Web広告のアトリビューション、直接CVと間接CVの強い相関関係を実証【WACUL調べ】

アトリビューション分析の結果は、「予算配分の決定」以前に「周囲の説得材料」として使われている。

WACUL(ワカル)は、研究レポート「Web広告は直接CVで評価すればよい。アトリビューションの実態調査」を発表した。アトリビューション分析は、広告効果の測定において、成果の直接的な接点(直接CV)だけでなく、複数の広告・メディア・イベントなど(間接CV)を総合的に追いかけ、適切な予算配分を行うものだ。

この調査では、「複数社のアトリビューション分析結果から具体的にどのような示唆が得られるのか」「現場では実際どのようにアトリビューション分析が行われているのか」という2つの観点から、Web広告におけるアトリビューション分析の実態を明らかにしている。

この調査は以下の(1)(2)の2つの手法で行われた。

(1)複数社のアトリビューション分析結果から、具体的にどのような示唆が得られるのか

同社の「AIアナリスト」登録企業のうちCV数が十分にある10社から、Googleアナリティクスより「コンバージョン > モデル比較ツール」のデータを抽出し、「有料検索」「ディスプレイ広告」経由のCV数をモデル別に洗い出した。使用したモデルはGoogleアナリティクス上にあらかじめ存在する「最後の関節クリック」「終点」「Google広告のラストクリック」「起点」「線形」「減衰」「接点ベース」の7つ。

(2)現場では、実際どのようにアトリビューション分析が行われているのか

広告主あるいは広告代理店の立場でWeb広告に携わっている人を対象に、「アトリビューション分析にどれほど時間をかけているのか」「分析結果をどのように活かしているのか」などをアンケート調査。有効回答数60人。

直接CVと間接CVの比較

まずGoogleアナリティクスで標準的に用いられている直接CVを見るモデル「最後の間接クリック」を基準とし、間接CVを見るモデル「起点」や「線形」などとCV数を比較した。

まず「有料検索」では、「Google広告のラストクリック」のCV数が基準よりも総じて多い。「起点」のCV数も基準より平均108.8%多かった。C社のように「線形」「減衰」「接点ベース」など中間接点を加味するモデルが揃って高い数値となるケースも見受けられた。ただし「線形」「減衰」「接点ベース」など中間接点を加味したモデルのみCV数が多いケースは存在せず、「初期接点から有料検索に触れている」と推測されている。

 

「ディスプレイ」は全体的に基準よりもCV数が下回っているが、有料検索同様「Google広告のラストクリック」「起点」が一部上回るケースがあった。

直接CVと間接CVの相関

続いて“直接CVと間接CVに相関関係はあるのかどうか”を調査するため、サイト全体のセッション数から簡易CV率を算出して相関係数を導いた(1に近いと正、-1に近いと負の相関があり、0に近いと相関がない)。

「有料検索」においては、相関係数は0.98以上とほぼ1に近く、基準と各モデルには強い正の相関があると言える。CV率をプロットした散布図においてもデータが一直線上にきれいに並んでいる。

「ディスプレイ」も相関係数が0.98以上とほぼ1に近く、基準と各モデルには強い正の相関が見られた。ただし基準←→起点グラフの0.1%以下にはみ出たデータが見られた。

これらの結果、「有料検索・ディスプレイいずれも直接CVと間接CVには強い正の相関関係がある」と言える。

ユーザアンケートの結果

あわせて広告関係者にアトリビューション分析への取り組み状況をアンケートした。現在、アトリビューション分析を行っているとした企業は、60人中15人(25%)。これら15企業を対象に、まず「現在、1か月あたりどれくらいの時間をかけてアトリビューション分析を行っていますか?」と聞くと、「1時間未満」が半数以上だった。

 

「どのモデルを見ていますか?」では、代表的な「ラストクリック・終点」「ファーストクリック・起点」「線形・均等配分」で8割を占めている。

 

「結果はどのように活かされていますか?」と聞くと、「直接コンバージョンがとれていない広告も一部貢献していると、周囲に説明するときに使っている」87%が圧倒的に、本来の主目的である「起点や中間接点となっている広告の、予算配分を決めるときに使っている」は33%に留まった。予算配分の決定より、周囲の説得材料というのが実状のようだ。

 

まとめ

今回の分析により、まず「直接CVと間接CVには強い正の相関関係がある」ことは間違いなく、「直接CVはまったくのゼロだが間接CVだけたくさん獲得している広告」などは、基本的に存在しないと言える。つまり、直接CVを見ればその広告の有用性は、ほぼ確実に判断できる。逆に「間接効果」などは正直期待できないのが実状だ。

一方で分析結果は、予算配分に直接反映する以前に、関係者の説明材料として使われていた。アトリビューション分析で予算配分・施策判断が変わらないような企業であれば、その作業自体が意味を持たない可能性がある。

WACUL取締役CIOの垣内勇威氏は「間接効果のある広告は、直接効果も高いため、結果的にアトリビューションを見る必要はない」「もしアトリビューション分析をしなくて不安だという人は、Googleアナリティクスのモデル比較ツールを1か月に1回確認すれば良い。見ても見なくてもたいして変わらないことがすぐ分かるはずだ」と、ストレートなコメントを表明している。

調査概要

(1)複数社のアトリビューション分析結果から、具体的にどのような示唆が得られるのか

  • 【データ抽出元】AIアナリスト
  • 【対象企業】AIアナリスト登録企業より、有料検索経由で年間100件以上のNVを獲得している企業からランダムに選定した10社
  • 【データ抽出期間】2020年1月1日~2020年12月31日
  • 【ルックバックウィンドウ】コンバージョン前の30日間

(2)現場では、実際どのようにアトリビューション分析が行われているのか

  • 【回答対象者】Web広告に関わる人(広告主、広告代理店など)
  • 【回答期間】2020年12月16日~28日
  • 【有効回答数】60人
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