Pontaの成功から学ぶ、「キャラクターマーケティング」の重要ポイントを制作者に聞いた

Pontaなど、成功事例の共通点から学ぶキャラクターマーケティングの秘訣を電通のアートディレクターが解説。
2010年に誕生した共通ポイントサービスのキャラクター「Ponta(ポンタ)」

ブランディングや認知向上、販売促進を目的としたマーケティング施策において、多くの企業や自治体で活用されているキャラクター。熊本県の「くまモン」や共通ポイントサービスの「Ponta(ポンタ)」など、成功事例も多く出ている。

では、キャラクターマーケティングを成功させるには何が必要なのか。「Ponta」やテレビ東京「ナナナ」のキャラクターデザインを手がける電通 カスタマーエクスペリエンス・クリエーティブ・センター アートディレクターの糸乘(いとのり) 健太郎氏に、「成功事例の共通点とキャラクターマーケティングの難しさ」を聞いた。

キャラクター×テクノロジーで提供、メリットはさまざま

約17年にわたってキャラクターデザインに携わる糸乘氏は、「ここ10年ほどでキャラクターの活用方法が増えた」と話す。

スマートフォンの登場やテクノロジーの発達により、SNSが活発化したり、ARやVRが誕生したり、メディアが複雑化しています。一昔前はキャラクターの露出といえばCMやパッケージが多かったのですが、現在はSNSをはじめ、露出媒体が多様化しています(糸乘氏)

PontaはAI、AR、アバターなどさまざまなキャラクターの新しい活用に取り組んでいる

そうした変化を踏まえて、電通ではキャラクターにAIやAR、アバターなどのテクノロジーをかけ合わせて顧客体験を高める「キャラクターCXソリューション」を新たに立ち上げ、サービスとして提供している。現代におけるキャラクターマーケティングのメリットとして、糸乘氏は以下を挙げた。

  • 企業やサービスのシンボルとして、コミュニケーションを統一できる
  • 自社開発のキャラクターは、権利などを気にせず長期で使い続けられる
  • 親しみやすく、ファンになってもらいやすい
  • 子どもから大人まで幅広くアプローチできる
  • ARやVR、AIなどテクノロジーとの相性がいい

1つシンボルとなるキャラクターがいるだけで、複数のメディアに露出させても統一感を保ちやすくなります。特に、日本人はキャラクターを好む国民性なので、幅広い層に受け入れてもらいやすい土壌があります(糸乘氏)

オリックス・バファローズとのコラボなど、キャラクターはこんな場面で活用できる

キャラクターの活用用途を調べてみると、ホームページやSNS、広告でのコミュニケーション、パッケージへの露出、スタンプやグッズへの展開、着ぐるみでのイベント出演、ライセンス事業など多岐にわたる。

実際にキャラクターは、どんな場面で活用されているのか。糸乘氏が手がけたPontaにおける活用事例を紹介する。

オリックス・バファローズとコラボしたXのアカウント「バファローズ☆ポンタ」の投稿
2024年もバファローズのファンを楽しませる「バファローズ☆ポンタDAY」が開催された

オリックス・バファローズとコラボしたXのアカウント「バファローズ☆ポンタ」は、まさに成功事例の1つで、Pontaの認知や愛着度の向上、サービス利用の活性化に役立っているという。Pontaを運営する株式会社ロイヤリティ マーケティングが2016年シーズンにバファローズのキャップスポンサーとなったことを機に、キャラクター「バファローズ☆ポンタ」がバファローズを応援するというスタイルで運用されている。

現在、32.1万人のフォロワーがおり、ほぼ毎日投稿がされている。2016年のSNS使用開始以来、バファローズを応援するファンと気持ちを共有するようなコミュニケーションを継続することでフォロワーが増加、フォロワーとの一体感を醸成しており、各投稿へのリアクションも上々だ。

Pontaを運営するロイヤリティマーケティングは、Ponta会員のバファローズ☆ポンタへの好意度を調査していて、好意度が高い人はPontaの経済圏での利用状況が活発な傾向があるそうです。キャラクターの好意度が商品やサービスの購入意欲につながることは、十分にあるだろうと考えます(糸乘氏)

