【事例インタビュー】認定特定非営利活動法人NPOカタリバ~一人ひとりが伝道師となって支援の輪を広げるために~

<NPO団体の広報・PR活動事例>認定特定非営利活動法人NPOカタリバ
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【インタビュー企画・実施】
「広報スタートアップのススメ」編集部: http://www.pr-startup.com
(運営会社:合同会社VentunicatioN http://www.ventunication.com

高校生の実に約7割弱が、自分が参加しても社会は変わらないと考えているそうです。(※「高校生の心と体の健康に関する調査(2011年3月)」)
そうしたなかでこの状況を打破すべく、子どもや若者が社会や自分に希望を持つことでより明るい未来をつくるために、高校生のキャリア学習プログラムや被災地の放課後学校を展開している認定特定非営利活動法人NPOカタリバの取り組みについて、広報ファンドレイジング部部長 山内悠太氏にお話を伺いました。

生き抜く力を、子ども・若者へ

まずは貴団体の主な活動を教えてください。

NPOカタリバでは高校生を対象にしたキャリア学習プログラムの出張授業「カタリ場」と、被災地の子供たちのための学習支援と心のケアを行う放課後学校「コラボ・スクール」の2つの活動を中心に展開しています。

「カタリ場」とはどのようなものですか?

なかなか高校時代から明確に将来のキャリアを考えている高校生は少なく、将来の目標に向かって取り組むこともほとんどないままに高校生活を過ごしてしまう高校生が大半です。そこで「カタリ場」では、高校生たちと年齢が近い大学生や若手社会人がボランティアスタッフとして、1回2時間程度にてコーチング形式を採りながら将来のキャリアを考えるきっかけづくりを行っています。

また教えるボランティアスタッフ側にとっても、授業に向けて自分のキャリアや考え方を棚卸ししたり整理したりする機会につながりますので、10代、20代双方にとって自分を見つめなおす機会になっているのではないかと考えています。

「コラボ・スクール」についてはいかがですか?

東日本大震災の被災地の中でも、特に津波の被害が大きかった宮城県女川町と岩手県大槌町にて放課後学校「コラボ・スクール」を運営しています。

最近でこそ仮設住宅が出来るなど少しずつ環境が整備されつつありますが、震災直後は子供たちが勉強する場所は全くありませんでした。しかし震災を理由に将来の夢をあきらめてしまうようなことは絶対避けないといけません。

そこでまずは子供たちが勉強できる場所をつくろうということで、2011年7月に「コラボ・スクール」を立ち上げました。「コラボ・スクール」では、従来の学習塾の代替機能として勉強を教えたりするほか、全国から集まってきたボランティアスタッフとの交流を通じて、キャリア学習につなげられればと考えています。

また最近は「コラボ・スクール」で学んだ子供たちから、今度は自分たちの手で復興に向けて取り組みたいという声が挙がり始めています。そこでその実現に向けてどのように考え、どのように進めれば良いのか、プロジェクト学習という形でサポートしています。

実務活動を行うための環境をつくるのが広報・PRの役割

今までの活動実績はいかがですか?

「カタリ場」については、年間1,000人以上のボランティアスタッフを派遣し、累計約600校・約12万人の高校生たちに授業を行ってきました。設立当初はこちらから開催を申し入れていましたが、現在はご依頼をいただくケースがほとんどです。

ボランティアスタッフ集めや受け入れ先探し、また活動資金集めなどさまざまな側面が考えられますが、カタリバにとっての広報機能の役割はどのようにお考えですか?

学校はどうしても外部との交流が少なくなってしまいがちですので、私たちは「教室に社会を届ける」を合言葉に、学校外のさまざまな人々と学校、つまりボランティアスタッフや各分野の第一線でご活躍されている方など外部の方々と、学校関係者や教育委員会などの内部の方々との連携の輪を広げるべく、広報・PR活動に取り組んでいます。

最終的にボランティアスタッフになってもらったり、学校側と調整したり、また支援を働きかけたりするのは事業部門ですが、まずは世の中にカタリバという存在を知ってもらい、そしてどのような活動をどのような想いで取り組んでいるのかを広く訴求することで、各種活動を行うための環境をつくるのが広報・PRの役割であり、重要な機能と位置付けています。

具体的にはどのような取り組みを進めていらっしゃいますか?

