【レポート】デジタルマーケターズサミット2026 Winter

「検索キーワード起点だから失敗する」SEO歴30年の渡辺隆広氏が説く、成果が出るコンテンツの作り方

「SEO向けコンテンツを作ったが、成果が出ない」。SEO歴30年目のDMM.comの渡辺隆広氏が正しいコンテンツ作りの基本的な考え方と注意点を解説。

森田秀一[執筆], ササキミホ[編集]

7:05

「SEO向けコンテンツを作ったけど、成果が出ない」。そんなあなたは、「コンテンツ」の本質を勘違いしています。あなたのコンテンツ作りがなぜダメなのか、どうすればGoogleにも生成AIにも評価され、トラフィックを獲得して、ビジネス成果を得られるのか。

SEO歴30年目の渡辺隆広氏が「デジタルマーケターズサミット 2026 Winter」に登壇し、正しいコンテンツ作りの考え方と注意点を解説した。

合同会社DMM.com PF事業統括本部 SEOマネージャー 渡辺 隆広 氏

事業会社に外部コンサル、現場から役員レイヤーまでさまざまな立場でSEOに携わって30年目

渡辺氏は1997年からSEOの仕事に携わって、2026年で30年目になる。2005年~2021年にかけては広告代理店で取引先企業のSEO施策を支援した。2022年4月からはDMMグループ全体のSEO統括、および個別事業部のSEO支援をおこなっている。

「事業会社のSEO担当者」と「外部コンサルの支援者」の経験があり、社内においてはSEOを実施する現場とリーダー、マネージャー、執行役員などさまざまなレイヤーの関係者と仕事をしている。コンテンツの制作歴も同じく30年目を迎えた。メルマガの編集をはじめ、書籍・雑誌の執筆・編集もしており、2025年10月にはSEO関連の書籍も発刊した。

これまでの経験をもとに、渡辺氏は「どのレイヤーの人たちが、SEOやコンテンツマーケティングをどう捉え、どのように推進しようとしているか、ある程度わかっているつもりです。そのうえで、何が失敗・成功するのか、大体見えてきているのでそれを踏まえたお話をできたら」と語り、講演を始めた。

コンテンツマーケティングが失敗する3つの構造

まず渡辺氏はコンテンツマーケティングが失敗する構造として次の3つをあげた。

原因1マネジメントの不在

SEO担当者はいるが、必要なスキルは持っておらず、上長のマネージャーがKPIだけ丸投げしているケースだ。「今期は前年比で検索流入10%伸ばす」「6か月後にオウンドメディアの集客を1万セッションにする」といった数値目標だけ与え、それ以外の指示を一切しない。マネジメント側が「私たちは何をすべきか・目指すのか」「なぜそのメディアを運営するのか」、そういった説明を一切しないで現場に丸投げしているパターン。

原因210年以上前の「時代遅れのオペレーション」継続

2016年、DeNA社が運営していた医療・ヘルスケア情報のまとめサイト「WELQ」に医学的根拠のない不適切な情報が掲載されていたことが大きな問題となった。検索上位に表示するために、低品質な記事を量産したことが問題の要因だ。WELQ問題は10年前の話だが、同じオペレーションを続けている企業はまだあるという。今は生成AIによるコンテンツ量産が該当するが、そう上手くはいかないと渡辺氏は警告する。

原因3社内異動でコンテンツ担当者になってしまった

コンテンツ制作やSEOに関する知識がないのに、異動で業務を担当することになってしまったケース。日本語圏にはコンテンツマーケティングを体系的に学べる学習教材が意外とないため自分で学ぶことも難しい。結果として、適切でない進め方をしてしまうケースが少なくない。

講演の聴講者の多くは現場担当者であろうと推察し、渡辺氏は2と3について現場でできる改善策を中心に解説していった。

SEOはどう変わってきた? 「検索キーワード重視」から「ユーザー行動重視」へ

最初に、この30年でSEOはどう変わってきたのか。渡辺氏はインターネット検索とSEOマクロの変遷を紹介した。

インターネット検索とSEOマクロの変遷

1999年頃は、検索キーワードとの完全一致・部分一致が大前提であり、重要だった。たとえば、「引越」「引越し」「引っ越し」を当時の検索エンジンはそれぞれ別の単語として認識しており、3種類の表記ゆれに対応するためにはページ内にすべての表記を記述する必要があった。だからこそ、当時は「ユーザーがどういう言葉でクエリを投げているか」が重要だった。こういった背景で検索キーワードを材料に、コンテンツを企画する手法が確立した。これがいわゆる現代でいう“コンテンツSEO”だ。

