マーケティング(リードジェネレーション)サイト向けKPI | KPI大全 第4章-3
マーケティングサイト向けKPI
純然たるマーケティングサイトというものは存在せず、すべてのWebサイトがマーケティング的な側面を持っている、という議論はよくあるもので、なおかつ正しい指摘である。「マーケティング」サイトという言葉自体、曖昧なものだ。別の言い方をすると、「リードジェネレーションサイト」、すなわち、セールスサイクルが非常に長いビジネスを支援するサイト、もしくは財やサービスをオンラインで実際に売る代わりに、顧客をセールスサイクルに乗せるための手段として機能するサイトである。例として、私自身のWebサイトを考えてみよう。ここでは、氏名とメールアドレスを入力すれば、無料でダウンロードができる(図17)。
マーケティングサイト及びリードジェネレーションサイトにおけるKPIは、訪問者の関心度合いに関するものであり、これらの指標を注意深く観察することで、訪問者獲得コストに対する、リードジェネレーションやマーケティング努力の状況を把握できる。マーケティングサイトでは、これらの指標を週別ないし、訪問者獲得コストの大きさによってはもっと多い頻度で参照する必要がある。
経営層向け
マーケティングサイト・リードジェネレーションサイトの経営層には、以下の指標を勧める。リードジェネレーション・コンバージョン率、問い合わせに対する平均反応時間、リードジェネレーションあたり平均コスト、1訪問あたり(概算)平均収益。
リードジェネレーション・コンバージョン率
リードの集め方はどうあれ、情報発見コンバージョン率の変化形であるこの指標は、注意深く観察する必要がある。問い合わせフォーム、Eメール、電話、この3つのチャネルはすべてリードにつながるものとして追跡する必要がある。考えられる方法としては、Webサイトに掲載する電話番号を、専用の番号にしておき、Webサイト経由の問い合わせと、他のビジネスチャネルからのものを分けてカウントすることは、有効である。また、店舗検索やイベントカレンダーなど、販売につながるオフラインチャネルに訪問者を誘導するコンテンツがあれば、これらの情報ページへのアクセス数を使って、「ソフト」リードジェネレーション・コンバージョン率を計測することもできる。
問い合わせに対する平均反応時間
マーケティングサイトの生死に関わるKPIとして、経営層が知っておくべきことは、問い合わせメールを迅速に処理する習慣があるかどうかである。可能であれば、この指標における「Eメール」の制限を緩め、すべてのチャネルからの問い合わせに対して、平均反応時間を計測するようにしよう。トレードショー、電話、フォーム、直接Eメールなどからのリードをフォローアップするのに、どのくらいの時間がかかっているかを、注意深く観察しよう。はっきりと情報を求める問い合わせの場合、たいていがWebサイト内で情報を発見できていないということになるが、それでも回答は遅いより早いほうが好ましい、というのは重要なことである。基本的に、勤務時間で数時間を越えたらもう反応時間としては「長すぎ」で、問い合わせた人は痺れを切らして、答えを探しに別のところに行ってしまう可能性がある。
コンバージョン(リードジェネレーション)あたり平均コスト
リードジェネレーションサイトにおいては、獲得マーケティングこそ決定的な機能であるため、経営層は獲得マーケティングコストに十分注意を払う必要がある。注意すべきなのは、このKPIはリードジェネレーションの質とはまったく関係がなく、量だけに関連付けられているということである。可能であれば、リードの全数と、「最適」「やや適切」「不適切」という3種類のセグメンテーションを行うことは、訪問者満足度の代替指標として有効である。
1訪問あたり平均(推定)収入
Jason BurbyとZAAZ社の人々は、定量的価値が明確でないKPIも含め、指標を金額換算することがどれほど価値のあることか、いつも思い出させてくれる。マーケティングサイト・リードジェネレーションサイトにおけるコンバージョンは、直接円やドルで測れる価値に直結するわけではないが、それでもある時点でWebサイトが生み出す概算価格を、経営層が把握しておくことはできる。リードもしくはコンバージョンイベントの生み出す価格をうまく見積もれるのならば、それを用いて1訪問あたり平均収益を計算しよう。見積もりがうまくいかない場合は、販売や契約の平均価格をもとに、リードから販売(クロージング)につながる比率を掛け、さらにコンバージョンの総数を掛ける。
(({平均契約金額}×{クロージング率})×{リードジェネレーション総数})÷{総訪問回数}={1訪問あたり平均推定収入}
たとえば、平均契約金額が$10,000、クロージング率が10%として、1週間に10,000訪問あって、その中から100人のリードが生まれたとすれば、以下のように計算できる。
((10,000×0.1)×100) / 10,000 = 1訪問あたり推定約$10
レポートの際に注意するべきことは、この値はあくまで「推定」であり、変動しやすいということをはっきり伝える必要があるということである。それでも、この計測値は、Webサイトやマーケティング・キャンペーンにおける効率性を判断するのに、妥当な比較材料になる。
中間管理職層向け
