「Web接客」でCVR30%増を実現するECサイト改善のポイントと、成功事例・失敗事例
Web上に実店舗と同じような接客体験を取り入れる「Web接客」に取り組む企業が増えているが、「うまくいかない」との声もよく聞かれる。
「Web接客の成功には、どういう体験をデザインするかが大事だ」と述べるのが、Sprocketの深田氏だ。これまで200社以上のサイト改善を手がけてきた深田氏が、「Web担当者Forum ミーティング 2019 春」にて、CVR30%増を実現するWeb接客の秘訣を、成功事例だけでなく失敗事例も交えて赤裸々に語った。
Web接客は「体験のデザイン」が大事
「Web接客」という言葉を聞く機会が増えてきた。Web接客とは、実店舗の接客と同じように、Webサイトに来訪したお客様一人ひとりに合わせた接客コミュニケーションを行い、CV向上を促進することだ。
CVに至るフローを下記の3つに分解した場合、Web接客の機能は、2つ目のサイト内回遊やCVを促進する「接客」機能を果たす。具体的には、オススメのコンテンツを案内したり、CVに必要な手続をガイドをしたりできる。
- 新規顧客のWebサイトへの「集客」
- サイト内回遊やCVを促進する「接客」
- 既存のお客様にメルマガやリターゲティングなどでコミュニケーションを図る「追客(ついきゃく)」
Web接客が注目される背景には、スマホの普及をはじめとする情報過多が大いに関係していると言えるだろう。ユーザーが消費できる情報量には限りがあるため、「Webサイト側が見て欲しい情報を、ユーザーがなかなか見てくれない」傾向はますます進んでいくことになる。
しかし、ユーザーは自分にマッチするコンテンツがあるとわかれば、行動を起こすのも事実だ。そこでカギを握るのが、パーソナライズによるWeb接客である。
Web接客の2つのタイプ「ポップアップ型」「チャット型」
深田氏によると、Web接客のタイプは大きく2つに分かれるという。
- ポップアップ型
- チャット型
ポップアップ型は、ユーザーに最適なコンテンツをタイムリーに表示するもので、チャット型は、問い合わせなど、ユーザーが知りたいことや疑問に素早く対応するのに適している(深田氏)
CV向上や告知、サポート、UI支援などの接客・サポート利用やキャンペーン利用など、さまざまな用途で活用できるWeb接客ではあるが、深田氏は、「実際の利用状況を見ると、ただのキャンペーン誘導やクーポン配信ツールになってしまっているサイトが多い」と指摘し、「どういう体験をデザインするかが大事」だと述べる。
たとえば、Web接客ツールが持つ機能には、次のようなものがある。
- データ収集
- リアルタイム判定
- メッセージのリアルタイム配信
- 効果測定・シナリオ分析
CV向上のためには、Web接客で配信するメッセージをいつ、どんな内容で、どのタイミングで、表示するかについてユーザーに刺さる接客シナリオを考えることが大事(深田氏)
顧客の商品検討の4段階、それぞれの成功事例と失敗事例
Sprocketでは、Web接客の使いどころを、「ホスピタリティ・ジャーニーマップ」というフレームワークで整理している。
- 情報収集
- 比較・絞り込み
- 意思決定
- コンバージョン せ
深田氏は、顧客の検討の4段階それぞれにおいて、実際の成功事例と失敗事例を紹介した。
段階① 情報収集
シャボン玉石けんのオンラインショップでは、初回訪問ユーザーに対し、TOPページで「無添加」というブランド訴求を行うウェルカムバナーを表示した。閲覧を開始してから数秒後のタイミングで表示したこのバナー施策は、商品購入のCVRが130%に達するという成果を上げた。
また、アパレル通販のジョンブルのオンラインストアでは、キャンペーン対象期間に訪問したユーザーに対し、TOPページにタイムセールを訴求するウェルカムバナーを表示。こちらもCVRが133%という高い成果につながった。
さらにジョンブルでは、トップページにシークレットセールのお知らせを表示し、商品ページを回遊して商品を選択したユーザーに対して、カートページでセールのクーポンコードを再度告知するという二段重ねの施策も実施した。こちらの施策ではCVRが168%まで増加したという。
しかし、ECサイトにおける「ウェルカムバナー」の施策には失敗例もあると深田氏は述べる。
たとえば、あるWebサイトでは、TOPページで動画をポップアップさせ訴求を図ったところ、「動画だけ見て直帰する来訪者が続出してしまった」そうだ。
そこで、バナーを表示するタイミングを、商品一覧ページでの表示に変更したところ、直帰率の低下、コンバージョンの改善という成果が出たという。「どのタイミングで表示させるかも重要なポイント」になる。
