ポイントを押さえて安くする――プロが教える見積書7つの極意(4)~(7)
[特集] 安く! 早く! を実現するサイト制作の発注マニュアル
賢い発注のやり方&失敗するやり方 制作会社とのうまい付き合い方教えます
賢く! 安く! 発注するために知っておきたい見積もりチェック術
プロが教える見積書7つの極意
見積もりを依頼するときや、見積書をチェックするときの注意点を示す「プロが教える見積書7つの極意」。
7つの極意の前半については、ここまでの記事で紹介した((1) (2) (3))
この記事では、7つの極意の後半として、(4)~(7)を一気に紹介する。主に「いかに安くあげるか」を、うまく実現するためのノウハウだ。相場に関しては「○○円ならどこまでできる!? ウェブサイト制作の相場早見表」も参考にしながら読んでほしい。
極意その4
チェックポイントを見抜く
品質・スケジュール・予算のバランス
見積もりというとどうしても「値段」にばかり目が行ってしまいがちだが、見積書で確認すべきは、「品質」「スケジュール」「予算」の3つのバランスが取れているかである。これらは、それぞれ互いに影響し合うため事前に認識しておいた方がいい。
「品質」はレベルの設定で決まるものだ。品質と言うとわかりづらいが、要は一般的な基本機能や汎用技術では実現できない、特別な付加機能や自社専用のカスタマイズをどの程度までやるか、ということだ。デザインにおいても同様に、変形レイアウトや、特殊な動きをするFlashを採用するなど、どこまでデザイン性を追求するかということだ。
その設定レベルによっては、付加機能やカスタマイズを必要としないこともしばしばある。よほど変わった目的のサイトでない限り、特別なカスタマイズが本当に必要なのは1〜2か所ぐらいのものだ。それ以外のところは「ウェブサイトの標準形」をほぼ踏襲している。これらの必要以上に余計なこだわりを抑えることで、スケジュールを短くし、予算を安くすることが可能になる。そのため、目的と目標を達成するために絶対に譲れない品質はどこなのかをしっかり把握しておく必要がある。
次に「スケジュール」だ。見積もりの段階ではとかく制作会社の工程のスケジュールを確認しがちだが、重要なのは自社内の対応スケジュールの方である。納品目標は、発注する会社の都合によって決められたリリース日を目標に設定されるが、延期される場合が多々ある。見込みが甘く、発注した作業だけで終わらないこともあるが、発注側が準備や決断にかける時間が、見積もりしていた以上にかかってしまうというわけだ。発注者の都合で大幅にスケジュールが延期されると、追加コストが発生するため注意が必要だ。
最後に「予算」だ。できるだけ安くしたい気持ちは当然である。しかし、ウェブサイト制作の現場を知る者として言わせていただくと、「相場以上に安くなるということはほぼない」と言っていい。相場を知った上で、適切な予算からスケジュールと品質を逆算するのが賢明である。予算については、作業中に工程が増えたりスケジュールが延びたりして、確定見積書の額を上回ることがほとんどだ。できるなら確定見積書の予算額を、最終予算総額の80%ぐらいに抑えておき、バッファを持つといい。
極意その5
ポイントを押さえて安くする
発注する側としては、コストはできるだけ少なくしたいというのが本音である。そこで「安かろう悪かろう」に陥ることなく見積もりを下げるために、発注者側ができる施策をいくつか紹介しよう(表1も参照)。
- 見積もりを依頼する際に、不確定要素を減らすため、より具体的な情報を提供することだ。変更リスクの上乗せがなくなるので、実際の作業価格に近づく。
- 機能改修や修正依頼の場合は、作業をグロスでまとめてグロス発注と、管理の手間が減るのでその分安くなる。
- できるだけカスタマイズは少なくしたい。もし制作会社の手がけた過去案件でテンプレートがあれば、流用してもらい工数を減らせないか聞いてみよう。
- CMSサイト構築やリニューアルの場合は、コンテンツ移行などを自社内の人間に割り振ってやると、移行費用はかからない。
単発発注よりは長期的な制作・保守契約を結べば、制作会社にとっては長期的な仕事が見込めるので、多少勉強してもらえるかもしれない。
「レベニューシェア」といって、サイトの制作を請負ではなく共同事業契約にして、実際の収益に応じて取り分を分け合う形も最近では出て来ている。収入が見込める物販サイトの場合は検討してみてもいいだろう。
