設立70年の伝統的な会社でもカスタマー・エクスペリエンス改善を進められた6つのポイント
この記事では、マーケターの改革に関する話題の一環として、設立70年の会社をデジタルマーケティングの先駆者に変えることに成功した戦略的なアプローチをご紹介する。
歴史がある伝統的な企業であるにもかかわらず、デジタルマーケティングに関して先進的な取り組みを進めたその会社とは、Recreational Equipment, Inc.(略称REI)だ。
REIは、アウトドア用品やアウトドア衣料の小売業者として世界をリードする企業の1つだ。1930年代末に協同組合として設立され、2013年の純売上高は20億ドル以上に達する。
同社は独自のマーケティング改革によって、オフラインとオンラインのタッチポイントを一貫したカスタマージャーニーに集約した。
REIでデジタル小売および顧客サポート担当のシニアバイスプレジデントを務めるブラッド・ブラウン氏は、2014年3月のイベントで同社の総合的なマーケティングビジョンについて語り、一貫した顧客体験の実現に不可欠な6つの要素を明らかにした。
一貫した顧客体験の実現に不可欠な6つの要素
1. 単一のプロファイル
ブラウン氏は、顧客セグメントのための単一のプロファイルを作成することを推奨している。
REIでは顧客プロファイルを構築するにあたって、顧客からフィードバックを引き出す方法を改革した。デジタルチャネルを通じて取得したデータを使えば、完全なマーケティングプロファイルを作成できる。ただし、それで終わりではない。
REIは現在も、電話応対や店頭での顧客との会話、POSディスプレイなど、従来のチャネルを通じてフィードバックを収集し続けている。
そうすることで、オンラインとオフラインのデータを集約し、顧客についてあらゆる情報を多角的に集めた単一のプロファイルを作成しているのだ。
2. クリエイティブミックス
次のステップは、顧客から見て統一感のあるクリエイティブミックスを展開することだ。
たとえば、バスでダウンタウンに向かう顧客をターゲットとして、
- 幹線道路沿いにビルボード広告を設置し
- バス停にサイネージ広告をディスプレイし
- 検索連動型広告でモバイル広告を配信する
といったことが考えられる。
こうした過程全体を通じて、REIはその顧客とつながるために、さまざまなフォーマットを切り替えている。ブラウン氏によると、クリエイティブは、顧客の「タイミング」「デバイス」「場所」「環境」に合わせて調整する必要があるという。
顧客のオンライン行動分析データをクリエイティブに反映させるようにすることで、マーケターは、単一のプロファイルを活用して、ターゲットを絞り込んだデジタル(やアナログの)クリエイティブを作成できる。そう、REIがビルボード広告やモバイル広告で行っているようにだ。
3. リアルタイムのウェブ体験
静的なウェブページは過去のものだ。もう、1つのサイトで万人向けに訴求しようとする必要はない。単一のプロファイルがあれば、一人ひとりの顧客に対してそれぞれ最適な体験を生み出せるからだ。
カスタマージャーニーを通じて顧客の情報が増えていくにつれて、リアルタイムで自分向けのコンテンツや誘導が表示されるという特別な体験を、相手に提供できるようになっていくのだ。
さらに体験の動的な管理(Activation)を行えば、カスタマージャーニーのマッピングが可能になり、明らかに意味のある方法でウェブページをレンダリングできるようになる、ということに、REIは気付いた。
顧客プロファイルがあれば、パーソナライズされたページを動的に生成できる。その際に参考とするのは、デジタルチャネルやアナログでのやり取り全体から取得したユーザー行動の情報と、現在アクセスしようとしているページの情報だ。
こうした仕組みによって、かなり絞り込んだターゲティングが可能になるのだ。
4. オーディエンスターゲティング
顧客の行動をデータとして把握することで、ターゲットとすべきセグメントが見えてくる。そのために取得する情報は、「行動」「場所」「URL」などだ。
ブラウン氏が触れたように、行動のマッピングによって、「主にデジタルとオフラインでの顧客とのやり取りを通じて、毎回少しずつ、顧客のことがわかってくる
」のだ。
われわれは、個人のプライバシーを犠牲にすることなく、マーケティング活動でより一段とターゲットを絞り込めるデータを豊富に持っている(これは顧客一人ひとりとの土俵でやり取りを行う際に重要だ)。
顧客の情報は、直接的および間接的なやり取りを通じて、時間をかけて収集される。こうしたプロセスによって、われわれは良い顧客体験を生み出せるだけでなく、オーディエンスのニーズを満たす製品やサービスを開発することもできるようになるのだ。
5. 個人を特定する
顧客体験をより効果的に作り出すには、「お客様ID」や「購買傾向」などの個人属性を確認し、蓄積しているデータと紐付ける方法を見つける必要がある。データにおいて個人を特定することは、ROI(費用対効果)の向上に不可欠だ。
ブラウン氏は、個々のユーザー行動を把握できるように、サイトにログインする気にさせるCTA(行動喚起、Call to Action)をテストすることを推奨している。
ユーザーがサイトにログインしてくれれば、顧客を識別でき、プロファイルに基づいた個人的で意味のある対話ができるようになるからだ。
6. デジタルとアナログの体験を組み合わせる
最後に、ブラウン氏のチームは、オンラインとオフラインの行動を統合して、REIのブランドでシームレスな体験をもたらすことに取り組んでいる。
たとえば、電子メールやダイレクトメールを送って、さまざまな時間にさまざまな意思決定ポイントで顧客を引き付けている。
来店などオフラインでのエンゲージメントでは、顧客としっかりとしたやり取りができる。実際に製品に触れながら自由に質問に答えたり、店頭での顧客の行動を観察することで、デジタルチャネルでは得られない細かな反応が得られたりするのだ。
一方で、アプリ上でのエンゲージメント、Webサイトにおける行動、検索行動などのデジタル体験は、顧客がREIとの体験を途切らせることなく、あるアクティビティから別のアクティビティに移行できるような方法で、オフラインマーケティングを支援する。
REIは先ごろ、デジタルおよびアナログチャネル全体を通じてすべての在庫を可視化できる新しい注文管理システムを実装した。検索機能が改良されており、顧客はREIの最新の印刷カタログに目を通している時も、オンラインで在庫商品を検索している時も、購入方法・製品情報・製品に関する専門家のコメントなどにアクセスできるので、顧客体験を形作る助けになっている。
マーケターとしてのわれわれの改革は、オンラインおよびオフラインチャネルを通じて存在する絶妙なタッチポイントを活用しない限り、完結しない。
REIのブラウン氏が断言するように、「顧客の希望通りの条件で」十分にリーチするには、顧客がわれわれのブランドに出会う際の「だれが」「何を」「どこで」「いつ」「どのように」を理解できるツールを活用する必要がある(たとえばAdobe Marketing Cloudのような)。そうすることによってわれわれは、顧客とのエンゲージメントにおいてふさわしいカスタマージャーニーを形成できるようになるのだ。
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