企業ホームページ運営の心得

あるサイトの死に接し考えた、ビジネスサイトの終わらせ方

あるビジネスサイトの閉鎖に立ち会った経験から、閉鎖の手順を考えます
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の423

あるサイトの死

8月も終わりに近づいた平日の昼下がり。あるサイトが「閉鎖」しました。それはまるで「突然死」。なぜならば、その背景にこんな会話があったから。

これ全部消しちゃっていいっすか?(Web担当者)

オッケー♪(ミヤワキ)

tverkhovinets/iStock/Thinkstock

つまりは、サーバー上の全データの削除です。数秒後には「404 Not Found」が表示されます。運用は10年を軽く越え、リアルにおける最大店舗数は30を数えます。地域のリーディングカンパニーとして、名を馳せた企業サイトの死なせかたとしては最悪。しかし、この方法を選択するしかなかったのです。

「インターネット元年」を1995年とすれば、この20年で「サイトの作り方」や「運営」などは、長足の進歩を遂げてきました。その反面、「サイトの閉鎖」についてのコンセンサスができているとは言いがたい状況です。それは、「まだ20年」に過ぎないということかもしれず、これから課題になっていくのではないでしょうか。

放置のメリット

経験則ながら、明確にサイトを閉鎖する事例は多くありません。個人サイトの大半は「放置」され、中小企業でも似たような状況だからです。それでは「放置」を選んだ場合のメリットとデメリットを見てみます。

メリットはズバリ、何もしなくていいことです。手間は要りません。独自ドメインで運営しているなら、ドメインの契約期限が切れれば、自動的に閉鎖状態になります。ドメインはいわば「使用権」に過ぎず、更新をしなければ権利が喪失し、いずれ表示されなくなるからです。

一方、プロバイダが提供するサーバースペースや無料サーバーの多くは、サービスが続く限り放置による自動閉鎖はしません。それぞれはわずかなアクセスしか期待できないコンテンツでも、数千、数万ページ集まれば、一定のアクセス数を稼ぎ出し、そこに掲示する広告からの収入が期待できるからです。

地雷のような迷惑

放置によるデメリットは、世界中に公開され続けることです。企業サイトなら、すでに終了したサービスや商品が公開され続け、問い合わせに応じる手間が生じます。何より、いつまでも「古くさい」サイトを公開し続けるのは、ユーザーに不安を抱かせる「廃墟物件サイト」と同じデメリットがあります。

すでに会社は廃業し、電話も解約したので関係がないという人もいるでしょうが、その電話番号はいずれだれかのものとなり、新たな契約者へ埋められた地雷のような「迷惑」を残すことになります。

Web担当者に限定すれば、十数年の後には出世し、部下のWeb担当者を叱責する立場に立ったとき、「管理人」という肩書きで実名をさらし、稚拙な技術と方法論で運営していたサイトが発掘されては説得力が失われます。当時を知らない若者が、過去を嘲笑するのはいつの時代も同じです。すれ違う恋人がテーマの20世紀のドラマを見て、「LINEで連絡とればいいじゃん」と嘲笑するスマホ世代の若者のようなものです。思い出としての保存なら、ローカルフォルダだけにすべきでしょう。

閉鎖の手続き

今、広大な宇宙空間では、放置してきた使用済みの人工衛星などの「スペースデブリ」が、国際宇宙ステーションの脅威になっています。同じく広大なWeb空間とはいえ、数十年後のWeb世界のためにも、不用になったサイトは削除すべきだと考えます。

もっとも、冒頭のような「全削除」は最悪の手段です。実際の「閉鎖」には「手順と手続き」があります。役所への届け出などは不要ですが、それまで利用していただいたユーザーに「仁義」を通します。

まずは「予告」です。サイトが閉鎖する日時を掲示するのです。トップページではもちろん、発行していればメルマガやTwitterなどのSNSでも伝えます。

手続きとはなにか

次にすることは「連絡」です。サイト運営に協力してくれた人や企業があれば連絡します。お礼を述べ、簡単に事情を説明し、閉鎖日時を伝えます。「リンク」を貼ってくれている相手には、その解除をお願いします。面識のある相手には「電話」で伝えるのもよいでしょう。いわばWebの「撤退戦」、そこには人柄が表れ、筋を通す人物は高く評価されるものです。

連絡と同時に閉鎖の「手続き」を開始します。自動更新契約になっているレンサバやドメイン管理会社があればこれを停止し、そうでない場合も再契約をしない旨を伝えておくと、いらぬ混乱を避けることができます。

サイト閉鎖の日時を迎えれば、いままでのご利用に感謝を告げる画面に更新します。この表示期間は、レンサバやドメインとの契約期間、社内体制などにより違ってきますが、最短でも1~2日、できれば2週間は確保したいところです。あるサイトの事例では、閉鎖から1週間ほど、閉鎖を知ったユーザーと思われるアクセスが急増したからです。なお、閉鎖の案内から1か月もすると、訪問者はほぼいなくなります。

突然死の理由

最後は完全閉鎖(サーバーのデータ削除)ですが、それに前後して、「.htaccess」や「Search Console(旧ウェブマスターツール)」を使い、グーグルにサイト閉鎖を伝えます。いわば「死亡届」です。グーグルへの申請は、もっと早くてもよいのですが、サイトの死を知ったかつての常連客が、「検索」経由で弔問しやすくするため、私はこのタイミングを推奨します。

さて、冒頭の「突然死」を選んだサイトの例を見てみましょう。

店舗の整理を進めているという、不穏な噂は春ごろから聞こえてはいましたが、社長がサイト運営に絡む部署の閉鎖を宣言したのは8月に入ってから。残っていた店舗は翌日から順次、予告もなく閉店していきます。

店頭では「ポイント」も付与していましたが「そんなのカンケーネー」と、往年の小島よしおもビックリの顧客対応を進めます。会社自体の廃業ではなく、部門のみの閉鎖ですが、関係するすべての社員も8月末をもって解雇します。冒頭のWeb担当者も同じ。しかも、たまりにたまった有給休暇は、残務整理もたまっているからという理由で使用が許されません。漫画に登場するようなブラック企業です。

そんな仕打ちのなか、彼はいいました。「ホームページがあると、まだ店があると思ってお客に無駄足を運ばせる」。そこで最終手段として「突然死」をレクチャーしたのでした。

今回のポイント

サイトを葬るのもWeb担当者の仕事

放置はマイナスイメージの火種となる

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