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街中でよく見かける赤い自転車「バイクシェアサービス」が累計利用1億回を突破! 成功理由を聞いた

「バイクシェアサービス」は2011年の実証実験から始まり、現在全国で展開。バイクシェアサービスの強みや利用拡大の背景を聞いた。
累計利用回数が1億回を超えた「バイクシェアサービス」(ドコモ・バイクシェア提供、以下同)

2011年に横浜の実証実験からスタートした「バイクシェアサービス」。ドコモが強みとする通信や携帯電話のモジュールを活用して、電動アシスト自転車を貸し出すサービスで、近隣のサイクルポートで自転車を借りて、乗車後は目的地に近いサイクルポートに返却する。2015年にはNTTドコモから分社化し、ドコモ・バイクシェア社を設立して、事業を運営している。

サービス開始から12年が経過した現在は提供エリアが全国的に広がり、会員数は約250万人に拡大。累計利用回数は1億回を突破した(2024年3月時点)。

運営を続けるなかで、システムにAIを導入してオペレーションを効率化したり、他社サービスとAPI連携して利用者の拡大を図ったりと試行錯誤を重ねているという。バイクシェアサービスの強みや利用拡大の背景をドコモ・バイクシェア社 経営企画部 担当課長 大橋純子氏に聞いた。

ポートは約3800ヵ所に拡大。気軽に借りて返せる

近年、街中でよく見かけるようになったシェアサイクル。中でも参入が早かったのがドコモグループが提供するバイクシェアサービスだ。

現状、最も導入台数が多いヤマハ製の電動アシスト自転車(身長145cm以上が推奨)

貸し出しているのは、主にヤマハ、またはパナソニックの電動アシスト自転車となり、最も導入台数が多いヤマハの機種はフル充電・通常モードで約57kmの走行が可能だ。一般的な電動アシスト自転車と機能性は同様だが、貸出用の端末が取り付けられているほか、タイヤは耐久性の高いパンクレスタイヤに変更されている。

全国に約3770ヵ所あるサイクルポートから自転車を借りて、乗車を終えたら目的地に近いサイクルポートに返却するというシンプルな利用手順だ。

レンタルの手順は以下のとおりとなる(最新の丸い操作端末の場合。四角い操作端末の場合は、操作方法が異なる)。

1. 専用アプリをダウンロードして、利用エリアを選んで会員登録する

2. 利用したい自転車を選び予約する(20分間その自転車が確保できる。予約しなくても使える)

アプリでは、サイクルポートにある自転車の数や充電状態などがわかる

3. 自転車に付属された端末の「開始」ボタンを押して、QRコードを読み込む(登録済のICカードをかざしてもOK)

アプリ上で「鍵をあける」操作を行い、自転車の端末で「開始」ボタンを押してQRコードを読み込む

 

4. 自転車に乗って移動する

5. 目的地付近のサイクルポートで自転車の鍵をかけ、端末の「返却」ボタンを押す

自転車の鍵をかけて返却する

サイクルポートにより営業時間が異なる場合もあるが、ターミナル駅など利用頻度が高いエリアは24時間利用できる。利用料金もエリアごとに異なるが、東京では1回会員(165円/30分)、月額会員(3,300円/月)、1日パス(1,650円/日)となる。

基本的にサイクルポートは500メートル四方に数ヵ所あり、移動の需要が高いターミナル駅やバスが集まる交通結節点、ショッピングモールの駐輪場など人の流動性が高い場所に設置されている。

事業モデルは直営モデルとASPモデルの2つ、千代田区の「ちよくる」など

バイクシェアサービスの事業モデルは、ドコモ・バイクシェア社が運営する「直営モデル」と、ドコモ・バイクシェア社のシステムを提供して運営は自治体や地域の事業者が担う「ASPモデル」の2種類がある。

割合としてはASPモデルのほうが多く、各エリアごとにオリジナルの名前を付けて運営されています。たとえば、千代田区は『ちよくる』、沖縄県那覇市は『ちゅらチャリ』など。市民の移動手段として役立てたい、あるいは街の回遊性を高めたいといった理由でシェアサイクル事業を開始される自治体や事業者が多いですね(大橋氏)

シェアサイクルは全国の自治体からも注目されている

自治体や事業者としては、バイクシェアサービスのシステムを有効活用することで、シェアサイクル事業に参入しやすく、ドコモ・バイクシェア社としては自治体が保持している公有地を活用しながら事業を拡大できる。互いにメリットがあり、この10年ほどで提供エリアが拡大しているそうだ。

