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大正製薬とサントリーウエルネスの係争、法廷の争点は「競合」に当たるか否か――。訴訟の詳細を解説② | 通販新聞ダイジェスト

2 years 6ヶ月 ago
3編にわけて解説する、大正製薬とサントリーウエルネスの係争の2編目。係争に至るまでの経緯はどのようなものだったのか? 詳細を解説する【第2回】

大正製薬の主張はなぜ退けられたのか(※編注:大正製薬によるイメージキャラクターの起用をめぐる訴訟について、東京地裁、高裁ともに同社の主張を退けた)。背景には、「健康食品」カテゴリーをめぐる大正製薬とハットトリックによるプロ野球の契約更改並みの「銭闘」があった。

編注:大正製薬による、イメージキャラクターの起用をめぐる訴訟とは?

プロサッカー選手の三浦知和選手を自社のイメージキャラクターとしていた大正製薬。三浦選手の広告出演管理を行うハットトリックと広告出演契約を結んでいた。これを踏まえて、錠剤の健康食品サプリメント「リポビタンDX」の広告出演を打診したところ、ハットトリックは拒否。大正製薬との契約書には「錠剤」の規定がなく、すでにサントリーウエルネス(以下、サントリー)の「セサミンEX」の広告に出演させる決定をしたことが理由だった。大正製薬は21年1月にハットトリックを提訴するも、東京地裁は請求を棄却。大正製薬は23年1月に控訴したが、高裁も請求を棄却。これを受けて大正製薬はハットトリック、サントリーに対して“怒りの声明”を発表した。

大正製薬とハットトリックの間に何があったのか?

健食新商品の発売計画伝えるも、ハットは契約金に難色

代理店を電通から博報堂に切り替えた20年7月、契約更新の協議は新たに博報堂DYスポーツマーケティングの担当者を加え、「大正製薬→博報堂キャスティング&エンタテインメント→博報堂DYスポーツマーケティング→ハットトリック」の間で行われた。

大正製薬の窓口となる博報堂キャスティング&エンタテインメントの担当者は競合禁止規定の「リポビタンシリーズと同種・類似の商品を対象にした第三者の広告宣伝」を「同種・類似の商品(エナジードリンク、ゼリー飲料、ショットドリンク、健康食品)」に変更すること等を契約金1500万円の増額とともに提案。交渉過程で今後、錠剤タイプの新商品の発売計画があることも伝えられる。

ハットトリックは、すでにゼリー飲料で広告出演があったため、健食以外の追記を了承。「健食」は、「飲料」に新たなカテゴリーを加えるものとして、飲料カテゴリー同様の5000万円の増額が必要と難色を示す。

この間、新たにハットトリックの窓口となった博報堂DYスポーツマーケティングの担当者のもとには、同じグループ会社の大広WEDO担当者からサントリーが三浦知良選手を広告に起用したいとの要望が寄せられていた

ハットトリックの主張は「選手の価値とつり合わない」

交渉過程を、担当者の陳述から振りかえる。まず契約金について。博報堂DYスポーツマーケティングの担当者は、「(ハットトリック担当者から)健食は大きなカテゴリーで、本来であれば8000万円で新たな契約が結べるカテゴリーと聞いた」、「お付き合いのある大正製薬さんなので8000万円とは言わないが、最低でも5000万円の追加は必要と伝えた」、「(ハットトリック担当者は1500万円と言われ)非常に憤慨していた。選手の価値を蔑まれ、馬鹿にされたようだと怒っていた」と証言。

一方、サントリーへの対応は、「(大広WEDOの担当者に)セサミンEXの広告への出演の返答や契約交渉は一切できないため待ってほしい」と伝えたとしている。

大正製薬は「健食枠」の契約は押さえない方向に

こうして金額面の折り合いがつかず、契約は結果的に「『健康食品』の記載なし」「増額なし」でまとまる。その際、(1)新商品の展開が確定した際に改めて契約を打診したい旨、(2)競合他社から広告出演の打診があった場合は連絡が欲しい旨――という大正製薬の意向が伝えられるが、「秘密保持契約の問題から難しい。現時点で『健食枠』を押さえたほうがよい」(博報堂DYスポーツマーケティング担当者)と伝えたという。

大正製薬とハットトリックの交渉経緯
大正製薬とハットトリックの交渉経緯

ハットトリックはサントリーとの契約締結へ

契約締結後、博報堂は、サントリーとの契約交渉を開始。10月に大正製薬から3000万円の増額で新商品の広告出演の打診があったが、「この段階でもまだ値切るのか」(同)と感じたという。こうしてハットトリックは、広告出演を拒否。同年12月、サントリーと契約を結ぶ

始めた法廷で大正製薬は、「健食」の記載に「(シリーズは)錠剤を含むより広い概念であるためとくに問題にしなかった」、「例示として念のため明記を試みたにすぎない」、「ハットトリックは、広告対象になるシリーズは剤型を問わない明確な文言がないことを奇貨として固形の健食が含まれていない趣旨の主張をし始めた」などと主張したが、東京地裁、「それであれば増額の必要はなく、交渉経緯と矛盾する」などと主張を退けた

大正製薬とサントリーは「競合」に当たるか?

大正製薬による訴訟で「健康食品」の記載の解釈と並び争点になったのが、サントリーが競合にあたるかだ。

実際の事業展開でいえば、健康食品と医薬部外品は近接した領域がある。「リポビタンD」を展開する大正製薬は法廷で「セサミンEX」を取り上げ、「疲労回復、予防等と同様の効果を持つ」と訴えた。

リポビタンシリーズの年間売上高は、500億円前後(国内)で推移するが、新商品の契約を袖にされた20年は、前年比10%減。400億円台半ばまで落ち込んだ。裁判資料によると、サントリーのセサミンシリーズは、「DHA&EPA+セサミンEX」「セサミンEX」の2製品で総売上の約4割(20年12月期の実績で約431億円、通販新聞推計)を占める。全般的な健康イメージで市場に浸透するセサミンシリーズを脅威に感じて対抗心をみせる気持ちもわからなくはない。

「セサミンEX」をはじめとするサントリーウエルネスが展開する商品の一例(画像はサントリーウエルネスの自社ECサイトから編集部がキャプチャ)
「セサミンEX」をはじめとするサントリーウエルネスが展開する商品の一例(画像はサントリーウエルネスの自社ECサイトから編集部がキャプチャ)

ただ、法廷で争われたのは、「主力商品(医薬品、医薬部外品)と同種・類似の商品を主として製造販売する第三者の広告宣伝」との出演禁止規定に妥当するか。「セサミンEX」(健食)が「主力商品(医薬品、医薬部外品)と同種・類似の商品」にあたり、サントリーがこれを「主として製造販売する第三者」と言えるかだ。

大正製薬は「競合」と主張

大正製薬は、「商品の機能、特徴だけで競合商品との差別化は困難で、イメージの訴求が広告の重要な役割。(契約では)イメージというややもすればあいまいな概念が重要」と競合であることを主張。規定の趣旨は、選手のファンである消費者が競合他社の商品を購入することによる売り上げ減少の防止にあり、「商品イメージ、売上構成比、市場シェア、広告宣伝費」を考慮して広く解釈されるべきなどと訴えた。

健食と部外品の違いは、「効果をうたえるかに過ぎず、商品イメージに差はないため、医薬部外品との記載は、限定的な意味合いを持たない」とした。

大正製薬の「主力商品」は、リポビタンDXを含むリポビタンシリーズ、アルフェシリーズ(美容ドリンク)、アドライズシリーズ(スキンケア)。サントリーもセサミンシリーズ以外にミルコラ(美容サプリ)やエファージュ(スキンケア、医薬部外品を含む)が主として製造する商品があり、「美容関連」「スキンケア」などの共通項から同種・類似の商品を製造販売するとした。

「リポビタンD」をはじめとする大正製薬の主力商品の一例(画像は大正製薬の自社ECサイトから編集部がキャプチャ)
「リポビタンD」をはじめとする大正製薬の主力商品の一例(画像は大正製薬の自社ECサイトから編集部がキャプチャ)

ハットトリックの主張は「サントリーは競合にあたらない」

一方のハットトリックは、規定は競合製品の範囲を限定する趣旨があり、書かれていたのは、「医薬品、医薬部外品」。また、「主力商品」との文言から、シリーズ全体ではなく個別商品(リポビタンD)を意味すると主張した。アルフェ、アドライズは構成比、市場シェアが低く主力にあたらず、「セサミンEX」も配合物の違いから「同種・類似の製品」にあたらないとした。

陳述でもハットトリック担当者は、「リポビタンD以外は念頭になかった。競合制限の範囲は部外品に該当するドリンクと考えていた」。博報堂DYスポーツマーケティングの担当者も「部外品ではないドリンクを除外する趣旨と理解。アドライズが該当すると聞いたが主力と捉えるのは難しい。そうであれば三浦選手は1カテゴリー8000万円の契約金が相場だから、5000万円以外に8000万円が必要になるはず」と後押しした。

「競合」かどうかの根拠は売上構成比

法廷では、両社の売上構成比を根拠に判断されている。サントリーの総売上高に占める部外品の構成比は2%程度にとどまる。大正製薬の売上構成比(20年)は、リポビタンシリーズが458億円(国内のみ、構成比約20%)、アルフェは約23億円(同1%)、アドライズは約6億円(同0.3%)。

地裁は「『医薬部外品』と明確に区分されることからすると限定されるとの解釈が妥当。サントリーは2%前後に過ぎず、部外品を主として販売していることを裏づける証拠はない」とした。

広く解釈すべしとの大正製薬の主張も「出演制限される競合他社の範囲を画する規定に照らせば、そのような解釈を理解していたとは到底考え難く採用できない」とした。高裁も「部外品にあたらないものの、これと同種・類似する商品は容易に想定しがたく、仮にあり得えてもそれにあたるかの判断は困難。出演制限される広告主の範囲が不当に拡大する」とした。

