Marketing Native特選記事

再スタートから1年半で月間PV数1億4440万。新生『MERY』を支えるコンテンツ力とSNS運用術

「MERY公認ライター」のマネジメントを担う、MERY編集部の望月菜穂子さんに話を伺った。

女性向け情報メディア『MERY』が2017年11月に再スタートしてから1年半。『MERY』は再び多くの読者に支持され、月間PV数1億4440万を誇る一大メディアへと成長しています。伸びているのはPV数だけでなく、InstagramやTwitter、FacebookなどのSNSフォロワーは全アカウントを合計して111万以上に上ります。

そんな『MERY』の成長を支えているのが、10代~20代の女性で構成される約100名の「MERY公認ライター」です。

今回は、「MERY公認ライター」のマネジメントを担う、MERY編集部の望月菜穂子さんに話を伺いました。
(取材・文・人物撮影・イラスト:Marketing Native編集長 佐藤綾美)

画像提供:MERY

    

ライターの表現には正解を決めない

――『MERY』は1日に公開される記事が平均80本あるとのことですが、記事のテーマは公認ライターの方が提案しているのでしょうか?

はい、記事のテーマは公認ライターに自由にゆだねています。テーマの探し方は人によってさまざまです。雑誌を読みながら探したり、SNSで気になるテーマを見つけてきたり、友達との会話の中で探してきたり…。「絶対にここから見つければいい」という正解はありませんが、それぞれ自分の感じる「好き」や「かわいい」をきっかけに記事づくりの糸口を見つけていきます。

▲『MERY』の記事制作フロー。MERY公認ライター執筆後、校閲が事実関係を確認し、編集へ渡す。編集は権利関係の許可取りを行いつつ、公認ライターに修正を依頼する。再開当時は1本の記事を公開するまでに時間がかかっていたが、現在は校閲・編集チームとライターチームでやり取りを重ねつつ、優先度の高い記事は早く回すなどして運用している。校閲は専門の企業から派遣されたスタッフが常駐し、行うとのこと。

――公認ライターの方々が読者に近い世代だからこそ、それぞれの「好き」や「かわいい」という感覚にゆだねられるんですね。では、読者にとって等身大の記事を提供する上で、編集が大切にしていることは何ですか?

少し抽象的な話になってしまいますが、2つあります。

1つ目は、情報ではなく「体験」を届けることです。

記事の中で紹介されていることは「情報」ですが、それを読んだ女の子たちは実際に紹介されている商品を買ったり、日々の生活のちょっとした習慣を変えたり、新しいメイク方法に挑戦したりするでしょう。ユーザーの行動を変えること(=「体験」を届けること)を目的に、日々記事づくりと向き合っています。

具体的には、商品を紹介するときはすぐに購入できるように導線を付けたり、メイク方法を載せるときは動画やプロセスがわかりやすい画像を探したりと、丁寧な記事づくりを心がけています。表現の方法に正解はないので、「自分が読み手だったら、どうすれば行動に移すのか」を常にライターが模索しています。

2つ目は、書き手が感じる「好き」を届けることです。

書き手が楽しく記事をつくるからこそ、読み手にとって面白いコンテンツが生まれると思っています。だからライターには、「自分の好きなこと」「自分の興味があること」を大切にしてほしいと伝えています。

しかし、自分が「好き」だからといって、単純に表現するだけでは、どこか押し付けがましさが感じられる独りよがりの内容になってしまいます。記事づくりで大切なのは、「自分の好きなことを、ユーザーにとって魅力的に映る形にどう発信するか」です。ここを考え、表現の工夫を重ねるからこそ、それぞれのライターが「自分らしい記事」を生み出せるようになります。

多くのユーザーが興味のありそうなことを発信するのではなく、ライター自身が本当に良いと思ったものを届ける…だからこそ、『MERY』にはさまざまな記事が生まれます。

以上の2つを大切にしながら、『MERY』らしいテーマ選定や文章表現ができるように運用しています。

――100名以上の公認ライターをまとめていく中で、望月さんが大変に感じていることはありますか?