東京では都の広域連携協定を活用し、同協定に連携している16区内で直営モデルでサービスを提供している。

乗車後に返却するという仕組み上、地続きでのエリア拡大が求められます。飛び地でサービスを提供しても返却が難しくなってしまうためです。そういった制限はありつつも、引き続きエリアは拡大していく方針で、各地の自治体や事業者との交渉を進めています(大橋氏)

利用状況をAIで学習、運営コストの高い再配置業務を効率化

現状のバイクシェアサービスの会員属性は7:3で男性が多く、男性の30~40代が全体の約4割を占めている。通勤での利用が目立ち、平日の8時前後と18時前後に利用回数が増える傾向があるそうだ。

月額会員になると1ヵ月3,300円(東京都の価格)で、1回30分以内の利用は乗り放題になります。自宅から職場まで自転車で30分以内の距離にあるような方は、月額会員になって毎日のように利用されていますね。通勤にかかる交通費を削減できる、気分転換やエクササイズになるといった動機でシェアサイクルを選ぶ方が多いです(大橋氏)

シェアサイクル事業の肝になるのは、こうした利用用途を踏まえて自転車を適切に配置し、安全に乗車できる状態を維持しておくことだ。バイクシェアサービスでは、返却された自転車を適切なサイクルポートに戻す「再配置業務」を、パートナー企業に委託して日々行っているという。

東京では24時間体制でトラックを走らせて、適切なサイクルポートに自転車を再配置している

再配置は、最も運営コストが高い業務です。2018年からはAIを導入し、定期的に利用状況のデータをAIに学習させて再配置を効率化しています。どのサイクルポートに何台補充するといいかというレコメンドが示されるので、経験値が低い人が担当しても一定の品質を維持できます。ただ、イベントや天気の情報などは反映されていないので、その点は人の経験に頼らざるを得ません(大橋氏)

バッテリーの交換やブレーキの修理など軽微な対応は、担当者が各サイクルポートに出向いて行っている

自転車のメンテナンスにおいては年に1回の定期点検を実施しているが、通常の自転車よりも利用頻度が高い分、故障しやすくなる。利用者からの報告を受けるなどして故障や不備を把握し、その都度、タイヤやブレーキの修理、部品の交換といったメンテナンスを実施しているという。

「NAVITIME」や「ジョルダン乗換案内」など、他社との連携で利用者の利便性向上

バイクシェアサービスが累計利用1億回を突破できた背景には、他社が提供するさまざまなサービスとの連携もある。たとえば、「NAVITIME(ナビタイム)」や「ジョルダン乗換案内」などの交通系サービスでは、シェアサイクルを利用した場合の経路が検索できる。

また、JR東日本が提供するMaasアプリ「Ringo Pass(リンゴパス)」やモバイルバッテリーレンタルの「ChargeSPOT(チャージスポット)」との連携では、各社のサービス画面からバイクシェアサービスが使える。バイクシェアサービスのアプリで会員登録をせずとも同サービスが利用できるため、利用者の利便性が高まるのだ。

他社サービスと積極的に連携して、事業拡大につなげている

大橋氏によると、バイクシェアサービスの知名度は全国で約3割程度で、利用者は約1割に留まるという。伸びるポテンシャルがあることから、他社サービスとの連携を強化している。

そうした連携と並んで注力しているのが、サイクルポート数の拡大だ。

さらに利用者を拡大するには、サイクルポート数を増やして高密度でサービスを提供することが欠かせません。当社の場合、少なくとも5台分の車輪止めのラックと看板を置くので、3メートル×5メートル以上の場所が必要になります。再配置業者のトラックやバンを一時駐車するスペースも確保しなければならず、それらの条件を満たす場所を探すのが難しいです(大橋氏)

また、「新たなモビリティの活用可能性」も模索している。2023年5月には東京・湾岸エリアでEVバイク(3輪)のレンタルを開始した。利用の際は、通常の登録に加えて普通自動車第一種運転免許証の所持と事前承認が必要になる。

東京・湾岸エリアではEVバイク(3輪)のレンタルが始まった

NTTドコモが持つアセットを活用しながら、さまざまな可能性を探っています。トライアンドエラーを繰り返しながら、持続可能な社会の実現に向けて事業を拡大させたいと考えています(大橋氏)

シェアサイクルは、「保有せずに必要なタイミングで乗車できる」「(公共交通機関やガソリン車と比較して)CO2の排出量を削減できる」「運動不足を解消できる」などのメリットがあり、現代に則したサービスといえる。今後ますます利用者が拡大するかもしれない。

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