※次回(第3回)に続く

※記事内容は紙面掲載時の情報です。
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通販新聞

グッデイとカインズ、ホームセンターの同業同士が協業へ。グッデイ店舗でカインズオリジナル商品を販売

2 years 6ヶ月 ago

お客さまのご要望に寄り添った品揃えや良質な商品を提供する思いをホームセンターの垣根を越えて展開できないか――。こんな思いを込めた提案がきっかけで、同業同士の協業が実現する。

九州で64店舗のホームセンター「グッデイ」を展開するグッデイは、カインズのオリジナル商品の取り扱いを開始すると発表した。

前述した思いをグッデイがカインズに提案、協議を重ねた結果、グッデイ店舗にてカインズオリジナル商品の取り扱いを始めることが決まった。

グッデイは、九州で40年以上ホームセンターを展開、地域に密着した品ぞろえとサービスを提供している。カインズは北関東を中心に全国に店舗を展開。2007年からオリジナル商品の開発を本格的に開始している。

今回の協業について、グッデイは次のようにコメントしている。

カインズの経営理念や企業姿勢など、非常に共感するものや学ぶべきことが多く、サービスや商品展開などで新たに協業することは、グッデイとしてさらなる飛躍ができると確信している。今後は、具体的な取り扱い対象商品や取り扱い開始時期・販売店舗の決定などを進めていく。

グッデイのマーケティング責任者がネッ担イベントに登壇

ネットショップ担当者フォーラムが11/21(火)~22日(水)に開催する「ネットショップ担当者フォーラム2023 秋」に、グッデイのマーケティング部長が登壇します。

テーマは「DX+マーケティングで20%成長中の地方企業の“勝ち方”~ホームセンター『GooDay』が実践しているデジタルマーケ+リアル戦略~」。Webから実店舗の来店につなげるなど時代に合わせた戦略推進、適正価格・価値創造を打ち出す基本的なマーケティングなどについて解説します。

イオン、Instagram、伊東屋、ヤッホーブルーイングなど登壇の全50超講演【11/21~22虎ノ門でリアル開催】

4年ぶりのリアル開催。デジタル戦略、ファンベース、SNS活用、OMO戦略、越境EC等ECビジネスの最新トレンド、ソリューションが集結
10/13 11:0190711418
瀧川 正実

楽天グループが始めた最短即日配送の直販EC「楽天即配マート」とは? 配送は日本郵便

2 years 6ヶ月 ago

楽天グループは11月2日、日用品などを最短で注文当日に配送する直販ECサイト「楽天即配マート」を「楽天市場」内に開設した。

まずは東京都内17区を対象に、受注数件数に制限を設けて即日配送を展開。資本・業務提携をしている日本郵便が配送を担い、「ゆうパック」で発送する。

「楽天即配マート」のコンセプトは「日用品が必要な分だけ買えてすぐ届く」こと。生活雑貨や家庭用品、消耗品などの日用品を即日配送する。

東京都内の対象エリア17区(東京都港区、渋谷区、世田谷区、品川区、目黒区、大田区、江東区、千代田区、台東区、中央区、文京区、墨田区、葛飾区、江戸川区、荒川区、足立区、北区)では、午前9時までの注文で当日21時頃までに商品を届けする。

都内17区での即日配送は、手数料300円の「即配手数料チケット」を購入すると利用できる。1980円(税込)以上の購入金額の場合、送料は楽天グループが負担する。

「即配手数料チケット」について(画像は「楽天即配マート」からキャプチャ)

17区以外の東京都内と関東近郊の1都9県では、14時までの注文は時間指定で翌日に配送する。

なお、「当日お届け」「翌日時間指定」で商品を注文して指定日時に届かなかった場合、合計購入金額(税込)5%相当の楽天ポイントを進呈、「即配手数料チケット」の代金を返金する「楽天即配マート専用あんしんショッピングサービス」を設けた。

瀧川 正実

佐川急便が不在持戻りの荷物を郵便局窓口で受け取れるサービス開始/佐川急便が宅配便を平均7%程度値上げ【ネッ担アクセスランキング】 | 週間人気記事ランキング

2 years 6ヶ月 ago
2023年10月27日~2023年11月2日にアクセス数の多かった記事のランキングを発表! 見逃している人気記事はありませんか?
  1. 佐川急便と日本郵便、不在持ち戻りの荷物を郵便局窓口で受け取れるサービスを開始

    佐川急便と日本郵便は、再配達回数の抑止、CO2排出量削減、ドライバー業務の効率化につなげ、宅配サービスの持続可能性を高めていく

    2023/10/27
  2. 佐川急便が宅配便を平均7%程度値上げ、クール便付加料金(140サイズ)は220円アップへ

    佐川急便は届け出運賃の改定について、持続可能な物流インフラの維持と宅配便サービスの品質向上が目的としている

    2023/10/30
  3. 「ボタニスト」のI-neが明かす人材育成ノウハウ。教育を受けたスタッフ2人が話す“マーケター思考”が身に付く仕組みとは?

    I-neが社内で注力している人材育成の施策を聞く連載の最終回。実際に人材育成プログラムを受講している社員2人に手応えや取り組み、さらなる飛躍に向けた今後の構想を聞く

    2023/10/30
  4. 「新・手ざわり感」ってなに? 博報堂の2024年ヒット予想ランキングが発表【ネッ担まとめ】

    ネットショップ担当者が読んでおくべき2023年10月23日~10月29日のニュース

    2023/10/31
     
  5. アマゾンジャパンが「Amazon Flexプログラム」で軽乗用車による配達、プログラム参加要件を拡大

    「Amazon Flexプログラム」では、配達の時間帯も2時間から4時間程度の短い枠も選択できるようにした

    2023/10/30
     
  6. 日本航空が始める旅行商品販売のライブコマース「JALPAK LIVE」とは

    「JALPAK LIVE」では、日本全国各地の観光スポットや文化、地元の宿泊施設、観光施設といった情報をライブコマースで配信し、旅行商品を販売する

    2023/11/1
     
  7. 消費者庁が機能性表示食品の制度改革を提唱する「規格基準型」とは? さくらフォレスト事件に起因する改革案を担当審議官が語る

    消費者庁は機能性表示食品の制度に「規格基準型」の導入を構想している。表現の自由度がダウンするなど懸念事項が多く、業界では注視されている

    2023/11/1
     
  8. 「ふるさとチョイス」のトラストバンク、寄付なしで地域産品を購入できるECサイト「めいぶつチョイス」を開設

    「めいぶつチョイス」の出店・出品の基準は「地場産品を推奨」している生産者や事業者。初期登録費用、月額費用は無料。販売手数料10%のほか、決済手数料が3%前後がかかる

    2023/10/27
     
  9. ECモール「Qoo10」が中古ブランド品+韓国向けの販売を強化。EC事業者は知っておきたいイーベイジャパンの最新動向

    【仮】イーベイのQoo10が中古ブランド通販を強化。若い女性たちに人気の海外ハイブランドをメインに扱い、来年には100販売事業者まで拡大したい意向。

    2023/10/30
     
  10. KDDIグループのECモール「au PAY マーケット」に製品お試しページ開設。「モラタメ」を運営するドゥ・ハウスとの協業で実現

    「au PAY マーケット」を運営するauコマース&ライフは、モール内に顧客がメーカー製品を試せるページを開設した。メーカー商品の認知から購入までを一気通貫にサポートするという

    2023/10/31
     

    ※期間内のPV数によるランキングです。一部のまとめ記事や殿堂入り記事はランキング集計から除外されています。

    藤田遥

    大日本印刷、VaticAIとクッキーに依存しない広告

    2 years 6ヶ月 ago

    大日本印刷は、シンガポールのバティックエーアイと連携し、サードパーティークッキーに依存しない広告のターゲティングを提供するという。

    https://www.dnp.co.jp/news/detail/20169931_1587.html
    https://vaticai.com/vaticai-com-and-dnp-forge-transformative-strategic-alliance-to-pioneer-ai-driven-advertising-solutions-in-japan/

    noreply@blogger.com (Kenji)

    気象データ+AI技術で生鮮食品の需要予測と自動発注を実現。日本気象協会が提供を始めた自動発注支援サービスとは

    2 years 6ヶ月 ago

    一般財団法人日本気象協会(JAW)は気象データを活用した生鮮食品の自動発注支援サービスを開発し、企業への提供を開始した。

    自動発注支援サービスは、「気象データ」「販売データ」「歳時記データ」などから、発注推奨数を導入企業にシステムを通じて提示。導入企業は、販売機会ロスの削減、発注業務の負担軽減、接客などのより付加価値の高い業務へのリソース投入などが期待できるという。

    一般的に賞味・消費期限が短い生鮮・日配品の領域は日々の需要予測精度が重要で、野菜や果物などの需要は気温や相場・企画などの影響に大きく変動するため需要予測が難しいとされている。また、市場仕入れや産地の違い、店内加工などにより販売・発注コードが十分に整備されてないため、自動発注が難しい領域とされてきた。

    JAWは2018~2022年度にかけて、気象データとAI技術を活用した生鮮食品の需要予測、自動発注の実現に向けた研究開発を推進。同時にマックスバリュ東海と実証実験を重ねてきた。

    一般財団法人日本気象協会(JAW)は気象データを活用した生鮮食品の自動発注支援サービスを開発し、企業への提供を開始
    自動発注支援サービスの仕組み

    2022年10~11月にマックスバリュ32店舗の農産部門(野菜・果実)の約100カテゴリー、約700品目を対象に、日別の発注推奨数の配信実験を実施。その結果、発注作業時間で19.4%の改善効果があった。また、発注推奨数の商品74%をそのまま採用し、対象カテゴリーの廃棄金額では5.7%の改善があったという。

    そこで、2023年7月から配信実験店舗を130店舗に拡大。在庫日数の改善効果もあった。実証実験に参加した発注担当者からは、「打ち込み(入力)作業が減り、確認と修正作業を行うだけなので明らかに楽になった」「在庫に関しては目に見えて減った。回転率と鮮度が上がった」「配信がないと約2倍の時間がかかる」といったコメントがあがったという。

    一般財団法人日本気象協会(JAW)は気象データを活用した生鮮食品の自動発注支援サービスを開発し、企業への提供を開始
    自動発注支援サービスの導入効果

    なお、マックスバリュ東海は2023年11月から、マックスバリュ東海全店舗において農産部門における自動発注の導入を決定。今後、相場や販促・年末年始などの突発変動への対応も含めて発注精度の向上を図る。また、畜産・水産部門への拡大を予定している。

    瀧川 正実

    Share of search(検索のシェア)。無視できないSEO指標の1つ

    2 years 6ヶ月 ago

    一般的に、SEOとは、特定のキーワードの検索結果における順位上昇を目指す施策です(もちろん、他にも様々な目的がありますが)。そのため、SEOの担当者が測定する値として、ターゲットとなるキーワードの順位が該当するケースは多 … 続きを読む

    投稿 Share of search(検索のシェア)。無視できないSEO指標の1つSEO Japan|アイオイクスのSEO・CV改善・Webサイト集客情報ブログ に最初に表示されました。

    物価高騰、イスラエル・ハマス紛争などネガティブ情報が消費に与える影響は?