この状況が動いたのが2010年代だ。具体的には2013年、Google検索において「ハミングバード」と呼ばれるアルゴリズムの更新があった。それまでは単語に一致したWebページを検索結果に表示していたが、検索ユーザーの意図や文脈を考慮して検索結果を出すようになった。たとえば、「品川駅近くのパーキング」と検索したら、「徒歩5分」や「駐車場」と書いてあるWebページもヒットするようになった。全く同じ検索語句が入っていなくても、検索意図が一致するページが検索結果に表示されるように変わった。

また、それまでは「PageRank」という「リンク(ページに対する外部からのリンクの数)を人気投票」に見立てたアルゴリズムだったが、2010年代以降は「ユーザー行動を人気投票」に見立てたアルゴリズムの比重が高まった。この結果、ページの評価軸はキーワードが入っていることではなく、そのページを見たユーザーが満足しているかが重要になっていった。

そして2026年現在、一般的な問いかけには生成AIが回答するようになった。これによって、Webページにアクセスしない“ゼロクリック”問題が顕在化した。「となると、検索集客のためだけの、キーワードを意識したコンテンツを今作る必要があるのでしょうか? これ、ないんですよね」と渡辺氏。

ページ評価はキーワードマッチからユーザー行動へと移行

検索技術の進化により、ページ評価は「キーワードマッチ」から「ユーザー行動」を重視する傾向が強まっている。ここでのユーザー行動とは、「コンテンツによって閲覧者の目的を達成できたかどうか」である。また、コンテンツの見せ方におけるUI/UXも重要になっている。

そんな時代に、なぜ今も「検索キーワード」を見ているのか?従来はキーワードへの配慮が必要だった。現在はそれほど重要ではない。キーワードに固執する理由がないのだ。

コンテンツ制作の成功と失敗を分ける2つの軸

では、コンテンツ制作の成功と失敗を分けるものは何なのか。渡辺氏が提示したのは、2つの軸だ。

軸1生成AI&SEOライターによる「ジェネリック」vs「現場のプロ」

生成AIでコンテンツ制作した場合、99%失敗します」、渡辺氏はそう断言する。理由は、AIが作る文章は単純につまらないからだ。AIは統計的に最も確からしい言葉を選択するため、AIが作る文章は「真⾯⽬な優等⽣が作った平均的な⽂章」だ。非の打ち所はないが、読み手の心には響きづらい。つまり、つまらない

渡辺氏は例として、とある漫画紹介メディアをあげた。大の漫画好きという渡辺氏が、相談を受けてそのメディアを見たところ、公式サイトに載っているようなストーリーくらいしか載っていなかった。なぜその漫画がオススメなのか、なぜその登場人物が魅力的なのかといった漫画に対する熱量が全くなく、その漫画を読もうという気持ちにならない。実際、そのコンテンツはAIによって作られたものだった。AIが出力するコンテンツは、生成AIツールやGoogle検索を通じて誰でも入手できるため、その情報をメディアで発信する意味はない。

AIは企画や構成案の「壁打ち」や「支援役」として使おう

AIをコンテンツ制作に使う場合は、企画や構成案の「壁打ち役」や、自分が伝えたいことの論点整理、伝わりやすい表現選択などの「支援役」として活用するのが最適だと渡辺氏は言う。

決して構成案自体をAIに作らせないでください。自分の案をAIに渡してそれをベースにたたき台を作ってもらうのはOKです。ベースがなく、AIに適当にたたき台を作ってもらうのは、想定読者があいまいな平均的な企画になるのでやめたほうがいいです。

この講演の準備でも、論点整理のためにAIを使っています。自分の個人サイトや外部のメディアで執筆寄稿する際、“伝わりやすくする”ためにAIは使いますが、もとのアイデア自体や自分が一番伝えたいこと、そのストーリー案は自分で考えます。ここがAI活用のポイントかなと思います(渡辺氏)

