企業ホームページ運営の心得

グーグルのコピペコンテンツ逆襲に期待する2017年のネットトレンド大予想

年末恒例、2016年を振り返りつつ来年のネットトレンドを探ります
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の485

勝手に恒例企画2016

本コラムの更新は今年最後となります。そこで恒例の特大号企画「1年を振り返りつつ、来年のネットトレンドの大予想2017」を届けます。

wellphoto/Thinkstock

2016年は昨年の予言通り、「ネット選挙」が1つの頂点に達した記念すべき年です。予言した「選挙違反」が外れたのは幸いながら、それ以上にWeb史に刻まれた事件が、米国大統領選挙における「トランプ現象」です。彼はニューヨーク・タイムズ、CNNなどの「大手マスコミ」に対して、TwitterやFacebookといった「ネット媒体」を武器に戦いを挑み勝利したのです。画期的な到達点です。

トランプ発言への嫌悪感から、現象を否定的に捉える有識者も確認しますが、それはWebが「道具」に過ぎないというリアリティの欠如で、想像力を武器とする小説家ならともかく、ジャーナリストや技術者の視点ではありません。

トランプ現象の真実

選挙戦を振り返ると、実際にはマスコミによる執拗なトランプ批判が彼の知名度を高め、主張を拡散させることへとつながったわけで、マスコミがまったく無力だったわけではありません。しかし、トランプ氏のSNSによる挑発に乗ったがための結末。

トランプ現象と一言で言っても、ポジショントークによってとらえ方が異なります。「Webで政治を動かす」と礼賛していた有識者がいましたが、トランプ現象とは「SNSがマスコミを動かした」ということです。

ネットとリアルのシンクロをより感じた1年でもありました。英国のオックスフォード辞書がネットを渉猟して選定した「今年の言葉」は「ポスト真実(post-trust)」です。「ISはオバマが作った」といったトンデモな「トランプ発言」でも、それを真実だと思いたい人々によって拡散され、事実であるかのように流通してしまった現象を指します。的を射ていると頷いたのは、「ヒラリー有利!」を盛んに煽った日米マスコミと有識者の言動が「ポスト真実」そのものだったからです。

国内における「流行語」をめぐっては、ネット上で炎上級の議論が起こっていましたが、日本は一部の識者による選定。対して英国は「ネット」を渉猟しての結論。現代的に見れば、流行語は必然的に「テキスト情報」にあるのですから、当然と言えば当然ながら、あらためてネットが一般社会に溶け込んでいる事実を確認します。

永遠のベータ版の岐路

昨年、予言したフィンテックについては引き分けとしておきます。「Apple Pay」だけを見れば予言的中ですが、それは「おサイフケータイ」に過ぎず、官民挙げての「馬鹿騒ぎ」も起こらず、株式市場もまちまち。鳴り物入りで喧伝されたものの、いまいちブレイクしないことは昨年の「ビッグデータ」に通じる教訓かもしれません。

フィンテック同様に、ネットと社会の融合でいえば「ポケモンGO」のヒットもありました。VRもARも取り立てて新しい技術ではありませんが、枯れた技術がWebを新しいステージに押し上げた「Ajax」に通じます。

一方で「歩きスマホ」による転落や、自動車運転中に「ポケモンGO」をプレイしたことによる悲劇も起きました。はたして運営側に責任があるのか……議論は尽きませんが、ネットがいま以上に生活に溶け込むベクトルは揺るがず、従来のように問題が起きてから対処する「永遠のベータ版」では見逃されない時代に突入しています。先回りした対策なり、業界内での自主規制が2017年に向けての課題でしょう。法律で縛られてからの対策は「クール」ではありません。

コピペコンテンツとグーグルの戦い

年末にさしかかり飛び込んできた不愉快なニュースが「WELQ」です。各所で報じられているので詳細は繰り返しませんが、批判するツイートのなかに「グーグルの敗北」を嘆く声を見つけました。

SEOの悪用を見逃したグーグルへの批判で、何かとWebをDisると名高いミヤワキながら、これは楽観しています。いずれもせずに克服すると見ているからです。WELQの「手口」はSEO界隈では知られている手法であり、今回、Web媒体を中心につまびらかにされ、これを放置してはグーグルの死を意味します。グーグルは文字通り「死にものぐるい」で対策を講じ、この手法は使えなくなると見るからです。

グーグルの検索ロボットは、内容の真偽までは問いません。そこで期待されるのが、AIによる「コピペコンテンツ」排除です。AIそのものは2017年も引き続きホットトピックとなるでしょうが、実はAIに弱点は多く、書き出しと文末で意味の変わることもある文章全体の「文脈」を理解することを苦手とします。これは、人工知能による東大合格を目指した「東ロボくん」プロジェクトの凍結が裏付けています。

そこで弱点を「機械」と「人力」の融合により解決、すると比較的容易にコピペサイトの撲滅が実現できることでしょう。プログラムによる自動化が「社是」のようなグーグルにとっては、コペルニクス的大転換が必要ですが、FacebookやTwitterの「通報」のように、人力を借りる仕組みの導入です。今でも問い合わせフォームはありますが、非IT業界ではほとんど認知されていないでしょう。

検索結果というビッグデータから推定した「平均的なユーザー」を機械的に選びだし、選ばれたユーザーが従来の語彙にない不自然な検索行動をとれば、それをAIで検知し集計、排除することで恣意的評価の介入を高確率で防げます。そして、コピペコンテンツと疑わしきコンテンツをユーザーに「報告」させたうえで、その先を機械処理で排除……、そしてグーグルの逆襲がはじまると。

これを2017年の「予言」としておきます。もちろん、当たらぬも八卦ですが。

Webの未来は明るい

2017年も明るいと信じているのは、夢想でもテクノユートピア論でもなく、今年に続く明日の話しだから。

DeNAが謝罪記者会見を開いてから、WELQをやり玉に「ネット情報」を批判するテレビや雑誌が増えました。しかし、敗北したのは彼らマスコミです。

SEOの専門家である辻正浩氏が10月24日に問題点を指摘してから、DeNAが謝罪する12月8日まで、マスコミは怪しげな情報を批判もせず、注意喚起もしなかったのです。マスコミは日頃「トレンドワード」や「おもしろ動画」、あるいは「炎上」を取り上げて報じています。なにより、DeNAは「横浜ベイスターズ」を通じてTBSとも親しく、批判の対象となる有資格者です。

ところがWELQを追い詰めたのはIT業界の有識者、医療の専門家の立場から指弾した「五本木クリニック 院長ブログ」を筆頭に、それに続いたブロガーやWebメディアです。つまり、Webの参加者による自浄作用であり、マスコミはその「尻馬」に乗ってはしゃいでいるにすぎません。つまりは「ネット大勝利」という感じです。

グーグルはこうした「ネット民の善意」を利用すべきと考えたのが先の予言。それでは、よいお年をお迎えください。

今回のポイント

リアルとネットは不可分に。だからこそグーグルは人力の検討を

2017年もWebの未来は絶対に明るい

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