『MERY』では、ライターが表現することに対して正解を決めていません。表現の仕方やタイトルの付け方など、ルールはできるだけ最小限に抑えていて、表記もライターにゆだねています。

ライターの表現に「正解」を決めないことは、「何でもあり」という意味ではありません。ライター一人一人が、「自分らしい表現」や「ユーザーのための表現」について考え続けてくれる環境をつくる必要があります。この環境をつくることが非常に難しく、今も悩みながら取り組んでいます。

例えば、ライター同士の勉強会を開催したり、記事に関するフィードバックをあらゆる形で届けたりしています。当たり前ではありますが、考えるきっかけは人によって異なるので、どんな人に対しても気づきを与えられるようにさまざまな打ち手を考えています。

また100人のチームとなると、ライターたちを平等に評価するための仕組みづくりや関係の構築が難しいと感じています。公認ライターの中には大学生やフリーターなど生活スタイルの異なる人がいて、境遇が異なれば働くモチベーションもさまざまです。出勤できる時間ひとつをとっても、人によって差が生まれます。そんな別々の立場の人が、最大限自分の力を発揮し、サービスに貢献できるようにするためには、日々ルールの見直しや現状をブラッシュアップしていく必要があるので、頭を悩ませながら進んでいます。

――「出勤」というキーワードが出てきたのですが、公認ライターの方々は『MERY』のオフィスに出勤して執筆しているんですね。

はい、そうです。在宅で依頼を受けて執筆している人はいません。

オフィスに出勤してもらうことの意味はいくつもあると思いますが、私が重要だと思っている点は2つあります。

1つ目は、ライターのその日の調子がわかることです。

MERYでは書き手が感じる「好き」を届けることを大切にしているので、ライターは出勤のたびに自分の中にある感情や気づきと向き合うことになります。調子が良ければたくさんアイデアが思い浮かんで記事を生み出すことができますが、調子が悪いと執筆がなかなか進まなかったり、記事の質に課題が残ったりしてしまいます。

もちろん、記事を読みながらライターの調子や様子を感じ取ることもできますが、直接会ってその人の空気を感じ取るほうが、早く変化に気づけます。ライターの調子が悪いときこそ、どう対応できるかが、チームを運営する上で大切だと思っています。

2つ目は、信頼関係が構築できることです。

気づきを与えるためのフィードバックも、考え続けるための環境づくりも、相手との信頼関係がなければライターには届きません。信頼関係は日々の何気ない会話の中で生まれると思っています。ライター同士が信頼関係を築くことも、同じサービスをつくる仲間として非常に重要です。「今日いつものメイクと違ってかわいいね!」「新しいワンピース買ったの?」といった日常のやりとりが、大人数のチームに一体感を生む重要なきっかけをつくっていると考えています。

――公認ライターの評価はどのような観点で行うのでしょうか?

評価制度は段階を設けています。例えば、記事に対する評価は「view数が高い」だけでなく、「LOVE(※)数が高い」「ライター同士の中で切り口やタイトルが評価されている」など、ひとつに絞らず、いろいろな軸を設けています。良い記事に正解はないので、それぞれのライターが、自分の得意なところを何かしらの部分で見つけることができるように評価制度を整えています。

また、「プチプラ」のように多くの人が関心の高いテーマの記事を書き、view数を稼ぐことはできますが、『MERY』はあえてそれはしません。さまざまな視点を評価することで記事のバリエーションが多くなり、多様な価値観のユーザーに支持されるコンテンツに近づけると考えています。

※LOVE:お気に入りの記事を保存する機能。『MERY』のアプリに搭載されている。

――何かしらで一番になれるなら、楽しく記事を書けそうですね。

そうなんです。やはり楽しく働けることと、自分が貢献できていると実感を持てることが大切で、記事を書いている人が楽しかったりやりがいを感じていたりしないと、読み手も「この記事はなんだか淡々と書いているな」とわかります。だから、記事を書いている人たち自身が楽しむことをとても大切にしています。

みんながそれぞれの得意分野を『MERY』で見つけ、自信を持って発信できるような環境をつくっていきたいです。

▲MERY編集部・望月菜穂子さん。MERY公認ライターの採用や研修、面談などのマネジメント、SNS運用の管理を行う。

Instagram上のニーズは細分化されている

――次に、SNS運用についてお伺いします。『MERY』の記事はアプリ経由のPV数が約9割を占めるとのことですが、InstagramやTwitter、FacebookといったSNSにはどのような役割を持たせているのでしょうか?