では、AIを使わずに人間に依頼すればいい……とも言い切れない。発注先の選定が難しいためだ。コンテンツを外注する場合、検索キーワードベースでコンテンツを制作する「SEOライター」を頼るのも1つの手だが、渡辺氏は「ほぼほぼ失敗する」と言う。キーワードを重視するあまり、届けたいユーザーの心情や文脈、背景を捉えずにコンテンツを制作しがちなので、AIと同じく平凡な文章になりやすいからだ。SEOに明るいかどうかではなく、純粋に読者目線で企画や構成を構築する能力があるライターを探す必要がある。

外部のSEO会社からの提案の場に同席することがありますが、コンテンツ制作に関してどの会社もGoogleの話しかせず、ユーザーの話が一切出てこないんです。その時点で、発注先の候補から外れます(渡辺氏)

軸2「How」(どう制作するか)ばかり追い求めるvs「What/Why」(何をするか、なぜやるか)が明確

渡辺氏は、あなたが制作したコンテンツについて、次の5つの質問に即答できますかと問いかけた。「この質問に即答できるかどうかで決まります。即答できなければ、それは作り方に問題がある」と渡辺氏。

  1. ターゲットは誰ですか? 具体的に説明してください
  2. そのコンテンツの流れ(≒構成)にした意図は何ですか?
  3. コンテンツの目的は何ですか?(ユーザーにどんな価値を届けたいですか? どんな行動を促したいですか?)
  4. コンテンツは、その目的をどのように達成していますか?(その価値を届けられるように配慮した点はどこですか?)
  5. あなたはひとりのユーザーとして、そのコンテンツを読みますか?

渡辺氏はSEO業界の問題点として「Howの話しかしないこと」をあげた。「自分たちがなぜそのメディアを運営するのか」「メディアを通じて何を実現するのか」を定義しないまま、Howの話ばかりするから失敗する。前述の5つの質問に即答できれば、メディアのミッションやコンテンツに求められる品質や水準が言語化されていることを意味し、良いコンテンツが生まれやすい環境になっている。この状態でHowを考えるなら上手くいくという。

キーワードからコンテンツを企画するのは無理だし、失敗する

そして、渡辺氏は本講演の核心とも言える疑問を投げかけた。果たして、あなたの身の回りにあるコンテンツ、たとえば、テレビ番組やCM、チラシや広報誌などにおいて、“検索キーワードをもとに制作されたコンテンツ”はあるのだろうか?

Googleトレンドという、キーワードの人気度を調査できるツールがあるので、そこから着想を得て作られたコンテンツはあるかもしれません。ですが基本的に“キーワードからコンテンツ案を作っている”ものって、ないはずなんです。なぜなら、作れないからです(渡辺氏)

そもそもコンテンツは、受け手となる人間、想定読者に届けるためのものである。想定読者をよく理解して、どんなコンテンツを提供したら彼らは満足したり、行動変容したりしてくれるのか、それを考える。行動を促す相手はユーザーなので、企画は読者を軸に考える必要がある。つまり、キーワードからいい企画を考えるのは、そもそも無理がある。なぜなら、キーワードからその人を想像できないからだ。

たとえば、「沖縄 旅行」で検索する人が、沖縄に旅行したいのだろうという分析はできる。だが、それは薄い分析に過ぎないと渡辺氏。さまざまな企業のオウンドメディア運用を見てきた中で、キーワードから直接、コンテンツを企画する企業は失敗している。成功する企業はそこからもう一段踏み込んで、人の分析を加えたり、あるいは人を軸に企画したり、読み手にどんな行動を期待するか、どんな感情を抱いてもらうかを考える。その企画を考える過程でキーワードというデータを参考にするという。

検索キーワードは人を理解するためのツールの1つ

検索キーワードから読み手を深く想像することは難しい。渡辺氏は恐竜を例に解説を進めた。恐竜の色は、緑色や茶色といったイメージがあるが、想像で勝手に色付けされたものに過ぎない。化石から恐竜の色は断定できない(ごく一部を除く)。検索キーワードは、まさに恐竜の化石と同じ。化石から恐竜の色を特定できないように、キーワードから読み手は理解できない。検索キーワードはあくまで読み手を理解するための1つのツールとして使うべきだとした。

