広告主と代理店とツールベンダーが語る、WEB戦略の本音 WEB戦略構築の最前線をディスカッション | ネクソン、マッキャンエリクソン、ロックオン
セミナーイベント「Web担当者Forumミーティング 2012 Spring」(2012年4月19日開催)の講演をレポートする。他のセッションのレポートはこちらから。
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再生が始まります)
ネットマーケティングで成果を出すためにはどうしたらいいのか。基調講演に続いて行われたA1セッションでは、広告主、代理店、コンサルティング会社の実務担当者が集まり、最新事例を交えて活発なパネルディスカッションが行われた。
ソーシャルメディアの効果を可視化することが課題
ネット広告の効果検証ツール提供などを展開しているロックオン。本セッションでは、同社マーケティングメトリックス研究所 所長の中川斉氏がモデレーターを務め、ネットマーケティングの新手法やチームビルディング、データ活用などをテーマに、パネルディスカッションが行われた。
パネリストとして参加したのは、オンラインゲーム事業のネクソンで、モバイル向け新規事業/マーケティング企画を担当する萩原俊太郎氏、大手代理店マッキャンエリクソンのデジタルプランナー 松浦竜馬氏、そしてロックオン東京支社営業ユニットの一木稔人氏の3名。広告主、代理店、そして効果測定などに強みを持つコンサルティング会社という、三者三様の視点から、意見交換がなされた。
トークセッションのテーマは4つ。1つ目は「最近注目している新手法は?」だ。マッキャンエリクソンの松浦氏は、「やはりまだソーシャルメディアに注目している」と話し、その理由を次のように述べた。
ソーシャルメディアは、いまだに言葉だけが先行している状況で、キャンペーンが実際にビジネスゴールにどう結びついているかは、ダイレクトな数字としては可視化できていません。私はこの2012年度に、そこを可視化していきたいと思って注目をしています(松浦氏)
可視化のやり方としては大きく2つの方法、まず「KPIとビジネスゴールをきちんとひも付け」し、そのうえで「すべて施策の成果を定点的に測定し、ソーシャルメディアで施策を行ったときの変化を見る」ことを考えていると説明した。
また、ロックオンの一木氏は「自然検索、各種広告、ソーシャルメディアのデータがどう絡み合っているのか。アトリビューションについてお客さまから相談されることが増えている
」と話す。
今、ある企業でアトリビューション分析のテストマーケティングを実施しています。アトリビューションを数値化し、効果のあるなしを判断する1つの基準としていただくための取り組みを行っています(一木氏)
一方、ネクソンの萩原氏が注目しているのは、ソーシャルメディアではなく、ユーザーID軸のデータに基づくアトリビューション分析だ。ソーシャルメディアとオンラインゲームは相性が良さそうな気もするが、「自社のウェブの立ち位置を鑑み、1つのコンタクトポイントとして設定しているだけ
」だと萩原氏は説明した。
ビジネスゴールに向けたKPIを明らかにする
次にテーマは、2つ目の「マーケティング全体の中でのWeb」へと移った。ここではまず松浦氏が、ネットマーケティングの位置付けについて、代理店の立場から次のように説明した。
マッキャンエリクソンという代理店では、マーケティング全体を俯瞰して物事を考えなければいけません。ですからネットマーケティングにおいても、ビジネスゴールに向かってどんなKPIが設定できるかを、重要視しています(松浦氏)
具体的に松浦氏は、ビジネスゴールまでの流れを数値化するために、「トラフィック」「エンゲージメント」「コンバージョン」の3つのポイントで、KPIを設定しているという。また、KPIに至るまでのプロセスを細分化して、各プロセスとKPIとの相関を明らかにすることも重要だと付け加えた。
