセージと役割は変わらないし可愛い自分の顔写真ものせられるから好き(16歳)
・今、自分がどこにいて何をしているかということを短く簡単に伝えられるから良い(17歳)

【使われる理由】
Snapchatは親しい人とのネットワーク内交流で、自分のパーティーではしゃいでいる写真を見られても問題ありません。

いいね!の数やコメントを気にする必要もなく、とにかくほかのソーシャルネットワークと比べ、自由にふるまえる場所として利用され人気があります。

Spotify
spotify
【回答】
・友達の音楽の好みを知ることができる(14歳)
・友達がシェアする音楽をみて新しいお気に入りの曲をみつけられる(14歳)

【使われる理由】
Spotifyはその名を世界に轟かせている音楽ストリーミングサービスです。今の10代は、好みの音楽も不特定多数の人と共有しています。無料で聞けて、シェアできることは、当たり前なのです。

Instagram
instagram
【回答】
・他のみんなが何をしているのか知りたい(15歳)
・Instagramでみつけた面白い写真を友達に送れる(15歳)
・自分が今何処で何をしているのかを全部シェアできるから(15歳)

【使われる理由】
Instagramは不動の人気をキープしています。「snapchatでも写真を共有し、Instagramでも共有するの?」と思われる方も居るでしょう。全ての写真をポストするのがSnapchatで、その中で、自分が最もかわいく写っている1枚を載せる場所がInstagramというような使い分けをしているようです。

Instagramでは、フォロー返しのマナーを強制されず、気に入らない写真にタグ付けされる心配もありません。

また、広告が少なく、コンテンツ自体にフォーカスされている印象です。

Twitter
twitter
【回答】
・なんらかの形で有名人とつながることができるから(18歳)
・いつでもツイートできるしFacebookのようにごちゃごちゃしてないから(17歳)
・自分の心にためていたことを吐き出せて、それに同級生が同情してくれるから(19歳)

【使われる理由】
ダークホースだったのはTwitter。日本では、まだTwitterを頻繁に利用する人も多いが、アメリカでは、新規ユーザー獲得が苦境だと言われていました。

しかし結果は、意外にも10代からの人気は高いままです。簡単な検索では自分が見つからないと感じられるため、親や家族の目の届かないところで、学校の不満を漏らしたりしています。

Netflix
netflix
【回答】
・Netflixで良い(16歳)
【使われる理由】
アメリカではテレビよりも、Netflixをはじめとするストリーミング配信サービスやケーブルテレビが利用されています。

PwCは、過半数を超える人がストリーミング配信のメディアを好んだと発表しました。HuluやAmazonプライムの利用者の割合も多かったがNetflixの利用率は圧倒的で、ケーブルもNetflixもHuluも登録している家庭でも、ほとんどはNetflixを利用するといいます。

ただし、ドラマのアップロードはHuluの方が早いため、Huluを利用するというユーザーも多いです。

Facebook Messenger
Facebook-Messenger
「あれ?Facebook離れしているんじゃないの?」と思われる方もいるでしょう。Facebook Messengerは利用率も高く、今回の調査対象者の80%以上が頻繁にFacebook Messengerを利用していると応えました。

KikやSnapchatもテキストメッセージとしては、Facebook Messageに劣るようです。

生き残るFacebookの利用シーン

グループ機能
Facebookを使う目的の多くはグループ的なものです。グループをチェックするためだけにfacebookを使い、重要なところを見て、すぐログアウトしてしまうようです。

難しいアルゴリズムによる配置ではなく、上にあるものが新しいというシンプルなニュースフィードが親しまれています。

検索機能
初めて会った人とつながりたいとき、まず最初に使うのがFacebookでしょう。このような場面において、TwitterやInstagramはあまり使われません。実名で検索するだけで、だいたい誰でも見つけることが出来るのが特長です。

他サービスへのサインアップ
他のサービスに登録する際、面倒な手間を省くためにFacebookアカウントでを利用する機会が増えています。

Facebookが、ネット上の身分証明書のような機能を持ち、アカウントを残しておくだけで、意外な使い道があるものです。

まとめ

上記のサービスの失敗例と成功例からみたなかでアメリカの10代向けにサービスをつくる前に心得るポイントは3つ。

1. 社会的なプレッシャーを感じさせないもの(少なくとも親には気付かれないこと)
2. 仲の良いコミュニティだけで自分の好むものを主張でき、友達の好むものを知れるもの
3. ユーザーが当事者で受け身にならないもの

Written by btrax

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crevoAdmin

LINE LIVEはテレビ放送と異なる「スマホエコシステム」

9 years 10ヶ月 ago

2015年12月から、LINEが動画配信サービス「LINE LIVE」をスタートしています。

動画配信というと、このところは、ドラマや映画などを配信するものが目立っていましたが、LINE LIVEは違います。基本は「生配信」です。

ネットでのライブ配信というと日本の場合、「ツイキャス」や「ニコニコ生放送(通称・ニコ生)」といったサービスがまず思いつきます。

「Ustream」がテレビ放送を補完する役割として注目された時期もありましたが、今はやはりツイキャス・ニコ生が多いでしょう。

LINE LIVEはこれらサービスの後追い、という印象を持つ人もいると思うのですが、現状ではかなり特質が異なります。

この記事を書いている16年1月の段階では、LINEに公式アカウントを持つ芸能人・有名人のライブ配信を軸としたサービスが行われているためです。

それに対しツイキャス・ニコ生は、プロによる配信も多いものの、個人が自由に配信している例が目立ちます。LINEも「近日中に個人向けの配信ツールを公開する」としているのですが、若干の違いがあります。

この傾向から「LINEはマスメディア的なものを指向している」とも指摘されました。しかし、実際にはちょっと違うようです。

LINEといえば、みなさんも毎日使っている「スタンプ」が思い浮かびます。いまでこそ、スタンプは誰もがクリエイター登録を行い、自作したものを販売できるプラットフォームになっていますが、当初は違いました。

企業が提供するキャラクターのみが販売対象となっていました。実はこれは、LINEの作戦です。

最初からすべてをオープンにすると、どういうものを作っていいかわからなくなり、「質の悪いスタンプ」が増える可能性があります。

特に、下品なものや性的なものは、面白い分だけ場を荒らす可能性も高いです。場が荒れるのは、プラットフォーマーがもっとも避けたいことでもあります。
linelive
そこでLINEは、企業による公式スタンプによって「こういうものが売れる」「こういうものが面白い」という実例を作ることを優先しました。

それが、後から来る一般クリエイターの基準になると考えたわけです。審査はありますし、まったく荒れないわけではないですが、LINEスタンプのやり方は成功だったと言えます。

LINE LIVEも同じやり方を踏襲しています。ファンがアーティストを見る図式をまず作り上げることで、コメントを含めた「場が荒れにくい空気」を作ろうとしたわけです。

ですが、これは彼らが「芸能界重視」とした、という話とは、若干異なるようです。アーティストにとって、LINE LIVEのような場はとても良いアピールの場です。

特に、自室にテレビを持たず、エンターテインメントの中心が完全にスマートフォンである10代にとっては、圧倒的に有利です。

しかし、「そこでなにが起きているか」「そこで誰が支持されているのか」が形作られるルールは、テレビ放送とはまた違ったものです。

テレビのバラエティ番組でよく見る人が支持されるとは限らず、10代だけが支持する人々も出始めています。

無理に大物タレントを引っ張ってくる必要はなく、「ネットを活躍の場として、積極的に使う人々」の方が、スマートフォンを軸に楽しむ10代にはヒットしやすい傾向にあります。

YouTubeやニコニコ動画で活躍する配信者には与しやすいプラットフォームと言えます。誰がどのような形で支持されるのかを予想することはできませんが、過去のメディアでの「才能を売り込むメソッド」は、そのまま通用しません。

プラットフォームの仕組み上、LINE LIVEから直接アーティストが収益を得るのは難しい構造なのですが、LINE LIVEを宣伝として使い、物販やコンサートなどに誘導することは十分に可能です。

そうした部分の使い方も、過去のメディアとは違う点になるでしょう。「スマホの上でどうやってアテンションを維持するか」という点において、LINE LIVEでどういうことが行われるのか、注目しておく必要がありそうです。
(文:西田 宗千佳)

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“友だち”の意味が変わった時代の生配信。LINE LIVE

西田 宗千佳; ジャーナリスト

Panasonicも採用! 潜在顧客にリーチするリッチ動画広告

9 years 10ヶ月 ago

昨今、通信環境のインフラ整備やインターネット広告市場の拡大にともない、広告配信の技術も格段に進歩してきています。そして、高い技術力と表現方法を用いた、これまでにないリッチな動画広告が、潜在ユーザーを獲得する施策として注目を集めています。

今回は、ネット広告ではリーチが難しい、新規ユーザー獲得のための「リッチ動画広告」の導入事例を参考に、潜在層のリーチを拡大する施策を紹介します。

リターゲティング広告のリーチ先は顕在ユーザーのみ

新規ユーザーは、主に、顕在層、準顕在層、潜在層の3つに分類されます。

現在、ネット広告は「リターゲティング広告」が主流。リーチ・獲得できるのは、主に、顕在層と準顕在層のユーザーです。

1996年にYahoo!JAPANが国内初の広告枠販売を開始してから20年。検索連動型(リスティング)広告、コンテンツ連動型広告など、効果的な広告配信が模索されてきました。

分析の対象は、ユーザーが入力したキーワードや開かれているページのコンテンツ内容・テキスト。広告主たちは、より関連度の高い広告をユーザーの画面に表示させようと、しのぎを削ります。
richmediaad
しかし、検索広告をいくら表示しても、その効果は限定的なものでした。

ページに合わせて広告を表示する方法で獲得できるのは、そこに訪れる時点で「既に商品・サービスに興味があるユーザー」だけなのです。

既に興味を持っているユーザーの取り合いでは、マーケットの拡大にはつながらず、上限のある数字を各社で分配するだけになってしまいます。

市場の奪い合いに疲れ切った各社が次に目を向けたのは、「潜在ユーザー」でした。

「潜在層」にリーチする「リッチ動画広告」

リッチ動画広告とは、動画にゲーム性を持たせたり、インタラクティブな仕組みを取り入れたものです。これまでのネット広告よりもクリエイティブな表現で、潜在層の心をくすぐり、ユーザーの欲求を喚起します。

GPSの位置情報など、ユーザーの様々な行動データを分析することで、よりパーソナルな心情に訴えかけられるようになったことも、潜在層へアプローチする追い風となっています。

Panasonicの場合

ふだんプレミアムエアコン:#003たいせつなのは、家族が「集う」時間。インタラクティブムービー
Panasonicでは、テレビCMほどの予算がない小型家電にリッチ動画広告を活用しました。

「豪華であることや贅沢することだけでなく、なんでもない日常にあるくつろぎや和みなどに価値がある」がコンセプトのインタラクティブ動画です。

家事を取り巻く環境や社会的認識が変化し、男性も家事をするのが、当たり前になってきました。

「ふだんプレミアム」シリーズでは、俳優の西島秀俊さんをキャスティング。洗濯機、冷蔵庫、エアコンの3つの製品を主軸にしたショートムービーを展開しています。

「家電といえば女性」のイメージもまだまだ強い中、料理や洗濯、子供とのお留守番を自然に行う西島さんの姿に、心動かされた男性ユーザーも多いはずです。

たいせつなひとに、いつも Iron short story [母の想い、娘の想い篇]

アイロンを通じて、母の思いと娘の思いがクロスするショートムービー。ほかにも「母の上京篇」「思春期篇」があり、いずれも強く印象に残る文脈でブランドメッセージを伝えています。

衣類スチーマー NI-FS360 男だってシワ取れビアン シワトリ篇

普段、アイロンに馴染みのない男性の心を掴むのに、ミニコント風の動画は、有効な施策です。

このスチーマーは、TVCMの予算が確保できない中、幅広い年代の男性からも支持され、発売からこれまでに約30万台を売り上げています。

リッチ動画広告のメリットとデメリット

メリット
・テレビCMでマスを狙えなくても、拡散されれば多くのリーチも可能。
・テレビCMで訴求しづらい10代、20代にリーチしやすい。
・テレビではわからない、ユーザー像がある程度分かるため、クリエイティブを最適化しやすい。

