身近なトピックで知るダイレクトマーケティング - DM学会コラム

ネット通販って、利用者も企業も幸せにするの?(後編)

ネット通販は不況知らず……でも、利用者側に良いことばかりではない?
タイトル画像:身近なトピックで知るダイレクトマーケティング

ダイレクトマーケティングは、マーケティングの手段の1つであって、特別なことではありません。企業と利用者は、メディアを介して直接関係性を持ち、速いスピードでのコミュニケーションが可能です。インターネットの登場により、ダイレクトマーケティングはメインストリームになっています。

このコーナーでは、日々進化するダイレクトマーケティングを、身近なトピックを題材に、「所長K」と「スタッフS」の掛け合い形式でわかりやすく紹介します。

スタッフs

スタッフS
都内一人暮らし、アラサー世代。ダイレクトマーケティングの知識はないが、ネット通販はかなり活用している。素人ならではの新鮮な発想と鋭いツッコミがウリ。

所長k

所長K
DM学会の本部理事を務めるかたわら、セミナー講師、執筆も行う業界プチ有名人。豊富な知識、巧みな話術、懐の深さで、通販その他企業からの人望も厚い。

ネット通販は不況知らず……でも、利用者側に良いことばかりではない?

この消費不況が起こっているなかで、EC市場は順調に伸びているんだ。楽天は2008年12月期の経常利益は過去最高を記録したし、「Yahoo!ショッピング」も同年12月の取扱高が過去最高となった。ネット通販は不況知らずという感じだけど、それだけ利用が多いということだね。

その理由としては、今までネット通販を利用していなかったシニア世代の方が入ってきているというのが要因だし、品目によっては、他では買わないがネットで買うという人もすごく増えている(図表A)。利用者は消費を刺激されて、買う額が増えているということの現れだね。

品目別購入場所 出典:(社)日本通信販売協会「第15回 全国通信販売利用実態調査報告書」
図表A 品目別購入場所
出典:(社)日本通信販売協会「インターネット通信販売利用実態調査 報告書」

私も、基礎化粧品や演劇のチケット、航空券なんかはネットでしか買いませんね。

そうだろう。ただ、ネット通販は、お客さんにとっては良いことばかりではないかもしれない。アマゾンが代表例だが、これまで店頭では、「この商品を買っている人はこれも買っている」という情報を知ることはできなかった。しかし、ネットにはレコメンド機能があるので、書籍を買うときにも、つい関連書籍をクリックしてしまう。特に本やCD、趣味用品、嗜好品の衝動買いは多いだろう。洋服でも、トータルコーディネートの販売がしやすい。店頭での購入方法とあきらかに違うんだ。

お客さんが満足することは良いことなんだが、単純に消費額が増える1つの要因にもなっているね。

ネットでは、「買っている」という実感が薄いですよね。

そう。リアル感がない。図表Bでもわかるように、ネットはカード決済の比率が高いため、良いなと思ったら簡単に注文できてしまう。店で実際に商品を手にとって、「これどうかな」と考えるのに比べ、ネットでは情報のみがたくさん出てきて、次々にレコメンドされるため、計画的な買い物ができにくいという面もある。

直近に利用した媒体別 直近の支払い手段(%)
図表B 直近に利用した媒体別 直近の支払い手段(%)
出典:(社)日本通信販売協会「第15回 全国通信販売利用実態調査報告書」

私は、ネットで洋服を買うときは、いくつかの条件をクリアしたものでないと買わないようにしています。クチコミの評価が良いとか、3,900円以下のものだとか。「買わない」のが普通の状態で、「買う」こと自体がレアケースだと考えないと、情報が溢れすぎていて、際限なく買ってしまうことになりかねませんから。あとは、服が欲しいと思ったとき以外はメルマガを開かないようにしています。

気軽に買えてしまうので、君のように自分でハードルを決めることも必要だね。

でも、初めは失敗も多かったですよ。「3日間限定! 50%オフ!」なんて書いてあるとつい買ってしまって。試行錯誤のうえ、今のやり方に落ち着きました。

失敗や後悔という学習効果によってそうなった。おそらく、そうではない人もたくさんいるだろうね……。

先ほど話に出た、シニアの方やネット通販初心者の方も、きっと最初は失敗が多いでしょうね。

明治大学の上原先生も言っていることだが、知らなければ消費に結びつかないはずの商品の情報を、ネットによって簡単に知ることができるので、これまで買わなかったようなもの、なくても困らないものまで買ってしまう。知らなければそれで済んだのに。一番変わったのはそこだろう。

それは企業にとってはメリットですね。

店舗では、限られた棚の中で陣地取りをしていて、どんなに大きな専門店でも旬の商品しか置けない。それに対してネットでは、店の棚に並ばないような商品まで可能性が広がったからね。

ネット通販の「買いやすさ」は、利用者にとってマイナスだとまではいわないものの、気をつけないといけない点だとはいえるだろうね。

企業側のマイナスとは?

