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近年、mixi、Twitter、Facebookを始めとしたソーシャルメディアの利用が浸透し、ユーザーの消費行動、さらには企業活動に対しても、大きな影響を及ぼすようになってきています(詳細はこちら)。こうしたいわゆる「ソーシャルメディア時代」にあって、企業も自社のWeb戦略を変化させざるを得なくなっていますが、その中で注目に値するのが、「Webガバナンス」という視点でWeb戦略の見直しを目指す動きです。Webガバナンスの考え方は、海外戦略の強化を背景としたWebのグローバルな活用、デバイスの多様化に応じたマルチチャネルへの対応ニーズの増大といった近年の経済や技術、社会の変化も相まって、今後一層その重要性を増していくものと思われます。本コラムでは、ソーシャルメディアの普及によって見直しが迫られる企業のWeb戦略策定にとって、そのヒントとなり得る「Webガバナンス」の基本的な考え方や必要な取り組みについて、ご紹介します。
企業にとってのWebガバナンスとは
~Webガバナンスとは~
「ガバナンス(governance)」という言葉は、管理、支配、統治などと訳されることが多く、そのため、「Webガバナンス」と言うと、Webサイトのデザインの統一や、運用ルールの一元化といった、「統制を取る」イメージが先行してしまうケースもあります。しかし、ここで取り上げている「Webガバナンス」とは、
”自社の事業戦略に合わせて、Webの活用方針・仕組みづくりを全体視点で行うこと”
を指し、必ずしも、デザインの統一や運用ルールの一元化といった、トップダウン方式のWeb活用・管理のことだけを指すとは限りません。例えば、あらゆるターゲットに愛される少数商品を主力に展開しているA社と、複数ターゲットごとのニーズに合わせ、細かく商品ランナップやマーケティングを変化させているB社、あるいは国内よりも海外市場に焦点を当てたいC社では、それぞれWebの活用目的や各チャネル・サイトの役割/関係のあり方に差が生じ、サイトやデザイン、運用体制の理想的な統合度合いにも差が出ることは、想像に難くありません。
いかに自社の事業戦略に合わせて、Webの活用方針やサイト群の設計、運用体制・仕組み作りを行うかが、Webガバナンスの肝となってくると言えます。
Webガバナンスの意義
では、Webガバナンスは、実際にどのような課題に対して、成果を発揮するのでしょうか。Webガバナンスに関心を寄せる多くの企業が抱える課題を以下に挙げます。
■ Webガバナンスが対象とする課題(一部)
- 事業部・商品別にサイトが乱立し、企業サイト群全体としてユーザビリティの低下(企業イメージの低下にもつながる)や運用コストの増大を招いている
- グループ会社や海外拠点が独自にサイトを展開しており、必要なブランドイメージのコントロールや本社と各拠点との適切な運用の切り分けができていない
- 広告、自社サイト、ソーシャルメディアの活用・連携方針の策定やリスク管理を含む運用体制作り、効果測定の仕組み作りが行えておらず、場当たり的な運用となっている
一方、上記を始めとした課題が一部で認識されつつも、部署間・個人間でのWebの活用に対する考え方の差から、全社的な方針策定や運用体制作りに、すぐに向かうことができないケースも存在します。このような場合、Webガバナンスと経営成果との関係を適切に捉えた上で、自社にとってのWeb活用の必要性を判断し、社内での認識の共有が必要となってきます。次節以降では、Webガバナンスと経営成果との関係について、以下3つの視点から解説します。
- Webが自社のブランドイメージに与える影響をコントロールする
- Webを通じ、自社のマーケティング活動の最適化(≒ROIの増大)を図る
- Webに関するコスト(費用、労力、時間)の最適化を図る
【1.Webが自社のブランドイメージに与える影響をコントロールする】
ブランディング面から見たWebガバナンスの有用性
~直接・間接のブランディング効果~
一般的に、Webを通じたブランディングには、以下2つの要素があると言われています。
- 直接的要素(ダイレクト・エクスペリエンス)
- 間接的要素(インダイレクト・エクスペリエンス)
「1.」に対するWebガバナンスの観点からの取り組みとしては、
- Webの活用目的やガバナンスの方針に基づき、サイト間・各サイト構造を設計する
- 各メディア/チャネル/サイトの役割・関係を定義する
ことが挙げられます。また、企業の行動・姿勢(特にIR、CSR、Riskの3Rの領域)の発信がブランディングに大きく影響を与えるようになってきていることから、
- 即時的な情報発信やリスク防止・対処を可能にする運用体制(方針、担当、基準)を構築する
