一人ひとりの行動データから顧客のモーメントを分析する

「あらためて顧客理解に注力する」創業54年のフェリシモに社内の巻き込み方を聞く

フェリシモが顧客理解に注力する理由と、それを施策として形にするための社内の巻き込み方を、カスタマー・マネジメントグループの橋本和也氏と河本幸造氏に聞いた。

独自の視点で企画・セレクトした国内の商品・サービスを、Webサイトやカタログを通じて販売するフェリシモ。毎月1回、デザインや内容を厳選して届ける「定期便」が、生活者の支持を集めている。そのカテゴリーはファッション、生活雑貨、手づくりキット、美容、食品など多岐にわたり、商品点数は年間数万点にも及ぶ。

1965年創業の同社は3年前、社内に分散していたデータ分析のチームを統合。分析結果に基づく施策の実施に力を入れる体制を整えるとともに、この2年ほどは、すべての関係者が顧客を理解し「お客さま軸で揃える」ための取り組みを推進しているという。

フェリシモが顧客理解に注力する理由と、それを施策として形にするための社内の巻き込み方を、カスタマー・マネジメントグループの橋本和也氏と河本幸造氏に聞いた。

フェリシモ カスタマー・マネジメントグループの橋本和也氏と河本幸造氏

データ分析から顧客理解へ

――お二人の所属と役割を教えていただけますか?

橋本和也氏(以下「橋本」): 現在3つの部署を兼務しています。

  • データ分析チーム
  • 分析後の施策実施チーム
  • 顧客理解を深めるカスタマー・マネジメントグループ

データ分析チームは、3年前、別の部署だった「基幹系データ分析チーム」と「Web系データ分析チーム」を統合することを目的に、私がそのリーダー(責任者)となりました。2年前からは、分析後の施策を実施するチームのリーダーも兼任しています。

加えて、顧客を理解するというミッションのもと、カスタマー・マネジメントグループが2年前に新設されて、こちらも兼務でリーダーを務めています。フェリシモのお客さまがどういったお買い物をされているかを定量的・定性的に調査し、お買い物の中で不自由なところを他部署とも協力しながら改善していくことと優良顧客の理解を深めることが主な業務です。

河本幸造氏(以下「河本」): 私はもともと新卒でコールセンターに配属されて顧客対応に従事していたのですが、2年前のカスタマー・マネジメントグループ創設と同時に兼務することになりました。この他、「生活者理解実践会」という部署横断でマーケティングリサーチのツールやスキルの勉強会を、月に1回、社内20名を対象に実施しています。

――3つも兼務しているんですね。

橋本: カスタマー・マネジメントグループは私と河本を含めた3人体制なのですが、もう一人もWebの販売企画との兼任で、全員が兼務しているという状況です。兼務している理由は、顧客分析と施策実施をクイックにするため、部署間の調整を少なく実行したかったからです。 メディア別、商品別の組織なので、顧客軸で一貫して見るチームが必要です。

――顧客をより深く理解しようとしたきっかけは何だったのでしょうか?

橋本: 私の上司から、「どのお客さまが、どのように分布しているかがわからないとしっかりとした事業方針が立てられない。もう少しお客さま単位で見られるように整理してほしい」といわれたことがきっかけですね。

「お客さま一人ひとりにフォーカスしていきたい」と橋本さん

社内を巻き込むコツは「小さな成功を短期的に出す」

――新しいことを始める時には、社内から理解が得られないことも多いと思いますが、どのように社内を巻き込んでいきましたか?

橋本: 小さな成功を短期的に出すことを意識しました。改修も含めて短期的に実施できて、成果が出やすいであろうポイントをいくつか決め、小さく成功しながら賛同者を集め、なるべく早く一定ボリュームまで到達することが重要だと考えています。

弊社はコアバリューとして「ともにしあわせになるしあわせ」を掲げています。この理念に共感して入社してくる社員が多いため、他の部署の人でも困っていたら助けるという企業文化も社内協力の背景にあります。

――現状、どのあたりまで改善の輪は広がっていますか?

