【レポート】Web担当者Forumミーティング 2019 Spring

ユーザー行動解析手法「コンセプトダイアグラム」をSEO視点でフル活用し、CV向上に繋げる方法

カスタマージャーニーマップと異なり、ペルソナではなく顧客のニーズから考える「コンセプトダイアグラム」の作り方と活用法を詳しく解説する
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ECサイトはもちろん、見積もり依頼や問い合わせ件数を増やしたいB2Bサイトにとっても、検索流入とコンバージョン(CV)の関係は常に悩ましい。流入が増えても、CV数が増えなければ意味が無い。かといって、検索流入を重視しない訳にもいかない。

Web担当者Forum ミーティング 2019 春」には、SEOやWebマーケティングを専門とするクヌギの大沢氏が登壇。日本のマーケターの間で広がりつつある「コンセプトダイアグラム」という概念の特徴と用途、そして実力について紹介した。

カスタマージャーニーマップとは似て非なる「コンセプトダイアグラム」

大沢翔己氏
株式会社クヌギ SEO事業部 主任 大沢翔己氏

コンセプトダイアグラムとは、「顧客の心理変容と企業の施策を図解し、顧客の理解と施策の評価を行うメソッド」のこと。インターネットでのマーケティングなどに長らく携わっている清水誠氏によって2008年に提唱され、以後、脈々と洗練・発展し続けている。

この定義だけを聞くと、「カスタマージャーニーマップ」との違いがよくわからないかもしれない。大沢氏は「カスタマージャーニーマップは、ある1人のペルソナを作成して、そこから考えるのが前提。対してコンセプトダイアグラムは、ペルソナ作成の必要がない。あくまで“ニーズ”から考えるもの」と解説する。

大沢氏が紹介したのは、清水氏が提唱しているコンセプトダイアグラムとは異なるコンセプトダイアグラムになっており、大沢流コンセプトダイアグラムとも言える。基礎を抑える為にコンセプトダイアグラムの公式サイトを確認するとよいだろう。

コンセプトダイアグラムは主に下記のような用途で使用される。

  1. サイトの全体像を把握する
  2. KPIの計測方法として使用する
  3. CVを増加させる施策の方向性を決定する

クヌギでは、月間55万PVを誇るクレジットカードについての情報メディア「クレジットカードを知る」を運営しており、その記事を読んだユーザーが実際にサイト経由でカードを作成した場合に収益が上がる構造となっている。そのビジネスフローをコンセプトダイアグラムの考え方でまとめると、下記のような図が完成する。

Webサイト「クレジットカードを知る」を元に作成したコンセプトダイアグラム

では、この図はどのように作成して、どのように活用すればよいのだろうか。

コンセプトダイアグラムの作成

コンセプトダイアグラムの作り方は、大きく4段階に分けられる。

  • STEP ① スタートとゴールを見極めてフロー図を描く
  • STEP ② フローを2軸に分けて考える
  • STEP ③ 態度変容と施策を考える
  • STEP ④ ユーザー群に分類して計測方法を検討する

では、前述のWebサイト「クレジットカードを知る」を例に、実際の作成法を見ていこう。

STEP ① スタートとゴールを見極めてフロー図を描く

まずは、ユーザーのストーリーを前提に、顧客の心理状況をたどり、スタートとゴール、そしてその過程を考えていく。マーケターがただ頭の中で想像するだけだと、自分たちにとって都合のいいストーリーになりがちであるため、ストーリーを作成する前に、ユーザーニーズをしっかりと吸い上げるフローが必要だ。1人でストーリーを考えると発想が狭まりやすいため、複数人で考えたほうがよい。

Webサイト「クレジットカードを知る」の場合、ユーザーは、クレジットカードと出会い、興味を持ってからサイトを訪れるだろう。ここがスタートとなる。また、そのユーザーにとっての「満足」であるゴールは、「カードが作れて満足」「カードで買い物ができて満足」という心理状況になってもらうことだ。

ただスタートからゴールに、直接転じるとは考えづらい。その過程では、さまざまな決済手段などとの違いをユーザー自身が「調べる」だろうし、カードを作る前に「(カード作成を)決意する」という心理状況を経るだろう。よって「出会い」「調べる」「決意する」「満足」が、ユーザーが実際にたどるフローとなる。