ことも、欠かせないポイントと言えます(関連:リスク管理の重要性)。これらにより、ユーザビリティ面・コンテンツ面での満足体験の提供や、企業としての信頼・共感の醸成に取り組んでいきます。
「2.」に対しては、
- ロゴ・コーポレートカラー、フォント、トーン&マナー、レイアウト、写真の使用ルール、他メディアとの整合性等を規定(デザインガイドラインに基づく運用を)する
ことにより、適切なブランド要素の刷り込みを可能にしていきます。つまり、適切なブランドイメージの形成(=「1.」)と、ブランドイメージ向上・ブランド価値向上(=「2.」)とを、適切に行っていくための視点として、Webガバナンスが力を発揮すると言えます。
【2.Webを通じ、自社のマーケティング活動の最適化(≒ROIの増大)を図る】
マーケティング面から見たWebガバナンスの有用性
~トリプルメディアマーケティングとWebガバナンス~
マーケティング面からWebガバナンスを捉える際に押さえておきたいのは、「トリプルメディアマーケティング」の考え方です。「トリプルメディアマーケティング」とは、メディアを「買うメディア(Paid-Media)」「所有するメディア(Owned-Media)」「得るメディア(Earned-Media)」の3つに整理し、3メディアの有機的な連携を重要視する考え方を指します。
広告と並び、自社サイトやソーシャルメディアでのユーザー(消費者)の発言がメディアとしてのパワーを持つにいたった現在では、各メディア・チャネル(ユーザーとの接点)をいかに組み合わせ、社内のリソースに適った運用体制を構築していくか、各施策をどのような視点で評価・改善していくかは重要な課題となっています。
マーケティング面でのWebガバナンスの最大のメリットは、
- Webの活用目的を明確化する(ブランド企業価値向上、リード(見込み客)獲得、ダイレクトレスポンス向上など)
- 各メディア/チャネル/サイトの役割/関係を定義する
といった取り組みをもとに、
- KGI/KPIを設定し、モニタリングの方法を規定する(詳細はこちら)
ことで、効果測定と運用改善の仕組みを整えておくことができる点にあります。自社チャネルを中心に、マーケティングROIの測定・管理が可能な「マーケティング装置」として機能させることで、本業のビジネスプロセスを支えるシステムとして、Web自体を捉えていく試みが必要と言えます。
【3.Webに関するコスト(費用、労力、時間)の最適化を図る】
コスト面から見たWebガバナンスの有用性
"戦略策定"から今すぐに取り組むことが難しい場合、運用コスト(費用・労力・時間)の見直しを入り口として、自社のWeb活用のあり方を見直していくことも有用です。個別サイトごとに、複数の制作会社等にサイトの制作・運用を依頼している場合、
- ベンダー選定基準の策定
- RFPの策定
- 各種ガイドラインの策定
- インフラ(サーバ)、システム(CMS)見直し
といった取り組みにより、品質の維持管理とともに全社的なWeb関連コストを見直すことができます。また、
- 運用業務フローの策定
- PMOの構築
を通して、担当者のスキルに極力依存しない、社内のリソースに見合った運用体制を構築していくことが、長期的にWeb活用のあり方を見直していくための安定的な基盤作りにも寄与すると言えます。
スピードと影響力ゆえの、リスク管理の重要性
最後に、ソーシャルメディア時代ならではの課題として、機密情報漏えい、ネガティブな評価や誤った情報の拡散のリスクに対する対処の重要性を挙げておきます。一部の企業では既に、「ソーシャルメディアガイドライン(もしくはソーシャルメディアポリシー)」を策定する取り組みが始まっており、自社サイトで公開しているケースも見られます。自社でアカウントを運用する場合はもちろんのこと、そうでない場合に関しても、Web上で流通する自社の情報が自社に対する信頼・評判に与える影響は、看過することのできない問題となっています。とりわけ社内の教育体制・リスク管理体制について、早期に対策を練っていかれることをお勧めします。
■ ソーシャルメディアガイドラインの主な構成要素
【1】活用方針
- 活用目的・背景
- 活用ツール(概要・選定理由)
- 経営機能/施策との関係
【2】社内体制
- 業務プロセス(インプット・基準・担当・時期・フロー)
- 教育体制(ルール・スキル・リスク)
- 改善体制(担当・時期・方法)
- リスク管理体制(権限・フロー)
【3】活用規定
- 対内規定(担当者・全社員)
- 対外規定(周知事項・免責事項)
【4】効果測定
- 評価尺度
【5】リスク管理
- リスク防止(トラブル発見手段・対処方法)
- 緊急時体制(行動基準・権限)
■本コラムの元記事はこちら
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