YouTubeチャンネルって、ゼロからどう考えて立ち上げればいい?
YouTubeチャンネル運営が最近人気で、多くの企業が取り組んでいるけど、具体的に何をすればよいのだろう? 難しそうだなあ。
撮影や編集技術、トークスキルなど、ブログ記事を書くよりハードルは高そうに感じますよね。
そうなんです! 会社の看板でやる以上、間違ったことも言えないじゃないですか。カメラに向かって話すのも緊張するし。
予算やリソースがどれくらい必要か、効果測定をどうやるか? など、やってみないと見えてこない部分も多いです。本連載では、ファベルカンパニーが自社チャンネルを1年運用して掴んだコツやノウハウをお伝えしますよ。初回は、「YouTubeチャンネルってゼロからどう考えて立ち上げればよいか?」です。
よろしくお願いします!
企業がYouTubeを運営すべき理由とメリット
本題に入る前に、企業がYouTubeを運営すべき理由とメリットをおさらいします。
1. 影響力が格段に大きい
YouTubeは世界最大の動画プラットフォームで、ユーザーは20億人以上。100か国で80の言語で視聴されています。日本でも6,500万人が使っており、ざっと国民の半分に相当します。
さらに、1日当たりの視聴時間は「10億時間」。ピンとこないかもしれませんが、10億時間は、なんと11万4000年です。ホモ・サピエンスがアフリカを出て世界各地に拡がったのが約10万年前……なので、想像を絶する時間がYouTube上で日々消費されているわけです。
2. 情報量が桁違いに多い
「1分間の動画は、一般的なWebページの3,600ページ分の情報量と同じ」という調査結果もあるくらい、動画には情報が詰め込まれています。
ブログやテキストでは届けられない「熱量」を感じてもらいやすいのも動画の特徴で、企業の中の人が顔出しして発信するほうが、テキストのみよりもはるかに訴求力が高く、信頼感にもつながりやすいです。
3. コンテンツが資産になる
YouTubeチャンネルを開設するのにコストはかかりません。サーバーもドメイン費用等の維持費も不要で、投稿した動画はネット上の資産になります。
動画は、YouTube内はもちろん、Google検索結果にも表示されるので、オーガニックな流入も期待できます。認知獲得や自社商材のPR手段以外にも、チュートリアルやFAQ回答用コンテンツといった活用法もあります。
YouTube運営で最も大事なことは「Why=目的」
どんな施策にも目的、目標、戦略、戦術がありますが、YouTube運営でもっとも重要なのは、「目的=Why(なぜやるか)」です。
そんなの当たり前でしょ? と思うかもしれませんが、ここが抜け落ちたまま話が進むケースが意外に多いのです。目的とは「実現させたい最終的な状態」のこと。目的から逆算して、目標→戦略→戦術を決めるのが定石です。
ファベルカンパニーが運営する『ミエルカチャンネル』は、SEOやコンテンツマーケティングを軸にした解説&ノウハウ動画を提供するチャンネルですが、以下のように設定しました。
目的:実現させたい「最終的な状態」
SEO&ウェブマーケツールを使いこなす企業内人材を創出し、業界全体の習熟度を上げる。
目標:目的に到るまでの「中継地点」
ウェブマーケター1万人の登録を目指す。
戦略:目的達成のための「方針」
SEO領域の信頼性の高いウェブマーケター向け情報源にする。
戦術:短期的な目標達成のための「手段」
初心者にもわかりやすく、「教授と助手」の構図にする(一人が語る動画よりも、対話のほうが話に深みを出しやすいと考えたため)。
私も事前に経営陣全員と入念に壁打ちをして、「目的、目標、戦略、戦術」を固めたのを覚えています。
たとえば、「とりあえず〇万人目指そう」は目的ではなく、目標です。「こんな情報発信をしよう!」は方針です。「司会者はタレントを起用したほうがいいかな?」にいたっては、枝葉の戦術に過ぎません。そういう話は目的が決まってから、です。
「このチャンネルの意義は?」「ファベルカンパニーが行う理由は?」のWhy をしつこく掘り下げ、言葉に落とし込み、ドキュメント化して合意を得ています。
YouTubeでもオウンドメディアでもそうですが、ローンチ後にはいろんな部署や人が必ず「ああしたら?」「こうすれば?」と言ってくるものです。中にはノイズでしかない茶々もあったりしますので、そういう雑音をシャットアウトするため、でもありました(笑)。
この準備が、迷いが生じたときに立ち返る北極星となってくれました。
ターゲット(ペルソナ)の決め方
目的を決めたら、次に決めるのが「ターゲット=どんな人に観てほしいのか?」です。
たくさんの人に見てもらいたい気持ちは山々ですが、「日本人全員」はナシです(笑)。「40代の男性」でもまだ曖昧です。ターゲットがあいまいだと、「見られればOK」という安易な方向に流れやすく、目的に合致しない人を集める動画を連発してしまい、「再生数は伸びたけど、こういう人にリーチしたかったんだっけ?」となります。
なお、ミエルカチャンネルは企業内のウェブマーケターとつながりたいので、ターゲットは「企業内のウェブマーケター」とし、「個人ブロガーやアフィリエイター」はあえて対象外としました。
ターゲット:どんな人に観てほしいのか
企業に勤めるウェブマーケターであり、個人ブロガーやアフィリエイターは除く。
分母が小さすぎてもYouTubeチャンネルがグロースしないので、そこは程度の問題ですね。たとえば「フライドポテト専門チャンネル」では狭すぎるけど、「世界中の揚げ物を紹介するチャンネル」なら一定数のファンは獲得できそう、とかです。
登録者数を増やすことを目的にするならば、個人もターゲットに含めたほうがよいでしょうが、それは我々の「Why」に合致しないので、上記のターゲットに設定しています。
チャンネルテーマの絞り込み方
目的とターゲットが定まったら、次は「チャンネルテーマ」を決めます。
ひとことで言えば、「誰」の「何を」助けるチャンネルなのか? を言語化する作業です。ターゲットが観たいのは「どんな動画か?」を考えるわけですが、コンテンツマーケティングに関わる人ならそんなに難しくはないはず。
- ターゲットが困っていることは?
