はじめての企業YouTubeチャンネル活用

企業のYouTubeチャンネルって、どう目標設定して予算を確保すればいい?【1年間の目標サンプル付き】

YouTubeの「目標設定」と「予算」について解説します。(第2回)
新人マーケター

YouTubeチャンネルを始めるにあたって、目的が不可欠なのは前回教わったんですが、目的って抽象的じゃないですか。なので、具体的な目標も据えたほうがいいですよね?

中山

目的と目標はセットで考えるべきで、両方あったほうがいいのは間違いないです。

新人マーケター

あと、予算もある程度必要だと思うんですが、どれくらい確保すればいいのかわからないのが不安です。

中山

いわば、目標は「道しるべ」で予算は「ガソリン」です。途中で道に迷わず、ガス欠もせずに走り切りたいですよね。ということで、今回は、「YouTubeチャンネル運用の目標設定と予算確保」についてお話します。

新人マーケター

よろしくお願いします!

【注意】本連載は企業に勤めるマーケターさんに向けて書いており、広告収益でマネタイズを目指す個人YouTuber向けではありません。

目標は「道しるべ」

目的は不変、目標は可変

YouTubeチャンネル運用の目標設定と予算確保の話をするまえに、前回のおさらいを簡単にすると次のようになります。

目的:実現させたい「最終的な状態」
目標:目的に到るまでの「中継地点」

目的は抽象的で、目標は具体的です。

「目的=北極星」なので不変ですが、目標は時期やタイミングで変化しても大丈夫。そもそも、開始前に設定した目標が、「始めてみたら非現実すぎたから、見直そう」となることは普通にあります。チャンネルを成長させていくうえで、時期によって「注力すべきこと」「むしろ注力すべきでないこと」があるという話です。

 やることやらなくていいこと
立ち上げ期(1~3か月)
  • とにかくアウトプット
  • 制作フローに慣れる
  • 体制作りに集中する
  • できること、できないことを知る
  • 動画の質にこだわる
  • 枝葉の改善を試みる
  • アナリティクスで分析する(再生数が少ないので調べてもあまり意味はない)
初期(4~6か月)
  • アナリティクスで分析
  • 改善点を知る
  • PDCAを回す
  • ビジネス的な成果を気にする
  • 新たな企画や施策にトライする(通常の企画が滞りなく回る体制作りに注力する)
  • 他チャンネルとのコラボや出演者のバラエティを増やす(通常の企画が滞りなく回る体制作りに注力する)
中期(7~9か月)
  • ビジネス成果計測の体制作り
  • 通常の発信に加え、新たな企画や施策にトライ
  • 他部署や他社企業とのコラボ&シナジーの構築
  • 予算確保と人員拡充(ビジネス成果を出すことに注力する)
  • 質と量にこだわる(企画の幅を広げるほうに注力する)
後期(10~12か月)
  • 予算確保、人員拡充
  • 質と量にこだわる
 

軌道に乗るまでの最初の3か月は、不安になりがちですがグッと堪えて、雑音は無視して「決めた本数をいったんやり切ろう!」という気持ちで駆け抜けましょう。いちいち立ち止まっていたら時間が過ぎるだけ。細かい改善はそのあとです。

予算は「ガソリン」

機材はぶっちゃけどうとでもなる

YouTubeの相談に乗るとき、けっこうな割合で機材とコストについて聞かれます。しかし、正直些末な問題ですし、お金で即解決できることなので気にしなくて大丈夫です。

ただ、ざっくりでもコスト感は知りたいでしょうから、それに対するアンサーは「MAXでも15万円」くらい。編集ソフト込みでもそんな程度です。

  • 照明スタンド:1万円
  • 三脚:数千円
  • 編集ソフト:5~6万円
  • ピンマイク:5~6万円(最初はなくてもOK)

デジカメは、社内にあれば使えばいいし、なければスマホでOKです。

もっとも頭を悩ませるのが撮影と編集コスト

「編集も撮影もやったことがない」という方しかいない会社にとって、悩ましいのは動画加工スキルを持つ人集めです。趣味で「YouTubeやってます」という、社員がいれば好都合ですが、なかなかそうもいかないはず。

YouTube動画を作るフローはざっくり下記のとおりです。

  1. ネタ出し → 企画固め → 構成案
  2. 演者確保
  3. 撮影と編集
  4. チェック&公開

課題は3の撮影と編集ですね。解決策はシンプルで、「社内で探す → いなければ社外で探す」のみです。

社外で探す場合、次のような方法があります。

  • クラウド(玉石混交)
  • 知人経由の紹介(時間がかかるが、いい人が見つかるとベスト)
  • 動画制作会社(質は高いが価格も高め)

個人的に推すのは「紹介」です。仕事のつながりを片っ端からあたれば、4~5名は見つかるものです。社員である必要はなく、業務委託で十分。まずは相性の見極めのために全員に1本ずつ発注し、長くお付き合い出来そうな方を絞り込みましょう。

「制作会社に頼む」という手もありますが、本格的に運用に乗ってからでかまいません。ちなみにミエルカチャンネルでは、現役YouTuber の大学生をインターン採用しました。私の娘ですが……(笑)。

「時間」という予算概念を大切にする

編集ソフトをとりあえず買って、勉強してスキルを溜めてから開始するという選択肢もありますが、それではあまりに遅すぎます。

YouTubeは得も言われぬ魔界的な世界でして、「何がウケるか&スベるか、ぶっちゃけ出してみないとわからない」面があります。計画を練りに練って、機材や資材をバッチリ整え、満を持してリリースしても無反応……というのはザラにあります。

