X(旧Twitter)の利用規約改定「中身のない」アカウントが次々閉鎖…その背景とねらいを考える
こんにちは。Webコンサルティングの森和吉です。
2023年7月にTwitterからXへ名称変更が行われたことは、みなさんの記憶に新しいことと思いますが、2024年11月15日にXの利用規約の大幅な改定が行われました(https://x.com/ja/tos)。この改訂でどんな影響が出ているのか、この改訂の背景を考察していきます。
大規模な利用規約改定が行われ、「中身のない」アカウントが次々閉鎖
2024年11月15日にXの大幅な利用規約の改定が行われました。これは、Xになってから初めての大規模な改訂で、その影響を受けた方も少なからずいたようです。
その1つが、「シャドウバン」です。シャドウバンとは、Xの運営側が悪質と判断したアカウントに対して制限を課すことです。アカウントは停止・凍結されませんが、投稿やアカウントが他のユーザーに表示されにくくなる現象を指します。
ひと昔前からシャドウバンはありましたが、シャドウバンされるのはアダルト系やボットの投稿など「明らかに質の悪い」アカウントが対象でした。しかし、今回の利用規約の改訂後は、数万人単位でフォロワーがいる良好そうなアカウントですら、シャドウバンの対象になっていたことです。そういったアカウントを見てみると、2つの共通点があるように感じました。
シャドウバン対象の共通点①故意的に人を集めているアカウント
1つは、故意的に人を集めているアカウントです。たとえば、「おはようございます」や「おやすみなさい」といった挨拶をしているアカウント、あるいはコピペで挨拶を返しているようなアカウントは軒並みシャドウバンされていたようです。
シャドウバン対象の共通点②中身の薄い投稿
そしてもう1つは、中身の薄い投稿です。たとえば、「疲れた」「お腹が空いた」といった個人のつぶやき投稿をしているアカウントもシャドウバンされていたようです。もちろん、これは私の感覚値ですが、いずれにしても人間味がない、定型文のような投稿は今後、リスクがあると思ってよいでしょう。
Xの背景には「真面目な投稿者を救い上げよう」というねらいが?!
こうした改定の背景にはいったい何があるのでしょうか? フォロワーの多い人への優遇措置かと一瞬考えましたが、フォロワーが多いアカウントでもシャドウバンされているところを見ると、どうやらそうでもない。原因を探るべくもう少し調べていくと、ユーザーの平均滞在時間を長くしたいという意図があるように思えました。
というのも、「他のSNSと比較すると、Xでは滞在時間が短い」ことがわかったからです。2023年10月にXが実施した調査によると、1日の平均滞在時間は32分でしたが、2024年1月、マスク氏が「最も正確な指標」と呼ぶデータで測定した結果、この数値を下回っていることが明らかになったのです*。
*参照:マスク氏が言う「最も正確な指標」で測ると、やはりXのユーザー一人当たり平均滞在時間は減少している件 https://marketing.itmedia.co.jp/mm/articles/2401/10/news065.html
滞在時間の減少には、他のSNSの台頭などさまざまな要因が考えられますが、1つには、Xが始めた収益化によって、「インプレゾンビ」が発生したことも考えられます。収益化には、一定以上の閲覧数が関わってきますが、インプレゾンビとはSNSでバズった投稿にコメントを残すことで閲覧数を稼ぐ行為のことです。これによって、コメント欄には多くの無意味な投稿が増えてしまいました*。
*参照:SNSで横行 “インプレゾンビ”の正体は?投稿者に直撃すると…https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240511/k10014444011000.html
そもそも投稿を見て楽しむ場だったXが、情報の無法地帯になっている。そうしたことが、信頼性を失わせているのです。こうした背景から、「リテラシーのある発信をしている投稿者を優遇する」措置がとられているのではないか、と見ています。
しかし、それは「質重視」で投稿を続けてきた人であればむしろ、チャンスだともいえます。「おはよう」や「おやすみ」などの挨拶で集めたアカウントではなく、たとえ数百人のフォロワーしかいなくても、内容の濃い、有益な情報を発信しているアカウントが求められる時代になってくると考えていいと思います。
Xの今後、どうなる?
では、Xは今後どんなアプリになっていくのでしょうか? おそらく、滞在時間を長くするために、外部へのリンクをさせない一環としてX内で完結する機能が増えていくでしょう。動画機能が拡充するかもしれません。
また、最近ささやかれているのが、中国のチャットアプリ「We Chat」のようなスーパーアプリになる、ということです。スーパーアプリとは、1つのアプリでビデオ通話や決済機能などがワンストップで使用できるアプリのこと。実装されるかは定かはありませんが、いずれにしてもXの動きには要注目です。
まとめ
実はXの本国である米国では、XよりもFacebookユーザーの方が多いのです。このような現状に対し、イーロン・マスクは米国でXの利用者数をもっと増やしたいというねらいもあるでしょう。ちなみに、日本ではXが大変好まれています。余談ですが、Blueskyなど他のSNSが出てきたとしても、日本だけは新しいアプリにはなびかない気もしています。
協力:株式会社SWIFT、@ryo_bussiness
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