もう1つの例として、渡辺氏はクレーンゲームサービスを取り上げた。渡辺氏がクレーンゲーム市場の検索キーワードを分析したところ、「作品名(アニメやゲーム、漫画など)」と「景品名(フィギュア)」を掛け合わせた検索キーワードのボリュームが少なからずあり、フリマアプリやオークションサイトでもそういった商品が出品されている。

検索キーワードから「特定の景品を獲得する目的でクレーンゲームを遊ぶ人がいる」という仮説が立てられる。だが、検索数も少なくデータを見ているだけでは実際にクレーンゲームで遊ぶ人たちの熱量はわからない。そこで、渡辺氏は近くのゲームセンターへ足を運び、どんな人がどんな様子で遊んでいるのかを観察し、自分でも遊んでみた。

そこで得た結論は「クレーンゲームが楽しくて遊ぶのであって、特定の景品が欲しくて遊ぶ、検索で見つけて遊ぶという行動は少数派」「暇つぶしの遊びとしてクレーンゲームは楽しい、そのついでに景品ももらう」だった。この実感を得た後では、キーワードの見え方はがらりと変わる。

現実のユーザーを観察するか、自分が体験・経験してキーワードを見るとより深く理解できます。つまり、キーワードからコンテンツは作れません。「キーワードを使うな」ではなく、コンテンツを企画するのだったら、人を理解すること。人を理解するためのツールの1つとして、キーワードを使ってください(渡辺氏)

AI時代に学ぶべき文章術、それは60年以上の歴史がある「パラグラフ・ライティング」

すでに述べたように、検索においてAIの影響が大きくなっているが、AI検索時代においてコンテンツ制作の秘訣はあるのだろうか。

AI検索向けのコンテンツ作りの作法はあるかと言えば、あり・なしの二択で答えるなら「あり」です。しかし、特別なテクニックではなく、60年以上前から存在するアカデミック・ライティングの技法を転用するだけです。正しい文章の書き方を学べばいいという話です。人間にとって理解しやすい文章は、AIも理解しやすいのです(渡辺氏)

「パラグラフ・ライティング」とは、コンテンツ全体でひとつの主張を決め、その主張を読み手に論理的に正確に伝えるために、パラグラフ(段落)単位で理由や根拠を展開していく。日本においては、大学の理系学部などで論文を書く際に学んだ方もいるのではないだろうか。渡辺氏は学生のときに「パラグラフ・ライティング」と「パラグラフ・リーディング」を学び、現在も原稿を執筆する際のベースにしていると明かす。

パラグラフ・ライティングの原則「ひとつの段落に、ひとつの主張」

パラグラフ・ライティングは解説書も数多くあるので、一冊読んで学んでみて欲しい。基本的な要素は次の3つだ:

  • トピック・センテンス(Topic Sentence、要約文≒主張)
  • サポーティング・センテンス(Supporting Sentence、支持文)
  • コンクルーティング・センテンス(Concluding sentence、結論文)

「要は、結論を最初に述べて、次にその理由や根拠を書き、段落の最後でもう1回伝えたいことを書く。これだけなんです」と渡辺氏。

パラグラフ‧ライティングの原則 1/2 「ひとつの段落に、ひとつの主張」

加えて、次の4つのルールがある:

  • Unity(統一性)
  • Coherence(一貫性・結束性)
  • Development(展開性)
  • Length(適切な長さ)
パラグラフ‧ライティングの原則 2/2 「4つのルール」

特にCoherence(一貫性‧結束性、話を読者にとってスムーズで理解しやすい順序で並べること)には注意したいという。

日本語は「が」という接続詞を使うと、簡単に2つの文をつなげられてしまう。「本日は大雪ですが、電車が止まっています」という具合だ。理解しやすくするなら「本日は大雪のために、電車が止まっています」と、前後関係のロジックがわかる接続表現を選ぶこと。この例文は単純なので接続詞「が」でも理解できるかもしれないが、複雑な内容のなかで「が」を利用すると文章の関係性がわからず、読み手に負荷を与える。

AIが引用しやすいのは具体的な数値や根拠である。よって、この4つのルールのうち、特に次の3つを意識するといいだろう:

  • 「Development(展開性)」を守ればAIに引用されやすくなる
  • 「Coherence(一貫性‧結束性)」を守ればAIが前後関係を理解しやすくなるので適切な箇所が引用されやすい
  • 「Unity(統一性)」をはっきりしておけば、その文章が何について記述されているのか、AIが理解しやすくなる