また、ブランドロイヤリティーを高める施策として、前出のジョンブルでは、TOPページで「LINE@」の友だち追加を促すポップアップを初回訪問ユーザーに対して表示したところ、友だち追加のCVRが194%という成功を収めた。
「サイトTOPページで施策をすれば『成功する』と安易に考えない方がいい」と深田氏は指摘する。TOPページでポップアップを行ったものの、成果が得られない失敗事例もあるという。その場合は、「新規流入が多いページを洗い出し、そのランディングページでポップアップする施策に変更した。そうすることで、改善につながった」と深田氏は振り返る。
段階② 比較・絞り込み
比較・絞り込み段階での改善例については、「問診誘導」を行ったワコールの事例がある。
これは、初回訪問ユーザーが商品一覧ページを表示したタイミングで、「どんなデザインが好きか」を選択させる下着の選び方の提案をポップアップで行うというものだ。この施策で商品購入のCVRは125%と増加した。
こうした施策は、特に商品点数やカテゴリーが多いECサイトで商品の絞り込みに有効だと深田氏は説明する。
しかし、別のサイトでは、ポップアップのバナーデザインを作り込み過ぎた結果、かえって数値が下がるケースもあったという。
こうした経験を踏まえ、深田氏は、「ポップアップのデザインはシンプルにし、“問診型”のUIに変更すること、そして表示タイミングを調整することが有効」だと語る。
段階③ 意思決定
「意思決定」における事例には、「機能訴求」を行ったコメ兵の事例がある。自社で運営する「買取センター」にて仕入れた“リユース品”を扱うコメ兵は、特にブランド品の購入にあたって安全性の不安を抱くユーザーがいる。
そこで、初回訪問ユーザーに対し、商品詳細ページで「リユース品の安全性」を訴求するポップアップを表示。これにより商品購入のCVRは128%に向上した。
また、ニッセンでは、初回訪問ユーザー商品詳細ページで「サイズ表記」ページに誘導するポップアップを表示、これにより商品購入のCVRは120%と増加した。
気をつけなければならないポイントもある。深田氏は「機能訴求のポップアップを、当該ページの来訪者全体に表示したところ、思ったような効果が得られないことがあった」と述べる。機能訴求の場合は、ページ来訪者全体ではなく、「ログインユーザーのみ」「機能の未利用者のみ」「ページ訪問が2回目のユーザーのみ」というように、該当者を絞り込む必要があるとのことだ。
段階④ コンバージョン
「コンバージョン」での事例では、ランジェリーや下着通販の「Chut! INTIMATES」(シュット!インティメイツ)の事例がある。
初回購入、再購入の顧客に対し、カートページにてお買い得商品に関する情報を訴求するポップアップを表示、初回購入(187%)、再購入(108%)と、ともに高いCVRを示した。
また、前出のワコールでは、同様にカートページで「サイズが合わない場合はサイズ交換が可能である」旨をポップアップで訴求したところ、購入のCVRが105%に伸びた。
こうしたコンバージョン支援施策についての注意点としては、カートページにおけるポップアップの表示タイミングがある。「カートページ表示直後にポップアップを表示させ、効果が思わしくなかったケースがあった」と深田氏は述べる。
これについては、「表示直後」「3秒」「5秒」というように、ABテストで「声かけ」のタイミングを検証。さらに、AIによるポップアップ表示のタイミング最適化にも取り組み始めているところだ。
ここまで、さまざまなWeb接客の改善事例が示されたが、深田氏は、ポップアップが邪魔にならないようにするには、「マーケターが伝えたいことでなく、ユーザーが聞きたいことは何か、ユーザー視点でコミュニケーションを設計すること」が重要だと説明した。
Sprocketでは、Web接客ツール「Sprocket(スプロケット)」を中核に、これまで200社以上のサイトにおいてCVR・LTV向上を支援してきた。
Web改善施策は、導入企業のROI改善をKPIに、ツールの提供だけでなく、接客シナリオの企画、プラットフォームへの設定代行、データ分析改善までを行っています。結果データの蓄積に約2週間、分析・改善・検証に1~2週間という約1か月のプロジェクト期間で取り組むことが多い(深田氏)
これまでに投下したWeb接客シナリオ数は2000を数え、“鉄板”のシナリオは100以上、ROI目標達成率は92%という運用実績を持つSprocket。深田氏は「心地よい接客体験と態度変容成果によって“おもてなしのデジタル化”を実現していきたい。コンバージョンを上げたい方、Web接客に取り組みたい方はお気軽にご連絡ください」とアピールして、セッションを締めくくった。
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