身近なトピックで知るダイレクトマーケティング - DM学会コラム

通販 売上高は2008年度で4兆1400億円 ~JADMA発表にみる通信販売の伸びと問題点

日本通信販売協会によると、2008年度の通信販売業界全体の売上高は4兆1,400億円

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タイトル画像:身近なトピックで知るダイレクトマーケティング

ダイレクトマーケティングは、マーケティングの手段の1つであって、特別なことではありません。企業と利用者は、メディアを介して直接関係性を持ち、速いスピードでのコミュニケーションが可能です。インターネットの登場により、ダイレクトマーケティングはメインストリームになっています。

このコーナーでは、日々進化するダイレクトマーケティングを、身近なトピックを題材に、「所長K」と「スタッフS」の掛け合い形式でわかりやすく紹介します。

スタッフs

スタッフS
都内一人暮らし、アラサー世代。ダイレクトマーケティングの知識はないが、ネット通販はかなり活用している。素人ならではの新鮮な発想と鋭いツッコミがウリ。

所長k

所長K
DM学会の本部理事を務めるかたわら、セミナー講師、執筆も行う業界プチ有名人。豊富な知識、巧みな話術、懐の深さで、通販その他企業からの人望も厚い。

通販業界の市場4兆円ってどれくらいの大きさ?

(社)日本通信販売協会(JADMA)が、2008年度の通信販売業界全体の売上高を発表しましたね。2008年度の通信販売業界全体の売上高は4兆1,400億円ということでした。4兆という市場規模は、小売の中ではどれくらいの規模なんでしょうか。

通信販売売上高の推移(1999~2008)
※2008年度(2008年4月~2009年3月)の通信販売業界全体の売上高(推計)は4兆1,400億円で、調査開始以来の最高額。前年度(3兆8,800億円)からは2,600億円の増加(伸び率は6.7%)。
※上記業界全体のうち、日本通信販売協会会員社の売上高は2兆9,000億円で、対前年度5.1%の伸び。うち上位10社の売上高は、おおよそ1兆2,600億円で、会員社全体の売上高の 43.4%を占める。
(社)日本通信販売協会が8月20日に発表したプレスリリースより。

19年度の商業統計によると、小売全体の販売額は約133兆円。業態別に見ていくと、ホームセンターより大きいね(表1)。

表1
業態売上高伸び率(前年比)
スーパー13兆1,703億円※2-4.8%
コンビニ7兆8,566億円※16.7%
百貨店7兆3,813億円※1-4.3%
ドラッグストア5兆2,336億円※25.4%
ホームセンター3兆9,091億円※2ほぼ横ばい
※1 コンビニ、百貨店は20年1月~12月の売上高
※2 スーパー、ドラッグストア、ホームセンターは20年4月~21年3月の売上高
出典はそれぞれ、スーパーは日本チェーンストア協会、コンビニは日本フランチャイズチェーン協会、百貨店は日本百貨店協会、ドラッグストアは日本チェーンドラッグストア協会、ホームセンターは日本DIY協会調べ。

本当だ!通販は、ホームセンターの市場規模を超えているんですね。対前年度の伸びも6.7%と、コンビニと同じくらいですね。

リーマンショック以降、消費不況が続いているけど、通販は伸びているね。モノ離れが進んでいる中、6.7%の伸びというのは上出来だと思う。

通販が好調な理由は何でしょうか?

何といっても、インターネットの貢献が大きいね。テレビショッピングも含め、通販が多様化したことが一因だろう。もう1つは、健康食品や化粧品、一般食品の好調による。JADMAの会員社の取扱商品の内訳を見ても、ウエイトが高いのは上位3つなんだ。

取扱の割合では、健康食品、化粧品、一般食品がベスト3というわけですね。なぜなんでしょう?

この3つは、通販に向いているリピート商品なんだ。家具や衣料品は、一度買っても、次にいつ買うかわからない。だけど口紅なら、気に入れば毎月買う。食品もそうだね。単価は安いけど何回も買うので、お客さんがアクティブになりやすいんだ。

あとは商品の特性も関係している。健康食品や化粧品は、情報商品なんだ。店頭で説明するよりも、通販の方がより多くの情報を伝えられる。情報化時代を先取りしているのが通販かもしれない。店舗は、カバーできるエリアがある程度決まっている。通販は、日本中どこに住んでいる人でも、買おうと思えば買えるしね。

なるほど。ところで、先ほどのプレスリリースによると、JADMA会員社の売上高は2兆9,000億円で、その上位10社が会員社全体の売上高の43.4%を占めている(約1兆2,600円)ということですが、これは集中しているんでしょうか? してないんでしょうか?

実はここ数年、上位10社の比率は下がっている傾向にある。なぜかというと、どんどん裾野が広がっているからなんだ。通販というのは、資本がなくても、広告を出せなくても、インターネットががあればできる。大きくなる事業者は一部だけど、裾野が広いことが通販の特色だと思う。一部の大きな企業もあるが、それよりも、小さな会社がたくさん出てきて、裾野が広がって、全体が伸びている。その証拠に、JADMA会員社489社のうち、半分以上の289社は売上が10億円未満の会社なんだ。

小さな資本で大きく成長できる可能性がある、夢が持てる業態ということでしょうか?

ただ、大きくなるのはアマゾンや楽天など一部の企業なんだよね。もちろん、大きくすることを狙う企業もあっていいんだけれども、そうじゃなくて「小さくてもいい、何十億の売上でもいいから専門的な深い品揃えをして、お客さんに支持される店を作る」というやり方もある。何百億、何千億とはいかないけれども、それはそれで成り立つというのが通販の特色じゃないかな。

たとえば、私が今から通販会社を立ち上げたとして、上位10社に食い込むような下克上的なことって、通販では起こりますか?

その時に大事なのは、他社がまねできないキラープロダクトやサービスを持つこと。つまり、差別化できるサービスなり商品をきちんと持っているかどうか。それにかかっている。それが成功したのがアマゾンだったり、やずや、再春館だろう。

でも、言うは易しで、実際にはなかなかできない。セサミンというキラーコンテンツを持つサントリーも、これから第2のセサミンを作ろうとしても簡単ではない。

通販では、次のキラープロダクトをどんどん切り替えていかないといけないんでしょうか?

「とらやの羊羹」くらいになれば替えなくてもいいかもしれないけれども、通販はまだ老舗になってないよね。時代の変化、お客さんの嗜好の変化を汲み取っていかなければ、どんなキラープロダクトであっても陳腐化してしまうのが実態だね。

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