パラグラフ・ライティングを守れば、AI検索の仕組みはもちろん、マシンリーダブルに要求されるテクニカル要件はすべて満たせます。それだけの話なので、AI時代に必要な特別な技術はないと私は思っています。何かを学びたいなら、パラグラフ・ライティングを学んでください(渡辺氏)

「読み手に何を届けたいか」が重要

そのうえで、渡辺氏は「キーワードでコンテンツは作れない」と何度も強調する。パラグラフ・ライティングは、届けたい価値が定義されており、それを相手に正確に伝えるための手法である。となると、「読み手に何を届けるか」という軸がないと、パラグラフ・ライティングはできない。徹底的に人をベースに企画を考えるべきだ。

今のGoogleは、検索におけるユーザー行動を分析し、ユーザーの満足度を推定してコンテンツを評価している。キーワードの有無や、文章が整っているかは重要ではない。コンテンツはおもしろいか、読み進めたくなるか、読んだ後の満足度が高いかを判断している

人を軸にして、どういうコンテンツ企画であれば、人の心を動かせるのか、行動に影響を与えることができるのかを大切にしてください(渡辺氏)

SEOコンテンツ制作会社のアウトプットは本当に意味があるか、見極めを

コンテンツ制作を外注している方向けに、助言する場面もあった。SEOコンテンツ制作会社で読み手の話をせず、Googleの話ばかりする会社は要注意だ。「上位のページがこういう構成になっているから、(同じように)こうしましょう」「上位3ページはいずれもおすすめを10件紹介しているから、(差別化のために)うちは11件にしましょう」といった、ユーザー目線の根拠が欠如した提案は、論外である。また、コンテンツ成績(評価)シートのような資料を提示してくる会社も多いが、こちらも要注意。渡辺氏の肌感覚では「9割ぐらいの会社のコンテンツ成績シートは、薄っぺらすぎて役に立ちません」と言う。

たとえば、渡辺氏は今回の講演の想定聴講者を「コンテンツSEOに興味のある人」といった定義にはしていない。「何らかの理由でコンテンツ制作の担当者になってしまった。でも、専門知識はない。困ったので、生成AIに聞いたり、Googleで検索したりしてやり方を学んで見よう見まねでやっているが成果が出ない。上司に毎日のように詰められる。けど、上司は何も教えてくれないどころか、スパムのようなアイデアを平然と提案してきて困る、どうしよう」という人を想定して講演内容を考えているという。

コンテンツを作る際にここまで考えている渡辺氏からすると、大抵のコンテンツ成績シートは掘り下げが全く足りていない。そんなアウトプットしか出せない企業との契約は止めたほうがいいだろう。

AI検索トラッキングは必要? 事業会社なら現時点では「不要」

続いて、SEOに携わる人なら気になるであろう、自社サイトがAI検索でどのように扱われているか、把握・トラッキングするべきかというテーマを取り上げた。事業会社の場合、現時点で投資する意味はないと渡辺氏は言い切る。DMMグループのオンライン検索領域を管掌する立場として、表示状況の計測は無駄だからやらないと決めており、AI検索対策についても「従来SEOの範囲で対応できる話に過ぎず、今は特別な対応はしない」と意思決定しているという。

理由は明確で、今そこに会社のリソースを投資しても会社が望む成果が得られないからです。DMMは比較的大きな企業で多岐にわたる事業を展開していますが、その会社がいまは要らないと判断しました。これはみなさんの会社における投資の合理性を考えるうえでの、ひとつの判断材料になるのではないかと思います(渡辺氏)

AI検索の計測の是非を巡っては、ユーザーがクエリとして直接的に明示していない情報である「Implicit(暗黙の文脈)」および「Additional Context(付随する情報)」が参照されたうえでAIが回答を出力するという事情が存在する。利用者のプロフィールや、AIとの過去の会話内容、尋ね方など、さまざまな要因によってAIの回答は変化する。同じ質問をしても、尋ねるたびに結果が異なる。AIの回答内容を記録・トラッキングしても、そのデータを使って具体的なアクションへ落とし込めるわけでもなく、事業会社が望ましい成果に結びつけることは困難だ。これが、渡辺氏がAI検索の計測は必要ないとする理由だ。

