Webサイトで継続的に成果を出すには、データによる現状把握と課題の抽出、そして改善が欠かせない。しかし、GA4やヒートマップを見ても「改善点がわからない」「浮かばない」「AIもうまく使いこなせない」。こんな悩みを抱えるマーケターは多いだろう。
20年以上にわたり中小企業や制作会社の改善支援を行ってきた運営堂代表の森野氏。「デジタルマーケターズサミット 2026 Winter」に登壇し、GA4・Microsoft Clarity(マイクロソフトクラリティ、以下Clarity)・生成AIを組み合わせて分析時間を短縮し、成果を出すための具体的なノウハウを紹介した。
丸投げではうまくいかない。AIは「答えを出す存在」ではなく、「考えを深める相手」
冒頭で森野氏は、GA4、Clarity、AIの役割を次のように整理した。
- GA4:「誰が来ているか」ユーザー像の把握
- Clarity:「どう動いたか」ページ内の行動を可視化
- AI:「なぜそうなったか」データの意味付けと判断の支援
そして、AIの活用方法について次のように述べた。
AIは答えを出す存在ではなく、考えを深める相手として使うとうまく活用できます。「改善点を教えて」と丸投げするのではなく、分析の視点を伝えて対話を重ねることで、良い答えを返してくれます(森野氏)
「AIに丸投げしない」――この対話の姿勢が、講演全体の軸となる。そのうえで、森野氏の個人的な意見として、主要なAIツールの特徴と使い分けを紹介した。
- ChatGPT
忖度して簡素化しがちなところがある。人間に寄り添い、難しい文章を避け、「違う」と指摘するとすぐに直す。長い文章もあまり作らない傾向。 - Claude
とにかく真面目で、頼んでいない文章や表まで追加する。提案をどんどんしてくれるので、がっつり使いたいときには便利。ただし使用量が増えやすく、課金が発生しやすい。 - Gemini
幅広い知識があるが頑固で、間違いをなかなか曲げてくれない。そのため、なぜかGeminiを説得するための材料を集めるという場面もあったりする。 - NotebookLM
優秀な編集者のよう。与えた情報しか使わないのが最大の特徴。まとめ方も音声やスライドなど選択肢が豊富。追加・変更・削除もすぐ反映してくれる。特定の情報しか使いたくない場合に非常に便利。
GA4のデータやWebサイト、お客様の声のデータをAIに渡し、ペルソナを作る
では、実際にGA4とAIを活用してペルソナを作っていこう。森野氏は作成フローとして以下の図を示した。
4+1種類のペルソナの作成方法
異なる情報源を基に、4つのペルソナをまず作成する。
- 集客ペルソナ(GA4):ユーザー属性、デバイス、検索クエリなどから作成
- ページペルソナ(Web):サイトの主要ページの内容から「読むべき人」を逆算
- 調査ペルソナ(ヒアリング):インタビューや営業担当への聞き取りシートから作成
- ボイスペルソナ(顧客の声):事例やクチコミデータなどから抽出
さらに、上記の4つのペルソナを統合して、「統合ペルソナ」を作成する。
- 統合ペルソナ:集客・ページ・調査・ボイスを統合して作成
GA4はユーザー行動やリファラー、検索語句といった集客関連のデータや、Googleシグナルによる属性情報が強みです。数字そのものを使うのではなく、数字やその他のデータからユーザー像を作り、4つのデータソースを合わせた統合ペルソナとのギャップを分析して、改善点を出す方法です(森野氏)
続いて、森野氏はAIへの指示例も示しながら、ペルソナの作成方法を具体的に説明していった。
フロー①/② 集客ペルソナ(GA4)の作り方
GA4のGoogleシグナルをONにして、次のPDFを出力する。
- ユーザー属性概要
- 環境概要(デバイス・OS)
- 集客サマリー
- 検索クエリ(Google Search Consoleや広告と連携していれば)
「共有」>「ファイルのダウンロード」で簡単にPDFを出力できる
森野氏がよく使うAIはClaudeだが、GeminiでもChatGPTでも同じようなことはできる。GA4のPDFをAIにアップロードし、「これらのデータから、3人の代表的なユーザー像を作成してください」と指示する。ユーザー像が出てきたら、続けて「それぞれのユーザー像の背景・目的・行動パターン・課題を整理してください」と指示する。AIから出力された集客ペルソナやインサイトは、GoogleドキュメントやWordなど必ずドキュメントで保存しておくこと。
ドキュメントを保存しておくと何かを判断する際の基準に使えたり、状況が変わって新しいペルソナを作成した時に比較がしやすかったりします。AIはドキュメントの理解に長けているので、何かと残しておくとよいでしょう。ClaudeやChatGPTでは、プロジェクトの機能を使って特定のファイルのみ参照する設定も可能です。良いものができたら、とにかく保存しておきましょう(森野氏)