アプリはダウンロードしてわざわざ自分で開かなければいけない、労力が必要なものなので、『MERY』のことを知っているファンの方に記事を届ける場です。

一方SNSは習慣的に見るものなので、日常的なチャネルにおけるユーザーと記事との接点をつくる目的で運用しています。またSNSでは、まだ『MERY』のことを知らない人にサービスを知っていただける機会もつくれるので、そうしたユーザーを増やすきっかけとしても活用しています。

――では、『MERY』の場合、InstagramとTwitter、Facebookはどのように使い分けていますか?

Instagramはビジュアル重視で訴求できるプラットフォームなので、アカウントをいくつか分けて、そのテーマごとに沿って『MERY』の世界観を伝える、ブランディングの目的で運用しています。また、Instagramストーリーズのアンケート機能などは、ユーザーとのつながりを強化する上で重宝しています。

Twitterはユーザーが「今」求めているタイムリーな情報を届ける手段として利用しています。例えば、春から夏にかけての朝は、天気予報などで気温を見ても「何を着ていこうかな」と悩みがちなので、7時か8時くらいにファッションのコーディネートに関するツイートを流してみます。夜は自分と向き合う時間がある人向けに、恋愛や人間関係に関する読み込む系の記事をツイートするなど、タイミングを重視しています。

FacebookでもTwitterと同じく記事を配信していますが、Twitterよりもユーザーの年齢層が少し上の世代になるので、OLや主婦の方に向けた内容、例えば便利な100均グッズや時短レシピなどをテーマにした記事を届けています。


▲フォロワー数41.1万人を誇る「@mery.jp」のアカウント。ほかにコスメ&美容を取り上げる「@mery.beauty」(フォロワー17.6万人)や、お出かけスポットを紹介する「@mery_spot」(フォロワー9.2万人)がある。

画像出典:@mery.jp

――SNSの中でもInstagramのフォロワー数が多く、特に力を入れているのではないかと思います。アカウントが「@mery.jp」「@mery.beauty」「@mery_spot」と3つに分かれていますが、それらを分けて運用し始めたきっかけや理由を教えてください。

「@mery.jp」は総合アカウントとして、いろいろな情報を配信しています。『MERY』の世界観を展開し、ファンを増やすというブランディングの要素が強いですが、素敵なアカウントとフォロワーが出会うきっかけをつくることを非常に大切にしています。今は「見つける」から自分でアカウントを探すのが楽になりましたが、レコメンドしきれない細かい部分や、まだスポットライトが当たっていない小さなアカウントを紹介することに力を入れています。

ただ、Instagramでは「これだけは詳しく知りたい」というようにニーズが細分化されています。さらに、ブランディングという観点でアカウントを運用すると、KPIを追うのが難しく、運用も属人的になってしまうため、目的を明確にしたアカウントを開設することにしました。

「@mery.beauty」と「@mery_spot」に分けたのは、「@mery.jp」の中でも特に人気の分野で、Instagramの中でニーズがあると考えたからです。

――Instagramの運用も公認ライターの方が担当しているのでしょうか?

はい、そうです。日々の運用は公認ライターに任せていて、私はKPIを設定したり、アドバイスしたりするのが役割です。「@mery.jp」が6人、「@mery.beauty」が4人、「@mery_spot」は2人で運用しています。

今のKPIは、いいね数とフォロワー数、インプレッション数、保存数です。

投稿自体はリグラム(※)で、元の投稿者の方に連絡をして、掲載許可をいただけたら投稿しています。「@mery_spot」は1日1投稿で、「@mery.beauty」は1日2投稿、「@mery.jp」は平日1日2投稿、土日は1日3投稿で運用しています。投稿数が増えると、その分反応もいいです。

※リグラム:Instagramでほかの人が投稿した画像を、自身のアカウントで再度投稿(シェア)すること。「リポスト」とも言う。

――では、ストーリーズも含めて、Instagramの投稿で意識しているポイントを教えてください。

記事制作と同じく、正解を決めないことを大切にしています。とはいえ、ユーザーのアクションも気にしないと、独りよがりなアカウントになりかねません。そのため、検索されやすそうな投稿や、保存数が多くなりそうな投稿を意識したりしています。また、季節性を意識した投稿も入れるようにしています。

ストーリーズはクオリティの高いクリエイティブをつくるほか、フォロワーとのコミュニケーションをInstagramだけで終わらせず、記事と連動させることも大切にしています。例えばストーリーズでアンケートを取って、回答を記事でつくり、それを再びストーリーズで「回答ができました」と流す…といった感じです。

――Instagramの投稿を拝見していて、写っている人の顔が見えない写真が多い印象を受けたのですが、あえてでしょうか?

