CDPってなに? ぶっちゃけ導入コストってどうなの?

Webやマーケティングの人なら一度は聞いたことがある「CDP」。あらためて何ができて、どうすごいのか、導入コストはどのくらいかかるかなどをUNCOVERTRUTHの小畑陽一さんにインタビュー。

一度は聞いたことはある「CDP」、何となくは知っているけど、「CDP」って何で、どうすごいんだろう?

「CDP(Customer Data Platform:カスタマーデータプラットフォーム)」とは、どんなものなのか、言葉の意味や仕組み、DMPとの違い、どういったケースで活用のメリットがあるのかなどについて、CDPの導入支援を行っている株式会社UNCOVER TRUTHの小畑陽一さんに聞きました。

株式会社UNCOVER TRUTH 取締役COO 小畑陽一氏

質問 ① CDPって何 どんな企業が導入するとメリットあるの?

編集部二村

CDPってなんですか? どんな企業がCDPを導入するとメリットがあるのですか?

小畑氏

CDPの説明をする前に…そもそも「自社に権利があるデータを持っている(ファーストパーティデータがある)こと」が導入の第一条件です。

CDPの詳細は後ほど説明しますが、前提として企業が持つデータには、主に以下の2種類が存在します。

  • 自社に権利があるデータ(ファーストパーティデータ)
  • 自社に権利がないデータ

たとえば、インプレスで「メルマガを配信するためにメールアドレスをください」と伝え、読者が「同意」して入力したメアドデータは「自社に権利があるデータ」です。

逆に、ショッピングモールなどのECサイトを経由して登録されたデータは、ショッピングモールがデータの権利を持つため、「自社には権利がないデータ」です。CDPを導入する企業は、まず「自社に権利があるデータ」を持っていることが前提です。

質問 ② 改めて、CDPってなに?

編集部二村

なるほど!
改めて、CDPってなんですか?

小畑氏

CDPは、企業内でバラバラに保持している顧客データをまとめて、適切なコミュニケーションをするためのシステムです。

CDPは「Customer Data Platform:カスタマーデータプラットフォーム」の略で、日本語だと“顧客データ統合基盤”です。主に次のようなデータを格納しています。

  • Webやアプリの行動履歴
  • 購買データ
  • 名前・年齢・性別・家族構成など

たとえばメーカーの場合、さまざまな販売チャネルで商品を売っています。自社ECで購入する顧客の情報は、EC部門が管理しています。ですが、提携先の小売店で購入する顧客の情報はメーカー側にはありません。そのため、マーケティング施策の一環で小売店の商品にアンケートなどを付け、小売店で購入されたかどうか、誰が購入したのかをわかるようにしています。こうして得られた顧客の情報は、マーケティング部門が管理します。

別々の部門で顧客情報を管理している場合、アンケートに回答した顧客が、後に自社ECで購入しても、顧客情報の管理部門が異なるため、同じ顧客とは認識されない現象が起こります。データを統合すれば、小売店で購入履歴のある顧客がECサイトを訪れたときに「いつも購入してくれてありがとうございます」という接客ができるようになるのです。

つまり、顧客に対して正しいコミュニケーションをとるために、「あらゆるデータを集めてつなぎましょう」というシステムが「CDP」です。

質問 ③ CDPとDMPは何が違う?

編集部二村

CDPと似た言葉でDMPがあります。こちらとの違いはなんでしょうか?

小畑氏

DMPは、自社に権利がないオープンなデータ(インターネット上の行動データや属性データ)を保管でき、ターゲティング広告などに使われていましたが、近年は使われなくなってきています。

「DMP」は「Data Management Platform」の略です。10年ほど前からありましたが、5年ほど前から下火になり、使えなくなってきました。その背景には、法的な規制とプラットフォーム側の規制が関係しています。

DMPは、サードパーティデータと呼ばれる、第三者が所有しているデータを蓄積・管理するシステムですが、サードパーティクッキーの利用が世界的に禁止されつつあるため、DMPが使いづらくなってきました。結果、ターゲティング広告の精度をDMPで上げづらくなり、1人1人の顧客と末永く付き合うためにもCDPを使い適切なコミュニケーションを通じて売上アップを目指そう、という流れが来ています。

質問 ④ CDPってどんな種類があるの?

