この記事を読んでいるマーケターの方々は、2015年に一通りのデジタルマーケティング手法を試され、自社にとってどれが1番適しているか把握しはじめているのではないでしょうか。
今年はパーソナライズした広告やコンテンツをいかにユーザーに届けるのかがカギとなります。マーケティングオートメーションのツールを駆使してデータ分析を的確に行いながら、効率よく潜在顧客にむけたコンテツを配信していきたいところです。もちろん、ユーモアのあるコンテンツ制作にも手が抜けません。
そんな忙しいマーケターの方々のために、今回は海外のマーケターブログとWebメディアを集約し、今年、日本で必要になるであろうマーケティングの手法やトレンドをご紹介していきます。
1. コンテンツマーケティング
現在、インターネット上にはコンテンツが溢れ、多くのユーザーがブラウザ上で広告をブロックするようになりました。そのため、クリエイティブな発想で革新的な方法でユーザーのコミュニティを作ることが不可欠で、コンテンツマーケティングも欠かせないものとなると考えられます。
例えば、13年にローンチし、世界最大級のアクセスを誇るWebメディアのひとつに成長したバズフィード (BuzzFeed)があります。
一例として、バズフィードはパーソナリティー心理テストでソーシャル上で大きなバズを起こしました。人々の自我を友人に見てもらいたいという心理的欲求を満たすためのツールとなったためです。ユーザーは自分の診断結果をさらに友人にソーシャルメディア経由でシェアします。
それにより、インタラクティブ性がアップし、それぞれのユーザーにパーソナライズされたコンテンツとなっていくのです。
バズフィードのコンテンツはNY Timesでも1番人を集めた記事という結果が出ています。ユーザーの承認欲求をくすぐるようなコンテンツは、企業と彼らのターゲット層に対してもっとインタラクティブなっていくと予想されます。
バズフィードに関する主な統計 (2015年10月の時点):
・月間平均ページビュー: 50億
・月間ビデオコンテンツ閲覧数: 10億
・月間YouTube上のビデオコンテンツ閲覧数: 20億
・18-34歳の若者ユーザーの割合: 50%
・モバイルからのアクセス率: 60%
・PCと比べたモバイルからのシェア率: 2倍
・ソーシャルメディアからのトラフィック獲得率: 75%
・アメリカ以外からのアクセス率: 40%
・ドレス論争に関する記事の総計ページビュー: 3800万
今後、コンテンツマーケティングはより進化し、より重要になっていきます。それはGoogleの検索結果アルゴリズムが、コンテンツのクオリティを重視するようになったことからもうかがえます。
そして顧客の注目を集めるために、もっと新しく、ワクワクするコンテンツを生み出すことが必要です。下記のグラフを見ても分かる通り、アメリカのマーケターの約30%がすでに、コンテンツマーケティングが最も重要だと考えています。

BtoCのデジタルマーケティングにおいても、2015年はコンテンツマーケティングが人気を博しました。そして現在は、92%ものマーケターが最新のコンテンツマーケティングのフレームワークを活用しています。BtoBビジネスのマーケターもまた、コンテンツマーケティングをはじめることに積極的な姿勢を見せています。

2. エフェメラル (つかの間) マーケティング
送信したメッセージが一定期間を過ぎると消去されるチャットアプリ、スナップチャット (Snapchat)。このプラットフォームはリアルタイムにユーザーと直接繋がることができるソーシャルディアですが、マーケターたちは、それがただの遊びのためのツールではないことを理解しはじめました。
アメリカを中心に、海外ではこのアプリがすでにマーケティングプラットフォームになりつつあります。
ESPNやViceの様なコメディコンテンツを扱うWebサイトは、若い世代の顧客と繋がるために、1度見たら消えるという期限付き特性を活かしてコンテンツを作成。ユーザーの興味をひきました。
さらに、スナップチャットはコカ・コーラやマクドナルド、サムソンの様なブランドと10秒間のストーリー性のあるビデオ広告の取り組みをはじめています。
このスナップチャットの様な一時的にしか表示されないコンテンツを通じたマーケティングは、エフェメラルマーケティング (Ephemeral Earketing)と呼ばれています。エフェメラルとは、「一瞬の」とか「はかない」という意味で、長期に表示されないコンテンツを扱ったマーケティングに使われるフレーズです。