そうですね。人の顔が写ると、その人のイメージが強くなって、「MERYが推しているかわいい人はこういう人なのか」という印象をフォロワーに与えるおそれがあります。イメージが固定化されてしまうのは避けたいので、あえて顔が写らない写真を選ぶようにしています。

――モデルを立ててイメージをつくり上げる雑誌などとは、少し逆の発想になっているんですね。

今後もコンテンツの充実化に振り切る

▲2017年11月再スタート後の『MERY』の歩み。



▲2018年9月には1周年記念イベント「LUCKY MERY DAY」を開催。『MERY』の世界観をリアルの場に表現し、およそ2000名の読者を招待した。自身でメイクを体験できるブースやフォトスポットなど、「自分が主役になれる」スポットに多くの来場者が集まったと言う。

画像提供:MERY

――今後、デジタルマーケティングの施策で取り組もうと考えていることはありますか?

コンテンツを充実させることに力を入れていて、ちょうど新たな取り組みとして『MERY MOOOK(ムック)』を5月17日から始めています。

これはアプリの中で読める新たなコンテンツです。まるで雑誌のようなつくりで、表紙に当たる部分では、動画がループ再生されます。最初にリリースしたコンテンツのテーマが「連休明けの私、ゴキゲン計画。」という初夏を意識したもので、ファッションやネイルのほか、ピクニックでのレシピなどの記事をタップして読めるようになっています。

『MERY』の通常の記事はテキストベースです。しかし、昨今のInstagramやストーリーズの反響などを見ていて、「ビジュアルと記事をつなげるようなコンテンツや、リッチな表現方法があってもよいのでは?」と考えました。弊社は動画の制作チームもいるので、公認ライターのチームが、自分たちでつくった記事をビジュアル化するべく、一から取り組みました。

▲『MERY MOOOK』はスマホからのみ閲覧できる。

画像提供:MERY

――コンテンツに『MERY』らしい世界観があって、つくる側も楽しそうですね。

『MERY MOOOK』のような新たな取り組みを始めることが、結果的にユーザーの満足度向上につながり、マーケティング的な役割も担うと考えています。そのため、今後しばらくはコンテンツに注力する予定です。

デジタルというと、CTR(クリック率)やCVR(コンバージョン率)などのKPIも大切ですが、それは良いコンテンツを生み出せば、おのずと付いてきてくれると思っています。記事もSNSも、使う人のニーズに合わせて、より良いコンテンツを届けることが大切です。そしてそれを達成するために、あらゆる立場の人が考えてPDCAを回すから、表現が磨かれて面白いコンテンツになります。そうした結果、ファンが生まれるのではないでしょうか。

私たちの目的はKPIを追うことではなく、コンテンツを通して女の子の気持ちを前向きにすることです。そのためのこだわりや挑戦は、ずっと続いていくと考えています。

――ありがとうございました。

Interview Points

  • 「かわいい」にあえて正解をつくらず、公認ライターそれぞれにゆだねているからこそ、幅広い女性が共感するコンテンツが生まれている。
  • Instagramはリグラムで運用し、アンケート機能でフォロワーとのコミュニケーションを強化。
  • ユーザーと記事との接点としてSNSも活用しつつ、コンテンツの充実化に注力することで、ファンの定着につなげている。

MERY
株式会社MERY(東京都千代田区)が運営する、「女の子の毎日をかわいく。」をコンセプトとする女性向けメディア。MERY公認ライターを中心に、ファッションやメイク・コスメ、ライフスタイル、恋愛、グルメなど、1日約80本ものオリジナルコンテンツを配信している。
https://mery.jp/

「Marketing Native (CINC)」掲載のオリジナル版はこちら再スタートから1年半。月間440万UUの『MERY』を支えるコンテンツ力とSNS運用術

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