    2 years 6ヶ月 ago
    災害や世界情勢などの国際的な打撃がECの市況に与える影響を考察します。アナリストや米国事業者の対応、見解とは

    大規模自然災害やリーマンショックといった国際的経済打撃は、消費者の購買行動に大きな影響を与えます。イスラエルとハマスの紛争や米国政府における閉鎖懸念といったニュースの影響は、オンライン事業者への需要などにどのような影響を与えるのでしょうか?

    記事のポイント
    • 多くのオンライン通販事業者やアナリストは、イスラエルとハマスの戦争やワシントンの混迷が年末商戦に与える影響は限定的と見ている
    • 最も影響が大きいと予想されるのは外食などの裁量カテゴリ
    • オンライン通販事業者は、中東紛争の深刻化など事態の悪化に備え、早めにプロモーションを開始し、売り上げを押し上げる施策を検討する必要がある

    紛争などの暗いニュースがECに与える影響は?

    Eコマースによる売り上げ推移は2023年も好調で、クリスマスなどこれからのホリデーシーズンにも緩やかな成長が予測されています。しかし、イスラエルとハマスの紛争、ワシントンでの政府活動停滞といった数週間の出来事などを考えると、Eコマースに対する需要予測は修正されることになるでしょうか。

    米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』が取材したオンライン小売事業者やEコマース・アナリストによると、国際的・国内的なネガティブなニュースによるEC流通額への影響は限定的だと予想しています。それよりもむしろ、食料品・ガソリン価格の高止まりといった消費者の懐に直接的な影響を与える出来事の方が、消費により大きな影響を与える可能性があると考えています。

    戦争や物価高騰などのネガティブニュースにより、消費者は将来の見通しを立てづらくなります。この影響で、小売業界幹部の何人かは、オンライン小売事業者がホリデー商戦を前倒しして実施するといった売上確保のための施策を講じることが予測されると指摘しています。

    消費者の食卓に影響しなければ影響は軽微?

    こうした予測とは裏腹に、最近のニュースの売り上げへの影響は軽微だと考えているのが、宝飾品製造用品の小売・卸売業者である米ハルステッド・ビーズのブラッド・スコット氏(財務部長)です。

    ネガティブなニュースにおける混乱は、ほぼ絶え間なく続いています。しかし、その混乱が食卓での議論に影響しない範囲であれば、消費者への影響はあまりないでしょう。ただし、住宅、食料品、燃料、ヘルスケアなどの価格が家計に影響を及ぼし始めると、消費者の神経は過敏になります。

    ハルステッド・ビーズ 財務ディレクターのブラッド・スコット氏
    ハルステッド・ビーズ 財務ディレクターのブラッド・スコット氏

    スコット氏によると、ハルステッド・ビーズは財務基盤を強化することで、コロナ禍の混乱に対応してきました。ホリデーシーズンに競合他社が在庫が売れ残りを恐れて販促を控えた場合、ハルステッド・ビーズは市場競争で優位に立てる可能性があるそうです。

    競合他社のビジネスが縮小を余儀なくされるなか、我々が一貫したマーケティングパフォーマンスを維持することができれば、オンラインでの知名度は向上するはずです。重要なのは、ハルステッド・ビーズに期待していただいているレベルのサービスを顧客に提供し続けることです。新しい顧客を見つけるよりも、既存の顧客を満足させ続ける方が容易です。(スコット氏)

    消費者は必需品を重視して買い物

    オンラインと実店舗で乗馬用品を販売している米ドーバー・サドルリーのブラッド・ウォランスキーCEOは、イスラエルとハマスの紛争は、好調に推移している売り上げの伸長に水を差すかもしれないと懸念を示しています。ドーバー・サドルリーは現時点では小売売上高の推移を楽観視する理由は見当たらないということです。

    過去18か月間の不況が継続し、消費者は日用品、自身にとって必要な買い物を優先するでしょう。正直なところ、現在のマーケティング戦略のタイミングに変更を加える余地はないと考えています。たとえ改善を図ったとしても、おそらく同じことの繰り返しです。

    ドーバー・サドルリーCEOのブラッド・ウォランスキー氏
    ドーバー・サドルリーCEOのブラッド・ウォランスキー氏

    コーヒーのサブスクリプションを展開するEC事業者の米ビーンボックスは、コロナ禍の市況の浮き沈みに反応して買い控えをする競合他社がいるなか、新商品を投入するなど在庫を積み上げました。マシュー・バークCEOは「今シーズンの売り上げは好調に推移すると予想してきた」と話します。

    全体的な需要は弱まるかもしれませんが、2023年の注力戦略は新商品と在庫で需要を獲得することです。しかし、ブラックフライデーやサイバーマンデーにおける需要が弱ければ、小売事業者はマーケティング予算の一部を2024年初頭にシフトすることが理にかなっているのかもしれません。(バーク氏)

    高価格商品の提案でマーケティングを調整

    ギフト、食器、アパレルのEC企業カラミティ・ワールドワイドのリネット・ケリーCEOは「今シーズンの売上予測は下方修正をしていない」と言います。

    世界で何が起こっているとしても、それには直接かかわりなく、消費者は依然としてカラミティ・ワールドワイドのECサイトを利用し続けると思っています。なぜなら私たちの商品は、自分へのご褒美や贈り物のようなカテゴリに分類されるからです。困難な時代にあっても、人々は特別な気分にさせてくれるものにお金を使うでしょう。

    カラミティ・ワールドワイドCEOのリネット・ケリー氏
    カラミティ・ワールドワイドCEOのリネット・ケリー氏

    カラミティは、学生ローンの返済を再開しなければならないミレニアル世代など、最近の出来事の影響を受けている層には低価格の商品を、より裕福な消費者には高価格の商品をターゲットにすることで、マーケティングを調整しているとケリー氏は言います。「高品質な商品でありながら、面白くて意外性のあるデザインを合わせ持つという価値を押し出していくつもりです」(ケリー氏)

    家計の圧迫が小売の売上に影響

    マーケティング・リサーチ&コンサルティング会社グローバルデータのニール・サンダース氏(小売部門マネージング・ディレクター)は、中東での戦争が深刻化すれば、消費マインドが低下する可能性はあると言います。しかし、小売りの売り上げは家計の圧迫による影響の方が大きいと考えているそうです。

    学生ローンの返済再開は、より直接的な影響を与えますが、これはすでに、ホリデーシーズンの消費に関する我々の見通しに組み込まれていました。(サンダース氏)

    サンダース氏によれば、消費者はすでに慎重な消費行動を取っており、特に高額商品や不要不急の商品の購入には慎重になっているということです。「ほとんどの小売事業者は、例年より少し早めにホリデーシーズンやお買い得商品の販売を開始しています。これはシーズン後半の需要減速を防ぐ目的で、理にかなっています」(サンダース氏)

    売上減少の可能性が最も高いカテゴリーは?

    調査・コンサルティング会社であるフォレスター・リサーチのスチャリタ・ムルプル氏(主席アナリスト)は、学生ローンの返済再開は一部の消費者の支出に影響を与える可能性があると指摘します。

    外食のような裁量的なカテゴリーは落ち込むかもしれませんが、どのカテゴリーにも影響を与えるほどではないでしょう。

    電化製品は9月よりずっと前からマイナス傾向にあり、衣料品は基本的に横ばいが続いています。これらの傾向が変わるとは思えません。(ムルプル氏)

    ネガティブなニュースに対して「オンライン通販事業者ができることは多くありません」とムルプル氏は説明。しかし、売り上げを伸ばす努力をすることは決して悪いことではないと彼女は付け加えます。たとえば、ECサイト上で消費者に低価格商品の追加購入を促すことができます。

    R.W.ベアード・アンド・カンパニーでEコマース事業者を担当する投資アナリストのコリン・セバスチャン氏は、地政学的な不確実性が続くと、消費者は裁量的なカテゴリー、特に旅行関連を控えるようになると言います。「より深刻な状況では、人々がより自宅にとどまるようになる"コクーニング効果"も見られます」とセバスチャン氏は指摘します。

    実店舗に行く回数が減れば、Eコマースにも多少は恩恵が生じる可能性があります。しかし同時に、消費者が外食に出かけたり、パーティー用の服を買ったりすることよりも、テレビゲームをしたり、TikTokや動画配信サービスのNetflixを見たりすることに時間を費やすことになる人が増えるかもしれません。(セバスチャン氏)

