企業ホームページ運営の心得

AKB48に学ぶ横展開のコンテンツ作り

ホームページの基礎体力を向上させる手法の1つ、コンテンツを横展開について
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の百八十

Webサイトの鍛え方

WebサイトのPV(ページビュー)は基礎体力だと前回述べたのには3つの理由があります。1つは前回も述べたように、PVが多ければ利益を生みやすくなるからです。サッカーに例えるなら、90分間全力で走りきる体力があれば、技術(コンテンツの質)に勝る相手とも戦うことが可能だということです。2つ目は、人間の体力と同じように「簡単には上げられない」ないということです。地味な筋トレや走り込みでしか基礎体力が向上しないように、PVを上げるのも地味な作業の繰り返しなのです。

そして最後に「鍛え方」があるところが基礎体力に似ています。「ビリーズブートキャンプ」や「加圧トレーニング」など、筋トレにもさまざまな方法があるように、PVを上げる「鍛え方」があり、正しい方法で取り組めば必ず成果がでるということです。そこで今回は「横展開」という方法を紹介します。この方法はAKB48のアプローチと重なります。

300ページの見積もり

あるサイトのリニューアルについて制作会社に見積もりを取ると、「300ページ」に及ぶコンテンツ提案がありました。狙いはPVアップですが、全体で10数ページしかなかったページ数を一気に20倍以上にするというのです。そしてそのための原稿作成は、すべてクライアント(発注者)の仕事だと見積もりにあります。

これでは「気合いと根性」の筋トレです。PVアップにコンテンツ(ページ数)の増加は不可欠ですが、闇雲にコンテンツを増やしても効果は乏しく、一気に20倍にしようとしては、原稿執筆にばかり時間が費やされてしまいます。原稿書きだけがWeb担当者の仕事ではありません。そこでAKB48の登場です。

コンセプトから量産する

いまさらAKB48の活躍をここで紹介はしませんが、「SKE48」や「NMB48」と、次々に「横展開」をしています。SKEとは愛知県名古屋市の繁華街「栄(SAKAE)」を拠点に活動し、大阪は難波で活動するグループがNMBですが、地域名をアルファベット3文字に置き換えたネーミングが横展開ということではありません。「会いに行けるアイドル」という「コンセプト」を全国地域に拡げたことが「横展開」で、コンセプトが横展開の「キモ」です。オリコンで1位になっても、グループ内人気投票の「総選挙」がスポーツ紙の1面を飾っても、「会いに行けば会える」という基本軸(コンセプト)がぶれないことでファンの熱い支持を集め続けるのです。

以前「コンテンツリノベーション」の事例として、「セブンイレブン 営業戦略」で検索1位にしたケースを紹介しましたが、これの続きでもあります。というより、今回の「横展開」を紹介するために実験を試みたのです。それが以下です。

  • ダイエー 営業戦略
  • クロネコヤマト(ヤマト運輸) 営業戦略
  • 幸楽苑 営業戦略

すべてグーグルとヤフーの検索結果で1位に表示されます(8月2日現在のため、ヤフーの検索エンジンはYSTかと思われます)。

軸を中心に横展開

弊社のコンセプトは「営業戦略」。ダイエー、クロネコヤマト、幸楽苑(激安ラーメンチェーン店)の「営業戦略」を紹介したコンテンツは、公開から1か月も待たずに検索結果の1位です。そしてコンセプトから横展開してつくったコンテンツは、「SEO」に有利とみています。当然、ニーズのない検索キーワードでは集客効果は見込めませんが、横展開のコンセプトが、検索結果の上位をゲットしているキーワードならば効果的だと睨んでいます。

同じキーワードを使用していることから、クローラが「関連コンテンツ」として分類している可能性と、サイト単位で「キーワード」によるタグ付けがされインデックスされているのではないかという仮説です。断定するには検証数が少ないのですが、弊社クライアントではすでに「横展開」を行っており、ほぼすべてのサイトで「営業戦略」のような結果がでているのです。その「実例」を披露すれば顧客利益を損ねる可能性があります。そこで自分のサイトで実験したところ、基礎体力の積み増しに成功しました。

アクセス解析という基本

コンセプトから横展開し、コンテンツを増やし基礎体力を上げます。一方で、「コンセプトがない」場合はこんな筋トレ方法があります。「スピンオフ(派生商品)」です。闇雲に300ページ作るよりも効果的です。

これも実例を紹介できないのですが、たとえば「スリッパ」を販売していたとします。通常はひと組で販売しているモノを二足セットにして「カップルスリッパ」、4足セットで「ファミリースリッパ」として商品化します。また、「片足分」だけで「ワケありスリッパ」として販売してもいいでしょうし、毎月1足、新しいスリッパが届く「スリッパ フレッシュサポート」というのもありです。数量や販売方法を組み合わせることで、新しい商品を作りだすのです。

おにゃん子の失敗

スピンオフも横展開の方法の1つで、「スリッパ」という主力商品を「コンセプト」に見立てているのです。AKB48でいえば「渡り廊下走り隊」や「チームドラゴン」がスピンオフ。コンセプトは「AKB48」です(一般的マーケティングの視点です。ファンの方からの熱いコメントは謹んで辞退させていただきます)。あるいは、映画「躍る!大捜査線」においての「交渉人 真下正義」「容疑者 室井慎次」などと同じです。視点を変えると横展開は簡単です。

「営業戦略」でも「スリッパ」でも、コンセプトを据えて横展開することで、効率的にコンテンツを増やすことができます。とても効果的な方法ですが、コンセプトが揺らぐとすべてが迷走することを、AKB48と同じく秋元康さんが手がけたアイドル集団「おにゃん子クラブ」が教えてくれます。80年代に女子大生番組として一世風靡した、「オールナイトフジ」の女子高生版というコンセプトではじまった「夕やけニャンニャン」ですが、後期にはこれが揺らぎます。「男版」の「息っ子クラブ」が生まれました。「女子」がコンセプトの中心だったはずが……「息っ子クラブ」解散の半年後、番組は静かに幕を下ろしました。

今回のポイント

コンセプトから横滑りさせる。

スピンアウトでコンテンツを量産。

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