確かに、スナップチャットにおけるマーケティングは、手軽になりつつあります。しかし、プラットフォームの仕様上、ユーザーは、新しいユーザーを見つけるのが簡単ではありません。
検索機能を使って見つけるには、そのユーザーの正確なハンドルネームを知っている必要があり、TwitterやInstagramのようにハッシュタグで検索することもできません。
そのため、スナップチャットではユーザーに見つけてもらうことが課題となります。幸いにも、Snapcodes(スナップコード)という機能がロールアウトされ、クロスチャンネルのプロモーションが格段に容易になりました。
自分のスナップチャットアカウントのスナップコードをFacebookやTwitterに投稿することで、スナップチャットアカウントを宣伝し、閲覧者やフレンドを増やせるようになったのです。(Habspot参照)
3. パーソナライゼーション
Adobeの研究によると、パーソナライゼーションは将来のマーケティングにおいて最も重要な性能になります。
今までは、キーワードターゲティングで、検索エンジン上に広告を出すことで課題を解決していましたが、その戦略には多少の弱点もありました。設定したキーワードが適切でない場合にPPCが高くなり、ユーザーの獲得効率が落ちていたのです。特に新しいビジネスでは十分な結果を出すことが困難でした。
しかし、現在はすでに持っている顧客のデータを活かし、GoogleやTwitter、Facebookなどのプラットフォーム上でパーソナライズされたコンテンツをユーザーごとに配信することができます。
モバイル市場の多くを占めている企業は「バーチャルアシスタント」に巨額を投じています。また、GoogleはGoogle Now、AppleはSiri、FacebookはMを開発中です。これらの企業は、ユーザーにパーソナライズされた情報を提供することと、ユーザーがリクエストする前に広告を配信することを目指しています。
マーケティングの時間を節約するためにマーケティングオートメーションのシステムを実装させることも忘れてはなりません。マーケティングの目標設定や、結果の可視化のために、自動化し、膨大なデータを管理することが必要となるのです。
4. モバイルマーケティング
モバイルに対するマーケティングは以前から認識されていますが、今年はその重要性が一層高まりそうです。
特にミレニアル世代に代表されるような若者は、海外でもPCよりモバイルの利用率が高くなっています。例えば動画広告。動画広告そのものは新しくありませんが、今後、市場拡大が予想されています。
『Twitter革命』の著者であるWarren Whitlock氏によれば、モバイルビデオは2016年にもっと強力になるとのこと。FacebookやBingは動画広告を開始し、Google nowは動画コンテンツを検索エンジンのアルゴリズムに組み込む予定です。
Eコマースを見ても、すでに多くのユーザーがデスクトップではなくモバイルアプリから商品を購入。モバイル表示の最適化は、必須となっています。
また、モバイルでのビデオ再生数も増加しているため、ストリーミング再生やビデオチャット、商品説明の動画作成も引き続き行っていく必要もあります。
2016年の動画には、ただ商品を宣伝するのではなく、ユーザーと親密な関係を構築するためのコンテンツであることが求められます。
Eメールマーケティングもモバイルへと移行しはじめてます。ここ数年の間、人々のWebサイトの閲覧デバイスがデスクトップからモバイルにシフトしました。その流れは、ソーシャルメディアから始まり、Eメールにも及びます。
15年の頭から、大半のEメールはモバイルで開かれるようになりました。これは、Eメールのコンテンツをモバイルに最適化していくよいタイミングです。クライアントのワークスタイルによって、どちらで開かれるのかの傾向をデータから押さえましょう。
5. VR(バーチャルリアリティ)コンテンツを利用したマーケティング施策の登場

Facebookが買収したVRヘッドマウントディスプレイや、Oculusに代表されるようなVR (Virtural Reality) 関連のデバイス・コンテンツが次々とリリースされています。それに合わせ、VRに関する様々なビジネスモデルが、数年以内に生み出されることが予想されます。
VRが提供するコンテンツは、ゲームにとどまりません。オーストラリアのカンタス航空では、ファーストクラスの乗客にサムスン製のVRデバイスを配布し、フライト中に利用してもらっています。また、医療のフィールドでもVRの活用が進んできました。
マーケター視点から見てみると、VRが普及することで新しいマーケティングチャンネルが広がることになるため、大きな可能性を感じます。VRを提供する企業も、いち早く新機能をローンチしています。
オンライン広告フォームや、ソーシャルメディアの人気コンテンツ、ビデオチャンネル、ダイレクトメッセージなどの機能も実装が進められており、新しいメディアチャンネルとして注目されています。
6. IoTデータを活かしたパーソナライゼーション広告
2016年のウェアラブルテクノロジー普及率は28%になると予測されています。モノとインターネットを繋ぐIoTは、マーケターにとって近い将来、ユーザーとの関係を構築する重要なツールとなっていきます。
IoTデバイスが収集するデータ量は膨大で、内容・正確性ともに、Webと比較になりません。広告プラットフォームとしても、ターゲティングがしやすいことも特長です。
近いうちに、IoT広告ユーザーをターゲティングするようになり、デバイスを通してユーザー行動データから読み取れるようになります。これにより、高い精度でパーソナライゼーションされた広告が配信できるようになるでしょう。
ラスベガスで開催されるCES 2016で、いくつかのIoTプロダクトが展示されると発表されました。
LGのWebOS 3.0オペレーティングシステムや、サムソンのUHDTVs、IBMの BMW AirTouchなどから、大手企業が積極的に開発に取り組んでいることがうかがえます。残念ながら日本では、この分野で一歩出遅れている感が否めません。
7. ダークトラフィックをどうするか
数年前と比べると、ユーザートラフィックの出所が分かりにくなっています。Google Analyticsを見てみても、どこからユーザーが来たかが不明なケースが多いのです。
これは、「ダークトラフィック」と呼ばれ、検索やTwitter、 Facebookなどのチャンネル以外のプラットフォームからユーザーが来ている場合に出現します。
Facebookメッセンジャーや、Slackチャットツールなどを経由して、ユーザーがサイトに訪れた場合に、その出所が不明になってしまうのです。
特殊リンクの利用や、個別ランディングページの作成など、よりトラックしやすい方法を考える必要があるのです。マーケティングオートメーションツールを利用するのもいいですが、コスト面では、まだまだ現実的とは言えません。(文: Mariko Higuchi / Marketing Specialist, btrax, Inc.)
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参考記事
http://mashable.com/2015/12/23/mobile-marketing-2016/#BT9X7DemSiqP
http://www.inc.com/joel-comm/experts-predict-9-ways-internet-marketing-will-change-in-2016.html
http://www.entrepreneur.com/article/254006
http://blog.hubspot.com/marketing/7-game-changing-marketing-trends-to-tackle-in-2016
http://www.smartinsights.com/digital-marketing-strategy/digital-strategy-development/15-unstoppable-trends-which-will-shape-marketing-in-2016/
https://www.searchenginejournal.com/10-digital-marketing-trends-watch-2016/146654/
http://www.technobuffalo.com/videos/5-ces-2016-predictions-connected-everything-4k-everywhere/