Webに情報があるという価値、隠さずに手の内をシェアする
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の488
手の内をさらせ
店舗の看板などを照らす照明器具の支柱を「アーム」と呼びます。
当たり前の話ですが、これにも商品名や型番があります。そして、その名前がSEOはもちろん、お客が喜び、取引先が感謝し、同業者までもが笑顔で近づいてくる……かもしれないコンテンツになることがあります。商品名や型番はすでにある情報なので、大雑把に言えばコピペでもOK。多少のアレンジが必要だとはいえ、すべての業種、業界で使えます。それは、
商品を制作したり、サービスを提供したりするのに用いる素材や資材の商品情報
要するに「手の内(舞台裏)」の公開ですが、本稿では省略して「商品情報」とします。
商品情報は商売によって変わります。建築関係なら、建材や資材、パーツのこと。自動車関係なら内外装部品の詳細、飲食ならば用いる香辛料の種類はもちろん、「コーヒーカップにはノリタケの碗皿を使用しております」との説明がこれにあたります。
不動産業ならリフォームに使用した壁紙の素材、農家なら使用している肥料の紹介、仕入れて売るネット通販ならメーカーといった「手の内」の紹介です。
商品情報が有力コンテンツになる理由
商品情報が有力コンテンツになる理由は、お客の立場に立てば明らかです。Webサイトを訪れるお客は、何らかの情報を求めています。自然検索の結果やリスティング広告はもちろん、URLを直接入力したとなれば、相当の興味を持っているに違いません。そもそも論としてコンテンツとは、こうした興味を持っている相手を想定して作るものです。
興味の種類は「好奇心」と「不安」の2つに大別できます。商品情報が訪問者の知的好奇心を満たすことはいうまでもありません。動機が異なるとはいえ、不安を抱えている人が求めているのも情報です。情報を得ることで不安の解消を目指しているのです。
情報があるという価値
メーカー名、品名、型番、サイズ、仕様、注意事項など、可能な限りのすべてを掲載します。文章にする必要はなく、一覧表形式でも問題ありません。いわば「スペック」しか掲載されていなくても、お客に取って大切なことは、その商品(情報)が「ある」ことです。
ネットが普及した現在、検索結果に「ない」という事実が与える不安は大きいのです。そもそも、実際に存在するから品名や型番を知っているため不安は錯覚に過ぎないのですが、中小零細のメーカーのなかには、いまだに自社サイトをもっていないところが少なくありません。
裏返せば、商品情報を掲載するだけでお客の欲求を満たし、コンテンツの信頼度を高められるのです。そして、業界の専門性が高まれば高まるほど「ニッチキーワード」となり、サイトの片隅に掲載しているだけでも「検索結果の1位」になることは珍しくありません。
同業者対策になる
当然と言えば当然ながら、仕入れ値まで掲載する必要はありませが、資材や原材料を同業者に知られることを嫌う会社も少なくありません。ケンタッキーフライドチキンにおける香辛料の配合や、コカ・コーラの原液のレシピなら致命的となりますが、そもそも商品として流通している資材や材料に秘密などありません。同業者が現物を見れば、すぐにわかるからです。
そもそも同業者は敵と同義ではありません。仲間もいれば、好意的な同業者もあります。商品情報の公開で、同じ商品を利用している同業者から「新商品がでています」「××より○○のほうが良いみたいです」と情報がもたらされることもあります。こうした、草の根レベルの情報交換とは、Webの黎明期から続くネットの利点。いまふうに言うなら「シェア」を期待できるということです。
古き良きWebの時代
商品情報は事実上の公開情報ながら、まれに掲載を拒否するメーカーもあります。
とある自動車修理工具業界の話ですが、「御社だけ特別に売ります」と言っていた部品が普通に販売されており、それがバレることを恐れてのことでした。念のため、掲載前にメーカーの許可を取っておくといいでしょう。同時にメーカーのサイトがあれば、担当者に「リンク」を張る許可も取っておきます。商品情報の掲載はメーカーにとって「宣伝」となることは言うまでもありません。
本サイトに集うWeb担当者だけにそっと教えます。リンクを張る作業を大仕事だと錯覚する「非Web業界人」は多いのです。一言添えてリンクを張るだけでメーカーの担当者が感謝し、ときにはお礼と言って試供品を持ってくることもあれば、仕入れ値に便宜を図ってくれることさえあります。ちなみに非Web業界とは、ほぼすべての業種です。
情報は隠せない
使っている商品や、そのメーカーのサイトを「紹介」するために「リンク」を張る。もちろんこれも「シェア」の一形態です。情報やアイデアをくれた同業者を紹介し、持っているサイトにリンクするのも同じです。
こうして「つながる」ことは、インターネットの原点かつ利点であり、繰り返しになりますが「シェア」です。商品情報の掲載やリンクというわずかな手間で、お客に満足や安心を与えるだけでなく、こうした「つながり」という副産物が期待できるのです。
照明の支柱を「アーム」と呼ぶことを教えてくれた内装業のWeb担当者この話をしたところ、「だから商品名で検索しても見つからないんだ」と得心します。業界ではポピュラーな商品ながら「ネットに情報がなかった」のです。
そこで調べてみると出るわ出るわ……もとい、ないわないわ。検索結果に出てこない「商品」を数多く確認します。業界ではポピュラー過ぎて誰も紹介しない「盲点」なのでしょう。また、掲載していても「リンク」が張られていないことも。「シェア」はSNSだけのものではありません。
今回のポイント
商品情報はニッチ
リンクを張る。許可を取ると喜ばれる
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