AIを活用することで、外注に頼らず広告クリエイティブを内製化し、制作コストを抑え、改善スピードを上げられるのではないか。そう期待するマーケターは少なくないだろう。
『ネット広告クリエイティブ“打ち手”大全』の著者であるCRAFTの宝田大樹氏が、「Web担当者Forum デジタルマーケターズサミット 2026 Winter」に登壇。AIと一緒にクリエイティブを作るステップと、「広告設計パレット」と名付けた独自の手法を披露した。
人とAIの特性を理解し、適材適所で協働しよう
用途別にAIを使い分ける
AIと一緒に良い広告クリエイティブを作るステップを紹介する前に、宝田氏は普段どんなAIを使っているのか、用途別に紹介した。
- キャッチコピー……Gemini・ChatGPT・Claude
- 素材……Gemini・Kling AI(クリングエーアイ)・Adobe Firefly
- 装飾(デザイン)……ChatGPT・Gemini
続いて、用途別に各AIを使ってみた結果を提示した。たとえば、Gemini・ChatGPT・Claude に「ビール会社のキャッチコピーを3つ作って」と頼んだところ、次図のような結果となったという。
同様に、「静止画像素材」「動画素材」「装飾」においても、作成依頼を試してみた結果、次のような得意・不得意がみえた。
キャッチコピーは、どのAIも得意。静止画素材ならAdobe Fireflyがオススメ。動画素材はKling AIが優れている。装飾はChatGPTもGeminiも大差なく、まだそのまま配信できるレベルではない(宝田氏)
人とAIの得意領域
人とAIにも、それぞれに得意な領域がある。2026年2月時点における「人が得意な領域」と「AIが得意な領域」を、宝田氏は次のようにまとめた。
- 商材情報収集……AIは書籍やWeb上の大量の情報を収集するのは得意だが、今売りたい商品や先月リリースしたばかりのサービスといった固有の情報は、人が把握していることが多い。
- 情報の構造化……複数のプロジェクト情報など、大量の情報を整理するのはAIが得意。
- 売れる、心を動かす要素……現状では、心情の設計や理解は、まだAIだと不十分。
- コピー……質は人のほうが優れているが、量はAIのほうが圧倒的に出せる。
- 素材収集……人の場合、撮影やキャスティング、スタジオ手配など、時間も費用もかかるため、AIに軍配が上がる。
- 構成・装飾……まだデザイナーが必要。
- 結果の振り返り……まだ人のほうが精度は高い。
宝田氏は、「このように整理したうえで、人が強いところとAIが強いところを掛け合わせながら、クリエイティブを作っていくといい」と語った。
AIと一緒に広告クリエイティブを作る5つのステップ
では具体的に、どのように人とAIを掛け合わせてクリエイティブを作ればいいのか。次のステップにそって、順に見ていこう。
- ステップ1 人:商材の情報を集める → AI:情報をすべてテキスト化する
- ステップ2 人:広告設計パレットを使う → AI:広告設計パレットをもとに構造化する
- ステップ3 人:他社の情報を集める → AI:コピー構成のパターン出し
- ステップ4 人:マーケ脳で選び、デザイン脳で装飾(→広告配信)
- ステップ5 人:結果情報を集める → AI:好調なクリエイティブの要因を分析する(→ステップ3に戻る)
ステップ1人:商材の情報を集める → AI:情報をすべてテキスト化する
ステップ1-1:人が商材の情報を集める
まずは、商材の情報を集めるにあたっては、人が行うほうがいいという。既存のLP(ランディングページ)・記事・アンケート結果・自社ホームページ・配信実績のある広告バナー・顧客へのヒアリング履歴など、売りたい商材にまつわるデジタル資産はすべて収集する。なお、情報の権利者から許諾を得ることは忘れないでほしい。
ステップ1-2:情報をすべてテキスト化する
次に、集めた情報をすべてAIに投入して、テキスト化する。Webページであれば、FireShotのようなキャプチャツールを使って画像として保存したものを、Geminiに読み込ませるといい。画像からのテキスト化はGeminiが得意とするからだ。
あるいは、過去の配信実績が良かったクリエイティブがあれば、「このバナーは効果が高かったので学習してください」といった前提とともにGeminiに渡すのも効果的だ。何にせよ、AIに与える情報は多ければ多いほど精度が上がりやすい。
ステップ2人:広告設計パレットを使う → AI:広告設計パレットをもとに構造化する
ステップ2-1:人が広告設計パレットを使う
広告設計パレットとは、良い広告クリエイティブに必要な6つの要素(以下のA〜F)を洗い出したものである。A~Fが入っているかをチェックすることで、クリエイティブの良し悪しを判断することができる。