デメリット
・スマートフォン視聴が増加しているが、スマートフォンの端末にアピアランスが左右される。
・クリエイティブの制作コストが、高額。
・動画再生までの待ち時間が少しでも長いと人は離脱してしまう。
・効果について、明確な指標がない。

まとめ

リッチ動画広告では、これまでリタゲ広告でリーチしづらかった潜在層へのアプローチが可能です。

テレビ広告ほどの予算はない。先行企業のある分野で顧客開拓したい!といった悩みを解決してくれるのが、リッチ動画広告です。

各企業のマーケターの方は、メリット・デメリットを踏まえたうえで、リッチ動画広告の運用を検討してみてはいかがでしょう。
(文:朝比奈 直樹)

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メディアを使い分け動画を活用するパナソニック
リッチメディア広告の使いどころ
Rich Media Gallery

crevoAdmin

GIFは時代遅れなのか? 今こそ見直すべきGIFのメリットと使い方

9 years 10ヶ月 ago

GIFアニメの時代がきた

いま、GIFアニメーション(以下、GIFアニメ)が再び注目を集めています。

GIFアニメの歴史は、1990年代にまで遡ります。当時のインターネットと言えばISDN回線であり、通信速度は最大でも64kbpsしかありませんでした。そのような通信速度では、現在のように動画どころか音楽すらロクに再生できません。

そこで登場したのが、画像ファイルの拡張であるGIFアニメです。「動く画像」は当時としては画期的であり、作成も手軽なことから多くのホームページ(ウェブサイト)で利用されてきました。

しかし、GIF画像であるため「256色しか使えない」、「音声がない」、「長い動画だとサイズが大きくなる」といったデメリットを持ち、その立場はゆっくりとMacromedia社(現在はAdobe社が買収)のFLASHにとって変わられます。
001
GIFアニメと比べてサイズも小さく、動く「リッチコンテンツ」を作れるFLASHはGIFアニメを駆逐していったのです。

スマホの登場でGIFアニメが復活

その状況に変化をもたらしたのが、iPhoneです。

ご存じの通り、iPhoneではスティーブ・ジョブズ氏の方針によりFLASHがサポートされていません。当初はサポートを求める声がユーザーから上がっていましたが、今ではその声もかなり小さくなりました。

それだけ、今やFLASHはスマホユーザーにとって不要な技術となったのです。

一方、GIFアニメは勢いを失いつつあったものの、白黒絵やドット絵などの表現手法を使うユーザーによりそのクオリティは向上。そんな中に現れたのが、iPhoneだったのです。

日本で最初のiPhoneが発売されたのは2008年。そこからわずか約3年、11年ごろからGIFの需要はV字回復していきます(Googleトレンド調べ)。

GIFアニメならiPhoneで再生できるのはもちろん、AndroidやPCなどHTMLをサポートしていればどんな機種でも再生できます。また、90年代とは違い今ではスマホのデータ通信速度も速いため、すぐに読み込み・再生されます。

伝えたい要素だけを伝えられるGIFアニメ

また、YouTubeなどの動画と違ってGIFアニメは再生時間の短い作品が多いことから、コンテンツを短時間で楽しむスマホユーザーとの親和性が高いのも特徴です。動画と違い、ページに掲載されているサムネイルをタップしてから再生という手順も不要です。

そしてスマホの画面であれば画像サイズが小さくても閲覧には問題なく、さらにTwitterやFacebook、Instagramなどの各SNSもGIFアニメを標準でサポートしているため、スマホユーザーにとっては当たり前のコンテンツとなりました。

今や、完全にGIFアニメの時代が来たといっても過言ではありません。

GIFアニメで広がる表現の幅

それでは、実際にどのようなコンテンツにGIFアニメが利用されているのでしょうか?

有名なところで言えば、Googleのロゴです。祝日や記念日にGoogleのロゴが「Doodle(いたずら書き)」になるのはご存じだと思いますが、「動くロゴ」の多くにGIFアニメが採用されています。

例えば2015年の冬至を知らせる「雪が降るスノードーム」はGIFアニメです。

Google

Google「2015 年冬至(北半球)」

また、「新年を祝う動物たち」のロゴも同じくGIFアニメです。

Google「新年を祝う動物たち」

Google「2016年 元旦」

このほか、浮世絵をGIFアニメで動くようにした表現も話題となりました。

GIFアニメは、アートの世界にも広がっているのです。

現代のGIFアニメ「シネマグラフ」

そうしたなかでの注目が、シネマグラフです。

シネマグラフとは、写真の一部分だけが動くGIFアニメの表現手法です。コカ・コーラ社による次のシネマグラフを見て頂ければ、どんな表現なのか一目で分かります。

Soaking up the last of the summer sun. Happy Labor Day! #WeDontSweatWeGlisten

Coca-Colaさん(@cocacola)が投稿した動画 – 2015 9月 7 3:06午後 PDT

瓶の口から注がれるコーラの部分だけが動き続けているこの作品は、単純に「コーラを注ぐだけの動画」よりも印象的です。こうしたシネマグラフは、Instagramを中心に流行しています。

もちろん、ウェブサイトに利用される例など(株式会社 電通クリエーティブX)、動画だけではなくコンテンツやデザインなどにもGIFアニメは幅広く使われるようになっているのです。

まとめ

GIFアニメが注目されている理由は、以下の3つになります。

・ iPhone、Android、PCなどのプラットフォームに左右されないこと
・ 動画よりもサイズが小さく、タップなしで再生されること
・ 伝えたい要素だけを短時間で伝えられること

コンテンツや広告でユーザーを動かしたい方は、これらの特性を活かし、ぜひGIFアニメを使ってみてください。
(文=篠原 修司)

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参考記事

GIF – Wikipedia, the free encyclopedia
iPhone OSがFlashをサポートしない6つの理由 – ジョブズ氏が説明 | マイナビニュース
ジョブズの誇り:AppleがFlashとの戦いに勝つまで | TechCrunch Japan
GIFアニメで「スター・ウォーズ」などの名作映画を再現 – GIGAZINE
Google トレンド – ウェブ検索の人気度: gif – すべての国, 2004年 – 現在

篠原修司

その広告、10年後の売上げに貢献してる?

9 years 10ヶ月 ago

世の中を見渡してみると、商品が出てこない広告があふれています。

何かを売るために行っているはずの広告。

商品を語らずに、広告は売上げに貢献できるのでしょうか?

今回はブランディングという視点から、広告を考えてみます。

毎年変わる「メッセージ」と、連動してブレる「ブランドイメージ」

ブランディングという名目で、短期的な売上げを目標としない広告が数多く展開されています。強力なブランドを作り上げることで、将来の売上げに貢献することを見据えています。

もちろんブランドを構築することができれば、それは大きな武器となります。将来的に売上げに貢献する可能性も非常に高いです。

しかし、ブランド構築が目的と言いつつ、実際にはブランド構築に至っていないケースが多く見受けられます。

なぜか?

それはブランド構築が、長期的なイメージ蓄積の産物だからです。

1度や2度、広告を打っただけでは、ブランドは作れません。

長期間にわたり、一貫したブランドイメージを発信し続けて初めて、消費者の中にブランドが構築されます。
002
ブランド構築を通じて10年後の売上げに貢献したいのであれば、10年間一貫したイメージを発信し続けなければならないのです。

しかし現実には、マーケット環境の変化や経営陣の入れ替えなどにより、伝えたい「メッセージ」が変わり、それにつられて発信する「ブランドイメージ」まで変わってしまうケースが見られます。

どんな事情があるにせよ、発信するブランドイメージが変わってしまっては、ブランドを積み上げられないことは間違いありません。

「メッセージ」は変わっても失われない「ユニーク」さ

長期間、一貫したブランドイメージを発信し続けることができない企業が多い中、環境の変化などに負けずにブランドイメージを積み重ねてきたブランドがあります。

日清が誇るロングセラー商品、カップヌードルです。

カップヌードルはブランドイメージとして「ユニーク」であることを重視しています。

「ユニーク」であることで、印象的かつポジティブなイメージを消費者の間に構築してきているのです。

その為、広告キャンペーンも「ユニーク」なイメージを作り上げるコンテンツとなっています。

1992年

『Hungry?』キャンペーン

1992年にカンヌ国際CMフェスティバルでグランプリを受賞した有名な作品です。

CG技術を積極的に取り入れ、お腹を空かした原人たちをユーモラスに描いています。

今でこそ当たり前になったCG技術ですが、当時としてはまだ目新しく、視聴者にとても印象的に映ったはずです。

しかも、そんな当時の最新技術を駆使しながら描いているのは、原人たちがマンモスを追いかけるという、一風変わったシーン。

非常に「ユニーク」かつ印象的な形で、「腹が減ったらカップヌードル」というメッセージを描いています。

1999年

『20世紀カップヌードル』キャンペーン

こちらも印象的なTV広告キャンペーン。

20世紀を代表する様々な場面の中に、カップヌードルを食べるシーンを合成させています。

例えば上記は、ソ連のゴルバチョフ書記長がテーマになっています。

1991年まで存在した20世紀の超大国ソ連、その最後の指導者であるゴルバチョフの事は、当時は誰もが鮮明に覚えていました。

そんなゴルバチョフが演説している横でカップラーメンを食べているなんて、どれだけ強烈なインパクトがあったことでしょう。

コミカルな動きも相まって、「カップヌードルは21世紀品質へ」と言うメッセージが、とても「ユニーク」なイメージと共に、印象に残ります。

2013年

『SURVIVE!』キャンペーン

比較的最近のキャンペーンなので、覚えている方も多いかもしれません。

若者のカップ麺離れを意識してか、メッセージは「これからの時代を生きる若者たちに、困難に立ち向かい乗り越えていってほしい」というものになっています。

メッセージ自体は別段珍しくもないのですが、ストーリーや演出が飛びぬけて「ユニーク」です。

ここで紹介しているのは、就職氷河期篇。

2009年のリーマンショック以降、就職難が続いていた日本で、ターゲットである若者に良く刺さるテーマです。

そんなシリアスなテーマを、突飛なシチュエーションとセリフの組み合わせで、楽しくて笑える「ユニーク」な作品に仕上げています。

カップヌードルの「らしさ」

『Hungry?』キャンペーンから『SURVIVE!』キャンペーンまで、実に20年以上の月日が流れています。

当然、時の流れと共に、それぞれのキャンペーンで発信するメッセージ自体は移り変わっています。

ただ、カップヌードルが見事なのは、どのキャンペーンにおいても「ユニーク」なイメージを失わなかったことです。

冒頭でも述べましたが、伝えたいこと(=メッセージ)は様々な要因によって変わっていきます。それはカップヌードルでも同じです。

ただ、ブランドイメージを構築するためには、一貫したイメージの下でメッセージを発信し続けなければなりません。その一貫したイメージがカップヌードルの場合、「ユニーク」さだったのです。

どんなメッセージであっても「ユニーク」であることを忘れない。

この積み重ねがあるからこそ、カップヌードルが広告キャンペーンは「カップヌードルらしい」と言われるようになったのです。

将来の売上げにつながらないブランド広告には意味がない

ブランディングを行ううえで忘れてはいけないこと。それは、将来の売上げに貢献するためにブランディングを行うということです。

慈善事業でもない限り、全ての企業は営利目的で活動をしています。営利目的とは、儲けるということ。

直接的であれ、間接的であれ、売上げに繋がらなければ、意味がないのです。

ブランディングは、ブランドに特定のイメージを定着させることです。その結果として、競合商品との差別化を図り、売上げに貢献する。

そこにブランディングの意味があります。

では、ブランドにイメージを定着させるためにはどうすればよいのか?カップヌードルのように、ブレないイメージを発信し続けるしかありません。

マーケティング責任者が変わるたびに発信するブランドイメージが変わうようでは、イメージが定着するはずがないのです。

繰り返しになりますが、時代や状況に応じて「メッセージ」を変えるのは、良いことです。ただ、どういう「イメージ」の下でその「メッセージ」を発信するのかは、ブレてはいけません。

