初代編集長ブログ―安田英久

バカと暇人をさらに細分化できてこそWeb人ではないかと ~Web担/日経BP/MarkeZine連動コラム

Web担と日経ネットマーケティングとMarkezineの連動コラム。今回のテーマは「最近特にメディア環境が変わっていますが」。
Web担のなかの人

このコラムは、Web担当者Forumと「日経ネットマーケティング」「Markezine」各誌の編集長が、毎回共通のテーマでネットマーケティングを語るコーナーです。

第10回のテーマは「最近特にメディア環境が変わっていますが」です。

他誌編集長のコラムも同時に公開されていますので、併せてご覧ください。

今回のお題「最近特にメディア環境が変わっていますが」で当初考えていた話題は、デジタルサイネージ(電子看板)が盛り上がってきているとか、モダンブラウザのバージョンアップが続いているとか、マイクロソフトがBingで本腰を入れるいっぽう日本ではaskが一般向け検索から撤退とか、ドコモがiモードブラウザ2.0でモバイル閲覧環境が充実とか、そういったものでした。

でも、ちょっと広い視点でのメディア環境の変化を論じてみましょう。すでに、消費者の生活のなかで、ネットやケータイやその他デジタル媒体が本格的に入り込んでいます。その状態に対して、企業がどう対応するべきかという視点です。

既存のメディア環境を前提とした組織構造を見直そう

企業にもよりますが、広報部がメディア経由でのパブやプレス対応をし、マーケティング部が広告費を使って宣伝をして、営業部が販促をして、カスタマーサポートセンターが消費者からの問い合わせに対応するというように、どの部署がどんな人に対応するかが決まっていることが多いのではないでしょうか。

しかし、世の中の情報の流れが変わった現在、その組織構造は正しいのでしょうか?

ブログなどを通じたクチコミ促進は広報なのでしょうか? 広告なのでしょうか?

Web経由の問い合わせ対応はWeb担当者がするべきなのでしょうか?

アフィリエイトは販促費ですが、どの部署が対応するべきなのでしょうか?

企業ブログの内容に広報はどうタッチするべきなのでしょうか?

少なくとも、Webまわりを担当する部署が既存の組織ツリーに新しく追加されて、他の部署と並列の権限で活動している限りは、上記のようなさまざまな問題が出てくるでしょう。

では、消費者に対して発信するメッセージやそのテイストをどのチャンネルでも同じになるようにして、費用や素材の効率的な利用をするにはどうしたらいいのでしょうか?

ひとつの解決策としては、ネットをチャネルの1つとしてとらえ、ネットを前提とした経営判断をできる人を、CWO(最高ウェブ責任者)として明確にし、その人に権限を与えることでしょう。CWOまでいかなくても、取締役直轄の組織としてWebまわりを統轄する部署を作り、各部署にウェブ関連の担当を配置して連携させるだけでも、企業活動をネットを前提としたものにしていけるのではないでしょうか。

少なくとも、大きな権限を認められていないヒラのWeb担当者が、企業Webサイトの戦略策定から目標設定を行い、全体戦略が示されないまま関連部署との調整まで行わなければいけない状況というのはおかしいですよね。

顧客像のさらなる明確化を

この世の中、商品やサービスやメッセージは、ちゃんと出したら何とかなると思っている人がまだまだ多いのではないでしょうか。

でも考えてみてください。総務省による2006年度の情報流通量を見ると、消費情報量の4317倍もの選択可能情報が流通しているのです※1。ちなみに、1996年度には選択可能情報量は消費情報量の15.2倍でした。

 選択可能情報量消費情報量比率
1996年431pw28.4pw15.2倍
2006年229000pw53.1pw4317倍
※pwはペタワードを表す

どう考えても、流通している情報の量が多すぎます。すでに世の中には、「情報は出すだけでは触れてもらえない」状況が存在していて、「アテンション争奪戦」が繰り広げられているのです。

これだけ多様な情報が大量に世の中に出て、消費者の趣味嗜好が多様化した現在、大昔にあった山口百恵やピンクレディーやひょうきん族のような「みんなが知っていてみんなが夢中になっている」ブームが出てこないのも当然ですね。「マス」としてとらえられる範囲がまったく変わってしまっているのです。

すでに、どんな顧客のどんなニーズにどう応えるのかを明確に設計しなければ、自社のメッセージが相手に届かない時代になっていると考える必要があります。

10年前のIT系出版社では、企画書に「対象読者像は○○に興味のある人」と書かれていてもOKでした。しかし今では、読者像を明確にしなければ売れない時代になってしまっています。ビジネス経験がどれくらいあり、技術に対するモチベーションがどれくらいで、業務のどういった側面でそのテーマに関する書籍を必要とするのか、書籍に関する情報はどうやって入手するのかといった読者像を明確にして、場合によっては書籍シリーズ向けにペルソナを明確に作るくらいの勢いで企画を設計しなければいけない時代なのです。

ウェブにいるのは「バカと暇人」だと言われています。でも、実はその「バカと暇人」というとらえ方も昔ながらのマス的なターゲット像なんですよね。「普通の人」もさまざまなニーズや環境があるのですから。「バカと暇人」をさらにセグメント化して顧客像を明確にするくらいの姿勢がないと厳しい時代なのではないかと感じます。

※1 総務省が2008年3月に発表した「平成18年度情報流通センサス報告書」の図8「情報流通量等の推移」を元に算出。ただし、図26「消費情報量のメディア構成」を参考に、10Gbps線の普及で大きく伸びた専用サービス(データ伝送)による消費情報量(全体の99.2%の97.9%=97.1%)を除外している。
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