    2023年は堅調も、暗いニュースの影響に懸念

    紛争などの暗いニュースが流れるようになるまで、米国商務省が発表した9月の小売売上高の報告書を含め、オンライン小売事業者の売上高には明るい兆しがありました。同報告書によると、主にオンラインによる店舗以外の売り上げは前年比6.2%増。これは、その他の小売売上高が同2.8%増であることと比較すると、非常に高い数字です。

    2023年上半期の米国オンライン小売売上高は前年同期比で8%近く増加。2022年の伸長率とほぼ同じですが、コロナ禍の最初の2年間である2020年と2021年は、Eコマースによる小売売上高が急増した時期でした。

    米国のオンライン売上の前年比成長率(2019年第1四半期~2023年第2四半期)。近年の成長率は横ばいとなっている(出典:『Digital Commerce 360』による米国商務省データの分析(2023年8月))
    米国のオンライン売上の前年比成長率(2019年第1四半期~2023年第2四半期)。近年の成長率は横ばいとなっている(出典:『Digital Commerce 360』による米国商務省データの分析(2023年8月))

    また、2022年から2023年について、オンライン小売売上高の伸長率は小売全体の伸びを上回っています。

    オンライン売上と小売業全体の前年比成長率(2021年第2四半期~2023年第2四半期)(出典:『Digital Commerce 360』による米国商務省データの分析(2023年8月))
    オンライン売上と小売業全体の前年比成長率(2021年第2四半期~2023年第2四半期)(出典:『Digital Commerce 360』による米国商務省データの分析(2023年8月))

    その結果、最近の四半期ではEC普及率が21%を超えています。ちなみに、コロナ禍前のピークは2019年第4四半期の17.3%でした。

    米国の小売売上におけるEC普及率(2019年第1四半期~2023年第2四半期))(出典:『Digital Commerce 360』による米国商務省データの分析(2023年8月))
    米国の小売売上におけるEC普及率(2019年第1四半期~2023年第2四半期)(出典:『Digital Commerce 360』による米国商務省データの分析(2023年8月))

    注:小売総額は、レストラン、バー、自動車販売店、ガソリンスタンド、燃料販売店など、通常オンラインで購入しない商品の売り上げを除く

    イスラエルとハマスの紛争が勃発する以前から、フォーキャスト担当者はインフレに対する消費者の懸念や米国政府閉鎖の可能性を織り込んでいました。そのため、何人かのアナリストは、ホリデーシーズンの成長率について比較的控えめな予測を立てています。今年のホリデーシーズンにおけるオンライン小売売上高成長率の予測は、5%以下から最大15%までの幅があります。

    Digital Commerce 360

    ワコールがEC商品の「取り置き」「取り寄せ」を開始。全国150の百貨店や直営店で

    2 years 6ヶ月 ago

    ワコールは、自社ECサイト「ワコールウェブストア」で顧客が希望する実店舗で商品を「取り置き」「取り寄せ」できるサービスを始めた。

    EC・アプリからあらかじめ申し込むと、実店舗で商品を確保した状態で顧客は来店することが可能になる。買い物の利便性向上を見込む。

    対象商品は、ブラジャー・ショーツ・肌着などのインナーウエア。「ワコールウェブストア」、ワコールが運用する公式アプリ「WACOAL CARNET(ワコールカルネ)」において、対象商品を「取り置き・取り寄せサービス」で申し込むと、希望する実店舗で商品を確認、試着して着用感を確かめてから購入できる。

    「取り置き・取り寄せサービス」は、約50店舗の百貨店と約100店舗の直営店で利用できる。

    従来は、事前に「ワコールウェブストア」の「店舗在庫」で有無を確認するか、直接店舗に連絡して商品在庫を確認するしかなかった。「店舗に行っても希望のサイズやカラーなどの商品在庫が無い」という声もあったという。

    「取り置き・取り寄せ」サービスの流れ

    1. 「ワコールメンバーズ」の会員に登録する( 「ワコールメンバーズ」はログイン)
    2. 商品を検索し、品番・サイズ・カラーを選択
    3. 店舗リストから希望する店舗を選択し、申し込み
    4. 店舗から申し込み商品の手配完了の通知連絡
    5. 指定した店舗に来店し、申し込み商品を購入。「ワコールウェブストア」「ワコールカルネ」のマイページにある「取り置き・取り寄せ状況」の二次元コードを店舗スタッフに提示する
    対象商品の選択画面
    対象商品の選択画面
    希望する店舗を選択して申し込む
    希望する店舗を選択して申し込む

    「取り置き」「取り寄せ」の状況は、「ワコールウェブストア」のマイページ、または「ワコールカルネ」のマイページから確認できる。

    取り置き・取り寄せ状況の確認画面
    取り置き・取り寄せ状況の確認画面
    ワコールのEC担当者がネッ担イベントに登壇

    ネットショップ担当者フォーラムが11/21(火)~22日(水)に開催する「ネットショップ担当者フォーラム2023 秋」に、ワコールのEC担当者が登壇します。

    テーマは「ワコールウェブストアが取り組む顧客視点のコミュニケーションアプローチ ~CX向上を目指したUI改善のトピックス ここ1年のお話を中心に~」。顧客視点でアプローチしたECサイト改善施策について担当者が解説します。

    イオン、Instagram、伊東屋、ヤッホーブルーイングなど登壇の全50超講演【11/21~22虎ノ門でリアル開催】

    4年ぶりのリアル開催。デジタル戦略、ファンベース、SNS活用、OMO戦略、越境EC等ECビジネスの最新トレンド、ソリューションが集結
    10/13 11:019010618
    高野 真維

    大正製薬が“怒りの声明”の理由は? 大正製薬VSサントリーウエルネス、訴訟の詳細と争点を解説① | 通販新聞ダイジェスト

    2 years 6ヶ月 ago
    大正製薬とサントリーウエルネスの係争を3編にわけて解説する。イメージキャラクターの起用をめぐり、大正製薬はサントリーウエルネスを訴えたが敗訴となり、怒りの声明を発表した。事態の内実は?【第1回】

    三浦知良選手と歩んだ4年でかけた広告費はおよそ40億円――。大正製薬は今年8月、イメージキャラクターの起用をめぐる訴訟の判決を受けて声明を発表した。怒りの矛先は、訴訟相手の代理店だけでなく、サントリーウエルネス(以下、サントリー)にも向けられている。

    編注:イメージキャラクターの起用をめぐる大正製薬の訴訟とは?

    プロサッカー選手の三浦知和選手を自社のイメージキャラクターとしていた大正製薬。三浦選手の広告出演管理を行うハットトリックと広告出演契約を結んでいた。これを踏まえて「リポビタンDX」の広告出演を打診したところ、ハットトリックは拒否。すでにサントリーの「セサミンEX」の広告に出演させる決定をしたことが理由だった。大正製薬は21年1月にハットトリックを提訴するも、東京地裁は請求を棄却。大正製薬は2023年1月に控訴したが、高裁も請求を棄却。これを受けて大正製薬は“怒りの声明”を発表した。

    広告会社変更から見解の相違か

    突然の声明は、同業者を驚かせた。「敗訴にもかかわらずあえてリリースするとは相当な怒りだ」、「渉外力のある両社であれば違った解決ができなかったか」、「あまり三浦選手のイメージがない」、「一方的な主張で内情がわからない。逆にマイナスイメージでは」などの反応が寄せられた。

    イメージキャラクターの起用をめぐる訴訟の判決を受けて大正製薬が発表した声明
    イメージキャラクターの起用をめぐる訴訟の判決を受けて大正製薬が発表した声明

    騒動は共感が広がらず空振りに終わりそうだ。声明は高裁判決を受けたものだが、上告は「予定していない」(大正製薬)。サントリーへの直接的な働きかけなど追加的な対応も「これだけで予定はない」(同)という。それでもやり切れない思いを発信した背景に何があったのか。まず騒動を振り返る。

    「錠剤」の記載ないからサントリーに正当性あり? 大正製薬は控訴するも棄却

    大正製薬は16年、電通(のちに博報堂に変更)を通じて、三浦選手の広告出演管理を行うハットトリックと広告出演契約を結ぶ。契約は、「大正製薬と電通」「電通キャスティングアンドエンタテインメントとハットトリック等」との間で交わされた。

    だが、代理店を博報堂に切り替えた後の20年10月、錠剤タイプの「リポビタンDX」の販売にあたり広告出演を打診したところ、契約書に「錠剤」の規定がなく、すでにサントリーの「セサミンEX」の広告に出演させる決定をしたことを理由にハットトリックがこれを拒否。見解の相違が生じて21年1月、東京地裁にハットトリックを提訴するに至った。

    錠剤タイプの「リポビタンDX」(画像は大正製薬の自社ECサイトから編集部がキャプチャ)
    錠剤タイプの「リポビタンDX」(画像は大正製薬の自社ECサイトから編集部がキャプチャ)

    大正製薬は、訴訟で「錠剤」も「リポビタンDシリーズ」に含まれ、他社製品への出演は競合禁止規定に反すると主張。ただ、契約書に「錠剤」に言及した記載はなく、昨年12月、地裁は大正製薬の請求を棄却する。今年1月に控訴したが、高裁も7月、一審判決を容れる形で請求を棄却。これが“怒りの声明”につながる。

    声明では、業界慣習として出演者が競合禁止規定に基づき、競合製品の広告に出演しないことを当然の前提として企業は高額な契約金を支払うと説明。仮に競合製品への出演が許されれば、「莫大な金額を費やして築き上げたイメージを競合他社に瞬時に奪われる恐れがある」と主張する。「リポビタンD」への起用を知りながら、広告に起用したサントリーの行為にも「問題がある」と指摘した。

    広告費用40億もイメージキャラクター奪われる

    大正製薬は、訴訟の内容について、「リリースがすべて。公表していない」と多くを語らない。

    ただ、訴状では大正製薬の言う「莫大な金額」を明かしている。三浦選手との契約金は、5500万円。16年以降、4年に渡る契約金は2億7720万円、選手の広告制作費は約2億9661万円、広告媒体費は約33億8053万円を投じていたことがわかる。金額を知り「まあ確かにこれだけの投資を思えば、怒りたくなる気持ちもわからなくもない」(前出同業者)との反応も聞かれる。