サイト訪問からコンバージョンに至るまで、実際にはいくつかのステップを踏む

STEP ② フローを2軸に分けて考える

ユーザーが実際にたどるフローを深掘りするために、横軸を2つに分けて考える。今回の場合、「必要度」で軸を分けた。具体的には、クレジットカードを“欲しい”と思う潜在層、生活に“必要”だと思っている顕在層の2つだ。もちろん、コンセプトダイアグラムを作成するサイトによってさまざまな評価軸があるだろう。

次は、縦軸に、スタート・ゴール設定に紐付くような概念を考える。今回のケースでは、「クレジットカードの知識量」と設定した。ユーザーのクレジットカード知識が増えていけばいくほど、ゴール(ユーザーの満足)につながる可能性は高いからだ。

この2軸分析を、①で作成した「出会い」「調べる」「決意する」「満足」のフローと混ぜ合わせると、どうなるか。以下の図を見るとわかりやすい。

スタートからゴールまでのフロー、そして2軸分析を組み合わせたもの

この通り、クレジットカードが「欲しい層」と「必要な層」では、「調べる」の中身が微妙に異なる。それこそ前者なら、例えば、「JCBカードを使えばディズニーランドで特別な特典が受けられるようになる」などのお得な情報を聞いたことでクレジットカードに興味を持ち始めているし、後者なら「イベント申し込みにあたってどうしてもクレジットカードがなければならない」といった具合に、背景となる心理状況が微妙に違う

コンセプトダイアグラムでは、こうした部分を図解化できる。そして図の「クレカを発見」「欲しくなる」「必要になる」など、それぞれの個別項目を「ユーザー群」として扱う。マーケティング上の施策も、これらのユーザー群単位で行っていくのが基本的な考え方だ。

STEP ③ 態度変容と施策を考える

コンセプトダイアグラムそのものが完成したら、次はどう活用するかを解説する。

営業上のゴールへたどり着くために、サイト運営側はユーザーの「態度変容」を促すようなコンテンツを用意しておくことが重要だ。たとえば、ユーザーが「アメックス(アメリカン・エキスプレス)のクレジットカードは格好良い」と思っていても、それだけでは、コンセプトダイアグラムで定めたところの「クレカを発見」したに過ぎない。そこから「気になる」という態度へ至るには、ユーザーの中で心理の変化が起きなければならない。

それぞれのステップによって、ユーザーの態度は異なる。これをいかに変容させ、次のステップへと進めさせるのか

「クレカを発見」した段階から「気になる」へ、ユーザーの態度変容を起こす要因として代表的なところでは「CMを見た」「学校の先輩が使っていた」などが挙げられる。もちろん、マーケティング施策によって、意図的に態度変容を促すこともできるだろう。

「クレカを発見」→「気になる」とステップを進めるためには、端的に言えば「頻繁に見かける」ことがきっかけとなる

では、クレジットカードを「作る」と決意したユーザーが「満足」へと態度変容するには何が必要だろうか。おそらくユーザーはこの時点で「作るためには何が必要なのか」を考えているが、クレジットカードの場合、ここに発行会社による審査が介在する。ユーザーは書類の準備はもちろん、審査基準をクリアしていると確信してはじめて具体的な申し込みを行う。

つまり、「クレジットカードを知る」では、カードを「作る」と決意したユーザーに対して、「審査基準をクリアしているか判断を可能にする」ための情報提供が必要と言える。

このようにそれぞれのユーザー群において、「ユーザーの態度変容を促すためには、どのような情報を提供すればいいのか」考えていくのだ。

STEP ④ ユーザー群に分類して計測方法を検討する

コンセプトダイアグラムにおいては、「ユーザー群」がマーケティング施策を実行する際の重要な単位になっていく。個別のユーザー群に何百・何千のユーザーがいるかは、Googleアナリティクスでユーザーをセグメントする方法が便利だが、SEO視点で見るためには、Google Search Consoleを利用し、自然検索流入の検索キーワードで振り分けていく方法をとるとよい。

自然検索流入時のキーワード(検索クエリ)は、ユーザーの悩みを本質的に示している。これをユーザー群の分類に使う(大沢氏)

