生成AI「Copilot」でMicrosoft 広告はどう変わる? ―Web担編集長・四谷が根掘り葉掘り聞いてきた!
とある日のWeb担編集部にて……
(パソコンを見ながら)ねえ、マイクロソフトのAIチャット「Bingチャット」のブランド名が「Copilot(コパイロット)」に変わったんだって。知ってた?
ニュースで見ましたよ。でも、検索エンジンの「Bing」の名前はそのまま残るんですよね。
そうそう。正確には、CopilotはBingチャットの新しい名前というだけじゃなくて、マイクロソフトの生成AIサービスの総称なんだって。Copilotは「Edge」「Microsoft 365」「Windows 11」とか、マイクロソフトの製品に幅広く組み込まれるみたいよ。
実際にCopilotを使った人から「なかなか使える」って評判を聞いて、気になってるんだ。
ふーん。でも、マイクロソフト製品に生成AIのCopilotが組み込まれると何がどう変わるんですか?
ええー、わかんない。どう変わるんだろ?
あとWeb担的に気になるのは、デジタル広告とのコラボかなあ。いつでも業務過多なWebマーケターにとって便利な使い方ができたら嬉しいよね。2022年にスタートした「Microsoft 広告」とのコラボレーションも気になる~。
うーん、まだ具体的なイメージが湧かないですね。
本当に“業務で使える”サービスなのかな~?(疑いの目)
……よし、わかった!
そこまで言うなら、Copilotって何なのか、業務でどんな風に使えるのか、Web担読者にとって何が嬉しいのか、マイクロソフトさんに直接聞いてこようじゃないの!
(げっ)
もしかして、新年そうそう、突撃インタビューですか?
もちろん! 2024年も突っ走って行くわよー!
じゃ、今日の会議は任せた! よろしくっ!
マジですかー!
今年も相変わらずフットワーク軽いなぁ……。
あらゆるマイクロソフト製品に「Copilot」を搭載!
生成AIで仕事はどう変わる?
日本マイクロソフトのオフィスに到着した四谷――。
こんにちはー! いきなりですけど、「Copilot(コパイロット)」について教えてもらいたくて来ました!
詳しくお話を聞かせてもらっていいですか!?
わっ、突然なんですか!(びっくり)。
……ん、あなたは、Web担当者フォーラムの四谷編集長?
はい、Web担の四谷です!(ニコッ)
去年、マイクロソフトさんが、生成AIのCopilotをいろんなマイクロソフト製品に搭載していくって発表したじゃないですか? Copilotを業務に使うとなかなか便利だって聞いて、もしかして「Microsoft 広告」とか、Web担の分野でも使えるのかなと思ってお話を聞きに来ましたー!
なるほど、そういうことですか。
承知しました。なんでもご説明しますよ!
今回対応してくださった方
Question ① 「Copilot(コパイロット)」ってそもそも何?
いきなりですけど、そもそも「Copilot(コパイロット)」って何ですか? 教えてください!
マイクロソフトでは、生成AIを使った機能をCopilotというブランドで展開しています。
「Copilot」は、「Co(補助的な)」+「Pilot(操縦士)」、つまり副操縦士という意味で、さまざまなマイクロソフトの製品に組み込まれて、パイロットである人間のお仕事をサポートするツールです。
有園 マイクロソフトでは、2023年から、生成AIを使った機能を「Copilot」ブランドとしています。
ちょっと紛らわしいのですが、検索エンジンの「Bing」の名称は残り、そのチャットシステムである「Bingチャット」の名称が「Copilot」となりました。
それに加えて、新たにAIアシスタントサービスとして「Copilot」も立ち上げました。さらに、このAIアシスタント機能を、マイクロソフトの製品、たとえば「Edge」「Microsoft 365」「Windows 11」などにも幅広く導入しています。
四谷 Copilotは、チャットサービスの名称であると同時に、マイクロソフト製品に組み込まれているAIアシスタント機能の総称でもあるわけですね。
有園 そうです。「Copilot」は直訳すると「副操縦士」の意味で、「人の作業をサポートする存在」を表しています。基本的には操縦士である「人」が主導し、そのお手伝いをするのがCopilotというコンセプトです。
Question ② 具体的に何ができるの?