    損害賠償請求は、イメージキャラクターを起用できず、展開できなくなった広告の制作費に相当する逸失利益、広告の差し替え費用(約24万円)など約2592万円。訴状からは、「約60年にわたり手塩にかけて育ててきた主力シリーズのプロモーションを軽んじ、契約上の権利を侵すもの」、「商習慣上もありえない」と、イメージキャラクターを奪われたことに対する悔しさがにじむ。敗訴を受けても何か言わずにはいられなかったのだろう。

    サントリーは適切な契約を主張

    訴訟に絡み、巻き添えをくらった形のサントリーだが、三浦選手の広告起用には「適切な契約を締結し、それに基づきタレントを起用しており問題ないと考えている」。声明への対応も「予定していない」とする。

    大正製薬の主張はなぜ認められなかったのか。背景には、「錠剤」の解釈をめぐる大正製薬の“誤算”があったようだ。

    法廷の争点は「競合」に当たるか

    大正製薬は、広告出演の競合禁止規定に反するとしてハットトリックを提訴した。法廷ではサントリー主力の「セサミンEX」が競合にあたるかが争われた。

    大正製薬は16年、三浦知良選手の広告出演に関する契約を電通と結ぶ。20年8月、代理店を博報堂に変更。電通契約をベースに、「大正製薬と博報堂」「博報堂キャスティング&エンタテインメントとハットトリック等」との間で契約が交わされた。

    契約を通じて、20年10月に発売した新商品「リポビタンDX」の広告に出演させる権利、競合他社の広告に出演させない権利があると主張。ハットトリックがこれを認識しつつ、新商品の広告出演を拒否し、競合他社の広告に出演させたことが不法行為にあたると提訴した。

    ハットトリックとの契約範囲は?

    契約の範囲は、「リポビタンシリーズのためのテレビ、ラジオ等の広告全般」。競合する第三者の広告への出演禁止に関する条項(一部抜粋して要約)は、

    (1)リポビタンシリーズと同種・類似の商品(エナジードリンク、ゼリー飲料、ショットドリンクを含む)を対象とした第三者の広告宣伝

    (2)主力商品(医薬品、医薬部外品)と同種・類似の商品を主として製造販売する第三者の広告宣伝

    (3)機能性飲料、トクホ、機能性表示食品に該当する飲料、その他の保健効果効能、身体防衛機能、老化抑制機能等の体調を整える効果効能をうたう清涼飲料を対象にした第三者の広告宣伝

    ――などを定める。同様の契約を博報堂キャスティング&エンタテインメントとハットトリックも結ぶ。法廷では、新商品の広告出演拒否が契約違反となるかが争点の一つになった。

    大正製薬は、広告出演の権利について、シリーズは飲料やゼリー飲料などがあり、固形の錠剤(健康食品)を除く条件はないため、栄養ドリンクに限定されるものではないと主張。栄養ドリンクは同様の効果を持つ錠剤がシリーズで販売されるのが一般的なため「商品イメージ」を重要な要素として考慮すべきとした。「リポビタンDX」は、「リポビタンD」と同様「疲労回復」、「元気」のイメージで訴求するため、シリーズの一つと訴えた。

    ハットトリックはシリーズは飲料のみで、錠剤が含まれるとは解釈されないと主張。「健康食品」が含まれないとの理解を前提に明記が検討されたが、記載されなかった交渉経緯があるとした。

    サントリーの行為は競合禁止規定に該当する?

    もう一つの争点は、サントリー商品の広告出演が競合禁止規定に反するかについて。サントリーは、20年11月23日~21年5月19日に「セサミンEX」、今年4月15日~6月11日に「グルコサミンアクティブ」のCMに三浦選手を起用した。

    「セサミンEX」(画像はサントリーウエルネスの自社ECサイトから編集部がキャプチャ)
    「セサミンEX」(画像はサントリーウエルネスの自社ECサイトから編集部がキャプチャ)

    大正製薬は、シリーズに「リポビタンDX」(錠剤)が含まれることを前提に、「『セサミンEX』も同様(疲労回復、予防等)の効果を持つ錠剤であるため同種・類似の商品」と主張。「エナジードリンク等」はあくまで例示に過ぎず、契約の趣旨からすれば、「商品イメージと同一・類似かによって判断すべきであり、飲料か錠剤ないし健食という基準で判断すべきではない」とする。

    (2)の規定の「医薬品・医薬部外品」との記載も「健食の違いは効果をうたえるかに過ぎない。商品イメージに差はない。医薬品、医薬部外品に限定する意味合いで記載されたのではない」と主張。対象は、「商品イメージ、売上構成比、市場シェア、広告宣伝費を考慮して広く解釈されるべき」とした。このためサントリーは同種、類似の商品を製造販売する事業者とする。

    ハットトリックは「錠剤」「健食」は契約外と主張

    ハットトリックは、新商品は契約が拘束する“シリーズ”に含まれず、「エナジードリンク」などの記載を踏まえると対象は飲料に限定され、錠剤、健食は除外されるとした。また、「シリーズの印象、イメージと同一、類似かなど主観的で広範すぎる基準で判断すべきではない」などと指摘した。

    ※次回(第2回)に続く

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    通販新聞

    日本航空が始める旅行商品販売のライブコマース「JALPAK LIVE」とは

    2 years 6ヶ月 ago

    日本航空(JAL)は11月2日から、旅行商品をライブコマースで販売する取り組みを始める。

    名称は「JALPAK LIVE」。国内・海外・訪日ダイナミックパッケージの企画・販売などを手がけるグループ会社ジャルパックと協業する。

    「JALPAK LIVE」では、日本全国各地の観光スポットや文化、地元の宿泊施設、観光施設といった情報をライブコマースで配信し、旅行商品を販売する。

    日本航空(JAL)は11月2日から、旅行商品をライブコマースで販売する取り組みを始める
    ライブコマースのイメージ

    1回目のライブコマースは、「JALサ旅ダイナミックパッケージ」を紹介、販売する。番組は当日20時、提携パートナーである「スカイスパYOKOHAMA」から生配信する。JALとジャルパックの社員、「スカイスパYOKOHAMA」のスタッフが出演し、館内やサウナ室内からの中継、配信でしか聞けない話などを通して、サウナ施設・サ旅(サウナ旅行)の魅力を紹介する。視聴者限定の抽選特典も用意する。

    ライブコマースを始めるのは、オンライン予約の普及、個人旅行の増加、店舗の統廃合によって旅行代理店の店舗数が減少し、消費者と対面による接客機会が減少したため。オンラインを通じて直接的に消費者とやり取りしながら、1人ひとりの消費者ニーズに適した商品を提案する販売手法としてライブコマースのスタートを決めた。

    「JALPAK LIVE」は、BIPROGY(前日本ユニシス)が提供するライブコマース配信・管理サービス「Live kit」を導入して環境を整えた。映像を使った配信者との双方向コミュニケーションで、視聴者の購入意欲を向上させて販売促進につなげることが可能という。

    視聴者は会員登録なしで、PCやスマートフォンからJALのWebサイトにアクセスし、「Live kit」に接続することでライブ配信を閲覧できる。気になった商品はその場で購入することが可能。

    日本航空(JAL)は11月2日から、旅行商品をライブコマースで販売する取り組みを始める
    「JALPAK LIVE」接続のイメージ
    瀧川 正実

    【楽天市場のお歳暮・クリスマスギフト】「自家需要」「手土産需要」に加え、自分を労る「ご褒美需要」も高まると予測

    2 years 6ヶ月 ago

    楽天グループは、「楽天市場」に特集ページ「楽天市場 お歳暮・冬ギフト特集2023」と「楽天市場 クリスマス特集2023」を11月1日に公開する。

    お歳暮のキーワードは「自家需要」と「手土産需要」

    「楽天市場」では10月26日時点で、約190万点のお歳暮関連商品を販売。流通額は2019年から2022年で約1.9倍に伸長した。

    楽天市場 お歳暮関連商品の流通規模 冬ギフト
    「楽天市場」における「お歳暮」と記載のある商品数の流通総額が約1.9倍に伸びた

    職場の同僚や取引先などに儀礼的に贈ることが多かったお歳暮やお中元は、近年カジュアル化が進み、家族や友人など身近な人にギフトとして贈る傾向が高まっているという。

    鍋などの“あったかグルメ”、高級商材などの「自家需要」

    「楽天市場」のお歳暮商戦では、身近な人に贈るギフトとして、季節のグルメ、スイーツ・お菓子、飲料などを中心に流通額が拡大。2023年は新型コロナウイルス感染症が5類感染症移行後初の年末となり、家族や親戚と集まって年末を過ごす人が増えると予想している。

    楽天市場 お歳暮 冬ギフト お歳暮に関するアンケート調査 2023年の年末年始の過ごし方
    「お歳暮」に関するアンケート調査結果:2023年の年末年始の過ごし方

    こうした状況を踏まえ、季節グルメなどの商品を家庭内で楽しむために購入する「自家需要」が大きな盛り上がりを見せると予測。もつ鍋やご当地鍋などの“あったかグルメ”、冷凍食品などのセット、自身や家族へのねぎらいとして、高級スイーツなどの高級商材に人気が集まると予想している。

    楽天市場 お歳暮 冬ギフト 自家需要 ほたて 海鮮グルメ 自家需要商品の一例
    楽天市場 お歳暮 冬ギフト 自家需要 牛もつ鍋 あったかグルメ 自家需要商品の一例
    楽天市場 お歳暮 冬ギフト 自家需要 ローストポーク ローストビーフ 高級商材 自家需要商品の一例
    楽天市場 お歳暮 冬ギフト 自家需要 お酒 焼酎飲み比べセット 自家需要商品の一例
    楽天市場 お歳暮 冬ギフト 自家需要 中華セット 冷凍食品 自家需要商品の一例
    「楽天市場 お歳暮・冬ギフト特集2023」で紹介している商品の一例