たとえば「クレカ CM」や「モテる男の条件」などのキーワードで流入してきたユーザーは、コンセプトダイアグラムの中では、クレジットカードを「欲しい層」の「クレカを発見」ユーザー群に分類するといった具合だ。

大沢氏はこの分析にあたって、Googleスプレッドシートのアドオン「Search Analytics for Sheets」を利用している。このアドオンは、検索クエリとそのランディンページを一覧化できる。クエリはユーザー群の把握、ランディングページは施策対応すべきページの洗い出しに用いる。

このユーザー群の分類を、基本的に手動でクエリ1つ1つに行っていく。ただし、全てを分類しようとすると膨大な数になってしまうため、ある程度流入量の多いものだけに絞るのがポイントだ。また、分類も、完全な正確性を期する必要はなく、仮定で十分という。

分析にあたっては「Search Analytics for Sheets」が便利

検索キーワードとユーザー群を元にコンテンツを調整

ここから大沢氏は、「クレジットカードを知る」における施策の実例を紹介した。

実例 ①: オリコカード

1つ目は「オリコカード amazon」のキーワードで流入してきたユーザーに対する施策だ。

「クレジットカードを知る」のあるページに対して、「オリコカード amazon」というキーワードでの検索流入が非常に多いことがわかった。大沢氏らはこれらのユーザーを、コンセプトダイアグラムの中における「必要になる」群だと予想した。「必要となる」から「作る」へとステップアップしてもらうためには、このユーザー群のニーズを叶えなければならない。

ユーザーのニーズを予想するための1つのヒントとなるのが「共起語」だ。共起語とは、そのキーワードで検索される条件下において、検索結果にあらわれる記事に共通して出現する語句のことを指す。クヌギではSEO・コンテンツマーケティングツール「MIERUCA(ミエルカ)」を使用して共起語を確認している。

「オリコカード amazon」のキーワードにおける共起語は「還元率」「年会費」「Amazonポイント」「オリコモール」「ポイント」などであった。オリコカードでは、専用のWebサイトを通じてAmazonを利用すると、ポイントが増額される制度がある。つまり、「オリコカード amazon」のキーワードで流入してきたユーザーは、「この情報を見聞きしたが、オリコカードを持っていないユーザー」ではないかと推測できた。

その仮定を基に、ユーザーニーズと考えられる、還元率やAmazonポイントなどに関する情報を記事へ加筆した結果、サイト平均2.0%だったコンバージョン率が、施策実施ページにおいては数倍に伸びたという。

「オリコカード amazon」で流入してくるユーザーには、ポイント還元率やAmazonポイントの情報を追加し、コンバージョンを促進

実例 ②: 楽天カード

2つ目は「楽天カード 作り方」で流入したユーザーだ。こちらの共起語は「方法」「審査」「年齢制限」「作りたい」などだった。つまりこのユーザーはすでに「作る」のユーザー群におり、「とにかく楽天カードだけを作りたい」心理状況にあると推察された。

そこで、楽天カード作成の流れや審査基準を明確に記述するようにした結果、やはりコンバージョンが改善した。

「楽天カード 作り方」で流入してくるユーザーは、とにかく楽天カードだけを作りたいのだと推測。作成の流れと審査基準を伝えた

実例 ③: アメックス(アメリカン・エキスプレス)カード

3つ目は「アメックス 審査」での検索流入だ。この検索クエリでたどり着いたユーザーが多いため調べたところ、共起語は「可能性」「勤め」「否決」「会員資格」などであり、コンセプトダイアグラムにおいて「作る」のステップにあるユーザー群が、「自分でも本当に作れるか確信が欲しい」という心理状況にあるものだと考えられた。

そのため、記事内に審査基準を明確に提示し、カードが作れた人の参考情報などを載せることでコンバージョン改善につなげた。

「アメックス 審査」で流入してくるユーザーのため、「自分にも作れるだろう」という確信を与えるための情報を追加した
◇◇◇

大沢氏は最後に、これらを実行するためには、コンセプトダイアグラムを用いて全体像を把握し、アクションするのが有効だとアピールし、講演を締めくくった。

  1. 次のステップに動かすコンテンツを読ませる
  2. ユーザーが欲している情報を提供し、納得してもらう
  3. CV数の増加、CV率の向上
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