一貫した「イメージ」を通じて将来の売上げに貢献することができないのであれば、そのブランド広告はドブに金を捨てているのと一緒なのです。

まとめ

ブランドを構築するには、まず消費者にどういうイメージを持ってもらいたいのかをクリアにする必要があります。

その上で、覚悟を決めなければなりません。長期間にわたって、同じイメージを発信し続ける覚悟です。

どの時代に、どんなメッセージを発信する場合でも、イメージだけはブレさせない覚悟。

もし覚悟を決めきれないのであれば、ブランディングに使おうとしている予算を、値引きなりセールスプロモーションなり、直接的に売上げに貢献する施策に割り振ったほうが効果的です。

しかし一方で、ブランドイメージを定着させることに成功できたなら、それは将来、かけがえのない資産になるでしょう。

モノがあふれて競合との差別化が難しくなっている今の時代。長い時間をかけて築きあげたブランドイメージは、簡単には真似できない強力な武器になります。

ブランディングには長期的なビジョンと覚悟が必要ですが、それだけの価値があるのです。
(文:Scott Nomura)

関連記事

マーケティング・プロデューサーの時代
もう一度目を向けるべき!ブランディング動画の2つの「当たり前」
大ヒット動画を制作することが正義なのか? – ブランディングとその先にあるユーザーの消費行動を考える

参考記事

日清ブランドサイト:CUP NOODLEヒストリー
日経ビジネスオンライン:無駄よし、不公平よし! カップヌードルがどこまでも強いワケ
日経ビジネスオンライン:「カップヌードルのCM、私は笑えない」
AdverTtimes:ブランドとのエンゲージメントを強化するカップヌードルのデジタル戦略——SIMC2014レポート

Scott Nomura

マーケティング・プロデューサーの時代

9 years 10ヶ月 ago

この10年ほどは、マーケティングが時代の変化に直面して、その対処に追われ、またさまざまな混乱を生んできたように思います。

ようやく、私たちが直面している本質的な課題が何なのかの共通認識が生まれはじめてきているのではないでしょうか。
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さて、現代のマーケティングが直面している大きな課題は、ライバルとどう差別化するかから、製品やサービスの成熟やコモディティ化の脅威から抜けだすのかに移ってきました。

残念なことに、日本では、かつては世界を席巻した「技術や品質」へのこだわりから、さらに一歩踏み出すことに成功していません。しかし、今は「技術や品質」だけでは売れない時代です。

いかに「新しい価値」の実現へ方向転換させるか。また、その「新しい価値」を消費者にどのように体感してもらい、共感・共有してもらうのかに焦点が移ってきています。

そして、かつての「製品の時代」に確立したマーケティング・ミックスの時代からは比較にならないほど、専門的で複雑化してきたマーケティングをどのように統合するのか。これまでのマーケティングとは異なるマネジメントが求められてきているのです。
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そこで必然的に注目されてくるのが、ビジョンやミッションなどのシナリオを描き、マーケティングの全体と細部にまで一貫性をつくりながら、「新しい価値」の創造と体感の場を組み立てていく「プロデューサー」。オーケストラでいえば「指揮者」の役割をこなす人材です。

求められてきている「マーケティング3・0」への対応

コトラーの言葉を借りれば、「マーケティング1・0」は時代製品の品質や機能を売ることにありました。それから、消費者の嗜好にあわせたベネフィットを発掘し、提供する「マーケティング2・0」の時代へと移り、現在は、新しい意味を創造し、消費者と価値を共創していく「マーケティング3・0」の時代への進化が求められています。まさにその流れが急速度にやってきています。
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マーケティングの中核となる「What to sell(なにを売るのか)」のWhatが、「モノの価値」から「モノが存在する意味や価値」にシフトしました。

また、「How to sell(いかに売るのか)」のHowも、「マーケティング1・0」や「マーケティング2・0」の時代とは比較にならないほど複雑になってきました。

そんな変化に対応して、新しいステージに立てるかどうか。現代は、その競争の時代に入ってきたとすら言えるのでしょう。

それを象徴するのがスマートフォンにおける競争でした。従来の競争をめぐる常識では考えられない象徴的な出来事がスマートフォンの市場で起こったのです。

アップルのスティーブ・ジョブズはたびたび、市場のシェアは眼中になく、完璧な製品をユーザーに提供することを目指していると言っていました。一方で、アンドロイドOSを搭載したサムスンなどのライバルは、販売数量や市場シェアを追求してきました。

そして、多くの人が、スマートフォン市場で、アンドロイドがOSの80%を超えるシェアを獲得したときに、アップルのiOSの敗北、なかんずく、首位の座についたサムスンの勝利、つまりiPhoneの敗北に見えたのです。

しかし、実際に起こった新しい現実は、シェアで言えば17%程度のiPhoneが、スマートフォン市場の全メーカーが得る利益の9割以上を占めているということです。

アップルは「体験」を売り、APPストアやiTunesなどのエコシステムにうまく消費者を囲い込んで、アップル・ブランドとの絆を築いてきました。それに対し、ライバル企業は、規模の経済効果を求め、「機能」と「価格」で激しく競い合って売るステージから抜け出せなかった。それが、この結果です。
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スマートフォン市場が見せてくれているのは、品質や機能の競争だけでなく、異なるビジネス・モデル間の競争。そして、「マーケティング3・0」のステージに立つマーケティングが実現できるかどうかを競い合う時代に入ってきているということではないでしょうか。

インターネットが価値をエンパワーする場となり、動画がさらに重要に

インターネットがメディアとしてパワーを持ちはじめ、SNSやモバイルの進化がそれを加速してきました。

インターネットが広告メディアとしても2014年に一兆円を超え、日本の総広告費の17%を占め、29.8%を占めるテレビに次ぐポジションとなりました。

それよりも今後を占う上で重要なのは、メディアとの接触時間で、「パソコン」「タブレット」「携帯・スマホ」の合計時間が伸びてきましたが、2014年に東京地区では161.3時間となり、「テレビ」の156.9時間を上回ったことです。

それらの利用がすべてインターネットではないとしても、それらに投入される広告費と、ユーザーの接触時間にまだギャップがあり、まだまだネットの効果を追求していく余地があることを物語っています。つまり、ネット利用の高度化が、現在よりも加速する可能性を十分に感じさせます。

インターネットはメディアの勢力地図に変化を起しただけではありません。広告を見て、検索で確かめ、ほかの商品と比較して購入を決める。このように、購買行動の動線を変えてきたこと。さらに、ユーザーの体験がインターネットで共有されることで、商品価値をも左右するようになってきています。
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直接はコントロールが出来ない消費者が、マーケティングのなかで重要なポジションを占めるようになた以上、商品やサービスの魅力や価値は、売り手からの一方通行だけでは成り立たちません。
否が応でも、商品やサービスの価値を消費者とともに創造していく時代なのです。

インターネットは売り手と消費者をつなぎ、消費者との絆を深めるための「場」として、その意味は大きくなってきます。

ネットでコンテンツのリッチ化、「場」の臨場感を高める流れが当然起こってきます。その鍵をにぎるのが動画であり、体験の共有ができる「場」のオープン化でしょう。

ネットの特性を生かそうとしたさまざまな試みがなされてきました。アクセス獲得を狙った手法に振り回されたり、さまざまな混乱もありましたが、ようやく本質的な課題に焦点が集まり始めていると感じます。

マーケティングを有機的に統合するマネジメント

こういったメガ・トレンドのなかで、マーケティングの世界で求められるもの。

それは、消費者の心と共鳴できるパワーをもったビジョンや理念、また世界観を生み出し、それを体感できるユーザー体験の舞台を、商品やコミュニケーションを通じて組み立てる能力だと感じます。

とくに、優れたマーケティングは、優れたビジョンやミッションのシナリオを持つことから生まれます。
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そのことは、赤字化したユニバーサル・スタジオ・ジャパンを再建したドラマが物語っています。入場者増の快進撃が続き、2015年10月の入場者数は175万人。開業以来の記録を達成したばかりか、東京ディズニーランドの同月の入園者数160万人を上回る快挙でした。

その快進撃を実現したリーダーは、プロクター&ギャンブルから転職し、USJの執行役員マーケティング本部長となった森岡毅氏。

そのドラマは著書『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』でリアルに伝わってきます。森岡氏がどのようなUSJを実現するのかでビジョンの転換がすべてのスタートだったのです。それをご本人が語っておられます。

 ・・・私は社内にはびこる最大の敵「間違ったこだわり」に、まず宣戦布告することにしたのです。それはハリウッド映画のテーマパークとして始まったユニバーサル・スタジオ・ジャパンのブランドを、長期的に生存可能なように再定義すること。
つまり、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンというブランドを、「映画の専門店」という妄想から、「世界最高のエンターテインメントを集めたセレクトショップ」へと脱皮させることでした。
『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』
森岡毅著・角川書店より引用

ビジョンやミッションのシナリオを描き、そこに焦点をあて、現場の技術やアイデアを引きだすプロデューサーの姿を感じます。

それはまさにスティーブ・ジョブズが行ってきたマネジメントであり、優れた起業家が行ってきたマネジメントに共通するところです。

断片的な手法が先行するのではなく、複雑化し、高度化してきたマーケティング要素を有機的に統合する。そして、「新しい価値」を創造することにむかってマーケティングが変わっていく。それが大きな時代の潮流になってくるものと思います。
(文=大西宏)

関連記事

もう一度目を向けるべき!ブランディング動画の2つの「当たり前」
YouTube、Facebook、Instagramの各SNSで効果を出す動画広告のクリエイティブとは
加熱する動画ストリーミングアプリ市場、”Blab”が主役に?

参考記事

博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所の「メディア定点調査」

crevoAdmin

ミラーレス一眼に学べ! 家庭用ゲーム、生き残りのための動画広告

9 years 11ヶ月 ago

様々な機能が手のひらサイズに集約されているスマートフォン。非常に便利で、爆発的に普及しています。

しかし、その陰で、スマートフォンにユーザーを取られて苦しんでいる業界もあります。彼らはユーザーを取られたまま引き下がるしかないのでしょうか?