    プチギフト需要の高まりを受け「手土産需要」もトレンドに

    新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い食事会などを行いやすくなったことから、帰省、忘年会、ホームパーティーなど親しい人と集まる機会も増えると予想。また、プチギフト需要も堅調で、2019年と2022年の流通額を比較すると、約2.6倍に伸長。こうした理由から「手土産需要」も高まると予測した。

    商品としては、定番ブランドのお菓子詰め合わせ、ホームパーティーなどで楽しめるワインなどの酒類、“写真映え”商品の人気が高まると予測している。

    楽天市場 お歳暮 冬ギフト 手土産需要 ビール お酒 手土産需要商品の一例
    楽天市場 お歳暮 冬ギフト 手土産需要 リンドール お菓子 スイーツ チョコレート 手土産需要商品の一例
    楽天市場 お歳暮 冬ギフト 手土産需要 大福 スイーツ 映え土産 手土産需要商品の一例
    「楽天市場 お歳暮・冬ギフト特集2023」で紹介している商品の一例

    クリスマスは「ご褒美需要」が高まると予測

    クリスマス関連商品は、2023年10月26日時点で約460万点の商品を販売。2019年から2022年で流通額は約3倍に拡大した。

    楽天市場 クリスマス関連商品の流通総額
    2019年から2022年でクリスマス関連商品の流通規模は約3.0倍に拡大

    「楽天市場」では近年、「クリスマス」のキーワードを含む商品を自宅に送付するユーザーが増加傾向にある。2019年から2022年で約1.6倍に伸長しており、2023年も同様の傾向が予想されるという。

    また、在宅勤務から出社をベースとした働き方に戻る動き、円安や世界的な物価上昇や節約志向の高まり、東証プライム上場企業を中心とした2023年末のボーナスが上昇傾向にあることなどを受け、1年間の自身の頑張りを労う「ご褒美需要」が高まると予測した。

    「楽天市場」で美容・コスメ・香水、家電、食品、スイーツなどのカテゴリーで5000円以上の需要が拡大傾向にあることから、コスメや美容、キッチン家電、バッグ、アクセサリーなどの商品人気が高まるとされる。

    楽天市場 クリスマス 冬ギフト ご褒美需要 化粧品 コスメ クリスマスご褒美需要商品の一例
    楽天市場 クリスマス 冬ギフト ご褒美需要 家電 クリスマスご褒美需要商品の一例
    「楽天市場 クリスマス特集2023」で紹介している商品の一例
    藤田遥

    EC事業者が生き残るカギは「個」のマーケティング。日本の“おもてなし精神”の施策が効果的なワケ | 次世代コマースの新潮流「Cコマース」を読み解く

    2 years 6ヶ月 ago
    EC事業者のマーケティング支援を手がけるMicoworksの大里紀雄氏がホストを務め、有識者やCコマースを展開する企業にインタビューする連載【第1回】

    人々の価値観の変化や生成AIの出現により、ECに大きな地殻変動が起きています。そこで注目が高まっているのが、事業者がエンドユーザーに対して、会話を起点とした購買行動を促す「Cコマース(会話型コマース)」です。青山学院大学 地球社会共生学部 学部長であり、ビジネスコンサルタントの松永エリック・匡史氏に、近年の消費行動の変化、消費者から選ばれるECに必要なポイントを聞きました。

    <目次>
    • モノを"買う"からサブスクで"選ぶ"時代へ。近年の消費行動の変化とは?
    • AIによる「分析+予測」で、1人ひとりに合わせた購買体験を提供
    • 選ばれるECに必要なのは、トレンドの波を作ること

    近年の消費行動の変化とは?

    Micoworks 大里紀雄(以下、大里):少し前までECサイトで商品を選んで買い物をしていたものが、「ブランドが能動的に商品を提案して、チャットで相談しながら買い物する」Cコマースへと、購買体験が大きく変化しつつあるように感じます。この10年~20年で、コマースを取り巻く環境はどのように変わってきたのでしょうか。

    Micoworks ビジネスマーケティング部 Director 大里紀雄氏
    Micoworks ビジネスマーケティング部 Director 大里紀雄氏

    松永エリック・匡史氏(以下、エリック氏):この数年で、モノを“買う”からサブスクで“選ぶ”へという消費者の購買体験が一般化してきました。ブランドは一層そのブランドにしかない価値を提供し、さらなる差別化をしなければモノが売れない時代になってきたのです。
    また、リアル店舗の役割も変化し、そこへ訪れたことから、そこでしか出来ない新しい体験や、偶然の出会いから好奇心をくすぐられたり、自分の嗜好とは全く違うレコメンデーションから購買意欲がわいたり…オンラインでは体験できない、リアルな場ならではの特別な仕掛けが必要です。

    最近では大手小売店もECに参入し、ネットでの購買を促していますが、ネットは基本的に必要なもの、購入が決定したモノを買う場所。一方、リアル店舗は偶然目に入ってくるような出会いもあるし、良い意味で“無駄なモノ”に購買意欲が高まる場なのです。当てもなくブラブラするような買い物本来の楽しさやワクワク感は、やはり代えがたい体験です。だから今こそ人々の購買行動を促進するために、ネットとリアル、それぞれの強みを理解し、咀嚼(そしゃく)し、どう組み合わせていくかに焦点を当てるべきです。

    青山学院大学 地球社会共生学部 学部長 教授 兼 ビジネスコンサルタント 松永エリック・匡史氏
    青山学院大学 地球社会共生学部 学部長 教授 兼 ビジネスコンサルタント 松永エリック・匡史氏
    青山学院大学大学院修了。バークリー音楽院出身のアーティストとしての感性を生かしアクセンチュアなどの外資系のコンサルティング企業で活躍した後、デロイトトーマツ コンサルティング メディアセクターAPAC統括パートナー、PwCコンサルティングデジタルサービス日本統括パートナーとして、デジタル事業を立ち上げた。2018年よりONE NATION Digital & Mediaを立ち上げ、大手企業を中心にデジタル変革(DX)のコンサルを行う。2019年、青山学院大学 地球社会共生学部 (国際ビジネス・国際経営学) 教授に就任、アーティスト思考を提唱。学生と社会人の共感と創造の場「エリックゼミ」において社会課題の解決に挑む。事業構想大学院大学 特任教授。2023年4月、青山学院大学 地球社会共生学部 学部長就任。

    ワクワク感の醸成が購入動機につながる

    大里:Amazonもネットをベースにしつつ、書店やガジェット関連の実店舗展開をしましたよね。今後、Amazonと同様にネットから実店舗を展開するブランドが増えていくと考えています。

    エリック氏:そうですね。あと、人の流れって気になりませんか? ネットで「30%オフ」とあってもそこまで目に留まりませんが、スーパーの売場に人が集まっているのを見るとなぜか引き寄せられてしまうし、普段買わないようなものを“ついつい”買ってしまうこともあるでしょう。そうした集団心理が働くのもリアル店舗ならではです。集団心理を利用し興味をかきたてる仕掛けも重要ですし、リアル店舗でしか経験できないワクワク感の醸成も大事です。

    今なら、スマートウォッチからリアル店舗で体感したときの感動を生体情報として取得することもできるかもしれません。たとえば、ある人がリアル店舗でどの商品に触れたとき、どんな体験をした時に気分が高揚したのかを計測する。そこから取得したデータを活用すれば、サブスクを継続させる施策や興味がありそうな商品の高度なレコメンドができるようになります。ただ、その分、データの流通はより複雑になっていきますが。

    リアル店舗は新たな商品との出会いをもたらし、購買意欲をかきたてる
    リアル店舗は新たな商品との出会いをもたらし、購買意欲をかきたてる

    大里:ということは、リアル店舗での体験がより重要になっていきますね。普段はネットで買い物を済ませていても、たまにデパートやスーパーへ買い物に行くとワクワクすることがあります。やはり、体験としてはリアルに勝るものはありません。

    私個人の体験として興味深いと思ったのが、空港の出発ロビーです。出発ロビー付近にある免税店から独特の香りがしますよね。ほのかに漂う香水の香りから「今から出発するんだ」と、自分の中でスイッチが切り替わる感覚を受けるんです。

    エリック氏:香りも含めて、五感で感じたものは、心を揺らす効果が大きいと思います。特に香りは購買行動を喚起させるのに非常に有効です。ただ、人によって快適な香りの感覚は異なるので、個人の興味関心にカスタマイズされてレコメンデーションしなくてはなりません。

    1人ひとりのデータをリアルタイムにキャッチして、いかにその人に合ったものを迅速に届けるか。それが今後、ブランドの成長を分けていくことになるんじゃないでしょうか。2日後、3日後だと人は忘れてしまいますから、人の心を動かすタイミングでのリアルタイム性が非常に重要です。今、心を動かして、今、購買を決めさせる

    売れるECの決め手は顧客データの収集・管理

    大里:そこで鍵となるのが、データの収集と管理です。センシティブな情報に近づけば近づくほど、データを慎重に取り扱わなくてはなりませんし、高度な管理が必要になっていきます。また、手段が目的化してしまい、ひたすらデータを貯めることに夢中になるケースもよく耳にします。

    エリック氏:重要なのは膨大なビッグデータそのものではなく、ブランドにとって必要なデータを厳選し取得、目的を持って分析・活用をすることです。リアルタイムでの買い物にデータを活用できる状態にすると同時に、1週間後、1か月後、1年後に向けた購買行動を見据えて分析することが重要です。