半年前に編集は終わっているのに、「BGMがまだ決まらない」という理由でずっと塩漬けになっているケースを目撃したことがあります。完璧主義も度がすぎると、始まってないのに終わるハメになるので注意しましょう。

逆説的になりますが、あえて細部を決めずに柔軟性を持って、ベータ版をリリースするつもりくらいの軽めのマインドでできる会社の方が強いです。まずは出して反応を見て、都度改善を重ねることができるかどうか。この辺は会社の文化や、代表の気質にも左右される部分ではあります。

「短いサイクルで動画を出す → 分析と反省 → 次の動画に活かす」ためにも、足りないリソースや人材はとりあえずかき集めてスタートを切る! ことです。

YouTubeは「船頭」と「現場監督」の2名でキックオフできる

「YouTubeチャンネルを始めるのに何人必要?」もよく受ける質問です。

私の回答は、「プロデューサー(船頭)とディレクター(現場監督)の2名体制が理想」ですね。2名いれば、なんとかなります。

プロデューサー(船頭)

筆者の担当はココで、業務範囲は以下のとおり。

  • チャンネル運営の意思決定
  • ネタ準備
  • 人材発掘
  • 分析と現場へのフィードバック
  • 数値管理とレポート

求められているのは「成果を出している動画の見極め」「当たる企画の再現」「チャンネルのグロース」「ビジネス貢献度の可視化と社内共有」「ToDoや施策をカレンダーに落としこんで回す」といった舵取りです。

動画に出演する必要は無く、撮影も編集もできなくても構いません。実際、筆者は撮影にも編集にも関わっておらず、ディレクターに任せてます。

ディレクター(現場監督)

インターン生(娘)が担当していて、業務範囲は以下のとおり。

  • スクリプトの企画と作成
  • 演者とのスケジュール調整
  • 司会進行と撮影
  • 動画編集(BGMやテロップ、図版作成)
  • サムネイル作成
  • 公開と拡散

インターンに任せる範囲としてはかなり広いですが、YouTubeで魅せる動画についてもっとも知見がある人間に任せるのがベスト、という判断です。もちろん、最終的な内容チェックは全社でおこなってはいます。

事例:福岡県の不動産会社「あいある社長」

「2人いればYouTubeはOK……」と思っていたのですが、先日その考え方が覆されました。

福岡県の不動産売買仲介・中古マンションの売買コンサルティング会社の代表、谷さんが運営する「あいある社長」というチャンネルがあります。もともと、筆者が中古マンションを購入する際に個人的に視聴していたのですが、なんと、すべて代表お一人で運営していると知り、びっくり。

どうやって回しているのか、ご本人にインタビューさせていただきました。

中山: YouTubeを始めたきっかけは?

谷さん: YouTubeは自分ではそんなに見ていなかったんですが、流行ってはいたので前々から研究していました。仕事で全国を回って、買取、リノベ、販売を10年で1000件以上関わってきて、マンション売買の目利きとノウハウには自信があったので、この領域で有益なコンテンツを提供しよう、と思って始めたのが2020年1月のことです。

中山: ネタ出し → 台本作成 → 撮影 → 編集 → 公開 → 分析のすべてをお一人で、回せるものですか?

谷さん: 意外になんとかなりますよ。効果と反響を感じているので、継続は苦にならないです。

中山: 撮影と編集はどのような方法で?

谷さん: PCに台本のスライドを映し、話している姿をスマホで自撮りするスタイルです。代表としての本業が忙しいので、編集作業はもっぱら夜中になります。

中山: 内容にはいつも感服しているのですが、たまにご愛敬レベルで漢字の変換ミスが……忙しい合間をぬって作業されているからですかね?

谷さん: 寝ぼけ眼でテロップ入力をする日もあるので……そのへんは笑ってご容赦ください(苦笑)。

中山: 編集を外注する、というお考えはなかったんですか?

谷さん: アウトソースの発想がなかったです。話す内容は自分が最もわかっているし、編集すべき箇所も自分が把握しています。人に頼むより、自分で完成させるほうが早いですから。

中山: コストはどれくらいかかっていますか?

谷さん: 一人運営なので、自分の人件費だけです。機材はスマホと三脚のみなので、ほぼゼロですね。

中山: 1年半の運営を振り返って、一番の苦労は?

谷さん: 睡眠時間は少々削っていますが、とくにないです。が、不安がなかったといえば嘘になります。マンション売買で悩む方々へ価値あるコンテンツをお届けする自信はありましたが、出すまでは「視聴されるかな?役に立つって思ってもらえるかな?自己満で終わらないかな?」という不安は少しありました。

中山: 愚問を承知でお聞きしますが、予算をかければかけるほど成功に近づくと思いますか?

谷さん: 予算をかけずともヒット動画は出せます。お金があればうまくいくものではありません。意識しているのは、専門用語をなるべく使わず、誰でも理解できる内容で、かつ独自性のあるユニークな内容にし、結果的に支持してもらえるようにすること、ですね。

中山: ありがとうございました。私も精進いたします!

社長業をこなしつつ、登録者数1万人越えのYouTuber でもあるとは……シンプルに凄すぎます。

まとめ

ここまでお読みいただき、「予算の過多や機材の優劣がYouTubeの決定的な差にはならない!」ことがわかったと思います。で、次に湧いてくるギモンは、「じゃあ、YouTubeで見られる動画ってどんな動画よ?」でしょう。

次回は、「YouTubeでウケる動画、スベる動画の違い&作り方」をお伝えします。

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