たとえば、サイト内でのユーザーの動きとエンゲージメントとのつながりや、ソーシャルメディア上のキャンペーンとWebサイトのトラフィックとの関連性を見る、といった具合だ。次のテーマであるチームビルディングにも関連するが、こうすることでチームの各メンバーの目標数値が、ビジネスゴールにどうつながっているかを理解・共有できるという効果もある。
松浦氏の説明に対し、萩原氏から「エンゲージメントKPIとはたとえばどのようなものか
」という質問が挙がった。松浦氏はエンゲージメントを「端的に言えば、絆のようなもの。ユーザーが自分たちのブランドに対し、興味を持ったり、いいなと思ってくれたりすること
」と定義し、たとえばキャンペーンページでYouTubeの動画を見てくれたことも、エンゲージメントKPIの1つだと具体例を示した。実際にエンゲージメントKPIにマイクロコンバージョンを設定するなどして、最終コンバージョンとの相関を可視化できるようにしているという。
続いて3つ目のテーマである「キャンペーンを円滑に進めるチームとは」へと話題は移る。
ここでは松浦氏は、前述のKPI設定の重要性を踏まえ、ビジネスゴールを見据えてコンパスのように行き先を示す「KPIプランナー」が、チーム内に必要になると主張した。そして、その役割を果たすのは代理店ではないかと話した。
これを受けて、ロックオンの一木氏は「弊社のような効果測定のベンダーが、広告主と代理店の間に入り、データ分析などについて技術的な提案をすれば、いいチームができるのではないか
」と提言をした。
広告主がキャンペーンのチェックに用いる「4つの視点」とは?
最後のテーマは、「データの活かし方/問題点」だ。ここではネクソンの萩原氏が、広告主が広告(キャンペーン)をどのように数値で評価しているかを、詳細に説明してくれた。
ネクソンでは、オフラインも含めたすべてのマーケティング施策を行った結果、「コンバージョン数や収益などの目標数値が、中長期的に右肩上がりにあるかどうか
」を基本視点としてチェックしていると萩原氏は話す。短期的に一喜一憂することはないが、代理店にはCPAなど日々のオペレーション領域の目標をクリアするためのロジック設計と、実際の遂行能力を求めているという。
キャンペーンの成果検証は次の4つの視点からチェックしている。
- 収益(売上)が投資を上回ったか。
- 新規ユーザーを獲得できたか。
- リピーター維持ができたか。
- コスト(CPA)が下がったか。
萩原氏は「これらができない、もしくは結びつかないと思われる施策に関しては、基本的にやりません
」と断言した。成果検証は、専門的な統計解析ツールを用いて実行前後のデータを客観的に検証しており、「なんとなくよかった」といった検証活動は極力排除している。
先ほど述べましたが、今マーケティングのコスト抑制のために、広告接触によるユーザーの態度変容をユーザーIDベースで時系列に可視化するという、アトリビューション分析をしようとしています。そのうえでユーザーの心理導線上に、“ディーラー”を置いて広告効果を高めていきたい。“ヤフーの広告枠が今いくらでお得ですよ”という提案には乗りたくないと思っています(萩原氏)
そして広告主として興味を持っている課題として「個人的な興味もある」と断ったうえで、「プロダクトのライフタイムを考慮した際のマーケティングの投資上限のモデル化」と「実務的な定量的分析処理の限界」という2つの課題を挙げ、今後のマーケティング施策の可能性についても言及してくれた。
伝統的なマーケティングの知見から導かれた施策は、どれも似通ってしまう。生物学や脳科学かもしれないし、行動経済学かもしれないが、何か別の学問領域の研究成果を取り入れたら、新しいマーケティングの考え方ができるのではないか(萩原氏)
広告主とパートナー企業がチームを組み、ネットマーケティングに取り組んでいるケースは多いだろう。しかし、どのような考えでマーケティングに取り組んでいるのか、お互いに意見を交換することは、あまりないかもしれない。普段の仕事とは異なる視点から、マーケティングを見つめ直すことができるという意味でも、貴重なセッションとなった。
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