なぜプレスリリースサイトがパンダにやられたのか4つの評価項目で検証(後編)
パンダアップデート4.0で何が起き、なぜプレスリリースサイトがその影響を強く受けたのかを考察するこの記事は、前後編の2回に分けてお届けしている。今回は、プレスリリースサイトが抱える問題点とその解決策を、人間が評価担当者としてチェックする項目からピックアップして、具体的に見ていこう。
あなたの管理しているサイトがプレスリリースサイトでなくても、ここに書かれていることは参考になるはずだ。(パンダアップデート4.0について概説した前編の記事を先に読んでおく)
Q1. サイトには、洞察に富んだ分析が含まれているか?
グーグルは、検索ユーザーを独自性のある有益なウェブページに送りたいと考えている。独特ではあっても有益でないページや、有益であってもどこにでもあるようなページは、歓迎されない。
残念ながら、プレスリリースサイトというのはどれも、この点で失格だ。平均すると、BusinessWire.comのコンテンツに「洞察に富んだ分析」が含まれていると評価した人は、わずか50%にとどまった。
この点における平均スコアでは、ウィキペディアが84%、教育機関のサイト(.edu)が79%、政府機関のサイト(.gov)が94%だったが、
これらと比べると、グーグルがなぜBusinessWire.comのコンテンツを好意的に見ないことにしたのかがわかる。
だが、これは妥当だろうか? もちろん違う。
BusinessWire.comのようなプレスリリースサイトは、重要な業界情報について真っ先に伝えることで定評がある。彼らこそ、「洞察に富んだ分析」を最初に知らせている存在だ。
もちろん、プレスリリースサイトは、企業から提供されたコンテンツに「手を加える」点においては慎重でなければならない。しかし、その提示の方法について改善する余地があるのは明らかだ。
解決策
たとえば、構造化データやビジュアル素材(グラフや図版など)を使うと、この質問における評価が高まることがわかっている。
ということは、BusinessWire.comは、プレスリリースからティッカーシンボルを読み取り、その企業に関するグラフやデータを同じ記事の中に含めることもできる。そうすれば、コンテンツをそのまま転載するだけのプレスリリースサイトとは差別化が図れるだろう。
プログラムや編集で追加できる改善策は他にもたくさんある。では、こうした変更を加えると、具体的にはどう見えるだろうか?
このケースでは、単に証券取引データのグラフを挿入したり、右側の欄に米証券取引委員会(SEC)に関するFreebaseのデータを追加したりしただけだ。こうしたデータは、AlchemyAPIなどを使ってリリースの文章内から簡単にエンティティとして抽出できる。これらの簡単な改良をページに施したことで、「洞察に富んだ分析」の評価スコアは15%増加した。
Q2. 信頼してクレジットカードを使えるサイトか?
これは、達成するのが最も難しい目標の1つだ。
一般にEコマースサイトは、それだけで評価は高いが、人々が信頼するサイトと信頼しないサイトには明確な違いがある。
確かにプレスリリースサイトにはEコマースの要素が含まれているので、非商用サイトに比べれば比較的健闘していると思われるかもしれない。残念ながら、実際はそうではない。
たとえばPR.comは、惨敗としか表現できないほど、この質問の評価が低かった。ユーザーの91%が、クレジットカードの情報を提供できるほどサイトを信頼していないと回答したのだ。PR.comにとってこれは、単にパンダの問題ではなく、会社の存続の問題だ。
幸い、この問題に対しては、実に単純明快で簡単な解決策がいくつかある。
サイト全体でhttps/SSLを有効にする
すべてのサイトがhttpsを有効にする必要があるわけではないが、60万ページ以上あるEコマースサイトのような場合は、とりあえずやってみることを考えよう。ユーザーは、ブラウザにあの小さな鍵マークが表示されているのを見るだけで、すぐにあなたのサイトをもっと信頼するようになる。
サイトセキュリティソリューション
Comodo HackerProofやMcAfee SiteAdvisorなどのソリューションを利用して、あなたのサイトが安全かつセキュアであることを証明しよう。
認証マークをサイトに表示して発行元にリンクし、ユーザーにも検索ロボットにも、安全なサイトであることを認識してもらうのだ。
企業の信用マーク
少なくとも1つの業界団体、あるいは米国の商業改善協会(Better Business Bureau:BBB)のような企業倫理推進組織を活用するか、または最低限、何らかの形で、少なくとも外部の人物や組織があなたのサイトを信頼していることをユーザーにはっきりと示す、スキーマ(schema.org)の評価用マークアップを導入しよう。