どうしても予算内に収めたいというときには、これらの提案をしてみると良いだろう。ただし、「骨組み」にかけるコストだけは絶対に減らしてはいけない。骨組みというのは、ECサイトなら商品のページやカテゴリページ、コンテンツサイトならナビゲーションやアーカイブ機能など、サイト制作の目的を達成するために絶対はずせない標準機能のことだ。ここを変にケチると、後で必ず付けが回ってくるだろう。記事、コンテンツ制作は後回しにしても、骨組みだけはしっかりと作っておきたい。
- 不確定要素を減らすため、より具体的な情報を提供する
- 機能改修や修正依頼の場合、作業をまとめる「グロス発注」を行う
- カスタマイズ機能を希望した場合、必要以上の過剰仕様でないか確認する
- 過去案件でテンプレートがあれば流用してもらい工数を減らす
- CMSサイト構築の場合、コンテンツ移行作業などを自社で負担する
- 単発発注でなく長期的な制作・保守契約を結ぶ
- レベニューシェアによる共同事業契約にする
極意その6
相場との対比を見極める
相見積書が手元にそろったら、各社の制作実績と見積もり額のバランスが適切か、見積額が相場と比べて極端に高かったり低かったりしないかチェックしよう。たとえば、相場の50%以下の値段を提示することは通常考えづらい。相場より50%以上安い会社は除外してもいい。
同じ作業でも、頼む制作会社によって料金は違う。大手や有名な制作会社になればなるほど作業料金は高くなる。適切な賢い発注をするために、制作料金の相場は知っておく必要がある。ここでは受け取った見積書をチェックするポイントを紹介しよう。
見積書確認のチェックポイント
まずチェックするポイントは作業項目。「ウェブサイト制作一式」となっている場合は要注意だ。作業項目が細かい項目に落とし込まれていない「一式」では、具体的にどういう作業を行うのかが、見積書を見ただけではまったくわからない。ウェブサイト制作は細かい作業の集まりである。工程や価格の妥当性のチェックは個々の作業ごとに行わなくてはならない。「一式」で出されていたら、具体的な作業項目を明記してもらうようお願いしよう。作業ごとに項目がきちんと設定されていたら、単価、値幅、付帯条件が書いてあるかどうかを確認しよう。
作業項目ごとの単価だが、作業によっては難しいものとやさしいものが混在している場合がある。たとえばコンテンツ移行の場合は、コンテンツの分量が多いと当然時間がかかるし作業も複雑になるが、分量が少なければそれほど手間のかかる作業ではない。そこを考慮して、多い場合と少ない場合で段階が設定できる作業に別単価が設定されていれば、それだけコストダウンが図れる。またそういう設定をしているということは、その会社が作業管理を精密に行っていることの証しでもある。
見積書の下の方に注意書きがあるときは、ここもきちんと読むようにしたい。制作を進めるうえで、重要な情報が書かれていることもある。しかし、この注意書きが度を越して多い場合は要注意だ。実際に制作を始めたときに対応に柔軟さが欠けている可能性がある。ごく稀ではあるが追加料金が発生することもある。不可解な点があれば遠慮なく尋ねるようにしよう。
見積もり額が相場より安い場合
見積書の形式は会社によって違うため、細かい点の比較がおざなりになり、値段の第一印象に左右されがちだ。格段に安い場合は、何がなぜ安いのかを冷静に判断してみよう。依頼に対して必要な作業が抜けていないか? 作業の数量が少なくなっていないか? その他の納得できる理由があるか? 会社の規模が小さいので安いのか? 作業効率がいいので安いのか? 制作会社の技術的制限が影響して安いのか(デザインが苦手など)?
見積もり額が相場より高い場合
規模の大きな会社やネームバリューのある会社の見積もり額は総じて相場より高くなる傾向にある。依頼した範囲以上の作業が入っていないか、作業の数量が見込みより多くなっていないか確認してみよう。高ければ必ず作業が丁寧で質が良いとは限らないので、高くなってしまう理由に納得できるかが重要なポイントだ。
極意その7
見積書からノウハウを盗む
良い制作会社の見積書は独自のノウハウの宝庫である。見積書に頭を使っている形跡が見られる制作会社は良い仕事をしてくれる確率が高い。たまにお客様から他社の見積書も見せていただくことがあるが、良い会社の見積書からは教わることが多い。
とは言え、見積書を見ればその会社のすべてがわかるわけではない。個人的には見積書は仕事をするうえでの重要なコミュニケーションツールだと考えている。気にかかる点があれば、遠慮せず気軽に根拠や理由を聞いてもかまわないと思う。高い安いなど、値段だけにあまり振り回されず、いいパートナーシップを築ければ、きっと見積書に書かれている内容以上の満足を得られるはずである。
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