全方位型のコミュニケーションとしてはパブリシティと、WEBサイトやSNSなどのオンラインコミュニケーションを中心に、また寄付者に対するコミュニケーションとして支援者への報告や、イベントの企画・運用などを行っています。
またお会いした方々にお渡しすることでクチコミを広げやすくするために、ポストカードサイズのリーフレットやステッカーなどの制作も手掛けています。

寄付者に対するコミュニケーションは、一般企業で言うとIR(インベスターリレーションズ=投資家向け広報)に似ているのかもしれませんね。

確かにそうですね。活動資金を提供してくれるという点では寄付者も株主と同様ですので、これから寄付しようと考えていただくための潜在層の開拓や、既に寄付してくれている既存層への各種フォローアップなどを行っています。

また「認定NPO」という行政によるNPOの認定制度があるのですが、認定されるためにはさまざまな審査や監査が行われますし、認定されると財務情報をはじめ各種情報開示が義務付けられます。現在カタリバでも認定NPO取得を目指していますが、一般企業における上場に例える方もいらっしゃいますね。

オンラインコミュニケーションを軸にしながらインバウンドを

広報・PR活動において特に力を入れていることは?

WEBサイトやSNSなどオンラインを軸にしながら、積極的に情報発信をしていこうと考えています。そしてその際に現場の情報を出来るだけ発信していこうと特に意識していて、例えば「コラボ・スクール」においては、女川町・大槌町それぞれに広報スタッフを置いて、逐次生の情報を発信するようにしています。

なおこれは「コラボ・スクール」に限った話ではなく、広報部門には職員・スタッフが現在5名いますが、それ以外にも事業部門や現場にも広報スタッフを置くなど、関係者全員が広報マインドを持ち合わせていて、それをプロデュースするのが広報部門であるという位置づけで運営しています。

一方でメディアに対する能動的な情報発信はあまり取り組めていないのですが、オンラインにて積極的に情報発信することでメディアの方の目に留まり、そこから取材依頼が来るなど、インバウンドでの取材依頼は数多くいただいています。

現在課題として考えていることはどんなことですか?

大きく二つ考えています。一つはメディアからの関心はどうしてもここ2年間は被災地での取り組みということで「コラボ・スクール」に集中していますが、「カタリ場」に対しても同様に関心を持ってもらえるようにもっと働きかけていかなくてはならないと思っています。

そして二つ目はそれに通じる話ですが、広報・PR活動を推進するための人材です。以前はインターン生を中心に実務を進めてきましたが、インターン生はあくまでテンポラリースタッフですので、どうしても取り組める業務は限定的でした。

しかしボランティアスタッフや支援者などを募るにあたり、広報・PR活動の効果が団体内に浸透してきていますので、その効果をさらに高めるためにリソースをきちんと投入しようという気運が高まっています。そこできちんと職員として広報・PR活動を推進できる人材を登用し、さらに活動の幅を広げていけるように現在採用などを進めている最中です。

一人ひとりが伝道師となって支援の輪を広げていくために

では最後に今後の抱負をお願いいたします。

職員やボランティアスタッフ、また寄付者など一人ひとりが伝道師となって、支援の輪・参加の輪を広げていくことが出来るように、その体制や仕組みをきちんと整備していきたいと考えています。その一環としてリーフレットやステッカーなどの制作はもちろん、Facebookページやtwitterの投稿を充実させ、それを職員やスタッフが周囲にシェアしていくなど、一人ひとりがカタリバのことを伝えやすいような環境をつくっていきたいと思います。

そして私たちのような活動はやはり“共感”が全ての源泉ですので、なぜこのようなことに取り組むのかといった想いや、どのような取り組みを行っているのか現場の生の情報を大事にしながら、“共感”の輪を広げられるように取り組んでいきたいと思います。

本日はありがとうございました。

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