消費者物価指数とは? 10年前の価格を調べるための方法【指数計算基礎】
昔から、算数も数学も苦手なアユムは、希望が叶ってマーケティング部門に異動してきました。Web担で見るような「すごいマーケターになりたい!」と胸を躍らせていたが、配属後、理想と現実のギャップに苛まれることに。データ、数字、%、小数。うわぁーん、どうしたら、数字に強くなれるのでしょうか……。
この記事を読むべき人:数字や割合に対して苦手意識を持っている方
この記事を読む必要がない人:指数の意味を理解し、計算できる方
この記事でわかること:指数の意味、指数の計算方法
前年度比率が落ちているのに、売上高が微増?
この間、久しぶりにうどんを打とうと思って、小麦粉を買いに行ったんだよ。そうしたら、小麦粉1㎏の値段が327円で驚いたよ。
え、先輩、家でうどん打つんですか? かっこいい!
え、うどん、打たないの? ぼくがうどんを打ち出した2012年9月をもとにすると2022年9月の消費者物価指数は142だ。つまりこの10年で42%の上昇だよ……。消費者物価指数が102、物価が2%の上昇幅でもニュースになるのに42%ってハンパないよね。
先輩、10年前のことも覚えてるんですね!! すごい記憶力!
覚えていないよ(笑)。価格の推移は「小売物価統計調査」という調査を統計局のサイトで見られるんだ。この調査結果では、過去の物価も見られるから、消費者物価指数を算出するのに便利だよ。
で、先輩がこの間小麦粉を買ったときは327円で、10年前と比べるとショーヒシャブッカシスーは、142なんですよね? ということは、10年前っていくらだったんですか?
10年前の価格を100とおくと、2022年9月の価格が142だから、2012年9月の価格は231円だね。
衝撃的な数字ですね! めっちゃ値上がりしてますね!
(327円で142? そして231円? どういう計算? ショーヒシャブッカシスーって何?)
消費者物価指数を求められれば、銘柄ごとの物価の上昇、下落の比較ができるから、もとの値段が違うものも比べるのが楽になるよね。
そこに現れたのが、大人向け数学教室「大人塾」を運営し、数学苦手な社会人に対して指導をしているモリさん。
指数も割合! 基準と比べる量を比較しよう
モリさん! ショーヒシャブッカシスーについて教えてください!
「消費者物価指数」のことですね?
多分それです! その消費者物価指数ってなんですか?
はい。まず、指数は「ある時点を100として、その数値との比較」をあらわしています。その数値が基準の100と比べてどのように変化しているのかを見るものです。
指数の前についている「消費者物価」はなんですか?
消費者物価は「消費者の購入するモノやサービスの価格を総合したもの」です。
もしかしたら、それがくっついて消費者物価指数?
PPAPみたいですね。I have a 消費者物価~ I have a シスゥ~♪みたいな!
(ん?)消費者物価指数はある時点の物価を100とし、対象となる時点の物価を比べて「指数」を算出します。いわば、ある時点を基準とした値上がり、値下げ率です。消費者物価指数は時系列に並べると、物価の上下を確認できます。
消費者物価指数が…
- 上昇=基準時点より物価が上がっている
- 下落=基準時点より物価が下がっている
ということになります。
アユム基準とした時点を比べる…「比べる」といえば割合ですね!
すばらしい。その通りです。つまり、指数も割合です。ピンと来ないときは第1回を復習しましょう。
割合は、 比べられる量 もとになる量 なので…もとになる量が「ある時点の物価」、比べられる量が「比べる時点の物価」なんですね。
比べる時点の物価 ある時点の物価
その通りです!
つまり、先輩がどうやって10年前の小麦粉の値段を出したかというと、
比べる時点の物価 ある時点の物価 ×100=142
だから、327 x×100=142
x=327×100÷142≓230円ですね。
統計局のサイトで、小売価格をゲットだぜ
消費者物価指数をさらりと会話に出せたらかっこいいですね。仕事でも使いそうですが、どうやって調べればいいですか?
実際に自分で数値を確認して、消費者物価指数を計算することもできますよ! 今日は統計局のサイトで遊びましょう。
まずはこちらにアクセスしてください。小売物価統計調査のページです。
小売物価統計調査は、毎月、全国的規模で国民の消費生活上重要な財の小売価格、サービスの料金及び家賃を、店舗及び世帯を対象に調査しています。
総務省統計局
あ、このサイト、先輩も使っていました! 価格がわかるんですよね。
はい。早速見ていきましょう。「小売物価統計調査(動向編)」の「データベース」をクリックします。
月次で確認したいので、「月次」をクリックします。
「主要品目の都市別小売価格~」の「DB」をクリックします。
消費者物価が表示されました。ここから加工をしていきます。
項目を抽出するために、左メニューの「表示項目選択」をクリックします。
次に銘柄を選びます。今回は小麦粉の価格推移を調べましょうか。銘柄の横の「項目を選択」をクリックします。
はーい。
「銘柄」の「表示項目の設定」画面で「全解除」をクリックしてチェックを外しましょう。
うわぁ、面白い! こんなにあるんですね!