橋本: カタログ制作やWeb制作、メール配信、コールセンター、物流といった、バリューチェーンで改善の取り組みが行われています。最近では企画リードタイムがかかる商品企画や、物流も巻き込んだ新しい取り組みを始めたところです。

――大変そうですが、そういう部署にいると楽しそうですね。

河本: めちゃめちゃ楽しいです(笑)。自分なりに分析したものを元に「こういうのやってみませんか」と声をかけて、「それ、おもしろそうやん」と言ってくれる人が意外に多かったり、メールだけで済ませず直接会ってみたら逆にアイデアをもらえたり。カスタマー・マネジメントグループを兼務することで、視野を広げることができました

「カスタマー・マネジメントグループを兼務することで視野を広げられて、とても楽しい」と河本さん

個票からの課題の発見と、社内への問題意識の共有

――顧客理解のためにどんなことをしていたのですか?

橋本: 1年目の前半は定量的な整理を中心に行い、後半からお客さまに届くお届け箱調査など定性的な調査に広げていきました。

――お届け箱調査とはどういうことですか?

橋本: 実際に物流センターに行って、お客様に発送する直前の箱を開けてみることで、受け取ったお客様の体験を社員が追体験することです。ただ、お届け箱調査や個別のお客さまの調査を始めてみると、Webの動線データを集計する作業がものすごくヘビーでして……。

有償のアナリティクスツールを使っていたのですが、個票(一人ひとりの行動データ)を見るのにひとひねり必要で、お届け箱の購入内容とつきあわせるために多くのWeb行動の個票を抽出するには工数がかかりすぎていました。

――その問題はどう解決したのですか?

橋本: たまたま、ビービットのイベントに参加したとき、当時ベータ版だったUSERGRAM(ユーザグラム)のデモを見せていただき、ぜひ利用したいということになりました。

――他のツールとの比較検討はされましたか?

橋本: 当時は本当に困っていたので、他ツールとの比較はせずに導入しました。USERGRAMはタグをページに入れるだけで、サイト上の一人ひとりのユーザー行動が見えるので、導入のハードルが低かったです。まずは入れてみて考えようかということで社内研修後すぐに使い始めました。

USERGRAMのサンプル画面

――新しいツールの導入に際して社内にどう説明したか、上司をどう口説いたか、気になるところです。

橋本: ツール導入によるプラスの効果を事前に試算して、説得できれば、良いのですがなかなか難しい場合もありますよね。過去に行っていた顧客調査と比較して説得しました。インタビュー会場まで来ていただく、定性的なインタビュー調査などがこれにあたります。

顧客調査の場合、調査に参加してくれるユーザーを見つけて、調査後の様子をレポートにまとめて、さらに改善施策まで落とし込む必要があります。そうなると、工数もコストもかかります。

それと比較して、「ツールを導入すれば、コスト面で大幅な置き換えができます」という伝え方をしました。加えて、顧客調査は立ち会える人数も限られますが、ツールであれば、チーム全員がいつでもユーザーの動きを確認できることもメリットですよね。

――なるほど。実際に使ってみて、どうでしたか?

橋本: 去年、パスワードを忘れた方に対してリマインドするページの検証と改修を実施しました。実は、このページで失敗するユーザーが多く、離脱率も高かったものの、その当時は気づけておらず……。USERGRAMでみたところ「3周くらいグルグルして、離脱しているぞ。これはログインできなくてあきらめているに違いない」という気づきを得て、改善に至りました。お客さまのWeb上の行動を見ることで、新たな発見が生まれました。

――見えてなかった課題が見つかるのは、うれしいですね。

橋本: 課題を発見した後、情報システム部に相談する際に「離脱率が何%だ」といった定量的な情報はもちろん共有ますが、補足情報として「ユーザーがカチカチ、イライラしている感じが伝わる画面キャプチャ」を添付することで、納得度を上げてすぐに対応してもらうことができました。お客さまが困っている様子を、視覚的に社内で共有できるのはとても便利です。

――それぞれの担当者はツールをどのように利用しているのでしょうか?