業界団体やBBBに参加しているなら、このこともユーザーと検索ロボットの両方に知ってもらうため、必ずそれらの団体にリンクを張ろう。
最新のデザイン
これはどんな場合も明白な事実だ。テクノロジーの世界では、「古い」ということは「安全でない」ことを意味する。PR.comのサイトは、他のプレスリリースサイトと比べると特に顕著だが、古くさいとしか言いようがない。(実際に安全であるかどうかは別として)評価が低くなるのも当然だ。
ここで指摘しておくべきこととして、グーグルは、あなたのサイトが信頼できないという結論に達するのに、必ずしもサイト上のマークアップを見つける必要はない。パンダアルゴリズムは、エンゲージメントの指標や行動(検索で訪れたのにそのまま検索結果ページに直帰してしまうポゴ・スティッキングと呼ばれる行動など)を考慮している可能性が高く、グーグルはユーザーの行動を利用して、これらの質問に対する評価を予測することが可能だ。
したがって、あなたがサイトに加える変更と、その変更を認識できるグーグルボットの能力の間に明確なつながりはないにしても、変更によってサイトの検索順位に影響を及ぼすことができないわけではないし、実際に影響を及ぼすだろう。
ユーザーと検索ボットを別々のオーディエンスとして考える時代は終わった。ボットは今や、あなたのサイトとオーディエンスの両方を評価しているのだ。ユーザーに影響を及ぼすことができれば、検索順位にも影響を及ぼしていける。
Q3. オーソリティであると見なせるサイトか?
この質問は、作成したコンテンツを管理しておらず、また、コンテンツが多岐にわたるサイトにとって特に厳しい。
したがって、プレスリリースサイトはまさにパンダアルゴリズムの標的になる。あらゆるトピックに関する膨大な数のプレスリリースを、他社から受け入れて表示しているウェブサイトが、どうして「オーソリティ」だと言えるだろうか? 普通、言えないし、数字もこれを証明している。回答者の75%は、PR Newswireをオーソリティサイトとは見なしていない。
ただし、この指標では、(少なくとも.eduや.govと比べると)ウィキペディアの評価も低かったことに注意してほしい。これは一体、どういうことだろうか? プレスリリースサイトは、どうしたらこのオーソリティの真空状態から逃れることができるだろうか?
トピック別に細分化したコンテンツ
これは、パンダに対して真っ先に行われた対応の1つだ。パンダ1.0で打撃を受けたサイトの多くは、コンテンツをトピック別のサブドメインに分けた。
これでいくらか安心感が得られるようには思われたが、決して完璧な解決策でも恒久的な解決策でもなかった。
サブディレクトリであれサブドメインであれ、コンテンツを細分化する実際の狙いは、ユーザーが読んでいる特定のコンテンツが、もっと大きなコンテンツの一部であることを、ユーザーにはっきりと示すのに役立てることだ。つまり、ユーザーが読んでいるページがサイト上の適当なページではなく、ウェブサイトが定めた意図に適合するものだと示すのだ。
オーソリティを作り出す
サイトのコンテンツを書かないからといって、オーソリティであることを示せないわけではない。実際、ほとんどの大手プレスリリースサイトは、執筆者とウェブサイトの間に、それなりの編集責任者がいる。その編集の階層構造を強化し、エンドユーザーの目に触れるようにして、そのサイトのコンテンツがわずか数ドルで誰かの文章を複製しているだけではないことを明確に示す必要がある。
では、このような改善策を施したページは実際にどう見えるだろうか? 先ほど取り上げたBusinessWire.comのプレスリリースに戻ってみよう。最初は、プレスリリース以外にほとんど何もないおもしろみに欠けるページだった。それがQ1の項目への対応で、魔法のように自動的に挿入できるグラフや構造化データを追加した。今度はここに、編集者のクレジットとトピックの区分を追加したい。
新しいデザインでは、「Securities & Investment Division」(証券・投資部門)を作成して、「Business Desk Editor」(ビジネス担当エディター)という洒落た肩書きのついた編集者名と、資格を記載した署名欄を追加した。著者情報(rel="authorship")や所有者情報(rel="publisher")のマークアップを利用することもできる。
こうすると、もはや味気ないプレスリリースではなく、このテーマに特化したニュース部門の、きちんと編集の手が入ったニュースコンテンツになった。これでオーソリティの問題は解決だ。
Q4. ブックマークしたり共有したりしたいと思うサイトか?