今回は、スマートフォンに流れてしまったユーザーを奪還するヒントを見ていきます。

スマートフォンに屈したデジタル家電

日々進化しているスマートフォン。普及率も右肩上がりで、20代では90%以上がスマートフォンを利用しているとの調査があります。

そんなスマートフォンの普及とともに、ゲーム業界が大きく変わってきています。

スマートフォンで遊ぶ「ソーシャルゲーム」が爆発的にはやり、家庭用ゲーム機の販売が大きく落ちているのです。

野村総合研究所の見立てでは、2018年に向けて、ゲーム機の年平均成長率は、マイナス12.9%となっています。

野村総合研究所 『2018年度までのIT主要市場の規模とトレンドを展望』

野村総合研究所 『2018年度までのIT主要市場の規模とトレンドを展望』

この傾向は、ゲームに限った話ではありません。

スマートフォンには、電話やインターネットなどの通信機能だけでなく、音楽再生、カメラ機能といった、様々な機能が集約されています。結果、多くのデジタル家電が販売額を落としているのです。

そんな中、カメラ業界が投入したミラーレス一眼に、家庭用ゲーム機生き残りのヒントがありました。

一矢報いたミラーレス一眼、狙いは「ミドルユーザー」

カメラ業界では、スマートフォンに搭載されているカメラの性能が上がったことを受け、コンパクトデジタルカメラ需要が激減しています。ライトユーザーを奪われてしまったのです。

下のグラフからも分かるように、ピークの2010年に比べて出荷台数が30%以下にまで落ちています。一方で、ヘビーユーザーメインの一眼レフは、スマートフォンと競合しないため、需要をキープしています。
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カメラ業界としては、何とか、ヘビーユーザー以外のユーザーを取り戻さなければならない状況でした。

そこで投入されたのがミラーレス一眼です。

ターゲットはミドルユーザー。「たまにはスマホではなくちゃんと写真を撮りたい。でも、一眼レフを持つほどではない」という人たちです。

ミドルユーザーは、ヘビーユーザーほどカメラについての知識や興味が強くありません。

そのため、ミラーレス一眼の訴求ポイントは、細かいスペックではなく「ミドルユーザーにも分かり易いベネフィット」にフォーカスする必要がありました。

SONY『New α 故郷篇&思い出のオルガン篇』

ミラーレス一眼の販売が本格化した2010年ごろの、SONYのTVCMです。

キャッチコピーは「写真も動画も一眼クオリティーを、全ての人に。」でした。

CMの内容は非常にシンプルです。女優の北川景子さんがカメラを持っている映像を通して「一眼レフに比べて、小さくて持ち歩きやすいこと」を表現しています。

また「簡単に背景をぼかして、プロっぽい写真が撮れる」という機能を、画面いっぱいのキャプションと、実際に撮影された写真でアピールしています。

「スマートフォンじゃこんな写真撮れない!」ということと「一眼レフより手軽で簡単!」という2点をシンプルに投げかけ、ミドルユーザーの獲得を狙いました。

その結果が、2010年ごろからレンズ交換式カメラ(一眼レフ、ミラーレス一眼)の出荷台数増に表れています。(前出のグラフ参照)

岐路に立つ家庭用ゲーム機、求められる「シンプルさ」

ゲーム業界も似た状況にあります。隙間時間に暇つぶしとしてゲームをするライトユーザーが、どんどんスマートフォンに吸収されているのです。

スマートフォンに反撃するには、カメラ業界と同じく、ミドルユーザーを獲得する必要があります。

ゲームにおけるミドルユーザーは、「たまにはゆっくりゲームでもやりたいな」という人たちです。そういう人たちに「スマートフォンではなく、家庭用ゲーム機で遊びたい」と思わせなければなりません。

どうすればいいのでしょうか?

家庭用ゲーム機がスマートフォンよりゲーム機として優れている点を、シンプルに伝えるのです。

シンプルさには「内容の理解のしやすさ」と「目に触れやすさ」の両方が必要となります。ここで忘れてはいけないのは、「ミドルユーザーはヘビーユーザーほど、強い関心を持っていない」ということ。

例えば、新作ゲーム発表時にティザーサイトなどを立ち上げて期待感を煽るケースがありますが、普段あまりゲームをしないミドルユーザーが、ティザーサイトにアクセスする可能性は低いでしょう。

ティザーサイトで凝ったキャンペーンを実施しても、ミドルユーザーには届かないのです。

ミドルユーザーを獲得するには、「スマートフォンでは味わえない世界を、動画にして配信する」、くらいシンプルなものがちょうど良いのです。

スクエア・エニックス『FINAL FANTASY VIIフルリメイク作品トレーラー』

この動画は、話題沸騰中のFinal Fantasy VIIリメイク版のトレーラーです。

特別な仕掛けはありませんが、ゲームの美麗な映像やプレイ中の細かな動きなどが、魅力的に伝わります。

ヘビーユーザーは「どんなゲームシステムになっているのか」「シームレスなのか」など、この動画よりも、もっと細かい情報を欲しがるかもしれません。

しかし、ミドルユーザー獲得で重要なのは、シンプルに「このゲームの動画すごいな。これはスマートフォンの画面じゃ物足りないな。」と思わせることなのです。

まとめ

スマートフォンの性能が向上し、様々なデジタル家電の機能が集約されつつあります。

しかし、搭載されている多種多様な機能は、実用レベルではあるものの、必ずしもユーザーの求めるレベルではありません。

そうした「スマートフォンでもいいけど、本当はもう少し性能が欲しい」と感じているミドルユーザーの獲得こそ、デジタル家電の課題なのです。

ヘビーユーザーほど知識やこだわりのないミドルユーザーを獲得するには、シンプルで分かりやすいベネフィット
(=スマートフォンでは体験できないこと)をストレートに訴えなければなりません。

そのためには、表現の幅が広く、分かりやすい動画広告が、重要な役割を果たすのです。
(文:Scott Nomura)

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米国金融機関で進む動画マーケティングの活用
動画広告の成功とは?問われるターゲティングの重要性

参考記事

総務省「平成26年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」
一般社団法人カメラ映像機器工業会『デジタルカメラの総出荷(タイプ別)』
野村総合研究所『2018年度までのIT主要市場の規模とトレンドを展望』

crevoAdmin

2016年デジタルマーケティングトレンド予測

9 years 11ヶ月 ago

この記事を読んでいるマーケターの方々は、2015年に一通りのデジタルマーケティング手法を試され、自社にとってどれが1番適しているか把握しはじめているのではないでしょうか。

今年はパーソナライズした広告やコンテンツをいかにユーザーに届けるのかがカギとなります。マーケティングオートメーションのツールを駆使してデータ分析を的確に行いながら、効率よく潜在顧客にむけたコンテツを配信していきたいところです。もちろん、ユーモアのあるコンテンツ制作にも手が抜けません。

そんな忙しいマーケターの方々のために、今回は海外のマーケターブログとWebメディアを集約し、今年、日本で必要になるであろうマーケティングの手法やトレンドをご紹介していきます。

1. コンテンツマーケティング

現在、インターネット上にはコンテンツが溢れ、多くのユーザーがブラウザ上で広告をブロックするようになりました。そのため、クリエイティブな発想で革新的な方法でユーザーのコミュニティを作ることが不可欠で、コンテンツマーケティングも欠かせないものとなると考えられます。

例えば、13年にローンチし、世界最大級のアクセスを誇るWebメディアのひとつに成長したバズフィード (BuzzFeed)があります。

一例として、バズフィードはパーソナリティー心理テストでソーシャル上で大きなバズを起こしました。人々の自我を友人に見てもらいたいという心理的欲求を満たすためのツールとなったためです。ユーザーは自分の診断結果をさらに友人にソーシャルメディア経由でシェアします。

それにより、インタラクティブ性がアップし、それぞれのユーザーにパーソナライズされたコンテンツとなっていくのです。

バズフィードのコンテンツはNY Timesでも1番人を集めた記事という結果が出ています。ユーザーの承認欲求をくすぐるようなコンテンツは、企業と彼らのターゲット層に対してもっとインタラクティブなっていくと予想されます。

バズフィードに関する主な統計 (2015年10月の時点):
・月間平均ページビュー: 50億
・月間ビデオコンテンツ閲覧数: 10億
・月間YouTube上のビデオコンテンツ閲覧数: 20億
・18-34歳の若者ユーザーの割合: 50%
・モバイルからのアクセス率: 60%
・PCと比べたモバイルからのシェア率: 2倍
・ソーシャルメディアからのトラフィック獲得率: 75%
・アメリカ以外からのアクセス率: 40%
・ドレス論争に関する記事の総計ページビュー: 3800万

今後、コンテンツマーケティングはより進化し、より重要になっていきます。それはGoogleの検索結果アルゴリズムが、コンテンツのクオリティを重視するようになったことからもうかがえます。

そして顧客の注目を集めるために、もっと新しく、ワクワクするコンテンツを生み出すことが必要です。下記のグラフを見ても分かる通り、アメリカのマーケターの約30%がすでに、コンテンツマーケティングが最も重要だと考えています。
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BtoCのデジタルマーケティングにおいても、2015年はコンテンツマーケティングが人気を博しました。そして現在は、92%ものマーケターが最新のコンテンツマーケティングのフレームワークを活用しています。BtoBビジネスのマーケターもまた、コンテンツマーケティングをはじめることに積極的な姿勢を見せています。
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2. エフェメラル (つかの間) マーケティング

送信したメッセージが一定期間を過ぎると消去されるチャットアプリ、スナップチャット (Snapchat)。このプラットフォームはリアルタイムにユーザーと直接繋がることができるソーシャルディアですが、マーケターたちは、それがただの遊びのためのツールではないことを理解しはじめました。

アメリカを中心に、海外ではこのアプリがすでにマーケティングプラットフォームになりつつあります。

ESPNやViceの様なコメディコンテンツを扱うWebサイトは、若い世代の顧客と繋がるために、1度見たら消えるという期限付き特性を活かしてコンテンツを作成。ユーザーの興味をひきました。

さらに、スナップチャットはコカ・コーラやマクドナルド、サムソンの様なブランドと10秒間のストーリー性のあるビデオ広告の取り組みをはじめています。

このスナップチャットの様な一時的にしか表示されないコンテンツを通じたマーケティングは、エフェメラルマーケティング (Ephemeral Earketing)と呼ばれています。エフェメラルとは、「一瞬の」とか「はかない」という意味で、長期に表示されないコンテンツを扱ったマーケティングに使われるフレーズです。
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確かに、スナップチャットにおけるマーケティングは、手軽になりつつあります。しかし、プラットフォームの仕様上、ユーザーは、新しいユーザーを見つけるのが簡単ではありません。

検索機能を使って見つけるには、そのユーザーの正確なハンドルネームを知っている必要があり、TwitterやInstagramのようにハッシュタグで検索することもできません。

そのため、スナップチャットではユーザーに見つけてもらうことが課題となります。幸いにも、Snapcodes(スナップコード)という機能がロールアウトされ、クロスチャンネルのプロモーションが格段に容易になりました。

自分のスナップチャットアカウントのスナップコードをFacebookやTwitterに投稿することで、スナップチャットアカウントを宣伝し、閲覧者やフレンドを増やせるようになったのです。(Habspot参照)

3. パーソナライゼーション

Adobeの研究によると、パーソナライゼーションは将来のマーケティングにおいて最も重要な性能になります。

今までは、キーワードターゲティングで、検索エンジン上に広告を出すことで課題を解決していましたが、その戦略には多少の弱点もありました。設定したキーワードが適切でない場合にPPCが高くなり、ユーザーの獲得効率が落ちていたのです。特に新しいビジネスでは十分な結果を出すことが困難でした。

しかし、現在はすでに持っている顧客のデータを活かし、GoogleやTwitter、Facebookなどのプラットフォーム上でパーソナライズされたコンテンツをユーザーごとに配信することができます。

モバイル市場の多くを占めている企業は「バーチャルアシスタント」に巨額を投じています。また、GoogleはGoogle Now、AppleはSiri、FacebookはMを開発中です。これらの企業は、ユーザーにパーソナライズされた情報を提供することと、ユーザーがリクエストする前に広告を配信することを目指しています。

マーケティングの時間を節約するためにマーケティングオートメーションのシステムを実装させることも忘れてはなりません。マーケティングの目標設定や、結果の可視化のために、自動化し、膨大なデータを管理することが必要となるのです。

4. モバイルマーケティング

モバイルに対するマーケティングは以前から認識されていますが、今年はその重要性が一層高まりそうです。

特にミレニアル世代に代表されるような若者は、海外でもPCよりモバイルの利用率が高くなっています。例えば動画広告。動画広告そのものは新しくありませんが、今後、市場拡大が予想されています。

『Twitter革命』の著者であるWarren Whitlock氏によれば、モバイルビデオは2016年にもっと強力になるとのこと。FacebookやBingは動画広告を開始し、Google nowは動画コンテンツを検索エンジンのアルゴリズムに組み込む予定です。

Eコマースを見ても、すでに多くのユーザーがデスクトップではなくモバイルアプリから商品を購入。モバイル表示の最適化は、必須となっています。

また、モバイルでのビデオ再生数も増加しているため、ストリーミング再生やビデオチャット、商品説明の動画作成も引き続き行っていく必要もあります。

2016年の動画には、ただ商品を宣伝するのではなく、ユーザーと親密な関係を構築するためのコンテンツであることが求められます。

Eメールマーケティングもモバイルへと移行しはじめてます。ここ数年の間、人々のWebサイトの閲覧デバイスがデスクトップからモバイルにシフトしました。その流れは、ソーシャルメディアから始まり、Eメールにも及びます。