- ターゲット知りたがっていることは?
- その背景にある解決したい根本的な悩みとは?
- その際、どんなキーワードで検索するか?
ターゲットの関心ごとやその周辺のテーマを挙げることで、ある程度テーマは絞れてくるはずです。
テーマを列挙していく過程で、「こういうコンテンツは守備範囲外なので、除外しよう」と、テーマとして取り扱わない内容も明確になっていきます。
ちなみに、ミエルカチャンネルのテーマはこうです。
誰の
初心者SEOマーケターの
何を
コンテンツ制作やSEO施策の打ち手を
どうするチャンネル?
信頼性と正確性の高い情報源として手助けをするチャンネル
できること、できないこと、やりたいことの整理
次は、どうやって進めるかという具体的な方法論に入ります。
現実的な話をすると、よほどの大企業でもない限り、YouTubeチャンネルの運用に最初から潤沢な予算はつきません。人材やリソースの制約もあるでしょう。
商材や顧客層によっては「際どい演出はNG」とか「品性は守って」というリクエストが入ることもあれば、ブランディングの観点から「その編集方針はちょっとマズい」と物言いがつくこともあります。
限られた条件下では、何かを諦める、優先度を入れ替える、別の方法を考える……など、「できること、できないこと、やりたいこと」の整理が必要になります。
制約だらけの中でアイデアを編み出さなければならないのはツラいところですが、そこをかいくぐって、やりたいこと達成するのがマーケターの腕の見せどころとも言えます。
ミエルカチャンネルを例にとると、以下のようなものでした。
できること
SEO領域の豊富な経験、情報、知見、職人技のシェア
できないこと
豪華なセットや機材、外部タレントの起用、TV並みの演出や編集力
やりたいこと
SEO領域のリテラシー向上に貢献したい
まずはコストを掛けない運営に徹し、初期はすべて手作りです。
買ったのはAmazonで買った照明のみ(下図の赤矢印)。三脚&私物スマホで撮影した第1回の様子がこちらです。
編集者は社内にいなかったので、個人でYouTubeを運営する大学生インターンを採用しました。
で、完成動画がこちら。
こんな環境でまともな動画になるのか……? と一抹の不安はありましたが、初回にしてはまともな動画になりました。
競合チャンネルの分析もぬかりなく
やれやれ、これで終わりか……と安心するのはまだ早いです。目標が設定できたくらいのタイミングで、競合分析も同時進行しましょう。
狙ったワードで検索して、ヒットしたチャンネルをチェックします。最低でも15~20チャンネルは見ておきたいところ。ちゃんと再生して、中身の吟味も怠らないように。
先行者がいたら参考にすれば良いし、もっと良いコンテンツを出せないか?自社ならではのアレンジを加えられないか? を考えましょう。
先行者がいなければ、ブルーオーシャンのチャンスですが、昨今は「こんなニッチなジャンルにもチャンネルがあるのか…!」と驚かされることのほうが多いです。完全なブルーオーシャンは期待しないほうがよいし、もし何もヒットしなければ、そもそも需要がないかも? と疑ってみるべきです。
競合チャンネルのチェックポイントは以下の通り。
- 企画(ネタ)と切り口
- チャンネル登録者数
- 再生回数が多い人気動画
- 表現や見せ方の工夫
- タイトルやキーワードの付け方
- 動画の説明欄の内容&リンク
- ハッシュタグ
- タグ(通常は見れませんが、Google Chrome の「Tags for YouTube」という拡張機能で調べられます)
- 動画の長さ
- テロップの有無
- 声のトーン&トンマナ
- BGMの有無
- 更新ペース
- チャンネル開設日時
- 累計公開本数
- (運営者が)法人か個人か
あと、人気チャンネルだけでなく、不人気チャンネル(反面教師)も見ておくのをオススメします。
中には異様に再生数が少ない、登録者がほぼいないチャンネルもあります。再生して「なるほど、これはひどい……」と冷や汗をかき、閑古鳥が鳴く理由を推察し、二の舞を踏まぬよう肝に銘じるのも大事です。
- 実現させたい「最終的な状態=目標」をまず打ち立てる
- 「誰」の「何を」助けるチャンネルなのか?を言語化する
- できること、できないこと、やりたいことを整理する
- リソースが限られていても、アイデア次第でチャンネルは運用できる
- 競合チャンネルの分析時は、良い例と悪い例の両方に学ぶ
次回は「YouTubeチャンネルってどう目標設定して予算確保すればいい?」をお届けします。
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