実践編

思い出してもらうための「繰り返し」

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思い出してもらうための「繰り返し」

ここまでずっと、メールについての話を中心に進めてきた。それだけショップサイト運営では、メールでお客様を上得意に育てていくプロセスが重要だという考えによるものだ。こうしたメールのやりとりで、顧客はリピーターになり、広告に頼らない売り上げを増やしていってくれる。

さらに、リストに対して送るメールからだけでなく、検索エンジンから人が自然に訪れて、しかもそれが自然にリピーターになっていくようなサイト作りについても考えていこう。

訪問者がサイトにリピートアクセスするためには、

  1. 思い出すことができる
  2. すぐ再来訪できる
  3. 楽しみになる

といった心理が必要となる。「1. 思い出すことができる」は当然のことのようだが、実は我々は、訪れたサイトの95%を忘れてしまっているのである。検索で見つけた、あるいは広告をクリックした。我々は非常に多くのサイトを訪れているのであるが、どこを訪れたかはいちいち覚えないのが普通なのだ。それは「短期記憶」にしか入っていないからである。人間の記憶のプロセスは、短期記憶にまず入力データを全部おさめる。ここにおさめられるデータは目からの入力がもっとも多いとされるが、15秒も経てば、95%が失われるようにできているのである。そこから何度か繰り返し届いた情報や凝視した情報だけが脳の「リハーサルバッファー(繰り返し領域)」を通過し、そこで繰り返し印象に残ったものだけが、「長期記憶」におさめられる。長期記憶に入ったものは比較的長時間覚えていられるが、それでも少しずつ記憶が薄らいでいく。前におもしろいサイトに行ったな、良いショップがあったな、と思い出すことができるためには、何度か繰り返し、印象に残ることが欠かせない。

だから、私はいつも「直帰率を引き下げること」を強調している。1ページで帰ってしまったのでは、ロゴマークやサイトのデザインを「繰り返し」目にできない。だからサイトは長期記憶に入らず、好印象だけが残っても、あとで「どこのサイトだったか」と思い出すことができなくなってしまうのだ。

1ページで帰らなかった人は多数のページを見てくれる。Google Analyticsでは「平均ページビュー数」が確認できるが、これは直帰者も含めた全体平均となっている。多くのサイトで「平均ページビュー数」は5〜6ページ程度になるのが普通だ。ところが、2ページ以上見た「直帰者以外」の人だけで平均をとると、実に11ページ以上見ているのだ。これぐらいページの姿やロゴマークが“繰り返し”印象に残っていくと、自然に記憶にも残り、好印象もふくらむものである。

次の「2. すぐ再来訪できる」はなかなか難しい課題だ。訪問者がサイト名や会社名を思い出したら、それで検索して再来訪してくれるかもしれないが、会社名を覚え間違えていたら目もあてられない。このごろはブラウザが前に訪れたURLを覚えてくれているから、URLの最初の1文字さえ思い出してもらえれば再来訪しやすくなっている。しかし、このごろはうろ覚えの人は多くがYahoo!やGoogleへ行って、記憶に従って検索をしてみることが多い。そのためにも、ショップ名、ブランド名をしっかり印象に残るサイトにしなければ、そもそもリピート不可能になってしまうのだ。

ブランド名をしっかり印象づけるには、アクセス解析から見れば、次のようなポイントがある。

  • カタカナでブランド名が表記されている(英語ではない)

    英語で書かれたブランド名は、訪問者が瞬時にそれをカタカナに変換できない。読めればその音が訪問者の頭のなかに残る。だから、ブランド名やショップ名は読めるものにすることが重要である。

    多くのサイトがあまり意識せずにショップ名を英文字にしている。日本人には英文字は苦手なものなのだ。Yahoo!やGoogleなどは「oo」の部分を最初どう読んで良いかわからず、覚えにくいと思った記憶のある人も少なくないだろう。正式な表記が英文字でも、必ず小さな文字でカタカナを添え、日本人が頭のなかでその音を理解できるようにしなければならない。

  • コントラストを強く、ブランド名の背景をシンプルに

    基本的には、ブランド名の表記はできるだけ可読性が高くなっているべきである。かなり有名なメーカーが会社名をわざと見つかりにくい場所に置いたりするおしゃれな表現もあるが、無名のショップサイトがそんなことをしても損をするだけだ。

    ロゴマークをサイトの上部に置いたりする場合、背景にあまりにぎやかな写真を置いたりするとごちゃごちゃして読めなくなってしまう。できれば背景は白地が良く、ロゴマークの高さの半分ぐらいは周囲に余白をあけることが望ましい。

    ブランドロゴマークを印象に残すためのガイドライン。
    図4 ブランドロゴマークを印象に残すためのガイドライン
  • ページの最後にもう一度、ブランド名を印象づける

    検索者などは特に、ページの左上ロゴを見ていない。すぐに本文見出しなどに注目するためだ。そのページを気に入った人ほど、すばやくスクロールしてしまうため、ページ左上のロゴは思ったほど見られていないものなのだ。とすると、スクロールした先で改めて、これが誰のサイトなのか、知らせなければならない。そうした意味ではフッタでのブランド名表記は非常に大切なのだ。

ショップ運営に変化感を出そう

リピートのポイントとして一番強いのが、前述のリストの「3. 楽しみになる」ということだろう。

たとえば連載型や日替わり型のコンテンツがあると、それを見るためだけでもサイトを訪れようという気になるものだ。更新頻度はリピート頻度を大きく左右する要因となっている。たとえば、Googleのようにトップのロゴがどんどん変わっていくというのもおもしろいものだ。

ショップというのは街のリアル店舗でも、変化を感じさせるために、ウィンドウディスプレイなどを次々に変えている。入り口付近にはワゴンセールが出て、通るたびに違うものが並べられて、新しい印象を与えている。

ネット通販ショップサイトでも、こうした「変化感」を感じさせることは非常に重要だ。デザインの能力がなく、トップページを作り直すのは大変だ、なんて恐れる必要はない。たとえば画像1つ、トップで紹介する商品1つが変わるだけでも良いのだ。また、どこかの背景色が変わるだけでも、「あ、前と違う」と人は思うものである。もちろん、最初1回来てみただけの人には「前と違う」なんていう印象はあるはずもないが、それでも、クリスマスの翌日に訪れてみたら、ちゃんと迎春の準備ができていた、といったショップは、初回訪問者にも良い印象を与えるだろう。

Google Analyticsを使っているなら、各ページの右上にある「アドバンスセグメント」をクリックし、「新規訪問者」「リピーター」にチェックを入れてみよう。そうすればほぼすべてのデータが新規訪問者とリピーターに分けて集計される。どのキーワードが新規訪問者を集めているのか。どのページがリピーターに選ばれているのか、全部わかるのだから非常に便利だ。

リピート訪問者には、決まった行動パターンというものができてくる。サイトの構成が理解できているから、今日もここを見て行こう、というものができるのだ。そうすると、新規訪問者とは次第に見る場所が違ってくる。新規訪問者にリピートを促すためには、リピーターが多く選んでいるコンテンツに気付かせ、その良さを覚えてから帰ってもらうようにしたい。

そういうわけで、新規訪問者を獲得している入り口ページに、リピーターが好むコンテンツを紹介して、その楽しみを伝えることが重要ということになるのだ。

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