15年の頭から、大半のEメールはモバイルで開かれるようになりました。これは、Eメールのコンテンツをモバイルに最適化していくよいタイミングです。クライアントのワークスタイルによって、どちらで開かれるのかの傾向をデータから押さえましょう。

5. VR(バーチャルリアリティ)コンテンツを利用したマーケティング施策の登場

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Facebookが買収したVRヘッドマウントディスプレイや、Oculusに代表されるようなVR (Virtural Reality) 関連のデバイス・コンテンツが次々とリリースされています。それに合わせ、VRに関する様々なビジネスモデルが、数年以内に生み出されることが予想されます。

VRが提供するコンテンツは、ゲームにとどまりません。オーストラリアのカンタス航空では、ファーストクラスの乗客にサムスン製のVRデバイスを配布し、フライト中に利用してもらっています。また、医療のフィールドでもVRの活用が進んできました。

マーケター視点から見てみると、VRが普及することで新しいマーケティングチャンネルが広がることになるため、大きな可能性を感じます。VRを提供する企業も、いち早く新機能をローンチしています。

オンライン広告フォームや、ソーシャルメディアの人気コンテンツ、ビデオチャンネル、ダイレクトメッセージなどの機能も実装が進められており、新しいメディアチャンネルとして注目されています。

6. IoTデータを活かしたパーソナライゼーション広告

2016年のウェアラブルテクノロジー普及率は28%になると予測されています。モノとインターネットを繋ぐIoTは、マーケターにとって近い将来、ユーザーとの関係を構築する重要なツールとなっていきます。

IoTデバイスが収集するデータ量は膨大で、内容・正確性ともに、Webと比較になりません。広告プラットフォームとしても、ターゲティングがしやすいことも特長です。

近いうちに、IoT広告ユーザーをターゲティングするようになり、デバイスを通してユーザー行動データから読み取れるようになります。これにより、高い精度でパーソナライゼーションされた広告が配信できるようになるでしょう。

ラスベガスで開催されるCES 2016で、いくつかのIoTプロダクトが展示されると発表されました。

LGのWebOS 3.0オペレーティングシステムや、サムソンのUHDTVs、IBMの BMW AirTouchなどから、大手企業が積極的に開発に取り組んでいることがうかがえます。残念ながら日本では、この分野で一歩出遅れている感が否めません。

7. ダークトラフィックをどうするか

数年前と比べると、ユーザートラフィックの出所が分かりにくなっています。Google Analyticsを見てみても、どこからユーザーが来たかが不明なケースが多いのです。

これは、「ダークトラフィック」と呼ばれ、検索やTwitter、 Facebookなどのチャンネル以外のプラットフォームからユーザーが来ている場合に出現します。

Facebookメッセンジャーや、Slackチャットツールなどを経由して、ユーザーがサイトに訪れた場合に、その出所が不明になってしまうのです。

特殊リンクの利用や、個別ランディングページの作成など、よりトラックしやすい方法を考える必要があるのです。マーケティングオートメーションツールを利用するのもいいですが、コスト面では、まだまだ現実的とは言えません。(文: Mariko Higuchi / Marketing Specialist, btrax, Inc.

関連記事

2016年 デザインに関する5つのトレンド
2016年 テクノロジートレンド10選
【前半】シリコンバレーのVC10人が選ぶ 2016年に飛躍するスタートアップ

参考記事

http://mashable.com/2015/12/23/mobile-marketing-2016/#BT9X7DemSiqP
http://www.inc.com/joel-comm/experts-predict-9-ways-internet-marketing-will-change-in-2016.html
http://www.entrepreneur.com/article/254006
http://blog.hubspot.com/marketing/7-game-changing-marketing-trends-to-tackle-in-2016
http://www.smartinsights.com/digital-marketing-strategy/digital-strategy-development/15-unstoppable-trends-which-will-shape-marketing-in-2016/
https://www.searchenginejournal.com/10-digital-marketing-trends-watch-2016/146654/
http://www.technobuffalo.com/videos/5-ces-2016-predictions-connected-everything-4k-everywhere/

crevoAdmin

モノよりコト。コトよりジブンゴト。動画広告こそ立ち返るべきマーケティングの基本

9 years 11ヶ月 ago

モノよりコト。コトよりジブンゴト。動画広告こそ立ち返るべきマーケティングの基本。

インターネットやソーシャルメディアが広く普及し、動画というものがぐっと身近なものになりました。企業だけでなく、一般消費者が撮影/編集した動画が数百万再生を稼ぐ時代です。

数年前には想像もできなかったほど、がらっと変わってしまった動画を取り巻く環境。そんな中、今こそ動画広告が立ち返らなければならないマーケティングの基本に注目してみたいと思います。

面白いだけで、売りに繋がらないコンテンツ

冒頭でも述べた通り、今の時代、パソコンでもスマートフォンでもインターネットにアクセスすれば面白いコンテンツが溢れています。

そんな中で企業が面白いコンテンツを作ろうとすると、エッジの効いたことに挑戦する必要があります。

しかし、純粋に面白いコンテンツが数多く転がっている世の中、商魂が透けて見えるコンテンツは避けられてしまいます。

そのため、面白いコンテンツを作ろうとすればするほど、「売る」という行為からは離れがちであることも事実。

では、「売る」という至上命題を背負っている企業のマーケターはどうすればよいのでしょうか?

今こそマーケティングの基本である「消費者に何を伝えれば、売りにつながるのか」に立ち返る必要があります。
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モノ/コトの先にあるジブンゴト

消費者が求める「コト」を起点にマーケティングを行う。これは、マーケティングの真理です。

しかし、「コト」に関する情報も簡単に手に入るため、「コト」を伝えるだけでは、「モノ」は売れません。

では消費者に何を伝えれば、購買活動に結び付くのか?「コト」の先に何があるのかを、示す必要があるのです。「モノ」を買い、「コト」を手に入れることで、「どんな体験」が待っているのか。

そこまで提案して初めて、消費者にとって広告は「ジブンゴト」となります。

「ジブンゴト」とは、消費者が「自分に関係のあるコンテンツ」と感じてくれる状況。「自分に関係のある」と思うからこそ、広告の中身をしっかりと見て、記憶してもらうことができます。

つまり「ジブンゴト」とすることで、面白いだけのコンテンツからの脱却を図ることができるのです。だから、「モノ」より「コト」、「コト」より「ジブンゴト」なのです。

ここでコンテンツの「ジブンゴト」化に挑戦したキヤノンの例を見てみたいと思います。
『#SightShooting at KAMAKURA, Japan』

キヤノンの「#SightShooting」キャンペーン。「単に旅行するだけじゃなく、カメラを持って行って写真を撮ることを旅行の一部としよう」というキャンペーンです。

単なる「コト(写真が撮れる)」の訴求ではなく、その先にあるライフスタイルの提案となっています。

最近では、「モノ(カメラ)」、「コト(写真を撮る)」だけなら、スマートフォンで十分という人が増えています。

そこで、スマートフォンでは体験できない「ライフスタイル(ちゃんとしたカメラを持って、知らない土地を訪れ、写真を撮る)」を提案することで、コンテンツを「ジブンゴト」化しようとしているのです。

もちろん、カメラには興味あるけど旅行には興味ない、という層には刺さりづらいコンテンツです。

その一方で、キヤノンが提案するライフスタイルに共感を覚える人にとっては、世の中にあふれている面白いだけのコンテンツよりも、はるかに「ジブンゴト」として心に残ります。

そして、この「ライフスタイル」を体験したいと思った消費者は、最終的に実際のアクション(購買活動)を起こす可能性があります。

モノよりコト。基本中の基本

面白いコンテンツは消費者の注意を惹く強いパワーを持っています。それは、今も昔も広告において、非常に重要なことです。

しかし、10年前と状況が違うのは、コンテンツメーカー側というよりも、受け手の消費者を取り巻く状況です。

動画系のコンテンツは、今ほど、一般個人が容易に作ることはできませんでした。

クオリティを加味すれば、企業発の動画コンテンツが、ほとんどすべてであったといっても過言ではありません。

一方で、今の時代、スマートフォンで動画の撮影も編集もできます。作った動画を共有するYouTubeなどのプラットフォームも充実しています。

そのため、ちょっと面白いコンテンツを作っただけでは一回見られてお終いです。そこから先のアクションはありません。
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ここで、T.レビット博士が語ったマーケティングについての名言を思い出してみます。
『ドリルを買う人はドリルがほしいのではない、穴がほしいのである』

言い換えるならば、消費者が求める「コト(=穴)」を満たすために、どんな「モノ(=ドリル)」を提供するのか意識しないといけないということです。

もう一歩、広告的な観点に踏み込むと、「モノ」を売るためには「コト」を伝えなければならないという意味でもあります。

「一回見られてお終い」の面白いコンテンツから脱却し、消費者の購買行動につながる動画広告を発信するヒントがここにあります。

まとめ

インターネットが普及し、情報が氾濫しています。そこで、いかに面白いことをして注意を惹くかにフォーカスしがちな時代になっています。

しかし、マーケターの背負ったミッションは「売る」こと。注意を惹くだけで終わってはいけません。

消費者のアクションまで道筋を立てる必要があるのです。

そのため、「面白いコンテンツ」ではなく、消費者を「アクションに駆り立てるコンテンツ」を発信することを心掛けなければなりません。

それには、動画広告を「ジブンゴト」として捉えてもらうような仕掛けが必要です。

消費者にしっかりと、モノ/コトの先にある体験を伝え、ジブンゴトとしてもらって初めて、アクションにつながる可能性がでてくるのです。
(文:Scott Nomura)

関連記事

メルセデスベンツに見る「攻め」のブランド戦略
見逃し配信「TVer」、好調の理由とテレビ局のジレンマ
2015年は「日本のVOD元年」だったか

参考記事

Sightshooting with Canon: Two Travel Videos in Japan

crevoAdmin

メルセデスベンツに見る「攻め」のブランド戦略

9 years 11ヶ月 ago

ここ10年で時代が変わり、メディアが変わり、ライフスタイルが変わってきました。それに伴い、当然ブランド戦略も変えていかなければならないのは明白です。

しかし、それまで築いてきたものが大きければ大きいほど、思い切った方向転換は難しいもの。

今回は、どこよりも強固なブランドを築いてきたメルセデスベンツが仕掛ける「攻め」のブランド戦略を見ていきたいと思います。

スーツを脱ぎ捨てたベンツ

もともと日本では、高所得者層をターゲットに高級セダンを販売してきたメルセデスベンツ。高級車の代名詞とも言えます。

医者、弁護士、大企業の重役などがターゲットであったため、メルセデスベンツという企業ブランド自体、少しお堅いイメージがありました。

しかし、時代は変わり、大型セダンが売れなくなりました。逆にA、Bセグメントと呼ばれるコンパクト車が主流となってきています。

さらに、若年層の車離れが叫ばれるようになって久しい状況です。そこで、メルセデスベンツは、これまでのお堅い企業のイメージを脱却。コンパクトカーにも力を入れ、若い人たちに受け入れられるブランドへと進化する決断を下しました。

その皮切りとなったのが、2012年に公開されたプロモーション用アニメ動画『NEXT A-Class』です。舞台は近未来。主人公が、メルセデスベンツの新型A-Classに乗ってカーチェイスを繰り広げるアクションアニメです。

キャラクターデザインは大ヒットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を担当した貞本義行氏。動画の初公開は、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の上映前シネアドという徹底ぶりでした。

狙いは、話題性のあるアニメ映画と、発信力のあるアニメファンをハブに、ソーシャルメディアでの拡散につなげ、若年層へのリーチを強化すること。

これまでのお堅いイメージを脱ぎ去って、大きく舵を切ったアニメ動画は、結果として270万回を超える大ヒット動画となりました。

八方美人はモテない

なぜ、メルセデスベンツは、ここまで大きな方向展開をしたのでしょうか。ほんの10年前、動画広告といえばTVCMでした。TVというメディアは抜群のリーチを誇ります。その反面、ターゲットはあまり絞れません。