Copilotがどんなふうに業務に役立つのか知りたいです。
できるだけ具体的に!
AIアシスタントですので、使い方はアイデア次第で、幅広いです。たとえば――。
- このPDFの内容を3つに要約して
- この記事を日本語に訳して
- このYouTubeの動画を日本語で要約して
- この人のプロフィールを調べて
- 英語で行われた会議の議事録を日本語で作って
- この人にこういう内容を送りたいからメール文を作って
これらはほんの一例です。使う人によってさまざまな使い方ができますよ。
四谷 わあ、本当にいろんな使い方ができるんですね!
有園 人の作業のお手伝いをするのがCopilotですので、その人のやりたいことに合わせてなんでもお手伝いできますよ。
たとえば私の場合、何かを調べたいと思ったら、検索するよりもCopilotで質問を投げますね。検索結果のページを一つ見て、戻って、また次の一つを見て、なんてことを繰り返すより早く正確に情報が把握できます。
四谷 確かに、検索結果にはけっこう無駄なサイトも出てきますしね。一つずつ読み込んで内容を把握するより、ざっくりとまとめてほしいときはありますよね。
有園 あとは、英語と日本語の翻訳はいつも使っています。「英語のニュースサイトの本日のメインニュースを日本語で3つ教えて」というように、合わせ技でもよく使います。
Copilotはインターネットと連動しているので、URLを入力するだけでいいんです。Web上にあるものならテキストでなくても、画像やPDFなどでも同様のことが出来ます。たとえば、官公庁が出している報道資料って、膨大なPDFファイルの場合がありますよね。このPDFのURLを読み込ませて「300字でまとめて」と依頼すればできちゃうんですよ。
四谷 わわっ! あっというまにサマリーができちゃう。官公庁のPDFは読みづらい、見づらいことが多いですけど、これなら簡単に要点が把握できますね。
有園 さらに、チャットサービスだけでなく、Microsoft 365に搭載された「Copilot」ならもっといろんなことができますよ。
- Excelの名簿の名寄せ
- Teamsで行われたオンライン会議の要約、翻訳、議事録作成
- Outlookのメール文作成
- SNSやブログ投稿用の文章の作成
- 企画のアイデア出し
四谷 すごい! 読者へのメールマガジンの文章作成や、企画のアイデア出しは、私も使ってみたいです。
有園 ぜひ使ってみてください。コツはできるだけ具体的に質問すること。たとえば、アイデア出しで「おもしろい企画」ではなくて、「30代の男女マーケターをターゲットとしたイベントの企画をします。ターゲットにウケるタイトル案を5つ考えてください」というように、定義や条件を細かく設定したほうが、より役に立つアイデアが出てきますよ。
四谷 おおお、次回の会議の企画出しでやってみようっと。
有園 あと、Web担当者Forumさんに関係するところだと、「Microsoft 広告」も、Copilotで大きく変わるんです。
四谷 そこ! Web担編集長として詳しく聞きたいです! Microsoft 広告についても、基礎から教えてください!
Question ③ Microsoft 広告の強みは?
Microsoft 広告について教えてください。Microsoft 広告の一番の強みはなんですか?
Microsoft 広告の一番の強みは、マイクロソフトの持つ「ファーストパーティデータ」の“質の高さ”です。偽ID、なりすましIDなどがほぼ存在しない“きれいなID”です。匿名で信頼できるデータをもとに、その人に合わせた広告を配信できるんです。
有園 まず、「Microsoft 広告」はマイクロソフトが提供する広告サービスで、日本では2022年の5月末から事業展開していて、1年半ほど経ったところです。Bingの検索連動型広告に加え、ポータルサイト「MSN」やEdge、Outlookなどに配信するオーディエンス広告(ネイティブ・ディスプレイ広告)などが主な商材です。
さらに、2022年6月に、世界屈指のDSPを提供するXandr(ザンダー)を買収し、その広告配信システムは、マイクロソフトと独占的なパートナーシップ契約を結んでいる「Netflix(ネットフリックス)」のほか、コネクテッドTVを中心とした広告配信にも活用しています。今後は主要なテレビ局やパブリッシャーに展開していくことが期待されています。また、リテールメディアの領域では「Microsoft Retail Media」というサービスをグローバルで提供しており、今後は日本でも大手小売業・流通業に積極的に展開していく予定です。
四谷 Google 広告やYahoo! 広告と並んで、影響力の大きい広告だと思うのですが、特に近年勢いづいてきたその理由は、やっぱり、ファーストパーティデータの質の高さにあるってことですか?