フロー②ページペルソナ(Web)の作り方
代表的なページのURLをAIに渡し、「このページの内容を理解して詳細に説明してください」と指示し、AIに内容を理解してもらう。理解に問題がなければ、次に「このページを読むユーザーを3人想定し、各人の目的・感情・行動をペルソナ化してください」と指示する。そうするとページを読むユーザー像が浮かび上がる。ポイントは、トップページやランディングページなどユーザーにとって参考になる情報が多く載っているページをAIに渡すことだ。
フロー②調査ペルソナ(ヒアリング)の作り方
この「調査ペルソナ」は、可能であれば取り組んでみて欲しい。
準備として、ユーザー像ヒアリングシートなどを作成し、営業担当やクライアントに記入してもらう。そのヒアリングシートをAIに渡し、「このシートをもとに3人の典型的なユーザー像をまとめてください」と指示する。ヒアリングシートもAIに「ユーザー像を作りたいので、ヒアリングシートを作ってください」と指示すれば作成できる。それを使い、営業担当者に聞きながら埋めると簡単に用意できる。
フロー②ボイスペルソナ(顧客の声)の作り方
事例やお客様の声のURLやデータをAIに渡し、「このデータをもとに典型的なユーザーを3人描写してください」と指示する。事例は複数入れ、お客さまの声はしっかりと書かれているデータを使うとアウトプットの質が良くなる。
フロー③統合ペルソナの作り方
ここまでで4つのペルソナが作成できた。このうち、実際の顧客像に近いと考えられる「調査ペルソナ」と「ボイスペルソナ」の2つのペルソナを統合し、基準となる顧客像を作る。その後、そのペルソナと集客・ページペルソナとのギャップを見ていく流れだ。
統合ペルソナは、調査ペルソナとボイスペルソナのファイルをAIに読み込ませ、「この2つのドキュメントにあるペルソナを総合して、定性データに基づく最終的なペルソナを3人作ってください」と指示して作成する。
フロー④/⑤ギャップ分析・改善案提案
続いて、調査ペルソナとボイスペルソナを統合した「統合ペルソナ」を基準に、集客ペルソナとページペルソナとのギャップ分析を行う。
なぜギャップ分析を行うかというと、集客は広告依存になるケースが多い。広告運用を代理店任せで、事業やWebサイトのことをよく知らずに運用しているケースもあり、統合ペルソナと集客ペルソナはギャップが生じやすい。よって、どんなギャップがあるのかをまず把握し、改善案につなげていく。
統合ペルソナ × 集客ペルソナのギャップを分析
AIに「統合ペルソナを基準に、集客ペルソナとのギャップを教えてください。集客の改善点を探したいです」と指示する。すると、AIが想定企業規模のズレや情報ニーズのズレ、キーワード戦略のズレなどといった課題を指摘し、改善案を提案してくれる。なお、AIは勝手に創作・推測した情報を入れるケースがあるので、「Claude(または使用しているAI名)が創作したものがあれば削除してください」という指示を必ず入れるのがポイントだ。
統合ペルソナ × ページペルソナのギャップを分析
同様に、「統合ペルソナを基準に、ページペルソナとのギャップを教えてください」とAIに指示する。このように、AIでペルソナを作って比較するだけで、改善策の提案までしてくれる。細かな数字を見ずとも、各情報源から作られたペルソナを比較するだけで、AIが分析・改善まで提案してくれるので、ぜひやってみて欲しい。
Clarityの分析をAIと進めるため、まずはNotebookLMで分析用ドキュメントを作成
次に見るべきは、サイト内でユーザーがどう行動したかだ。ここで活用するのがClarityにある「ヒートマップ機能」とNotebookLMだ。ユーザーがサイト内のどこで止まるかまで可視化していく。
Clarityでの分析は難しい。現象はわかるが、その理由や改善点が浮かばないからだ。また数値の判断基準がなく、何が良くて悪いのかがわからない。改善案を出しても、分析者の主観になりがちだ。そこで森野氏はClarityでの分析をAIと進めるために、NotebookLMで分析用ドキュメントを作ることを推奨する。NotebookLMを使うメリットは、自分たちで情報源を作ってそこから分析ができるため、自社に合った分析フレームが作れることだ。次回以降も再利用可能で、社内にノウハウが蓄積できる。AIに手法を教えることで、回答の質も安定する。ただし、各サービスの利用規約を確認して利用してほしい。
NotebookLMで分析用ドキュメントの作成方法