    ただし、個人であってもその時の心情やタイミングで選択も変わるし、単純に決まったパターンなどありませんから、その都度、最適なタイミングで的確な提案をする必要があります。成功のポイントは、個人の属性をいかにつかむか。今後は、購買プラットフォームが構築され、そこにすべての情報を集約していく流れができていくでしょう。そこから、その時に必要なデータを抜き出し、活用するのです。

    AIによる「分析+予測」で1人ひとりに合わせた購買体験を提供

    大里: Webサイトで商品を比較検討したり、情報を集めていたりしたところ、「店舗へ行く」という表示が出たのでクリックをする。その数十分後に自動運転車が自宅前まで迎えにきて、自分の好きなものや匂いに包まれた車内で移動。気になっていた商品を取り扱っている店舗へ到着し、試供して、購買を決めて、決済は自動で終了……。そんな時代が来るんじゃないかと想像しています。

    エリック氏:いずれ来ると思いますが、今はまだまだ提供できる体験に空白が多い。音楽がその一例です。好きなアーティストのライブに行ったら、帰りのタクシーでも好きなアーティストの音楽が流れてきて、余韻に浸りながら帰路につきたいと思いませんか? 残念ながら今はそうした体験すら提供できていないのです。

    購入後に移動することがわかっていれば、前段階で仕掛けを作って、気持ちを盛り上げてあげることができますよね。その演出を実装するのに欠かせないのが個人のデータです。どこで気持ちが高揚していたのかをモニタリングして、何度も試行錯誤しながら最適化して、その人の嗜好を分析していく。より高度なパーソナライズを実現するには「分析+予測」が重要です。

    ただ、少ない情報を分析することは難しいので、そこはAIを活用しましょう。従来のシステムは、大量に収集したデータを分析する発想でしたが、今後は分析と予測を掛け合わせ、フレキシブルに施策を詰めていくことが、より良い顧客体験の提供へとつながっていくでしょう。

    日本の“おもてなし”文化は個別マーケティングに通ずる強み

    大里:ここまでの話を踏まえると、EC事業者が個人に対し、周辺情報も踏まえて個別にマーケティングを実施するのは非常にハードルが高いと感じました。そこもAIに任せるべき領域でしょうか。

    エリック氏:昔はマスマーケティングが全てでしたから、大金を払いテレビでコマーシャルを流したり、目立つポップをメジャーな場所に設置したりすれば人の目を集め購買につなげることができました。しかし今は、TV離れなどの要因はもちろんありますが、価値観や趣味嗜好、考え方が多様化しているので、個別のマーケティングが必要です。では、EC事業者は何をすべきか。個人に対してどのようなロジックでデータを集め、活用し、1人ひとりへ価値を提供していくかを考えていかなくてはなりません。

    日本は個別のマーケティングになった時こそ、本来の実力を発揮すると思っています。なぜなら、もともと“おもてなし”を大事にしてきた国だからです。おもてなしは、お客さま1人ひとりに向き合わなければ出来ない行動です。おもてなしの気持ちが日本では浸透しているが故に、他国と比べて、相手の気持ちや行動を予測した接客ができますし、個別のサービスを提供してきた実績もあります。限られたわずかな情報をあらゆる角度から咀嚼し、行動を予測し、お客さまに満足いただく購買体験を提供する。それは日本の強みです。これをシステム化できれば、太刀打ちできる国ってないと思うんですよね。

    大里:他国では収集したデータを一度集約してから分析し、最適解を出しているイメージですが、日本のようなおもてなしの場合、担当者が目の前でお客さまのことを把握して、どうすれば喜んでいただけるかを想像しながら、丁寧に対応するイメージです。

    オンライン上でも1人ひとりに応じた"おもてなし"が実現できる
    オンライン上でも1人ひとりに応じた"おもてなし"が実現できる

    エリック氏:日本の接客は、会話からの予測・解釈が鋭いのだと思います。たとえば、「お疲れになっていませんか。お仕事はお忙しいですか」と声をかけて、「仕事が忙しくて疲れが溜まっているし、まともな睡眠が取れてないんです」と返答があったとしましょう。この最低限の会話から「ならば、今晩の夕食にはこの食材を入れて差し上げましょう」「しっかりお休みいただけるようにアロマのアイマスクをご用意しましょう」と解釈して提供できる。それって、どんなに大量のデータを持っていても、そのデータをどう活用し、相手を心地良い状況にするかは、簡単にできることではありません。

    ほんの些細な情報をどのように理解し、予測し、どう対応するか。その人がいま望んでいることを踏まえつつ、次の行動を予測して、その人のためのサービスを提供するのです。わかりやすい例が食事です。お腹も満たしてもらいながら最高の時間を提供するために、お客さまの様子を見て、先を読みながら料理を変更したり、お出しするタイミングを考慮したりするのは日本独自の文化です。その“おもてなし”を分析することで、一つ上のマーケティングを行う糸口がつかめるかもしれませんね。

    選ばれるECに必要なのは、トレンドの波を作ること

    大里:顧客から選ばれ続けるブランドになるには、おもてなし以外で具体的に何が必要だと思われますか。

    エリック氏:今は、データを集めて、分析して、予測して、製品開発や仕入れをするのが一般的な流れですよね。その上で、ECサイトはリアル店舗で販売するより手軽で効率が良いため、収益につながりやすかった。データもあって、なおかつスピード感が速い。それが現在地だとすると、これからECが求められるのは、「トレンドを追うのではなく、トレンドの波を作ること」。今までのように効率よく売れるものを安く、たくさん売るだけでは差別化はできませんし、選ばれ続けるのは難しい。どこも同じツールを使っていますからね。

    だからこそ、来年、再来年に向けて自社でトレンドを作り出し、そのトレンドに向けてマーケティングを実施すべきなのです。それが各方面で出てくると、ECそのものがもっと面白くなるはず。サイトによって取り扱う商品も、描く未来も違うんですから。消費者視点にとっても刺激があるし、面白いから、自然とEC業界全体が盛り上がっていくと思うんです。ECが独自にトレンドを作っていく。A、B、C、それぞれのサイトに独自性があったら、消費者もそれぞれに興味を抱くことができるし、訪れる楽しみが増えるでしょう?

    エリック氏は自社でトレンドを作ることが他社との差別化につながると提唱
    エリック氏は自社でトレンドを作ることが他社との差別化につながると提唱

    大里:たしかに、現在のサイトはどれも似通っていて、あまり差別化できていないように思います。

    エリック氏:サブスクのOTT(Netflixなどのインターネット経由でストリーミングビデオを配信するサービス)がその典型例です。各々オリジナルコンテンツを作り、配信していますよね。それはECサイトでもできること。誰も考えないようなアイデアを出して「●●ブームが来る!」って仕掛けてもいいのではないでしょうか。ただ、トレンド情報を待っているだけでは、抜きん出ることはできません。「トレンドを作り出す」。今後はそのマインドセットが必要になっていくでしょう。

    大里紀雄

    メルカリが「メルカリShops」出店者の越境EC販売をスタート。50社の越境EC事業者と連携

    2 years 6ヶ月 ago

    メルカリは、「メルカリ」内でをネット通販を展開できるプラットフォーム「メルカリShops(メルカリショップス)」(運営:メルカリ子会社のソウゾウ)で、10月30日から越境EC販売を始めた。

    「メルカリShops」の越境ECは、越境EC事業者が手がけるECサイトに商品を掲載。越境EC事業者に商品を発送すると、その事業者が海外の消費者に配送する仕組み。

    越境EC事業者のサイトに「メルカリShops」の商品が追加される(画像はメルカリのコーポレートサイトから編集部がキャプチャ)
    越境EC事業者のサイトに「メルカリShops」の商品が追加される(画像はメルカリのコーポレートサイトから編集部がキャプチャ)

    これまでフリマアプリ「メルカリ」において、越境EC事業者11社と連携して越境EC販売を展開してきたが、新たに39社と協業し「メルカリShops」も越境EC販売に対応。越境EC事業者との連携は累計50社となり、販路を大幅に拡大した。

    国内のネットショップ出店者が越境ECを行う際の仕組み(画像はメルカリのコーポレートサイトから編集部がキャプチャ)
    国内のネットショップ出店者が越境ECを行う際の仕組み

    経済産業省の調査によると、2021年の世界の越境EC市場規模は7850億USドルと推計され、2030年には7兆9380億USドル(年平均成長率約26%)まで伸長する見込みという。

    こうした状況を受け、越境販売を「メルカリShops」にも拡大。「メルカリ」の個人の利用者だけではなく、ネットショップを開設している出店者も越境販売ができる環境を提供する。

    メルカリは中期的な経営戦略としてグローバル展開の強化に注力。「メルカリ」では、BEENOSの完全子会社が運営する越境ECサポートの代理購入サービス「Buyee(バイイー)」との連携を皮切りに、メルカリは2019年11月から越境販売を行ってきた。

    メルカリが描く中長期的な構想(画像はメルカリの2023年6月期通期IR資料から編集部がキャプチャ)
    メルカリが描く中長期的な構想(画像はメルカリの2023年6月期通期IR資料から編集部がキャプチャ)
    高野 真維

    消費者庁が機能性表示食品の制度改革を提唱する「規格基準型」とは? さくらフォレスト事件に起因する改革案を担当審議官が語る | 通販新聞ダイジェスト

    2 years 6ヶ月 ago
    消費者庁は機能性表示食品の制度に「規格基準型」の導入を構想している。表現の自由度がダウンするなど懸念事項が多く、業界では注視されている

    消費者庁が機能性表示食品に「規格基準型」を導入する構想を描いている。届出実績が豊富で科学的根拠が一定程度定まったものを対象にする考え。来年度以降、導入に向けた調査事業や議論を予定する。ただ、さくらフォレスト事件(注)を機に提示された改革案は、制度維持を目的にした消極的な育成策。企業自治による柔軟な表示が可能な制度の魅力を削ぐ可能性もある。