ただし、代理店やツールベンダーであれば話が変わる。現在のAI検索まわりの計測は黎明期のため、試行錯誤しながら価値を見出すタイミングである。何のデータを、どのように計測し、どんな形式で可視化することが価値を創り出す可能性があるのか研究するために取り組む意味はあると付け加えた。

「AIに言及されやすい方法」を模索するのも、ほぼ無駄だという。ブランドの影響力や、信頼性の話に収束するためだ。これは、もはやマーケティング全体戦略で取り組むテーマとも言える。

マーケティングとSEO、両方ともわかる人が進めるべき話です。ただ、それが実現可能な組織は、ほとんどないでしょう。私は肩書こそSEO担当と言いつつ、マーケティング領域を幅広く見ているので、事業戦略と検索の話を絡めて話ができるし、ボードメンバーへの提案もできます。管掌範囲が広く、権限を持っている方がいるなら進められると思いますが、そうでない企業のほうが多いと思います。

そう考えると、コンテンツやSEOの担当者がブランドの影響力と信頼性を高めるためにできることは実質的にないと思いませんか(渡辺氏)

コンテンツ制作時に検索キーワードを考慮すべきケース

キーワードからコンテンツの企画はするべきではないが、制作過程において検索キーワードを意識したほうがいいケースがあるという。具体的には、「外国の人名」「地名」「製品名」などだ。

かつて米MLBのカージナルスやエンジェルスで活躍したAlberto Pujols選手は、日本語表記だとメディアによって「プホルス」「プーホールズ」「プーホルス」のように表記が異なる。同様にマリナーズに在籍するRandy Arozarenaは「アロザレナ」「アロザレーナ」のほか「R アロザレナ」といった表記がある。名前のスペルが同じ「LOWE」でも発音は「ラウ」と「ロウ」と異なる選手もいる。Googleは特にマイナーな外国語の表記ゆれに対応できない場合があるので、英語表記とともに括弧書きでカタカナ表記を書いておくのが無難だ。同様に海外のファッションブランドもルイ・ヴィトンやエルメスといった有名ブランドであれば問題はないが、日本で馴染みの薄いブランドは表記ゆれ対策が必要だ。

他にも、時間軸の表し方も意識してほしい。根拠やエビデンスに該当する箇所の時間は「2021年」「2023年6月6日」「昨年(2025年)」など、AIが処理しやすいように明確に記載すること。「先月」「先週」「昨年」「5年前」という書き方では、それがいつのことなのかAIは理解できない。

コンテンツ企画・制作・発信において読み手を意識すべき要素

渡辺氏はコンテンツ制作におけるユーザー理解の重要性をくり返し指摘してきたが、読み手を意識する要素はまだある。

要素1コンテキスト合致

メディア、コンテンツ、想定読者の適合性を考慮して、コンテンツは発信されるべきである。

たとえば、料理レシピサイトがPV欲しさに新たにゲーム攻略情報を発信したとする。しかし料理とゲームの関連性は薄く、コンテンツへの信用は低いだろう。ユーザーが訪問を避けると、Googleはユーザー行動重視で検索アルゴリズムを運用しているため、そのコンテンツは評価されない。

同様に、中小企業向けマーケティングツールを提供している企業が、リーチを広げようと会社設立やレンタルオフィス、青色申告、法務など手を広げたものの期待した成果に結びつかないことも少なくない。トピックの関連性があることと、あなたのメディアを訪問するユーザーがそのトピックに関心があるかは別の問題である。

検索集客のために、そのサイト・メディアやユーザーが期待するものと異なるコンテンツの発信はやめよう。

要素2情報到達の容易さ

読み手が容易に情報を取得できるような情報デザインも重要だ。ページタイトルは検索結果におけるクリック率に影響する。ユーザー行動評価に影響するので、ユーザーに選んでもらえるよう調整しよう。同時に、どの情報をページのどの場所に、どのような形式で配置するかもユーザー体験に影響する。

ファーストビューでユーザー行動が変わる。徹底的に作りこもう

ファーストビューも重要だ。Webサイト訪問時に最初から見える領域であり、ファーストビューで「ユーザーが離脱するか、その先を読み進めたくなるか」が決まる

私が現場で仕事をする時は、ファーストビューにとにかくこだわります。このページは何なのか。ユーザーはどういう気持ちでここにやってくるのか。それを踏まえたときに、ファーストビューで何を見せるべきか。どう配置すればスクロールして読み進めてくれるかを徹底的に考えます(渡辺氏)