A. キャッチコピーが入っているか
B. キャッチコピーの理由、説明が入っているか
C. 商品の価格、オファーが入っているか
D. 商品に納得感、安心感があるかどうか
E. 今買う理由、限定感、希少性があるかどうか
F. クロージングが入っているかどうか
サイズやデザインの制約もあるため、必ずしもすべてを網羅する必要はない。だが、各要素の優先順位を決め、「意図的に入れる」or「あきらめる」を判断することが重要である。
この視点で自社の既存クリエイティブをチェックしてみると、意図せず欠けている要素や加えたくなる要素が見つかるなど、何かしらの気づきを得られるはずだ(宝田氏)
この広告設計パレットをもとに、次図のように、静止画バナー・縦長動画・LPといったフォーマットに合わせて要素を設計し、検証を重ねながら自社にとって最適な組み合わせを見つけていくといい。
ステップ2-2:AIがパレットを元に構造化する
ここまでできたら、次は広告設計パレットをAIに渡す。たとえば「この要素をもとに、先に渡したすべての情報を構造化してください」と指示を出す。すると、AIは、キャッチコピーはこれ、理由・説明はこれ、……と、情報を瞬時にカテゴライズして提示してくれる。
ステップ3人:他社の情報を集める → AI:コピー構成のパターン出し
ステップ3-1:人が他社の情報を集める_普遍性とトレンド
ここまでのステップだけでも広告クリエイティブは制作できるが、さらに強くするために、他社の情報も集めていく。模倣するためではなく、現在のトレンドを把握したうえで、要素として取り入れるためだ。
宝田氏が実際に行っているのは、Metaの広告ライブラリを活用した情報収集だという。広告ライブラリでキーワード検索をして、現在Facebook・Instagram・Threadsなどで配信されている広告をチェックするのだ。また、「Ad.com(アドドットコム)」という有料の競合分析ツールも活用している。さらには、良いと思った広告を共有するSlackチャンネルを社内で設け、アイデアを出し合っている。
ステップ3-2:AIがコピー構成のパターンを出す
こうして自社の広告クリエイティブにも取り入れられそうな要素が見えてきたら、AIに「この要素を取り入れたコピーのパターンを出してみて」と指示を出す。すると、トレンド情報を加味したキャッチコピーを出してくれる。
ステップ4人:マーケ脳で選び、デザイン脳で装飾
宝田氏は、「クリエイティブの要素・強弱・順序を決めるのはマーケター脳をもつ人がやるべきことであり、それをお客様に伝わりやすいよう装飾するのがデザイナー脳をもつ人の役割だ」という。
さらに、「マーケター脳で作成したワイヤーフレームをAIに渡すだけでも、ある程度のアウトプットは出してくれるが、現状はまだデザイナーが介入して仕上げてもらったほうが無難だ」と言及する。
なお、CanvaにもAI機能は搭載されているが、ゼロから完全自動でバナーを生成するのはまだ難しいという。テンプレートを提案してくれるが、クリエイティブを完成させるには、手動で素材やキャッチコピーを差し替える必要がある。
ここまでで広告クリエイティブは完成した。さっそく配信してみよう。
ステップ5人:結果情報を集める → AI:好調なクリエイティブの要因を分析する
ステップ5-1:人が結果情報を集める 勝ち筋の抽出
広告を配信したら、効果検証をするための結果情報を集める。そして、広告設計パレットにもとづき、要素のサイズや配置を変えるなどして、複数パターンのクリエイティブでA/Bテストをしてみるといい。
ステップ5-2:好調なクリエイティブの要因を分析する
クリエイティブ案ごとに費用・表示回数・クリック単価・クリック数/率・CV数/率・CPAといった数字を出したら、それらの結果をAIに渡し、好調の要因を分析する。その際、「要素・強弱・順序の観点で次の案を出していくといい」と宝田氏は語る。
そしてAIが導き出した考察をヒントに、次のクリエイティブの改善案を検討していく。たとえば強弱の具体例は次の通りだ。
強調の具体例:次図は、「価格、オファー」の要素の強弱だけを変えてテストした例。
このように、広告設計パレットとAIをうまく活用すれば、無限に改善案を出せそうである。
「AIに任せれば、瞬時に大量のクリエイティブを生成できる。その一方で、現在はクリエイティブの質や精度といった点で満足いくものができているのか、わからなくなってきている時期ではないだろうか。だからこそ広告設計パレットを活用して、必要な要素の抜け漏れを確認するなど、人の判断や指示の質を高めてもらいたい」と宝田氏は強調し、セミナーを締めくくった。
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