経営層向けのKPIに加えて、マーケティングサイトの中間管理職層には、以下の指標を勧める。1人あたり平均訪問回数、閲覧時間分布、前回訪問間隔分布、新規対リピート訪問者比、特定セグメントの訪問率(求職者、投資家など)。
1人あたり平均訪問回数
多くの人は、特におもしろいと思ったサイトには繰り返し訪れる傾向がある。ディーラーの車置き場に行って欲しい車を物色し、近所を歩き回って買いたい家を探すように、何かしら買おうと思っている商品やサービスを提供しているサイトを、何度も訪れるのである。したがって、まず1人あたり平均訪問回数を見れば、あなたの提供するものに対して訪問者がどのくらい関心を持っているかを知ることができる。この値が1.00に近いということは、計測する期間内に、訪問者はたった1回きりしかサイトにやってこないということである。よって、値が大きいほど、リピート訪問が多く、訪問者がより高い関心を持っているということになる。
サイト滞在時間分布
十分な量の情報を提供し、さらなる情報を得るための問い合わせをさせるようなサイトでは、この指標を計測することに大きな意味がある。ただ、滞在時間が長いことが、そのまま問い合わせの多さにつながるわけではない。訪問者の中には、訪問直後に、直接コンタクトを取ったほうが早いことに気がつく人が必ずいる。その場合、滞在時間は短いが、関心度の高いリードを獲得できるのである。
前回訪問間隔(リセンシー)分布
訪問頻度と前回訪問間隔を計測することは、訪問者のさらに深い関心の傾向を知るのに役に立つので、前回訪問間隔の短い訪問者の比率が、急激に上がったり下がったりすることがないか、観察しておく必要がある。前回訪問間隔の短い訪問者の割合が非常に大きければ、多くのリードを生み出すことができるだろう。訪問間隔と、リードジェネレーションの量を並べて表示することで、何らかのパターンが見出せるかもしれない。
新規対リピート訪問者比
この指標は、他の類型のサイトと同じように、商品・サービスに対する訪問者の関心と比較した、マーケティング努力の効率に関する指標として有効である。マーケティングサイトにとっては、この比はきわめて大きいことが望ましいと思うかもしれないが、あなたの商品が単価の高いものであれば、そうとは限らない。購入に対する敷居が高いほど、訪問者は何度もサイトを訪れる傾向があり、この比は減少する(そのため1人あたり平均訪問回数と前回訪問間隔を計測するのが重要なのである)。
特定セグメントの訪問率
リードジェネレーション・コンバージョン率を計算する際、1つ重要なこととして、すべての訪問者にリードジェネレーションの可能性があるとは限らないということは、考慮に入れるべきである。ある訪問者はすでにコンバージョン済みかもしれないし、ある訪問者は求人情報・投資家向け情報に興味を持って訪問したかもしれない。可能であれば、「コンバージョン済み」「求職者」「投資家」のセグメンテーションを他の訪問者から区別しよう。この発展的なステップを踏んで、これらのセグメントの訪問者をコンバージョン率計算の母集団から除き、それによって訪問者のコンバージョン傾向をより正確に反映できるようにすると良い。
実務担当者向け
経営層向け・中間管理職層向けのKPIに加えて、実務担当者には、以下の指標を勧める。ランディングページ直帰率、1訪問あたり平均検索回数、結果0件検索率、成果なし検索率、キャンペーン及びキャンペーンタイプごとのリードジェネレーション率。
ランディングページ粘着度
繰り返しになるが、トップページや効果の高いマーケティングのランディングページを含む、重要なランディングページは、注意深く観察する必要がある。粘着度が低ければ、コンバージョンは起きない。
1訪問あたり平均検索回数
Webサイトに検索機能があるなら、この指標と以下に挙げる指標は計測に値するだろう。特に、提供している商品やサービスが複雑な場合、ナビゲーションをクリックしてサイトを行き来しているのか、特定の情報を検索しているのかを知ることができれば、訪問者の考え方をより理解できる。さらに、1訪問あたり平均検索回数が多い場合、コンテンツやナビゲーションに何か問題が起きていることを示唆している可能性がある。訪問者が何かの情報を探しているのに、それを発見することができない場合、検索されている語句を注意深く調べるのが良い。
結果0件検索率と成果なし検索率
1訪問あたり平均検索回数と同じように、検索機能があるなら、検索が結果を返しているかと、検索結果がクリックにつながっているかについて、注意深く観察する必要がある。どちらかの比率が上昇していたら、訪問者があると信じて探している情報にたどり着けていないということである。
キャンペーン及びキャンペーンタイプごとのリードジェネレーション率
キャンペーンごとの注文コンバージョン率と似たような指標だが、リードジェネレーションサイトの場合、いくつかの理由で、実務担当者は個々のキャンペーンと同時に、キャンペーンタイプ別でも計測をするほうが良い。ただしKPIレポートでは、すべてのキャンペーンについて網羅的に盛り込むのはよくない。適切な詳細レベルについては、キャンペーンごとの注文コンバージョン率の定義を参照してほしい。
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