橋本: 毎朝みることを習慣にしているメンバーもいますし、そうでないメンバーもいます。私の場合、大きなプロジェクトの立ち上げ時に、現状把握や顧客理解を深めるために積極的に使っています。先日も河本と一緒に個票を見ていました。プロジェクトの初期段階でメンバーと一緒に個票を見ることで、ペルソナが散らばるといった事態を減らすことができ、後のプロジェクト進行もスムーズになります。

河本: 私たちが手がける通販ビジネスは、店舗がなく直接お客さまとお会いするわけではないため、自分たちの思う顧客像がブレやすいというところがあります。しかし買ったものとWebでの行動をあわせて見ることで、「実は購入前に悩んでいたことの発見」や「このお客さまに喜んでもらうために私たちは何ができるのか」というところに話がつながっていきます。喜ぶ人の顔がイメージできて、お客さま像がブレにくくなるところがいいですね。

――メンバーとの意識合わせは、大事なプロセスですよね。

橋本: ビフォーアフターで何倍、といったわかりやすい数字で示すところまではまだ行けていませんが、お金をかけて大きなプロモーションを行った時に、クイックに軌道修正して目標に対して確実に(ギャップを)詰めていくというところにも活用できています。大きなプロモーションの成功確率を上げることにかなり寄与していますね。

勝ち筋を見極め、後はメンバーに任せる

――橋本さんの話しぶりから、顧客を理解することと同時に、周囲のメンバーをいかにやる気にするかといったところを大切にしていることがうかがえます。周りの方への接し方やコミュニケーションで大事にしていることはありますか?

橋本: 少し手間はかかるのですが、相手の興味関心のある事柄ごとに説明の仕方は変えています。お客さま理解から入りたいメンバーと、商品から入りたいメンバーで気になるポイントが違っています。興味関心とやりたいことが重なるところを見つける努力をしています。

オンラインのメディアを立ち上げていた時期も、商品企画用とカタログ担当用、Web担当用のパワーポイントを作り分けていました。業務をまたぐと言語体系が違うので注意が必要です。一定期間内で成果を出そうと思ったら、初期段階に手間をかけたほうが良い、というのが経験値として貯まったのだと思います。

――仕事をする上で大切にしている考え方を教えてください。

橋本: 事前の調査や事業として成果が出そうなところ、改善すべきポイントを見つけ出した後、それをどれだけおもしろくできるかはメンバーに任せます。勝ち筋の見定めはきちんとやりますが、あとはメンバーを尊重します

また、「お客さまを第一に考える」という共通意識をメンバー全員がもつことは意識しています。「誰かがやるだろう」で、見過ごされることはよくあることです。その置き去りにされた状況で困るのはお客さまです。「誰かがやらなければいけないことは、僕らが率先してやる」というスタンスで仕事をしています。

河本: お客さまの声を聞いて、その気持ちに寄り添うことを大切にしています。コンタクトセンターにいたこともあり、お客さまを第一に考えて、改善施策を進めています。

2つの領域をまたいだ人材を育成する

――最後に、今後の課題や改善していきたいポイントなど、一言ずついただけますか。

河本: 異動から1年以上が経ち、分析の結果をもとに施策として定着してきたものが増えました。それらを単発の成果に終わらせるのではなく、お客さまの体験をどう向上させたのかという観点から継続した分析を行い、他の関連部署と協力しながらさらに改善・改良していきたいです。

橋本: 今後の課題としては、大きく2つあります。1つ目は人材育成ですね。「2つの領域をまたいだ人材を育成する」ことを意識しています。河本がまさにそうですが、コンタクトセンターで自社のお客さまを理解してから、他部署に異動していくという、キャリアパスを社内に示すことができました。後に続きたいという後輩も出てきていて、そういう意味でもよかったですね。

2つ目に事業全体としては、部分的な改修を進めることで足腰が鍛えられてきたので、いよいよ大規模なところに着手していきます。たとえば、出荷サービスやポイントサービスなどです。メンバーによる顧客理解が進んだ今だからこそ着手できる、会員向けサービスの改訂にも挑戦していきます。

――応援しています! ありがとうございました。

(取材/編集部、取材協力/ビービット、文/河田顕治)

本記事はビービットでも公開されています。

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