コンバージョン率が高いページに誘導したのに、CVが上がらず失敗……それ、デジタル行動観察で解決できますよ!
Webサイトの改善をするとき、アクセス解析データから課題を発見(定量分析)して、仮説を立ててPDCAを回すことってよくありますよね。
でも、次のような経験したことないですか?
コンバージョンUPを狙って、コンバージョン率が高いページに誘導したけど、増えなかった……
データ分析して、施策を実施したけど、成果が上がらない……
なぜ、このようなことが起こってしまうのでしょうか。
今回は実際の企業事例を紹介しながら、アクセス解析のデータ分析の落とし穴を解説します。
コンバージョン率が良いページに誘導したけど、資料請求が増えない
あるBtoB企業では、「見込み客の顧客を増やすために、Webサイトの資料請求数(コンバージョン)を上げる」という目標のもと、Webサイトの改善を行っていました。
その改善の手がかりとして、アクセス解析データを用いて、どのページがコンバージョンに貢献しているのかを分析することにしました。まずは、横軸にページのセッション数、横軸にコンバージョン率を取ったバブルチャートを作って、どのページがアクセスを集めているのか、どのページを見るとコンバージョンしているのかを見てみることにしました。
その結果、製品価格ページのコンバージョン率が高いことがわかります。
そこで、「製品価格ページ」のアクセス数を増やせば、さらにコンバージョンが上がるのではないかという仮説を立て、TOPページや他のページからの誘導を強化しました。
しかし、「製品価格ページ」のアクセス数は上がりましたが、コンバージョン数は増加しませんでした。
一体なぜでしょうか?
製品価格ページがコンバージョンにつながっていた理由
数値だけでは、なぜコンバージョン数が増加しなかったのか理由がわからなかったので、コンバージョンしたユーザーが「製品価格ページ」以外に、どのページを見ているのかを調べてみることにしました。
その際、アクセス解析のデータを集計して見るのではなく、一人ひとりのデジタル上の行動データを追って見ることにしたのです。
コンバージョンしたユーザーの行動データを一人ひとり見た結果、ユーザーには2つのタイプがいることがわかりました。
製品のスペックや導入のメリットなど、製品価格ページ以外にもサイト全体を見てからコンバージョンするユーザー
TOP、スペック一覧、価格などの1、2ページを見て、すぐにコンバージョンするユーザー
実はコンバージョンしたユーザーの多くが、「すぐにコンバージョンするユーザー」でした。
さらに行動を見ていくと、「すぐにコンバージョンするユーザー」にも2パターンの行動を取っていることがわかりました。
すでに何度もWebサイトに訪れているパターン
このユーザーは、すでに主なページを閲覧していて、最終的に資料請求(CV)するつもりでWebサイトに訪れたものの、資料請求のボタンを押す前に、製品価格ページを念のため確認している人これまでWebサイトに訪れたことがなく、流入してすぐにコンバージョンするパターン
おそらく、このユーザーはWebサイト外のチャネルで製品について知っていて、資料請求だけするためにWebサイトに訪問した人
つまり、「製品価格ページを見たから、資料請求した」のではなく、そもそも資料請求するつもりのユーザーが「最終確認で製品価格ページを見て、資料請求した」から、製品価格ページを見たユーザーのコンバージョン率が高かったのです。
そのために、資料請求するつもりがないユーザーを「製品価格ページ」へ単純に誘導しても、コンバージョン数は増えなかったわけです。
一人ひとりのユーザー行動を見るまで、コンバージョンするユーザーは、Webサイトを詳しく見て、比較選定するだろうと想定していました。しかし、ユーザー行動を見てわかったことは、これまでWebサイトを訪れたことがないユーザーがコンバージョンするケースがあることです。これは、想定外の結果でした。
そこで、Webサイトの改善をしてコンバージョン率を上げるのではなく、外部でのウェブ広告やPRで露出を増やすことにしました。その結果、コンバージョン数(資料請求)を20%以上も増やすことに成功しました。
ユーザー一人ひとりの行動データを見る「デジタル行動観察」
この事例での敗因は、「製品価格ページにユーザーは何を求めて来ているか」という「ユーザー行動とデータ」の「因果関係」を把握できなかったことにあります。
アクセス解析からは、製品価格ページのコンバージョン率が高いという事実はわかります。しかし、製品価格を見たユーザーがコンバージョンしている理由(=因果関係)はわかりません。その因果関係がわからぬまま、Webサイトの改善を進めてしまったよくある失敗例です。
データから見えた課題の本当の原因を解決するには、その行動を取ったユーザー一人ひとりを見ることが近道です。
具体的には、「誰」が、「いつ」、「どのデバイス」で、「どこ」から流入し、「どのように」「Webサイトを閲覧したのか」という行動のログデータをユーザー一人ひとりの時系列に沿って見て、カスタマージャーニーを追体験をしていきます。
そうすることで、ユーザーが置かれている状況や文脈を把握でき、そのユーザーに適したコミュニケーションが取れるようになるのです。このような手法を「デジタル行動観察」と呼んでいます。
これは実店舗での店員と顧客とのコミュニケーションと同じで、Webでもユーザーの実際の状況がわからないと適切なコミュニケーションが取れません。
これまでも、ユーザー行動や文脈を知るために、リアルのユーザーがWebサイトを利用する様子を観察する「ユーザー行動観察調査(ユーザビリティテスト)」は行われていました。しかし、リアルのユーザー行動観察は、専門的な知識が必要で、調査準備に手間がかかるうえに、コストも高くなりがちでした。
今はユーザー行動観察調査と似たようなことを、デジタルでもできる時代です。一人ひとりの行動データを見るという「デジタル行動観察」は、そのような専門的な知識や手間も必要なく、実際の運用業務内で行える手法です。
もともとアクセス解析でも、「一人ひとりの行動ログを追う」という定性手法も行われていました。いつの間にか集計データを扱う定量分析が主流になっていきましたが、最近ではデジタルマーケティングの先進的な企業では定性手法が見直されつつあります。
この連載では、より具体的・実践的なWebサイトのテーマごとに、デジタル行動観察で改善した事例を紹介していきます。
次回は、化粧品ECでバナーデザインは変えずに、広告の表示場所を変更しただけで売上が140%UPした事例を紹介します。
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