有園 そうなんですよ。これは歴史的なものが関係していて、昔から多くのWebサービスは基本的には匿名のものが多かった。最近はアカウント情報を取得してサービスを提供するところも増えてきましたが、それでもいまだにメールアドレスくらいしか把握できていないサービスも多いです。そうなると、偽IDやなりすましID、Bot用のIDもまぎれこんできてしまう。せっかくの広告も人間ではないID相手に表示されてしまっては意味がないですよね。
一方でマイクロソフトは、もともとWindowsやOfficeなどのオフィス製品からスタートした会社で、マイクロソフトの持つアカウント情報のほぼすべてが実在する人間のデータなんです。基本的には偽IDがなく、属性もある程度しっかり取れています。
四谷 なるほど、ファーストパーティデータを持っているのは強みですね。Edgeでも、Bingでも、その人にパーソナライズされた広告が配信できれば、効果も高まります。
有園 その通りです。さらに、マイクロソフトは先ほど申し上げたさまざまな形態のデジタル広告配信システムをもっています。それゆえに、Microsoft 広告と組むことで、相互に連携したパーソナルメディアとして広告を打つこともできるんですよ。
四谷 “きれいなID”というのがカギなんですね。「Microsoft 広告はBtoBに強い」との評判もありますけど。
有園 必ずしもBtoB寄りではないですね。BtoCのお客様にも多くご利用いただいています。
Question ④ Microsoft 広告はCopilotでどう変わる?
Microsoft 広告は、Copilotでどう変わるんでしょうか。
チャットの中で比較・検討、そして購入までシームレスにつながる新しい広告フォーマット「Compare & Decide Ads(比較・決定広告)」がユーザーの意思決定をより便利にします!
有園 何かの商品を買おうと思ったときに、商品を探して、性能や値段を比べて検討するのって意外と面倒ですよね。そこで、ユーザーのその購買活動を支援する新しい広告フォーマット「Compare & Decide Ads(比較・決定広告)」を開発しました。
たとえば、Copilotに、「燃費がよくて安全な車を教えて」と質問すると、チャット内に該当する車がずらっと並び、クリックするとその車を紹介するWebサイトに飛ぶというものです。まだ企画段階ですが、「試乗申し込み」のボタンを実装することもできます。洗剤などの安い商品であれば、そのままチャット上で購入することもできるんです。
四谷 これは、ずらっと出てくる内容は広告なんでしょうか、オーガニックなんでしょうか。
有園 広告もオーガニックも両方表示されますので、ユーザーはそのなかから最適なものを選択することになるでしょう。1つ1つのECサイトやモールを巡らなくていいので、比較・検討は楽になると思います。
もともとEdgeでは、商品を検索すると、それに使えるクーポンなども同時に「クーポンが見つかりました」とユーザーに提案する仕組みになっています。できるだけユーザーに最適な情報を提供することを前提にしているんです。Microsoft 広告も、ユーザーに有益な形で提供していくのが鍵だと思っています。
四谷 ユーザーにとっても価値のある広告を出すことが、Microsoft 広告の価値にもつながっていくんですね~。
Question ⑤ Copilotの広告主側のメリットは?
広告を出すクライアントや広告代理店にとっては、Copilotはどんなメリットを与えてくれますか?
