いよいよ実現する、ソーシャルの可視化 ――アクションに繋げられなければ意味がない | アドビ システムズ
セミナーイベント「Web担当者Forumミーティング 2012 Spring」(2012年4月19日開催)の講演をレポートする。他のセッションのレポートはこちらから。
ソーシャルメディアを活用したマーケティング施策は、「リーチ」と「ゴール」が表裏一体となって効果を発揮する。では、ソーシャルメディアで拡大したリーチをどのようにゴールに結びつければいいのか。効果を可視化し、ゴールへつなぐためのポイントをアドビ システムズ 株式会社 コンサルタントの安西氏が解説した。
ソーシャルメディアで「ファーストクリック」の価値が高い理由
A会場最後の個別セッションに登壇したのは、アドビ システムズ 株式会社(以下、アドビ)の安西敬介氏。安西氏は、M&Aによってアドビのデジタルマーケティングビジネスユニットとなったオムニチュア出身で、ウェブ解析に強みを持つコンサルタントだ。セッションのテーマは、ソーシャルメディアを活用したマーケティングの「リーチ」と「ゴール」。ソーシャルメディアの効果をいかに可視化し、ゴールへとつなげていくか、といったことが主題になった。
安西氏が、セッションの冒頭にまず紹介したのが、「75%」そして「88%」という数字だ。
この75%という数字は、2012年のデジタルマーケティングにおいて、企業がソーシャル(メディア)に期待する割合です。米Forrester Research社の調査結果になりますが、非常に高い期待が寄せられている。
そして88%というのは、弊社の調査になりますが、“ファーストクリックとラストクリックを評価した場合のソーシャルの価値の差”になります。
ここでいう「ファーストクリック」とは、コンバージョンに至る一連のプロセスの最初のクリックであり、簡単に言えば顧客が初めてウェブサイトを訪れたときのクリックになる。そして「ラストクリック」はコンバージョン直前のクリックだ。安西氏は次のように説明する。
このファーストクリックでソーシャルを評価をすると、ラストクリックの評価に比べて88%高くなる。米国の弊社顧客企業を対象に調査したもので、かなり精度の高い数字だと思います。
オンラインの効果測定は、これまでコンバージョン直前のラストクリックで評価するケースが多かったが、それだけではラストクリックより前のプロセスを評価することは難しい。顧客が意思決定するまでには様々なプロセスがあり、昨今はアクションごとに評価するアトリビューションという概念も注目を集めている。解釈はいろいろできるが、安西氏が示すように「最初に商品を見るのがソーシャル」というケースが増えており、ソーシャルの重要性が高まっていることは間違いないだろう。
安西氏はこうした2つの数字を挙げ、ソーシャルを取り巻く状況を簡単に解説したうえで、本題であるソーシャルの「リーチ」と「ゴール」へと話題を進めた。リーチとゴールを考えるには、次の3つのキーワードが軸になる。
1つ目は「計測基盤の強化」だ。ソーシャルメディア上では、自分が購入して気に入った商品を「いいね!」したりシェアしたりし、それを見た別の人が興味を持つということが、いたるところで行われている。ビジネス的に見れば、ソーシャルを経由して新たなリーチの獲得が期待できるわけだ。「いいね!」ボタンをはじめとするソーシャルインフルエンスボタンを多くの企業が掲載しているのは、こうしたリーチの拡大が大きな狙いだ。
しかし、ビジネスでは獲得したリーチをコンバージョン(ゴール)につなげていくことが重要になる。そのための土台になるのが、計測基盤の強化だと、安西氏は指摘する。
どんな商品がどのくらいシェアされ、どの程度新たな流入を増やしていくのか。そしてどんなユーザーがどんな内容をシェアしているのか。ソーシャルをモニタリングしていくことが、まずは重要だと思います。
実は、アドビにはソーシャルメディアの情報を収集・分析するツール「Adobe SocialAnalytics」がすでにある(2012年4月現在)。ソーシャル経由の流入がどの程度コンバージョンにつながったのかといったことまで可視化できると、安西氏は一例を示した。
米国で行われ始めている“Liker Targeting”とは
2つ目のキーワードは「自社サイトのハブ化」だ。ソーシャルのデータをある程度計測できるようになったとはいえ、自社サイト内の解析に比べれば得られるデータは限られているし、顧客の動きをコントロールしづらいことには変わりない。そうした状況でゴールへと結びつけるには、Facebookページなどの別のチャネルを用意し、“自社サイトを訪れはしたもののすぐには購入しない顧客”のエンゲージメントを高める施策が有効だという。
弊社には、チャネルをまたいだ分析が得意なAdobe Discover(ディスカバー)というツールがあります。こうしたツールを用いて、顧客の流れを可視化し、自社サイト以外のチャネルでもエンゲージメントを高めていく。まったく離れてしまうのではなく、顧客と少し手をつないでいる状態をつくるのが、1つの考え方としてあります。
さらに「ハブ化」という面では、Facebookとの連携もポイントになる。自社サイトやサービスの会員登録にFacebookのログイン認証を利用すれば、会員登録という顧客獲得上の最大のハードルを取り払うことができる。さらに進んだ事例として、安西氏は2つのケースを紹介してくれた。
たとえば、ある米国のECサイトでは、Facebookのパーソナル情報を利用して、誕生日が近い友人が興味を持ちそうな商品のレコメンデーション情報を表示しています。また、ある日本の旅行サイトでは、Facebook上の友達の口コミ情報が上位表示される仕組みになっている。自社サイトをハブにして、ソーシャルのチャネルをつなぐことで、通常はコントロールできない情報をある程度コントロールしながら、サービスの価値を高めることができるのです。
そして3つ目のキーワードが「効果の最大化」だ。ソーシャルの効果を最大化するためには、「いいね!」の数と、各種データの関連性を見つけ出し、仮説を立てながらA/Bテストなどを行っていくことが重要だと安西氏は説明する。このあたりは通常のサイト改善と同様、地道な作業を継続し、PDCAを回しながら創意工夫していくことが大切になるだろう。
また米国では、Facebookによるリーチをゴールにつなげるために、“Liker Targeting”というものが行われるようになっています。購入はしなかったけど、商品の“いいね!”ボタンを押した人がいたとします。その人が次にサイトを訪れたとき、“いいね!”を押した商品をきちんと表示するようにするのです。こうしたターゲティングの積み重ねが、全体のゴールに結びついていくと考えています。
安西氏はこのように米国の最新事情を紹介したうえで、次のようにセッションをまとめた。
ソーシャルは自社サイトとは異なり、すべてをコントロールできるわけではありません。ですから計測基盤を強化して状況を把握し、コントロールできる部分をつくりながら、自分たちのビジネスに寄せていくことが非常に大事になります。そのような仕掛けをつくったうえで、顧客とコミュニケ-ションを取っていかないと先には進めない。ぜひ今日お話ししたポイントを、持ち帰っていただければと思います。
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