読むだけでプレゼンがうまくなる本

「利き脳タイプ」ハーマンモデルという分析法

読むだけでプレゼンがうまくなる本

ビジネス社会で働いていれば、プレゼンの機会があり、そしてそこに挫折はつきもの。このコーナーでは『読むだけでプレゼンがうまくなる本』から抜粋した、“失敗しがちだったプレゼンにちょっとしたことで強くなれるヒント”を紹介していく。

人には誰でも「利き脳」がある

さっそくですが「利き脳」について紹介しましょう。「利き腕、利き手」とは、よく働き、力の出るほうの腕を指し、生まれつきや習慣で人により左右の違いがあることは、よく知られています。また、わたしたちは無意識のうちにどちらか得意なほうの「利き目」をよく使っています。同様に、得意不得意や好き嫌いなど思考の特性で、「利き脳」が存在しています。

各個人の「利き脳」を測定するハーマン脳優勢度調査(Herrmann Brain Dominance Instrument)をベースに、個人や組織の思考様式を定量化し、個人の能力開発や組織の創造性開発を支援するシステムに、「ハーマンモデル」というものがあります。このモデルは、アメリカGE(ゼネラル・エレクトリック)社のマネジメント教育の責任者であったネッド・ハーマンによって開発されました。

ハーマンは、GE社の社員教育の責任者だった際に、「研修会に出席しているマネージャたちは同じ教育プログラムで研修しているのに、正反対の研修効果が出るのはなぜか」「個々人のキャリアと仕事に即した研修プログラムを開発するにはどうしたらよいか」と考えました。こうしたハーマン自身の好奇心から研究が始まり、体系化されたのがハーマンモデルです。今では世界の多くの企業で、個々のスキルアップやキャリアプラン、職場のコミュニケーション向上、チームビルディングなどに幅広く活用されています。

ハーマンモデルの考え方はこうだ

ハーマンモデルとは、「ロジャー・スペリーの右脳・左脳モデル」と、「ポール・マクリーンの三位一体型脳モデル」という2つのモデルを統合し、構築されました。

左脳は言語脳とも言われ、論理的、理性、部分的、直列処理をつかさどることが一般的に知られています。それに対する右脳は、イメージ脳とも言われ、直観的、感性、全体的、並列処理をつかさどっています。これが、「ロジャー・スペリーの右脳・左脳モデル」です。

一方、「ポール・マクリーンの三位一体型脳モデル」は、人間の脳は、歴史的な発達の過程から「爬虫類の脳」「辺縁系」「大脳新皮質」の3層から構成され一体となって働くというものです。なかでも思考に関する重要な部分は、大脳新皮質と辺縁系(大脳新皮質の内側)だとされています。

ハーマンモデルは、これら2つの理論を統合し、ホールブレインモデル(全脳モデル)を構築しました。すなわち、人間の脳は大脳新皮質の左右半球と辺縁系の左右半球の合計4つのパーツで構成され、それぞれ異なる機能を持っているという仮説です。

大脳新皮質の左側をA、辺縁系の左側をB、辺縁系の右側をC、大脳新皮質の右側をDと呼んで、脳の4象限モデルを割り振ったものがハーマンモデルです。

図:ハーマンモデル(脳の4象限)
図3-2-1 ハーマンモデル(脳の4象限)
©ハーマン・インターナショナル・ジャパン 2008
「ロジャー・スペリーの右脳・左脳モデル」と「ポール・マクリーンの三位一体型脳モデル」をもとに構築された「ハーマンモデル」。A、B、C、Dの4象限で分析できる

自分の「利き脳」を知るための手がかり

論理的な成り立ちはさておき、まずは次の言葉の中から「自分の考え方に近い」ものや「自分の思考を表すものとしてふさわしい」と思うものをピックアップしてみてください。

技術的   緻密な   友好的   概念的

ハーマン脳優勢度調査では、たくさんの項目を選んで解析結果を提示しますが、ここでは、1つの用語だけをサンプルとして選んで解説してみます。

技術的これはA象限に属する描写語です。A象限では、論理的でシステマチックな知的処理が行われ、事実や数字、統計など目に見えるものを重視します。また、データの裏付けがあり、先例のある結論を好みます。

緻密なこれはB象限に属する描写語です。B象限では、実践や手続きを重視し、能率や秩序、規律への傾向を表し、課題をシステマチックに順序立てて処理完遂します。時間は有効的に管理されます。

友好的これはC象限に属する描写語です。C象限では、ムード、雰囲気、態度を重視し、感受性があり、受容的です。人間に関心が高く、自己表現が上手です。

概念的これはD象限に属する描写語です。D象限では、メンタルなインプットを同時にすばやく関連付けることができ、抽象的な概念を心地よく感じます。また、問題解決には初めから全体的なアプローチをとります。

このように、4つの各象限にはその機能を特徴づけるキーワード(描写語)があり、このキーワードを手がかりに、どの象限をよく使っているか、つまり、「利き脳」はどこなのか、おおむね推測できます。自分の「利き脳」だけでなく、気の合わない上司や部下の「利き脳」も知りたくなりませんか。

図3-2-2は、ハーマン自身のプロフィールを表したものです。ハーマンモデルは、論理的な思考より、むしろ想像力などを源泉に開発されたのかもしれません。

図:ハーマンモデルにおける4象限のキーワード
図3-2-2 ハーマンモデルにおける4象限のキーワード
POINT

ハーマンモデルでは「技術的」「緻密な」「友好的」「概念的」の4象限で人のタイプを知ります!

書籍『読むだけでプレゼンがうまくなる本』表紙

この記事は、書籍『読むだけでプレゼンがうまくなる本』の内容を、Web担向けに特別にオンラインで公開しているものです。

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  • 『読むだけでプレゼンがうまくなる本』
  • ISBN: 978-4844326038
  • 1,449円(税込)
  • 藤木俊明・今津美樹(著)
  • 株式会社インプレス
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