編集部二村

CDPにはどんな種類があるんでしょうか?

小畑氏

業界で決められた区分けはないですが、弊社では3種類に分けています。

  • データ蓄積型(アナリティクス型)
  • リアルタイム型(アセンブリー型)
  • CX/CRM型

データ蓄積型(アナリティクス型)

DWH(Data Ware House:データウェアハウス)のような⻑期間のデータを蓄積するタイプです。店舗やECなど多様な顧客接点で発生する複数のデータソースを扱うOMO業態などに向いています。

リアルタイム型(アセンブリー型)

タグマネージャーから派⽣したタイプです。リアルタイムに動的な処理をすることで成果を⽣みやすいECなどに向いています。

CX/CRM型

接客ツールやMAから派生したタイプです。施策ツールと⼀体型になっていることが多く、すでに施策ツールとして導⼊している製品にCDPのオプションがある場合、施策ツールとの連携開発や施策ツールの学習コストがないので選択するときの候補にするのも良いですね。

質問 ⑤ リアルタイムCDPって何?

編集部二村

リアルタイムCDP、最近聞いたことがあります。通常のCDPとリアルタイムCDPは、何が違うのですか?

小畑氏

通常のCDPは1日1回程度しかデータ更新をしません。
リアルタイムCDPは、顧客の行動をリアルタイムで捉えて、その瞬間にあわせてデータを使って、顧客の購入を後押しする仕組みです。

たとえば、ECサイトで商品をカートに入れたまま、忘れてしまうことってありますよね。30分後くらいにメールやアプリのPUSH通知で「忘れていませんか?」とお知らせが来て、思い出して買うといった購入体験はありませんか。これは以前からECサイトで運用されている、原始的なリアルタイムに近い仕組みです。

リアルタイムCDPを活用すれば、もっと進化した接客ができます。たとえば、過去の購入履歴を使って、今見ている商品とのコーディネートを提案することもできます。人から受ける接客に近いです。このように、今この瞬間に起きた顧客の行動データを使って、購入の後押しを手助けできるのが、「リアルタイムCDP」という仕組みです。

一方、通常のCDPは1日1回しかデータが更新されません。その分、長期的に蓄積された履歴情報かつ、ネット/リアル含めた複数の接点をもつ顧客とのデータを活用して分析し、深く顧客を理解することができます。

「瞬間」なのか「蓄積」を重視するのかという点で、考え方が異なるシステムなのです。

質問 ⑥ どんな課題を感じたらCDPを導入すべき?

編集部二村

どんな課題を解決したいと思ったときに導入を考えると良いのでしょうか?

小畑氏

新規獲得だけではこれ以上業績が伸びづらく、業績を今後、LTVで評価していくようなステージの企業にはメリットがあると思います。

顧客1人1人のLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を伸ばすためには、CRMが必要ですし、データを統合して、ユーザーへの理解を深め、それぞれに丁寧なコミュニケーションが求められます。

ですが、⼤量の顧客に向けて、それぞれに丁寧なコミュニケーションを実⾏するには、⼿動運⽤では限界があり、⾃動化できる仕組みが必要です。LTV、CRM、⾃動化…このようなワードに紐づく課題がある場合は、CDPの導⼊を検討してもいいかもしれません。

すでに、レコメンドツールを使いこなしている、マーケティングオートメーションツールを使いこなせている企業だったら、そのシステムにあわせてCDPを導入できるので、導入ハードルは低くなるでしょう。

他の導入メリットとしては、マーケティング部門にデータ活用の権限が移るので、スピード感をもって仕事ができるようになります。あと、組織を横断してのやり取りって大変なので、社内でのやりとりが減り、結果的にコミュニケーションコストが削減される可能性も十分にあります。

質問 ⑦ 費用感は?