この質問を見ると困惑する。まじめな話、コンテンツを管理できないサイトを、どうしたら、ブックマークしたり共有したりしたくなるほど価値あるものにできるだろうか? しかもプレスリリースのように、あからさまに商業目的の面白味のないコンテンツでは、どうしたらいいのだろうか?
ご想像どおり、この点でプレスリリースサイトの評価はきわめて低い。PRWeb.comのコンテンツをブックマークしたり共有したりしたいとまったく思わないと回答した人は、全体の85%以上にのぼった。当然だろう。
では、プレスリリースサイトをユーザーに共有してもらうには、具体的にどうすればいいだろうか?
推奨される要素として最も一般的なものは、ソーシャルボタンを設置することだろう。しかしこれは、すでにPRWeb.comに用意されている。コンテンツの上部にソーシャル共有ボタンとブックマークボタンが配置されており、一目でわかる。新しいプレスリリースは毎日公開されるので、コンテンツは常に新鮮だ。
こういったテクニックが有効でないとすれば、他に何ができるだろう?
プレスリリースサイトの場合、ブックマークや共有には問題が2つある。まず、コンテンツが商業目的なのは明らかなので、本当に興味のあるトピックのプレスリリースでなければ、ユーザーは共有する気にはならない。さらに、コンテンツが一過性のものなので、ユーザーは戻りたいとは思わない。この両方を解決する必要がある。
解決策
残念ながら、この質問への答えは、プレスリリースサイトにとっていくらか荒療治になると思う。解決策は多面的だ。
まず、プレスリリースに有効期限指定のmetaタグを追加する。PRWeb.comにしてみたら、検索結果に企業競争に関する2009年のプレスリリースを載せておく理由などない。代わりに企業ページやカテゴリーページを用意し、アーカイブしてあるコンテンツを吟味し、インデックス化して整理するべきだ。
このプレスリリースに登場するLumaDermは、2009年のプレスリリースが検索結果から失われることになるにしても、代わりに自社のプレスリリースに特化したページをサイト上に持つことになり、1回余計にクリックしさえすればコンテンツにアクセスできるのは変わらないし、検索エンジン側には無視していいコンテンツだと認識される。
この解決策をとれば、有益な言葉やフレーズが含まれていて長年にわたってランキングに入るようなページは、ビジネスにとって将来有望で信用できる情報を提供するアグリゲーションページだということになる。このページは、企業が新しい情報を公開するたびに更新されるので息が長く、なおかつ、新しいリリースによってある程度共有してもらいながらも、プレスリリースの無秩序な拡散やクロールの優先順位付けといった問題でリスクを冒すこともない。
新しいコンテンツは初期の段階で急上昇するものだが、古くなったプレスリリースをインデックスに残しておくことにSEO上の十分な理由はない。
あなたがプレスリリースサイトを持っていなくても……
ほとんどの人は、低品質のコンテンツページが膨大にあるようなサイトを運営しているわけではない。しかし、だからといって、パンダのことを意識しなくてもいいことにはならない。
グーグルのあらゆる検索アップデートのうち、パンダは僕が最も高く評価するアップデートだ。なぜならパンダは、本当の意味で品質を測ろうとするアップデートだからだ。パンダは、検索結果でどのようにして現在の順位までたどり着いたかを問う(これは始まりだけで現在を評価するという典型的な論点のすり替えによる誤りだ)ものではなく、(過程に問題があったとしても)人間による質的評価に基づいて、ページやサイトそれ自体が現在の順位に値するかどうかだけを問題とする。
何よりも、グーグルなど存在していなかったとしても、あなたはこれらすべての指標でスコアの高いウェブサイトを持ちたいと思うはずだ。
パンダに関する質問で評価の高いサイトになれば、特定のアルゴリズムのアップデートに左右されないですむうえに、ユーザーからの評価が高いサイトを持つことになる。それこそ、あなたが望むサイトだ。
もう一度、この記事に前編で示した、ページの品質をチェックする質問項目に目を通してほしい。あなたのサイトは、本当にこれらの基準を満たしているだろうか? 先入観のない誰かに聞いてみよう。もし満たしているのなら、おめでとう。あなたはすばらしいサイトを持っている。だが、もし満たしていないのであれば、あなたが望むサイトを構築するよう、さっそく取り掛かってほしい。
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