そのためTVCMは、そのリーチを最大限に活かすべく、多くの場合、幅広い層に受け入れられるようなコンテンツにすることが求められてきました。

メルセデスベンツも、方向転換をする前は、こんなTVCMを放映していました。
『メルセデスベンツC-Class』

メルセデスベンツのラグジュアリー感、C-Classの優れたスタイリング、車としての躍動感。これらを30秒にしっかりとまとめあげた、質の高いクリエイティブです。

このTVCMを見せた上で「カッコいいか、カッコ悪いか」と問えば、ほとんどの人は「カッコいい」と答えるでしょう。

ただ、このクリエイティブが、車に興味の無い人の心に残るかというと、疑問です。

TVCMではリーチを活かすために、ある程度、汎用性を持たせるのは仕方のないことです。

しかし、動画広告は今やTVだけの物ではありません。YouTubeやFacebookなどのソーシャルメディアでの動画展開も、かなり重要な施策となります。

ソーシャルメディアでは、TVCMと比べてより細かくターゲティングが可能で、ターゲットにとって「自分事」となるようなコンテンツが求められています。

誰にでもある程度受け入れられるだけの動画は、心に残るどころか、見られることもなく消えて行ってしまいます。

皆にいい顔をする「八方美人」な動画ではなく、ターゲットを絞って心に刺さる動画を展開していかなければならないのです。

意中の相手をピンポイントに攻める勇気

ターゲットを絞るということは、それ以外の人には、ネガティブな感想を持たれやすくなるということです。

例えば、メルセデスベンツ最新の動画広告は、人気音楽ユニットのPerfumeとコラボレーションしたアニメーション動画です。かなりターゲットを絞ってきています。

これまであまりアプローチできていなかった若い音楽好きや、アニメファンなど、ベンツが新しくターゲットとした層の印象には残りやすそうです。

まだ、公開されたばかりで数字には出ていませんが、ソーシャルメディアでの拡散力もあると思います。

しかし、昔ながらのベンツファンは、この動画をどう思うでしょうか?
おそらく、「ベンツらしくない」「高級感はどこへ行った」と思う人の方が多いでしょう。

しかし、メルセデスベンツは知っています。

勇気をもって、自分たちがこれと決めたターゲットをピンポイントに攻めなければ、誰にも見られることもなく埋もれていくだけであるということを。

そしておそらく、メルセデスベンツの決断は正しいでしょう。

実際問題、昔からのメルセデスベンツのファンは、ウェブ上でアニメ動画が公開されたところで、眉をしかめるかもしれません。しかし、ファンをやめるというほどではないのです。

必要以上に嫌われることを恐れる必要はありません。

重要なのはすでに好いてくれている人に嫌われないことではなく、見向きもしてくれない人に興味を持ってもらうことなのです。

まとめ

時代が変わり、メディアも、ターゲットのライフスタイルも変わってきています。そんな時代の移り変わりを受けて、ブランド戦略上ではターゲットの若返りをうたっている企業も多く見られます。

しかし、そういった企業の多くは、若い人が好む雑誌に広告を出したり、Facebookに公式アカウントを作る程度の表面的なアプローチにとどまっています。

本当の意味で若い人が興味を持ってくれるようなコンテンツを世に出すことは、勇気のいることです。これまで積み上げてきたものが大きれければ大きいほど、保守的になってしまうのもよく理解できます。

しかし、それではブランド戦略上の「タスク」を消化しただけで終わってしまいます。

ターゲットにメッセージを届け、獲得するのであれば、勇気をもってピンポイントで攻めていかなければいけないのです。

そして、その「攻め」の狼煙を上げるのは、ブランディングを担当するマーケターなのです。
(文:Scott Nomura)

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ホヴァーボードが作り上げるLEXUSブランド:ブランディングのための動画広告
動画広告の成功とは?問われるターゲティングの重要性
見逃し配信「TVer」、好調の理由とテレビ局のジレンマ

参考記事

世界が注目!メルセデス・ベンツ日本のプロモーション戦略

野村 俊介

見逃し配信「TVer」、好調の理由とテレビ局のジレンマ

9 years 11ヶ月 ago

10月末、在京民放キー5局がスタートした、テレビ番組見逃しポータル「TVer」が好調です。当初は「年度内にアプリが100万ダウンロードに達すれば」という予想でしたが、スタートから3週間後の11月19日、累計100万ダウンロードを突破しました。これは関係者にとっても予想外のことで、想定の5倍近くのスピードでの達成、ということになります。

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TVerは、テレビ番組を放送から一週間の間、動画広告を見る代わり、無料で視聴できるものです。放送されたときに見逃した番組を視聴できることから「見逃し配信」「キャッチアップTV」などと呼ばれます。

今回TVerが成功した裏には、同時期にTBS系列で放送されたドラマ「下町ロケット」が大ヒットし、それをもう一度見たい、見逃したので来週までに見たい、と思った人が多かった、という事情もあります。

TVerはPCとスマートフォン・タブレットに対応しており、主にはスマホアプリで視聴されています。アプリからは5社の番組が、日本中どこからでも視聴できます。

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実はTVer、正式には「見逃しサービス」ではなく「ポータルサービス」です。TVerによってはじめて見逃し配信を知った、という人も多いのですが、実際には、各民放キー局は2014年から、それぞれ独自に見逃し配信をやっていました。

それらへの道筋をつけ、特に、テレビを自室に持たない若い層に番組への接点を作るのが、TVerの狙いです。なので、各社が公開する動画を「紹介する」立場ということで、「ポータル」と呼ばれています。

もう一つ、TVerがポータル、という呼称になっている理由があります。TVerは動画広告で運営されていますが、視聴に伴う広告費は、TVerではなく「各テレビ局」が受け取るようになっています。

広告動画を入稿するためのフォーマットや仕組みの統一も、TVerの仕事でした。ここでも各局への橋渡し役に徹しています。

民放は、CMからの広告料を原資にビジネスをしています。そういう意味では、動画広告を原資に見逃し配信を行うことは、放送と同じビジネスモデルの導入ですから、自然な形ともいえます。

これまで、日本の民放は番組のネット配信に冷淡な態度をとり続けてきました。テレビとの競合が大きい、と考えていたためです。

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しかし、放送の視聴率が落ち込み、広告収入も落ち込み始めると、ネットを敵にしているわけにもいかなくなりました。

一方で、見逃し配信に積極的になってきた裏には、「録画視聴よりはいい」という気づきもあったのです。録画視聴は、まだネット視聴よりずっと一般的です。

しかし、録画視聴ではCMはスキップされがちですし、狙った人に広告を見せるのも難しくなっています。見逃し配信では動画広告をスキップできない仕組みがあり、視聴している人の属性に合わせた広告配信もできますし、なにより、視聴者数をきちんとカウントできます。

消費者目線でいえば録画には録画の良さがあるのですが、放送局としてはまた別の見方があるわけです。

しかし、見逃し配信には、まだまだジレンマもあります。現状、民放による見逃し配信はスマホ・PCだけで展開されており、テレビのネット動画視聴機能には対応していません。

理由は、「テレビCMとネット動画広告の広告費をどう評価すべきか」が定まっていないためです。視聴者から見れば「同じテレビの上の動画」でも、配信経路が違えば費用も変わってきます。

現状、圧倒的に高いテレビの広告費を「落とさない」ことが、テレビ局の至上命題であり、安価ですが人にマッチさせやすく、再生回数も多くなる動画広告とのバランスが見えません。

日本においては、当面この問題を軸に、テレビ局と広告会社、ネット企業の間での綱引きが続くでしょう。
(文=西田宗千佳)

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【連載 テレビとネットの狭間で走れ!第一回】世帯視聴率の功と罪
【連載 テレビとネットの狭間を走れ!第二回】ネットでのテレビ視聴は計測できるか?

西田 宗千佳; ジャーナリスト

注目の動画配信サービス「LINE LIVE」を徹底解説

9 years 11ヶ月 ago

これまで、タレントやアーティストなどの著名人や企業の公式アカウントでライブ映像を配信する機能『LINE LIVE CAST』を展開してきたLINE。

先日、『LINE LIVE』を発表し、映像配信サービスに本格参入しました。iOS、Android向けの視聴・配信アプリ『LINE LIVE』の提供と、WEB版への動画の配信を行っています。

さらに、サービス開始後の5日間で『LINE LIVE』の視聴数は、1,000万人を突破したことも話題に。スマートフォンの生配信サービスは、ほかにも、ユーザー数1,000万人を突破したモイの『ツイキャス』や、『ニコニコ生放送』などがあります。

今回は、これほどの人気と注目を集める『LINE LIVE』を徹底解説したいと思います。

1.今起きているリアルなコトを共有する

映像のLIVE配信サービスには、『USTEREAM』、『ニコニコ生放送』、『ツイキャス』、『takusuta』、『SHOWROOM』、『アメスタ』などがあります。

一方、2015年の9月には、世界最大の映像配信サービス『Netflix』が日本でもサービスを開始。VODによる動画視聴に注目が集まりました。

また、個人間・グループ間でのLIVE動画によるコミュニケーションサービスには、Facebookが、12月に友人や家族がリアルタイムで見ているものを共有するサービス『LIVE VIDEO』を発表するなど、動画の視聴には、VODによる視聴とLIVEによる視聴の2つがあります。

数年前とは違い、今や、自撮りの動画や写真は、日々膨大にアップされており、一般ユーザーによる抵抗が薄くなってきています。

2.『LINE LIVE』の徹底解説

改めてLINEの媒体としての価値を、2015年4-9月の媒体資料から見てみましょう。

・国内利用者数 5800万人以上(日本の人口の45%以上をカバー)
・月間アクティブユーザー数 1,200万人突破
・DAUアクティブ率 69.1%(DAU=1日に1回以上利用したユーザー)
・男女ともに全年代で9割以上が毎月LINEを利用。若年層ほど利用頻度は高く、性別では女性の方がアクティブ。

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•幅広い年齢層に利用されている。
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•若年層のスマホの接続時間が、他メディアの接続時間を上回っている。

(引用:LINE2015年4-9月媒体資料)(http://webmake.info/wp-content/uploads/2015/06/mediaguide_LINE_2015_4_9.pdf)

(引用:LINE2015年4-9月媒体資料)

媒体資料からも分かるように、日本の人口の半分近くが利用していて、幅広い年齢層にも利用されている媒体でいうと、テレビに匹敵するほどのメディアとしての価値があります。そして、何よりも、若年層の利用頻度の高さがLINEの媒体としての魅力です。

番組コンテンツ

番組のコンテンツの内容に関しては、LINE公式アカウントのユーザーである著名人や、アーティストなど100人に限定して配信をしていくようです。

また、サービス開始当初は、試験期間として、スマートフォンの利用率が高い午前11時前後から14時と、午後18時から24時前後の時間帯を中心に5〜8本程度の番組を配信。

特に、アイドルグループのAKB48やラグビーの五郎丸選手などの著名人の番組や、LINE LIVEのオリジナル番組などを先行配信するようです。

LINEオリジナル番組

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LINEオリジナル番組としては、芸能人同士がランチを食べながら1対1で語り合うトーク番組「さしめし」や、ソーシャルスター発掘のオーディション番組「NEXT STAR」などを提供しています。

「さしめし」は昼の時間帯の放送にも関わらず100万人を超える人が視聴しており、その人気度からも、こちらの番組は今後も注目です。また、配信された番組は、アーカイブで後から視聴が可能です。

コメント機能や、他媒体との連携

番組を視聴しながら、普段の『LINE』の友達とのトーク感覚で、芸能人とコメントが出来ることも、LIVE視聴の楽しみや参加率の高さに繋がっています。

また、テレビ局やラジオ局とのコラボレーションによる公式番組としては、TBSテレビの「第57回 輝く!日本レコード大賞」の事前番組や、ニッポン放送やエフエム東京と連携した番組を配信する予定とのことです。

プッシュ通知機能

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スマホやPC向けの動画配信なので、テレビ番組を視聴する時のように番組表を探して見たい番組を探す手間は不要。特に、LINEのプッシュ通知は、ユーザーに対する効果が高いと言われています。

3.『LINE LIVE』今後の展開は?