まずは、NotebookLMにClarity公式ヘルプやFAQ、用語集やデータ仕様ページのURLを登録し、NotebookLMにClarityについて理解させる。
加えて、以下の「クリック・スクロール・アテンション」でのユーザーの行動パターンをNotebookLMに学習させる。資料を読み込ませることで、ユーザーの動きをAIに教える。
クリックのパターン
スクロールのパターン
ユーザーが止まるパターン
そして、「すべてのソースからClarityの統合版資料を作ってください。初心者にもわかるように、概要、データの理解の方法などを説明してください」と指示をする。NotebookLMは脚注を作成してくれるがリンクが邪魔なので、「テキストだけ共有したいです。参照のリンクを削除したものを作成してください」と指示すると、見やすい資料が作成され、それをドキュメントとして保存しておくといいだろう。
AIを使ったClarityの行動分析レポートの作成方法
分析用ドキュメントができたら、Clarityのデータを使ってAIで行動分析を進めていく。森野氏はClarityの行動分析フローとして以下の図を示した。
分析方法を紹介する前に、森野氏はClarityのクリックデータについて解説した。データは6種類あり、詳細は以下の図を確認して欲しい。
1. Clarityからクリックデータ(CSVとPNG)を出力する
ClarityではクリックデータをCSVとPNGで出力できる。AI分析の精度を高めるために両方使う。なお、セッション数は最低300~500あると良い。データを準備したら、AIに投げる前に、NotebookLMで作成したClarity分析用ドキュメントをAIに読み込ませ、理解してもらっておく。
2. Clarityのデータをアップし、分析を指示する
ここから実際にAIにデータをアップして分析をしていく。
ClarityのCSVのデータをアップし、「ヒートマップのCSVです。このデータからわかることを教えてください」とAIに指示する。次にPNGのデータをアップし、「こちらは実際のヒートマップの画像です。これらから追加でわかることがあれば教えてください」「CSVと画像(PNG)からわかったことのシンプルな統合版を作ってください。改善案などは不要です。読み取れる事実だけをまとめてください」と順に指示していくと、クリック分析ができあがる。
3. スクロール・アテンションデータもAIで統合分析
続いて、スクロールとアテンションのCSV・PNGデータをAIに追加で読み込ませる。「スクロールとアテンションのCSVデータ、画像データです。追加で分かることがあれば教えてください」とAIに指示する。最後に、「クリック分析とスクロール&アテンションマップ分析から分かることを統合したものを作成してください」と指示すると、AIが次の図のようなヒートマップ分析レポートを出してくれる。
報告書は作成して終わりではない。叩かれ台を作り、指摘を受けて完成版に仕上げる
ここまで作成した「統合ペルソナのギャップ」「集客ペルソナのギャップ」「ヒートマップ分析のまとめ」をAIに読み込ませ、報告書を作成する。「報告書は叩かれ台として作りましょう」と森野氏。
「これら3つのドキュメントをもとに経営者が“3分で理解”できる形式で、データに基づく判断と次のアクションを明確に示してください」「Claude(または使用しているAI名)が創作したものは削除してください」とAIに指示する。「広告費がかかっているので集客の改善は優先度高めにしてください」といった重みづけをすると、出力する内容が変わってくる。
「慣れればこの報告書が数時間で作成できるので、かなりの時短になる」と森野氏。
では、この報告書はどのように活かせばよいだろうか。「AIと相談して改善案を作ったが、実際と異なる部分や気になる点を教えて欲しい」と、集客や制作の担当者にこの報告書の感触を聞くのがおすすめだ。そうすると、さまざまな反論や指摘や文句を言われるだろう。それらを録音・録画しAIでまとめて、その指摘をもとにAIに修正版を作ってもらうのがポイントだ。初版は叩かれ台とし、指摘を受けて完成版に仕上げていくのが基本的なプロセスだ。
AIを外部記憶として活用し、AIを使ってPDCAを回そう
森野氏は、AIを外部記憶装置として活用することをおすすめする。特に、ClaudeやChatGPTにあるチャットをまとめられる“プロジェクト”は便利だと語り、関係するものはプロジェクトにまとめておくのがよいという。ペルソナ、ギャップ分析、Clarity分析をすべてAIに保存しておけば、半年後の比較検証も楽にできる。森野氏は講演内容を以下の図にまとめ、講演を終えた。
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