ファーストビューに何を表示すべきかは、サイト種別によって異なる。渡辺氏は、検索体験におけるコンテキストや、ページ種別に分けて軸を考えているという:

  • 単純回答(事実確認)系
  • 比較系
  • レビュー・口コミ系(≒体験‧経験を求める系)
  • カテゴリ/ジャンル別のアイテム一覧画面系
ファーストビューに何を表示すべきかサイト別の最適解

たとえば、ゲーム攻略サイトのキャラクター別の紹介ページは「アイテム詳細ページ」に当てはまる。キャラクター情報のうち、ユーザーによって知りたい情報は異なる。具体的には、使える技の一覧や、おすすめの技の組み合わせ、最強キャラランク、チーム編成時に相性が良い他キャラクターが知りたいなど。サイトのなかには、情報の並べ方の論理性よりも、ユーザーが真っ先に確認したいであろう項目を上部に表示しているメディアもある。

アイテム(情報)一覧画面であれば1ページあたり何件表示するのが最適か、画像サイズは縦横何ピクセルがいいのか、限られた表示スペースのなかでどの情報を相対的に大きく見せるかなど。これを突き詰めると、ユーザー行動は変わる

テキストにこだわらず、ユーザーが瞬時に理解できるよう情報を伝える工夫を

SEOと聞くとテキストにこだわりがちだが、ユーザー行動に良い影響を与えるためにはテキストである必要はない。「ユーザー行動に良い影響を与えるとは、ユーザーが瞬時に理解できるよう情報を伝える」ということだ。たとえば、ぬいぐるみ販売サイトならば、言葉で「もふもふしています」と書くより、質感が伝わる写真を1枚掲載したほうがユーザーに伝わるだろう。

渡辺氏は、中古ノートPCの販売サイトでの事例を紹介した。ファーストビューにノートPCの外観写真と重量、画面サイズだけを表示する検証をしたという。中古ノートPCを探すユーザーにとって重要なのは、自宅で使うのか持ち運ぶのかと、画面サイズだと考えられる。その要素をファーストビューで表示すれば、自分が欲しい用途に合っているかが瞬時に判断しやすくなる。検証の結果、非常に良い成果が出たという。

コンテンツ制作者の仕事は、読者にとって最高の理解者になること

最後に、渡辺氏は海外の配車アプリ「Grab」を例に、“ユーザーが実際に情報を利用するシーンに合わせて、目的を達成できるよう情報を作る”意義を説いた。Grabはシンガポールや東南アジアで人気の配車アプリサービスだ。配車アプリには一般的に、「配車名 登録方法」といった検索需要があり、その検索に対応するサイトが存在する。2017年の事例となるが、当時はGrabを利用するには日本国内で登録は完了できず、アプリを利用可能な国に入国してからの操作が必要だった。しかし当時、日本人向けにGrabの登録手順を紹介しているサイトで、最終登録は現地に行かなければできないと記載しているサイトはなかったという。

この傾向を発見した渡辺氏は、知人に該当するメディア運営者がいたため、実験として「このステップは現地に行ってからおこなってください」と明記してもらった。その結果、検索流入が増えたという。ユーザーが実際に情報を利用するシーンはどんな場面なのか、そこでユーザーが直面する課題やペインポイントを把握しそれに寄り添ったコンテンツを設計することが重要だ。

Googleを気にしてコンテンツを作る時代ではない───渡辺氏はこう結論付ける。Googleは創業から27年あまりのなかで、キーワードの有無やリンクによるサイトの人気投票(外部リンク)重視から、ユーザー行動重視に評価を変えてきた。これによって、「コンテンツを作るのはユーザーのため」という方向性が決定的となった。渡辺氏は次のように語り、講演を締めくくった。

ユーザーがコンテンツを読み、役に立った、友だちと共有したい。他のテーマで知りたいことがあったら、「あのサイトにいけば何か答えが書いてあるだろう」と思ってもらえる存在になる。それが読者にとって最高の理解者になる、ということです。そこを目指してコンテンツ制作なり、メディアを運営することが長期的には良い成果を生み出すのではないでしょうか(渡辺氏)

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