投げ銭
広告を軸にしつつ、今後はユーザーからの課金を取り込む方針のようです。また、広告は、番組の前後にテレビCMのように流れるタイプなどを予定。同じ番組や相互に関連する番組をLINE LIVEとテレビの双方で流し、一つの広告枠として運用することも視野に入れているようです。

収益モデル
広告や物販、そして、視聴者が配信者を支援する「投げ銭」システムの一部が手数料としてLINEの収益になるというビジネスモデルです。

一般ユーザーによる配信
2016年には一般ユーザーによる配信が解禁する予定です。このことによって、YouTubeというプラットフォームによって収益を稼ぐ『YouTuber』のような人達が、『LINE LIVE』を使った生配信からも出てくると思われます。

4.『LINE LIVE』や動画サービスは、今後どうなるのか?

LINE取締役の舛田氏が、「ユーザーとコンテンツを結びつける力が強いLINEのプッシュ通知で訴求できるというのがライバルとの大きな違い」とコメントしているように、日常の隙間時間を楽しむ仕掛けを作るLINEによる『LINE LIVE』の優位はしばらく続くのではないかと思われます。

また、これからは、ユーザーとタレントの囲い込みが媒体間で激しくなりそうな予感がします。YouTubeによって生まれた『YouTuber』のように、『LINE LIVE』で影響力を持つ一般ユーザの囲い込みが進むと思われます。

そして、ユーザーの可処分時間と可処分所得の奪い合いという面では、LINEのメインユーザーである10代〜20代の利用が多いスマホゲームとの可処分時間と、課金による可処分所得の奪い合いが一層激しくなりそうです。

最後に、動画サービスにおけるVODサービスと、LIVE動画サービスのどちらがユーザーに受け入れられていくのかには注目をしていきたいです。
(文=朝比奈直樹)

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参考記事

LINE2015年4-9月媒体資料

crevoAdmin

【連載 テレビとネットの狭間を走れ!第二回】ネットでのテレビ視聴は計測できるか?

9 years 11ヶ月 ago

前回からスタートしたこの連載。第一回では、テレビの指標である視聴率の功罪について書いた。その続きとして、視聴率の課題はどう乗り越えられるか、いま行われている試みを紹介しよう。

先日、ある若者と話していた時、「テレビは持ってません」と彼が言うので、「じゃあテレビは観てないんだね」と言ったら「いえ、でもテレビは好きです。テレビ観てますから」と言われて大いに困惑した。

「だってテレビ持ってないんでしょ?」と聞くと、「ええ、テレビ持ってませんけど、テレビ観てます。『アメトーーク!』とか大好きです」と差し出したのはスマートフォンだった。

もちろんYouTubeなどで『アメトーーク!』を欠かさず観ているという話なのだが、彼が「テレビ観てます」と言いながらスマートフォンを見せたのが面白かった。彼にとって、スマートフォンはテレビでもあるのだろう。

テレビという言葉は、もともといい加減に使われてきて、テレビ局のこともテレビ番組のこともテレビ受像機のことも、我々は“テレビ”と呼んできた。でもいま、テレビ番組がネットで観られる状況の中、何がテレビかわからなくなっている。
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米国や英国、韓国など、海外では、テレビ局自身が番組をネットで配信している。これに対し日本のテレビ局はネット配信に消極的だった。そこにはいろんなハードルがあったからだ。

まず、社内の保守的な考え方。ほんの4、5年前までテレビ局では上層部ほど「ネットはテレビの敵だ!」と本気で言っていた。そこでの自分たちのビジネスの可能性を判断する前に、生理的感情を優先し、ネットへの門戸を閉ざしていた。

さらに、著作権と許諾の問題も立ちはだかっていた。日本の著作権の解釈は非常に保守的で、何をやるにしても主な関係者全員の許諾が必要になる。タレント事務所で、ネット配信に理解を示さないところも多かった。

そして最大の問題は音楽だった。放送では包括契約で個々の番組制作者は細かいことは気にせず使用できるため、海外の著名曲でも平気で使っている。ところがこれをネットで流す際には包括契約の範囲外なので、あらためてJASRACに申請したり、原盤権を持つ海外のレコード会社に使用料を払ったりしなくてはならない。

こうしたことが足かせになって、日本のテレビ局は番組をネットに出したくても出せない時代が続いた。

ただ、放っておくとYouTubeやDailyMotionに海賊映像がどんどんていってしまう。ちょっとした番組なら、放送後、誰かがYouTubeに動画をアップするのは当たり前になり、先の若者のようなテレビ視聴が常態化していた。

去年、日本テレビが見逃し配信サービスを立ち上げ、他のキー局も続いて、ドラマを中心に人気番組が、放送後一週間という制限があるが、ネット上で観られるようになった。

さらに10月26日にはTVerという、テレビ局の垣根を越えた共同での配信サービスもスタートし、いつのまにかテレビ番組が気軽にネットで視聴できるようになってきた。

Startup Stock Photos

実際、使ってみるととても便利なサービスだ。サービス立ち上げ後、三週間で100万ダウンロードを達成した。

こうなると、テレビ局の姿勢も一気に変わってくる。ネット配信にネガティブなことを言っていた人でさえ、身を乗り出しはじめた。ネット配信に躊躇していたタレント事務所もかなり態度が変わってきていると聞く。こうなると、一気に加速していきそうだ。

すると必要になるのは、視聴計測だ。放送における視聴率のような、広告取引の指標になりうる、ちゃんとした計測が求められる。

漠然と“再生数”だけを提示するのでは、YouTubeと変わらない。テレビの視聴率がそうであるように、どんな層がどこまでどれくらい見ているかをきちんと測ることで、まっとうな広告取引に活用できる情報にしていく必要がある。

日本のネット広告の価格水準は、どうやら低いらしい。動画広告も料金体系をひと回り上げていけないと、ジリ貧になりかねない。テレビ番組のネット配信は、そこに新たな風を吹かせる可能性を持っている。プレミアムコンテンツには、高額の広告費がつくと言われる。

テレビ番組につく広告は、これまでのネット上の動画広告より高く取引されるかもしれない。そのことがひいては、動画広告の水準全体を上げていく可能性は、かなり高いと思われる。

テレビ番組のネット配信、そしてその視聴計測は、大げさに言うと今後のネット上の広告取引全体をいい方向に導くかもしれないのだ。VIDEO SQUARE読者の皆さんも大いに注目すべき流れだと思う。

そこへタイミングよく発表されたのが、ビデオリサーチ社の「これからの視聴計測」だ。つい先週、12月8日、9日に彼らが開催したVR Forum2015で、まさにネットへの動画配信に対応した視聴計測の新方針が披露されたのだ。会場で大々的に投映されたのは、こんなチャートだった。
スクリーンショット 2015-12-18 12.05.44
正直これだけ見せられてもわかりにくいだろう。解説すると、まず視聴率の関東での調査母数をこれまでの600世帯から900世帯に増やす。それから、タイムシフト視聴も計測する。この2点の変更は来年10月の時点で行うそうだ。

さらに「ネットでの視聴計測については10月までに測定対象に加えてデータのあり方を検討する」としている。

持って回った言い方でほんとうにわかりにくいが、タイムシフトは10月から正式メニューに加えるが、ネットの計測はやり方を整えていく、ということ。

それくらいネット視聴の計測は困難でハードルが高い、ということだろう。

ネットでの調査が、どうしてそんなに難しいの?と言いたくなる人もいるだろうが、ここでは広告取引の指標が求められている。ただの調査とはちがうのだ。

そこで重要なのは“関係者が納得する”ことだ。ただ計測体制を整えるだけでなく、「こういうやり方で今後行きたいのですが、よろしいでしょうか?」と各テレビ局と広告代理店、そしてなんと言っても広告主企業が納得していないと、今後のビジネスの指標にはできないのだ。

ネットでの調査も合意するのは大変だろうが、その前にそもそも、タイムシフト視聴を計測してもそれが取引に反映できるかどうかも、これからの議論だろう。

言うまでもなく、いまやテレビ番組は録画して視聴することが非常に多い。テレビが好きな人ほど録画機を駆使し、とくにドラマファンは毎クール第一話を録画して、気になるものを再生して面白いと思ったものを継続して見ていく。もはや録画視聴はテレビの楽しみ方に組み込まれている。

テレビ局にとって厄介なのは、録画を再生する際にCMがスキップされてしまうことだ。タイムシフト視聴を計測したら、この番組はこんなにたくさん観られていることがわかりました!とスポンサーに言っても「そう、よかったね。でもCMはスキップされているんだろう?じゃあ広告費は上乗せしないからね」と言われると、ぐうの音も出ない。

ビデオリサーチ社はもちろん、そういうこともわかった上で、何か工夫したデータの出し方をするのだろうが、タイムシフト視聴のマネタイズは簡単な話ではないだろう。

米国では、実はすでにタイムシフト視聴も含めたデータが指標になっている。「C3」と呼ばれるのだが、放送後3日間の視聴をタイムシフトも合わせて計測した数値が使われているのだ。

C3のCはコマーシャルのC。つまり、CMが視聴された時間を、リアルタイムもタイムシフトも合わせて計測している。これならスポンサーも文句が出ない。

聞きかじった話だが、これには喧々諤々の議論があったそうだ。スポンサー側がある時「CMの時間になると視聴率はグッと下がるのだから、そこだけにお金を払いたい」と言い出し、テレビ局側は「録画した番組もある程度CMは見られているのだから、そこにもお金を払ってほしい」と応じた。ではどうするか。

ああでもない、こうでもないと議論していく中で出てきたのが「CMを見た時間だけを3日間カウントする」という案だった。これで決着できたのは、この時点で計測してみたら、いままでの指標の取引と金額がぴったり合ったからだったという。これはほんの偶然だが、“同じ金額で移行する”ことでお互いに納得できたのだ。

28/02/2013 Amsterdam Nederland: Beelden voor brochure en website van DSF Duisenberg school of finance.

同じ偶然が、日本でも起こるかはわからない。だがこういう、本音をぶつけ合う議論をするプロセスが不可欠なのだ。日本の広告業界はこれから、バトルを展開して新たなパラダイムを築けるか、それを避けてダダ下がりするだけかの瀬戸際にいる。その成り行きは、結果的に動画広告の将来にも影響するだろう。みんなで注目するべきテーマだと思う。

※ 筆者が発行する「テレビとネットの横断業界誌Media Border」では、放送と通信の融合の最新の話題をお届けしています。月額660円(税別)。最初の2カ月はお試しとして課金されないので、ぜひ登録を。「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」はこちら。購読は「読者登録する」ボタンを押す。

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【連載 テレビとネットの狭間で走れ!第一回】世帯視聴率の功と罪

境 治; コピーライター/メディアコンサルタント

YouTube、Facebook、Instagramの各SNSで効果を出す動画広告のクリエイティブとは

9 years 11ヶ月 ago

国内でも変化し始めているソーシャル動画広告

国内における動画広告の掲載先として、YouTube、Twitter、Facebook、Instagramといったソーシャルメディア(SNS)が増えてきていますが、効果を出せる手法はそれぞれ異なります。

ユーザーがソーシャルメディアごとに求めているコンテンツにあわせて、広告もクリエイティブを最適化することが重要です。

YouTube「最初の3秒間でユーザーを捕まえる」

YouTubeの動画広告は、視聴開始から5秒後にスキップボタンが押せます。このスキップボタンを押させないためには、「最初の3秒間」でユーザーの気持ちをくすぐるフックを作ることが重要です。なぜなら4 ~ 5秒目には、視聴者の意識はすでにスキップボタンに移っているからです。

それでは、どうやってユーザーの気持ちを捕まえるのか?大きく分けて3つの王道パターンがあります。

1つ目は、「スキップできること」を逆に利用する呼びかけです。十六茶のYouTube限定CM「利休」編では、女優の新垣結衣さんに「スキップしないで最後までちゃんと見てね」と視聴者に直接呼びかけてもらうことで、「見ようかな?」という気持ちにさせようとしています。