楽天、Yahoo!ショッピングの好調でわかるように、ネット利用者はモール利用率が高い。2008年に入ってから利用したネット通販サイトを聞いたところ、1位は楽天(75.7%)、2位はアマゾン(49.3%)だった。それに対し、ニッセン、ベルメゾン、セシールなどの独自サイトはかなり差をつけられている。ネットユーザーの3/4は楽天、1/2はアマゾンを利用している中で、大手通販企業でも、多くは1割以下という結果だ(図表C)。

2008年に入ってから利用したインターネット通販サイト 出典:(社)日本通信販売協会「インターネット通信販売利用実態調査 報告書」
図表C 2008年に入ってから利用したインターネット通販サイト
出典:(社)日本通信販売協会「インターネット通信販売利用実態調査 報告書」

これは、2008年に入って利用したショップの調査なので、モールは店舗が多い分、この調査では有利なんじゃないですか?

そうだね。当初、アマゾンは書籍の販売から出発したが、最近はモール化しているね。ヤフー、楽天、アマゾンは、小売全体にインパクトを与えている。楽天やヤフーのモールの中で選ぶというのは、お客さんにとって安心感があるからだろう。データからも、完全にモールが定着していることがわかる。

通販企業は、楽天やヤフーが出てくる何十年も前から通販をやっているわけだが、ネットは、自分で情報を検索して、価格が一番安いところ、送料が無料のところなど、横串で比較できる。今までのカタログ通販は、カタログの中でしか商品を選べないから、同じ「通販」といってもネット通販のビジネスモデルは既存のカタログ通販のものとまったく違うといえるね。店舗と通販以上の差があるんだ。

店舗とカタログ通販の違いより、カタログ通販とネット通販の違いの方が大きいということですか?

そう。店舗もカタログも、基本的にはその店舗やカタログの中でしか選択肢がない。だからお客さんはカタログ通販とネット通販を別物として捉えているんだと思う。

通販会社がネット通販をやるときに難しいことは、たとえばモールに出店すると、利用者はそのショップではなく大手モールから買っているという意識になること。楽天に出店している約2万7千店舗のうち、名前を覚えてもらっているショップはほんのわずかだろう。僕もそうだが、一度利用したお店を覚えていないんだ。(社)日本通信販売協会で行ったネット通販調査でのグループインタビューでも、どのショップで買ったか聞くと、大手モールの名前を挙げる人がほとんどだった。

モールの場合は、最初からその店は1回だけのつもりで買うことが多いので、次にまた同じものを買いたいと思ったときに、苦労することがあります。

そう、企業も困るんだ。継続して買ってもらいたいのに、お客さんの意識としてはショップブランドの認識がない。楽天の規約で、顧客情報はショップには渡さないことになっているので、楽天を通さないとメールが送れない。

通販会社は、土地もないし建物もないので、顧客リストが財産だ。良いお客さんをどれだけ抱えているかが財産のはずなのに、モールに出店すると自社の顧客リストが持てない。つまり商品供給だけしているということだ。だから利用者もショップの名前を覚えない。モールの中で欲しい商品名を検索するとずらずらっと出てくるうちの1つだという認識しかない。

自社でやっていれば、継続してお客さんに案内を出すことができる。特にダイレクトメールは、お客さん側でアクションをしなくても送られて来るものなので目に入るからね。

そう聞くと、楽天のような大手のモールは悪い存在のように思えてしまいますね。

通販会社にとってはある意味で悩める(?)存在なんだが、でもね、地方の食品業者やメーカーにとってモールは救世主なんだ。有名な話だが、海外製の安いタオルや100円ショップのタオルはなどに押されて倒産寸前だったある地方のタオルメーカーが、2007年の暮れに楽天に出店した。当初は月商60万円だったが、楽天のECコンサルタントのサポートもあり、去年の7月は2,500万円を売り上げた。こういうタイプの会社は、商品供給型で、通販をしているとは意識していない。楽天は、こういった人たちの集合体なんだと思う。

通販会社が楽天に出店する場合と、メーカーが出店する場合では事情が違うってことですね?

そうだね。件のタオルメーカーは、通販会社をやりたかったのではなく、売上・売り場が欲しかったんだね。

消費者にとっては、さっき言った衝動買いの問題はあるにしても、こういったメーカーが売り場を手に入れることで、購買の選択肢がどんどん広がるというのは基本的に歓迎すべきことだ。

次回は、ネット時代に企業がどう考えてどう行動するべきかについて話そう。

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