また、ローソンでは2023年の年末に、店頭でPontaと消費者がコミュニケーションを取れる実証実験を実施した。AIのシステムを入れたPontaのぬいぐるみを店頭に置いて、顧客の呼びかけに答えるという仕様だ。

挨拶などの会話だけでなく、「寒い日はホットコーヒーがおすすめです」など、さりげなく商品の紹介もできるよう工夫を施したという。期間限定での設置だったが、来客した多くの顧客がPontaに話しかけており、中には来店のたびに話しかける人もいたそうだ。

キャラクターマーケティングを成功させる「4つのポイント」

キャラクターマーケティングの成功事例といえば、熊本県の「くまモン」、滋賀県彦根市の「ひこにゃん」、不二家の「ペコちゃん、ポコちゃん」、日清チキンラーメンの「ひよこちゃん」、ゼスプリの「キウイブラザーズ」などが挙げられる。糸乘氏が手がけた「Ponta」や「ナナナ」も、その1つだ。

ナナナはSNSやイベントでの露出、ファンコミュニティサイト、グッズ展開など幅広く活動している

成功するキャラクターマーケティングには、どんな共通点があるのだろうか。糸乘氏は以下の4点を挙げた。

ポイント1造形がシンプルである

さまざまなメディアに露出したり、ぬいぐるみにしたり、着せ替えたりする際に、複雑な造形であるとアレンジのハードルが上がってしまう。使い勝手の良さを考慮して、なるべくシンプルなデザインにすると良い

ポイント2無条件で好きになるような「かわいさ」がある

キャラクターとして親しんでもらうには、誰が見ても「かわいい」と思える魅力のわかりやすさが求められる。まずは「かわいさ」や「インパクト」が優先で、顧客が無条件に反応してしまうようなキャラクターの造形が大事。

ポイント3サービスや商品をふわっと想起させる

商品やサービスを直接的に連想させるよりも、ふわっと伝わるぐらいがちょうどいい。キウイブラザーズのように商品そのものをキャラクターにした成功事例もあるが、多くは商品やサービスをそのままキャラクターに落とし込んでいない

たとえば、Pontaは「ポイントがポンポンたまる」というサービス特徴をなんとなく想起できるように意識してデザインや名前を決めている。ダイキン工業の「ぴちょんくん」も、エアコンという商品そのものではなく、商品の特性をイメージできるような「しずく」をモチーフにしている。

ポイント4競合と差別化できている

たとえば、糸乘氏が手がけたテレビ東京の「ナナナ」は、他局が動物を用いていたのに対し、フルーツをモチーフに採用している。これには、テレビ東京が持つ独自性を強調させる狙いがある。ナナナの誕生はデジタル化のタイミングであり、12チャンネルから7チャンネルに変わることを認知してもらう必要があったため、「7」の形を表すことができる「バナナ」を選んだという。

数字の「7」にもなれるバナナのモチーフが、テレビ東京の狙いにマッチしていた

「認知ゼロ」からファンを獲得する難しさも

あらゆる企業にとって使い勝手がいいキャラクターだが、ネガティブポイントもある。

キャラクターはインパクトが高まる分、商品やサービス自体のメリットや印象を引き立ててくれます。ただ、すでに商品やサービスそのものに尖った独自性がある場合、キャラクターを活用することで、キャラクターに印象を持っていかれてしまうことも。すでに差別化に成功している場合は、キャラクターマーケティングのメリットを享受しづらいかもしれません(糸乘氏)

もう1つネガティブな側面として挙げられるのが、ファンを獲得するために一定の時間や手間がかかることだ。

すでに知名度や好感度が高い著名人と異なり、まったく認知がない状態でキャラクターを活用しても、狙ったような反応は得づらいでしょう。地道に発信を続けてキャラクターの認知を高め、親しみを持ってもらう努力が必要です。Pontaも今では8割ほどの認知率がありますが、一定の認知を獲得するまでに数年を要しています(糸乘氏)

キャラクターマーケティングを成功させるには、愛着を持ってキャラクターを育てながら、継続的な露出による消費者とのコミュニケーションが求められる。一定の投資が必要だが、その後の活用可能性を踏まえれば、投資価値があるといえるだろう。

用語集
AR / CX / SNS / VR / X / スマートフォン / ブランディング / ロイヤリティ
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