項目の中から「1071 小麦粉」を探してチェックを入れます。
ついでに、比較対象として、お米の価格の推移も調べてみたいです。
それであれば、項目の中の「1001 うるち米(単一原料米、「コシヒカリ」)」もチェックを入れておきましょうか。選択したら、下にある「確定」をクリックします。
次に地域を限定しましょう。今回は東京23区、「特別区部」に設定します。
最後に、「表示項目選択」画面で「確定」をクリックします。
銘柄を選択すると、銘柄ごとの価格の推移をみることができるんですね! すごい!
表示レイアウトを変えましょう。左メニューの「レイアウト設定」をクリックします。「銘柄」を列に移動します。「設定して表示を更新」をクリックします。
おおおおー。すごい。Excelのピボットテーブル機能みたいですね。
このデータを元に基準月を設定すれば指数を求められます。右上の「ダウンロード」をクリックしてXLSX形式でダウンロードしていきましょう。
こんなに簡単にできるんですね! すごい!
指数の計算方法は?
それでは、ダウンロードしたブックをExcelで開いてください。不要な行・列を除いて、指数を計算しましょう。
基準はいつにすればいいですか。
「基準にしたい」と思った月にすればいいのです。今回は、先輩がうどんを打つためにはじめて小麦粉を買った2012年9月にしましょうか。
統計局の指数の基準年は、西暦年の末尾が0と5の年を基準時として、5年ごとに改定(基準改定)しています。総務省統計局
見やすくするためにデータを加工しますね! 上部の不要なデータを削除し、時間軸を古い順(昇順)にして、とりあえず2012年9月以前までのデータを削除しました。
わかりやすくするためにデータ加工をするのは重要ですね。
それでは早速、2012年9月を基準、つまり、もとになる量として、指標を計算しましょうか。
指標の計算は、比べられる量 もとになる量なので、
比べられる時点の物価 基準時の物価で計算できますね?
すばらしいですね! では、計算式を入れていきましょう。
2012年9月は2012年9月と比較するので「B2/B2」、基準を100とおいているので、100をかけるんですね。「⁼B2/B2*100」と入力っと。
はい。そして、基準値(2012年9月)は変わらないので、式をコピーするときは絶対参照を忘れないでくださいね。絶対参照とは、参照するセルを常に固定する参照方式のことです。
そうか、基準値が動いてしまうと「10年前同月比」になっちゃいますね。
そうです。指数は、固定された基準値と比べるのが重要なのです。
「⁼B2/$B$2*100」と式を入れました! あとはコピーするだけ!
同様に小麦粉の指数も出しましょうか。
表を加工してグラフにするとより分かりやすくなりますね。
うわあ、小麦粉は2018年ごろから全体的に値上がりをしているものの、2021年から値上がり率がすごいですね。一方で、お米の価格は安定しているというよりは、少し値下がり傾向があるのですね。これを見ると、パンやドーナツを小麦粉から米粉にかえる動きがあるというのがわかりますね。
小麦粉は、さまざまな食料の原材料ですから、価格があがるといろいろなところに影響が出ますね。外食も、冷凍食品なども。
なるほど、これは、消費行動が変わりますね。
そうですね。消費者が値上がりする商品の代替品を選ぶのか、お得感があるものを求めるのか……。負担が増えた分、どこの部分の消費が削られるのか。このような数字から気づいたことをもとに、街に出て観察するのも重要ですね。
それにしても、統計局のサイト、便利で面白いですね。地域別とかに見られるのもすごい!
統計局にはいろいろな統計がありますから、新聞を見て気になったら、統計データをダウンロードして自分で加工をするとよいと思いますよ。その際に忘れてはいけないのは、割合の考え方。
はい、比べられる量 もとになる量 で比較ですね!
基準年を100とした指数の見方と計算方法も分かったので、経済ニュースや資料で出てきたときもビビらずにすみそうです!
今日のおさらい
指数とは、ある基準点の量をもとに、各時点の量と比較したもの。
消費者物価指数とは、ある時点の物価を100として、対象となる時点の物価を比べた「指数」。
もとになる量:基準点の量
比べられる量:各時点の量
今日の問題をおさらい
Q1.2022年9月の小麦粉の値段は327円。2012年9月をもとにする2022年9月の消費者物価指数は142。2012年の値段はいくらでしょうか。
327×100÷142≓230
答え:230円
Q2.統計局のサイトから、大阪市の2021年9月と2022年9月「さけ」の価格を探しましょう。
答え:2021年9月⁼389円/ 2022年9月⁼503円
Q3.大阪市の「さけ」について、2021年9月を100とした2022年9月の物価指数を求めましょう。
503÷389×100≓129.3
答え:129.3
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