クリエイティブの制作作業が劇的に効率化します。タイトルや説明文、絵コンテの作成、複数のパターン出し、広告シナリオの作成までCopilotがサポートしてくれます。
バナーひとつとっても、いまやAIが作ったほうがクリック率が高いと言われているんですよ。
有園 なんといっても、広告クリエイティブの作成が劇的に効率化します。Copilotに「こういう商品の、こういうターゲットに向けた広告クリエイティブを考えて」と言えば、タイトルや説明文、絵コンテまですべて考えてくれます。忙しいWeb担当者にとっては革命になると思います。
嬉しいのは、「10パターン出して」「20パターン出して」などの、人間だと途中で辛くなってくるような作業もCopilotはAIですから平気でこなしてくれることです。
広告というのは基本的に、複数のパターンを作って効果検証してどんどん効果がいいものに入れ替えていくほうが、CTR(クリック率)やCVR(コンバージョン率)が高くなると言われています。そのためにはどんどんフィードバックを回し、新しいクリエイティブを投入することが重要で、そのお手伝いをCopilotがしてくれるんです。
四谷 確かに……! ひとりでクリエイティブを毎週10個作れと言われたら大変ですけど、Copilotが提案してくれたら、忙しくてもできそうな気がします。
有園 しかも、Copilotが助けてくれるのはクリエイティブ制作だけじゃありません。その前段階となる広告シナリオの作成もお手伝いできます。
広告の効果アップのためには、ユーザーのその時々のニーズに合わせて、毎回広告のマーケティングシナリオが変わるのが理想です。しかし、忙しいWeb担当者にとっては現実的じゃなかった。でも、Copilotがサポートすればそれも可能になります。Copilotに広告シナリオのアイデアを出してもらい、そのなかからどれか選んでCopilotにラフを作ってもらって、コピーを考えてもらって、さらにそのバリエーションを考えてもらう。そういった形でどんどん広告のシナリオを作成していけるんです。
実際に、デジタル化が進んだ大手広告代理店では、すでにバナークリエイティブの8~9割はAIが作っているそうです。しかも、人が作ったバナーより、AIが作ったバナーでどんどんPDCAを回したほうが効果も高いそうですよ。
四谷 もうそんなところまで来ているんですね。クリエイティブ担当の仕事が、AIに指示を出し、それを選択することになるだなんて、本当に、副操縦士(Copilot)に指示を出す操縦士(Pilot)みたいですね。
有園 そうなんですよ。そして、それが一気通貫でできるように、Microsoft 広告の管理画面にも将来的にCopilotが入る計画です。
ありがとうございました。Copilotがこんなに幅広い業務に使えるなんて感動しました。私もさっそく使ってみます。
はい、ぜひ。僕自身も、もうCopilotなしでは業務がこなせないくらいです(笑)
これはもう、みんなが使うようになると思いますね。「馬車」が「車」に、「ガラケー」が「スマホ」に置き換わったように、これからはごく自然にAIを使う時代になるはずです。
Microsoft 広告も、AIあってこその急成長なんですね。
そうですね。これはぜひお伝えしておきたいんですが、Copilotと連動したMicrosoft 広告は、CPA(顧客獲得単価)が他社の検索連動型広告に比べて10分の1にまで抑えられているケースもあるんです。
ファーストパーティデータの質が高いこと、AIが質問履歴や検索履歴などに合わせた関連性の高い広告を適切に表示してくれることがこの結果を生み出していると思っています。
なるほどー! しかも、クリエイティブや広告シナリオの作成までCopilotが手伝ってくれるとなれば、もうチャレンジするしかないですね!
さっそく記事を作って、読者に伝えなくちゃ!
今日はありがとうございました! 失礼します!
あ、ありがとうございましたー!
(噂通りのパワフルな人だったな~)。
日本に上陸してからわずか1年半で急成長する「Microsoft 広告」。個人情報保護の観点からサードパーティCookieへの規制が強まるなかで、質の高いファーストパーティデータを持つMicrosoft 広告への期待は高まる一方だ。
生成AIの「Copilot(コパイロット)」は、その高いサポート能力で、日常業務はもちろん、Webマーケターの広告への取り組みも力強く後押ししてくれる。
- 話題のAIアシスタントを使って業務を効率化してみたい
- Microsoft 広告を使ってみたい
- “質の高い”データを使った広告配信で成果を上げたい
- 広告クリエイティブの制作を効率化し、PDCAをすばやく回したい
- 広告シナリオの制作を誰かにサポートしてほしい
こういった方は、Copilotを業務に活用し、Microsoft 広告にチャレンジしてみてはいかがだろうか。
ソーシャルもやってます!