編集部二村

とはいえ、お高いんですよね?

小畑氏

最低コストとしても導入に2〜4千万円はかかるでしょう。

以前、私が関わったプロジェクトでは、組織改革案も含めて最初の3年で4億円かかったケースもあります。ランニングコストだけ見ても、一番安くて毎月150万円ほどかかります。大きな投資なので、やはりちゃんと商売の成果に結びつけなければなりません。それを考えると、CDPの導入そして運用は、決裁者はもちろんのこと、プロジェクトに関わるすべての人で立ち向かわなければならない、大きなプロジェクトの1つです。

正直、費用がとてもかかるので、事業規模やデータ規模が大きくない場合は、CDPを入れる必要はありません。たとえば、ECだけで展開しているというケースなら不要でしょう。自社以外に楽天やアマゾンといった複数のプラットフォームで展開しているといったケースでもCDPにはデータを取り込めないため不要です。

質問 ⑧ ぶっちゃけCDPの導入って難しい?

編集部二村

費用だけでも結構ハードル高いですが、導入の難易度は高いのでしょうか。

小畑氏

正直に言いますと、難易度は高いです。CDP導入の難易度が上がるポイントは以下の2つです。

  • チームメンバーのスキルが問われる
  • ツールへの連携開発と導入後の運用

まず、チームメンバーのスキルです。CDPを構築していく中で、様々なシステムから様々な形式のデータを集めます。バラバラな仕様のデータを整理して、そもそもの⽬的であるマーケティングで使いやすいように統合しなければなりません。

そうなると、システムやデータに詳しい必要があり、なにより、マーケティングを理解している必要がある…。つまり、以下のようなメンバーが必要になります。

  • マーケター
  • ネットワークエンジニア
  • データベースエンジニア
  • データアーキテクト
  • データサイエンティスト
  • マーケターのアイデアとシステムを取り持つプロジェクトマネージャー
    etc…

スキルがある人たちが集まったプロジェクトチームを組める体制がないと、導入に失敗することもあります。

次に、ツールへの連携開発と導入後の運用です。CDPは導入しただけでは意味をなしません。分析して、ユーザーを理解し、更なる施策を⽣み出し、効果検証までPDCAを回さないと、CDP導⼊で生まれる価値は高まりません。

そのためには、ユーザー分析、BIによるデータの可視化、施策(メール、アプリ、LINE、接客など)、多岐にわたってデータ利⽤するためにツールへの連携開発が必要なのです。

質問 ⑨今後、CDPはどのように変化していく?

編集部二村

AIの進化をはじめ、テクノロジーの進化は加速していますが、今後CDPにどのような期待を持っていますか?

小畑氏

コミュニケーションの質も上がり、顧客にとって価値のある情報がちゃんと選別されて届けられるようになっていくと思います。

一番変わるだろうと感じているのはAIを活用した未来予測です。

AIの活用でCDPはもっと変わると思います。たとえば、あるアパレル会社で「こういう顧客になって欲しい」という理想のロイヤル顧客像があるとします。何年もかけてブランドの服や雑貨を買い続けていて、全身コーデまでしてくれていて、SNSでハッシュタグをつけてくれるくらい好意度が高い一握りの顧客です。

企業としてはこういうロイヤル顧客を増やしたいですよね。そうすると、優良顧客群に今後なってくれるかもしれないポテンシャルのある⼈を探したい。そこで、「ロイヤル顧客」の過去を含めた行動パターンをAIに覚えさせて、普通の顧客から「ロイヤル顧客」へ育つポテンシャルのある顧客に特別な施策を打って、育てていくといった取り組みも可能になるでしょう。

言葉が正しいか分かりませんが、「“えこひいき”すべき顧客」を見逃さずに大切にできるのって、企業と顧客の双方にとってメリットだらけではないでしょうか。

このように、CDPの中にあるデータは、未来を予測する宝の⼭になるのではないかという期待をしています。

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