2つ目は、動画にエンターテインメント性を持たせることです。シャープの「AQUOS 4K」の動画広告では、「miniきゃりーを探せ!」と題して、動画内に隠れているきゃりーぱみゅぱみゅさんを探させようとします。それにより視聴者が本来見ようと思っていた動画への興味を奪おうとしています。

そして最後の3つ目は、視聴者に違和感を与えることです。事例としては海外の自動車保険企業GEICO(ガイコ)の、画面内の人の時間が止まっているように見える中で犬だけが自由に動いている動画「Unskippable」が有名です。

国内では三菱東京UFJ銀行のバンクイックが、最初に高速で動画を見せて、後から理解できるよう普通の速度で再生するといったものもありました。これは違和感を持ってしまうと、それを解消してスッキリするために最後まで見てしまう心理を利用しています。

いずれのパターンも、「まずは視聴者に見てもらう」ことを一番に考えてつくられています。

Facebook広告は「0秒目」からが勝負

Facebookで気をつけるべきなのは、YouTubeと違ってユーザーが動画を視聴しに来ているわけではない点です。Facebookでは、友達の写真や「いいね!」した記事が表示されるフィード内に広告が表示されます。

そういった状況で動画広告を見て貰うためには、0秒目から視覚的に勝負をかけないといけません。さらに、動画を視聴する心構えができていないユーザーが多いため、普通の動画よりも、静止画と動画の中間のような「画像をリッチ化させたクリエイティブ」が、より効果的です。

とは言え、ただそういったクリエイティブの広告をつくってもユーザーには見てもらえません。効果を出すには、Facebook 投稿の基本となる「共感(sympathy)」、「驚き(surprise)」、「胸キュン(sweetness)」の「3S」を押さえたコンテンツづくりが重要です。この3Sとはつまり、広告をFacebookユーザーに好まれるコンテンツにすることにほかなりません。

例えば米バーガーキングはハロウィーンワッパーのキャンペーンとして、ハンバーガーが一瞬のうちに真っ黒なバンズに変わる動画広告を展開しました。「黒いハンバーガーが発売される」という驚きに、多くのFacebookユーザーが「いいね!」をしています。

Something wicked is coming. The wicked good A.1. #HalloweenWhopper #SuperEclipse

Posted by Burger King on 2015年9月27日

Instagramはブランディングでの活用が全て

Instagramの動画広告は、YouTubeやFacebookと大きく異なります。Instagramでは、ユーザーが大切にしている世界観を壊さないよう商品をクリエイティブに溶けこませ、ブランディング目的で使うことが世界的に当たり前なのです。間違ってもダイレクトマーケティングをしようとは思わないでください。Instagramでは、アートギャラリーに飾るようなコンテンツづくりを意識しましょう。

分かりやすい例がグラフィックアートです。平面に対して描くアートのためスマホの液晶画面でも見やすく、エルメス(@hermes)シャネル(@chanelofficial)など一流ブランドの多くがグラフィックアートを軸にして商品やサービスの告知を行っています。

タイムラプスとシネマグラフの2大巨頭

また、Instagramでいま人気が出てきているクリエイティブとして、「タイムラプス」と「シネマグラフ」も押さえておくべきです。タイムラプスとは、一定時間ごとに連続撮影した写真をつなげて動画にした表現技法です。長時間の変化を短時間で観察でき、微速度撮影動画とも呼ばれています。

代表的な例では、アイスクリームブランドのBEN&JERRY’Sが気候変動問題に取り組む国際環境NGOを応援するために、地球に見立てたアイスクリームが溶けていく様子をタイムラプスで表現したものがあります。

  もう片方のシネマグラフとは、写真の一部だけが動く表現技法です。コカ・コーラ社による永遠にコーラが注がれ続ける作品などが有名です。シネマグラフが流行している理由は、スマホではコンテンツがほぼ全画面に表示されるため、画面全体が動くことをユーザーが煩わしいと感じているのかもしれません。

Soaking up the last of the summer sun. Happy Labor Day! #WeDontSweatWeGlisten Coca-Colaさん(@cocacola)が投稿した動画 – 2015 9月 7 3:06午後 PDT

さらに、Instagramでは広告のカラーも重要です。彩度の高いビビットカラーや逆に彩度を抑えたヴィンテージスタイルなど、いわゆる「Instagram っぽい色合い」にすることで、ユーザーの親和性を高められます。

SNSごとの最適化クリエイティブが必須

2015年下半期の企業広告から見るに、動画広告で効果を出すには各ソーシャルメディアでの鉄則に従うことが必須です。動画の長さ(尺)や視聴デバイスなど、ポイントを押さえてコンテンツを作らなければ広告として成り立たない時代がきています。

そして一番重要なのは、広告となるコンテンツを作り続けることです。アカウントを作って最初のコンテンツを出したあと、2~3ヶ月運用していない―。これは一番ダメなパターンです。コンテンツを更新しない企業に、ユーザーはついてきてくれません。

とくにInstagramでは、コンテンツを数多く作って出していきましょう。人気のある有名ブランドは、毎日のようにコンテンツを投稿しています。また、人気の作品を見れば分かるように、コンテンツは海外の人に対しても表示されます。つまり、世界を視野に入れて海外で好かれるものを作ることも重要なのです。

ソーシャルメディアのマーケティング担当者を命じられたものの、思うように成果が出ていないとお困りの方は、これまでに挙げた事例を参考にコンテンツづくりに挑戦してみてください。(文=篠原 修司)

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スキップされがちなYouTube動画広告、5秒で効果を上げる2つの方法

FacebookもYouTubeも注目!「360度VR動画」の可能性とは?

crevoAdmin

動画活用で、自社のブランド価値を高める~岡三オンライン証券のオウンドメディア活用インタビュー(後編)

9 years 11ヶ月 ago

前編(動画を通じてユーザーとの双方向的な関係を築く取り組みについて)はこちら

グループ広報では伝えきれない、独自の情報発信にニュースリリースを活用

――始めに、岡三証券グループ全体の広報・マーケティング体制についてお聞かせください。

石黒:グループ全体の広報体制については、親会社である岡三証券のグループ広報部が取りまとめています。当社も含めた各事業会社はその部署と連携しつつ、独自の情報発信も行っているという形ですね。

岡三証券グループとしての発信はIR的な内容が中心ですが、当社では新商品やキャンペーンの告知といった情報発信を独自で行い、外部への拡散手段として「News2uリリース」を活用しています。

――岡三オンライン証券の広報体制についてはいかがですか?

石黒:お客様に提供する投資情報は、武部が部長を務める投資情報部が担当し、動画や各種レポート、Twitterなどを通じて発信しています。一方で、コーポレートのパブリシティは経営企画部が主管する広報セクションの担当。

そのなかで、新商品やキャンペーンなどのPRは営業推進部が企画し、作成したプレスリリースを経営企画部が取りまとめ、兜倶楽部への投函などを行っています。

――投資情報部や経営企画部、営業推進部それぞれでKPIや目標とするゴールはありながらも、お互いに連携して進めているという。

石黒:そうですね。広報におけるKPIはなかなか見えづらく、いかに成果を上げていくかについては難しい部分もあります。以前はマスメディアへの掲載による認知度向上を主眼に据えていました。今は、情報をいかに伝播させて自社サイトへ呼び込み、最終的にお客様になっていただくかを重視しています。

また、当社の取締役社長である大杉が広報出身ということもあり、広報の重要性は常々指示されています。そのため、スムーズな部署間連携のもと、ニュースリリースを通じた情報拡散にも注力しています。

岡三オンライン証券株式会社 投資情報部 次長 石黒氏

岡三オンライン証券株式会社 投資情報部 次長 石黒氏

フックとして「ここでしか見られない情報」を

――御社では動画が重要な情報発信ツールとなっていますが、視聴者層は既存・新規でどのような比率になっているのですか?

石黒:平常時だと、当社のお客様である既存が約7割、新規が3割ほどのイメージですね。ただし、金融市場の急変時にはアクセス数が通常の2~3倍に跳ね上がりますし、その比率も全然違ってきます。投資情報は社会情勢など外部要因に大きく左右されるため、アクセス解析などの調査は非常に難しいというのが正直なところです。

武部:しかし、それは同時に、急激な動きがあった際に「岡三オンライン証券なら独自見解を出しているのでは」と皆様に思っていただけているからではないでしょうか。そういう意味では、これまで毎日動画を公開し、ニュースリリースで配信し続けてきた積み重ねがあるからこそだと感じています。

――既存や新規を問わず、幅広い層の情報ソースになっていると。

武部:そうだとしたら、非常にありがたい話ですね。さらに言うと、動画を見たマスメディアの方からもよくお問い合わせをいただきます。マスメディアとのリレーションがあれば我々もより有益な情報を得られますし、それを投資家の皆様にも還元することができます。

石黒:実際、当社の取引画面にログインしていただければ、質・量ともに他社に引けを取らない岡三証券グループ独自の情報はごまんとあります。その魅力に気づいていただくフックとして、動画を毎日配信したり、ログイン後の限定情報に引けを取らないレベルのレポートを自社サイトのトップページで公開するなど、積極的な情報提供を心がけています。

岡三オンライン証券株式会社 投資情報部長 兼 シニアストラテジスト 武部氏

岡三オンライン証券株式会社 投資情報部長 兼 シニアストラテジスト 武部氏

――自社の魅力を伝えるために、さまざまなメディアを駆使されているのですね。

石黒:はい。ただし、最も大切なのはバランスです。例えば、動画は臨場感や速報性に優れている反面、内容を理解するためには全部視聴する必要がある。一方、紙媒体は通勤電車のなかでも素早くチェックできるという一覧性に優れています。

どんなメディアにも一長一短があるため、情報発信を特定のメディアに偏らせるのではなく、各々のメリットを上手にミックスさせながら発信していくことが必要です。

良質なコンテンツ×ニュースリリースの拡散力でキャッチアップ

――「News2uリリース」ではブログの更新や新規コンテンツなど、何らかのトピックがあるとニュースリリースを出すケースはよくありますが、毎日配信するコンテンツに対して一本一本丁寧に出すというのは前例がありません。

石黒:どれほど魅力的なコンテンツを作っても、ターゲットに気づいてもらえなければ意味がありません。今は、何かあると皆、インターネットで検索し、ソーシャルメディアなどを通じて伝播していく。そこの流れへ情報を載せていくためには、やはりニュースリリース配信などのひと手間をかけるべきだと考えています。

――「News2uリリース」をご活用いただくようになったきっかけは何ですか?

石黒:「News2uリリース」を導入したのは2008年。当時は、プレスリリースをマスメディアで記事にしてもらうという従来のやり方から、いかにニュース系のサイトへ載せるかという流れに変わってきた時代でした。

そこで、ニュースリリース配信サービスを比較した結果、大手メディアへの掲載や拡散力の面から「News2uリリース」の採用を決めたのです。情報拡散のツールとしてはTwitterやFacebookも利用していますが、基本的には「News2uリリース」がメインですね。

武部:毎日、高頻度でニュースリリースを配信していますが、少し気にしているのは、あまり量を出しすぎるとスルーされてしまうのではないかということ。そこは逆にお聞きしたいところです。

――ソーシャルメディアの普及などWebコンテンツ全体の数の増加により情報量が急増する近年、情報を出し続けなければあっという間に埋もれてしまうという現実があります。しかし一方で、量だけではなく質も大事だという流れになってきているのも事実です。

最も重要なのは、良質なコンテンツを作り、ニュースリリースなどの拡散手段を通じていかに多くの方々へ、どう訴求していくかという組み合わせにあると考えています。

石黒:おっしゃる通りだと思います。「日替わり武部」のように長く続けていくためには、方向性や伝える内容がユーザーのニーズに合っているという「質」が大事です。

その上で、インターネット上にあふれる情報のなかで見つけてもらうために、ニュースリリースを通じて幅広く発信し続けていく。そうすることで固定ファンを獲得し、企業のブランド価値を高めることにもつながっていくのだと思います。

written by ネットPR.JP

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crevoAdmin
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