    編注:「さくらフォレスト事件」とは

    消費者庁が2023年6月に、さくらフォレストの機能性表示食品「きなり匠」「きなり極」の2商品について、消費者庁は「科学的根拠に合理性が欠く」として届出表示を景表法違反とみなす処分を実施したこと。これを受けて、さくらフォレストは2商品について機能性表示食品の届出を撤回した。機能性表示食品の届出表示そのものを不当表示と判断した消費者庁に対し、この処分は業界内で混乱と反発を招いている。

    「健康食品に過度の期待はない」――。機能性制度に“冷や水”

    「残念ながら健康食品は、健康・栄養政策のなかで過度な期待を持たれているわけではない」。10月4日、健康食品産業協議会主催で行われたセミナーで、消費者庁の依田学審議官(食品担当)はそう切り出した。

    セミナーは、審議官の出席と併せ、機能性表示食品に対する景表法適用が演題として告知されていた。さくらフォレスト事件を受け、今後の展望に不安を抱く事業者の関心を集め、定員70人のところ、定員を超え、多くの立ち見が出るほど詰めかけた。発言は、ようやく実現した機能性表示に湧く業界に冷や水を浴びせた

    依田審議官は、消費者庁のスタンスを「健康・栄養政策を担う厚生労働省の考えを消費者に伝える立場」と説明。来年度に始まる健康日本21(第三次)は、栄養バランスの取れた食事、適度な運動、睡眠等を中心としたもので、「栄養の偏りや生活の乱れを安易に健食で解決しようとせず、補助的なもの。健食を食べなさいとは言っていない」と、釘を刺した。

    機能性表示食品制度は、安倍晋三元総理の号令を受け、15年4月、健康寿命の延伸への貢献を期待されてスタートした。食と医の狭間で制約を受ける機能性表示に、事業者裁量による「届出制」を採用することで門戸を開いた。制度の過去への回帰を告げる審議官の発言は、国の健康政策の転換を意味する。

    安倍晋三元総理のスピーチと消費者庁・依田審議官の主張
    安倍晋三元総理のスピーチと消費者庁・依田審議官の主張

    消費者庁が導入を構想する「規格基準型」とは?

    制度改革で、消費者庁が構想するのが、機能性表示食品への「規格基準型」の導入だ。

    保健機能食品制度は、建付けの異なる表示制度が混在する。栄養機能食品は、国の規格基準に沿い、事業者が自由に活用できるが、表示範囲は限定的かつわかりづらい。トクホは、国が個別に許可するが、審査手続きの時間とコストが課題。解消を図り誕生したのが機能性表示食品だ。

    だが、届出表示の「根拠」に踏み込む景表法処分は、同一根拠の届出製品を含め騒動が拡大した。依田審議官は、さくらフォレスト事件の一因が行政の関与が一切なく、制度的に不安定な環境に置かれる届出制にあると指摘。

    「(国が)許可したものでないとなる規制当局が合理的根拠とは言えないとなれば景品表示法の対象になりうる。制度的に繰り返されないとも限らない」、「永続的にこの制度に安住してよいのかと申し上げたい。もう少し国に関与させてほしい」と、改革に理解を求めた。

    消費者庁は、来年度の予算要求(科学研究費)で諸外国の表示制度を調査。国際整合性を意識した制度設計の見直しを検討する。

    消費者庁は「規格基準型」の導入を掲げる
    消費者庁は「規格基準型」の導入を掲げる

    規格基準は、ギャバやEPAなど、届出実績が豊富なものを選び策定。制度内でこれを実現するか、トクホ、栄養機能食品など隣接する制度を含め設計の見直しを行うかは「今後議論する」(依田審議官)という。これと併せ、食品安全委員会、消費者委員会への諮問が必要なトクホも審査手続きの簡素化を検討する。

    表示の自由度ダウンに懸念

    「規格基準型」のメリットは、企業努力で研究レビューの質向上を図る必要がないことにある。トクホのような疾病リスク低減もうたえるとする。許可表示となれば、景表法処分のリスクも減るだろう。

    依田審議官は、国の策定した規格に合わせることで、海外のヘルスクレーム制度との相互調整など、国が海外進出を積極的にサポートするという。「許可制」と「自己認証」の要素を併せ持つ安定的な制度は、景表法リスクに不安を覚える事業者に魅力的に映るが、果たしてそうだろうか。

    最大のデメリットは、表示の自由度がなくなることだ。健食と機能性表示食品の関係と同様、国が定める「規格基準」の誕生は、機能性表示食品の位置づけを相対的に下げる可能性もある

    海外進出のサポートを掲げる背景には、昨年末、「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」が示されたこともあるだろう。輸出促進のネックは、諸外国と異なる食品表示制度。規格化で国際的な整合性を取れば、国間の円滑な協議が進むという狙いだ。

    ただ、実行戦略で語られている重点品目は、生鮮食品、日本酒、醤油、味噌など一部の加工食品。サプリメントへの言及はない。「農水省主導で、規格化も生鮮食品の機能性表示食品を念頭に置くのではないか」(業界関係者)との声がある。

    消費者庁の業務負担減の側面も

    規格化は、消費者庁にもメリットがある。届出数の増加に伴い、届出業務は煩雑化している。平均50日とされる届出の差戻し日数、担当者により異なる対応の指摘に辟易しているのは、消費者庁自身だろう。

    消費者庁は、「許可制であれば消費者庁が責任を持つ。届出制の廃止はないが、健全な形で発展していきたと思うとビジネス上もどうなのか。誇大広告で打たれれば、同一根拠の製品も一網打尽になる危うさがある」(同)と、現行制度の維持を図るための規制の必要性を説く。ただ、消極的な育成策に将来を見出せるか。ようやく手にした「自由」を手放してよいか、業界は、「規格基準型」構想に慎重に対応する必要がある

    担当審議官に聞く、「規格基準型」構想の狙い

    消費者庁の依田学審議官に発言の真意と「規格基準型」検討の狙いを聞いた。

    ――そもそも規格基準型の話はどこから出てきたのか。

    消費者庁からの問題提起だ。あらかじめ省令や基準を告示することで、要件に従い許可申請すれば販売できる。審査期間もない。

    ――導入の影響は。

    届出実績が豊富な成分は差別化できない。誇大広告をすれば景表法の規制当局が目をつける。自由な表現はできないが、エビデンスの挙証責任を個々の事業者が負う必要はない

    ――機能性表示食品制度のなかでやるのか。

    今後の議論。トクホのバリエーションを増やすやり方もある

    ――行政もこれまで以上に関与する。

    審議会で有識者の意見を聞いて基準を作る。そうなれば差戻し日数、担当者の対応のムラはなく、トクホ同様、透明性高く機能をうたえる。

    ――ルール化の検討はいつ始める。

    来年度予算で科学研究費を要求している。まずは諸外国の表示制度を調査する。いずれにしてもオープンで議論する。健康政策のなかで、健食は皆さんが思うほど厚労省に期待されていない。

    消費者庁は「今後の発展性に危機感」

    ――発言は疑問だ。健康政策のなかで機能性表示食品のウエイトは小さいのか。

    それほどない。

    ――制度は、成長戦略の一環で導入された。

    経済産業省を中心とするヘルスケア産業の観点では期待されているのだろう。ただ、健康政策の面では、健康長寿の延伸にサプリメントを摂る方がよいというデータはない

    ――なぜ調査しない。

    そこは厚労省(の所管だ)。

    ――健康長寿の延伸という社会的要請のなかで導入された。

    理念はわかる。健常者に効くとは何か。予防医療になるが、(ある状態を)放置したら悪くなるものを維持できますという立証は中々難しい。だから事業者も苦労している。たとえば肥満に効くと言った時に、どう考えても(広告で強調されるほど)解消するはずはない。だから規制当局も優良誤認と断じる。

    届出制もあまり悪ノリせずやらないと景表法が乱発され、制度そのものがおかしくなる。さくらフォレスト事件を機に保健機能食品のあり方を真剣に考えないと今後の発展性に危機感を持っている。

    ――それほど重く受け止めた。

    いくら事業者がエビデンスをブラッシュアップしても、表示との関係では合理的な証明にならない。許可であれば行政庁が営業権を付与することになる。どちらを摂るのかということだ。届出制を否定しないが法的には非常に危うい。許可以上の表現をしないトクホの方が継続的に流通できるのではないか

    ――景表法上の根拠の考え方と制度上の根拠の考え方は違う。

    違う。今までは不文律的にエビデンスがあるから大丈夫となっていたと思うが、そこに踏み込んだ。規制当局は科学的かどうかは関係ない。実験のやり方がおかしい、合理性があるかどうかを詰めている。すべて弁護士がやる。

    「透明性の高い基準」を提唱

    ――根拠の是非の判断は難しい。

    エビデンスが妥当かは悪魔の証明だ。ある地点で合理的な根拠として届出しているからよいともならない

    ――問題点が明らかにならないと今後の届出に生かせない。

    景表法と食品表示法の整合性をとった運用をしなければならないとは思う。ただ、透明性の高い基準を作らないと届出制を維持するだけでは難しい。許可制でもう少し関与させてもらえないかということだ。

    ――根拠確認で事業者の回答に消費者庁が回答しないのはなぜなのか。

    是正命令に至らない段階で撤回の申し出があった。

    ――2件残っている。

    それは今相談している。平等原則、公平性の観点からも個別に措置する可能性があることは申し上げている。さくらフォレストで優良誤認と判断された根拠と同じ証拠、表示をしていれば当然、景表法の執行当局としては動かざるを得ない。

    ――販売していない。

    していなくてもだ。

    ――景表法執行において平等原則はあまり意味を持たない。

    ただ景表法サイドとしては届出根拠が合理性を欠くと判断した。同じ判断は他にもあってしかるべきだろう。

    ――平等原則を言うなら、86件も対象だ。

    もちろんだ。

    消費者庁は“規制色”の強い運用に変化の見込み

    ――食品安全行政の移管について。健康被害情報収集はどのような考えを持っているか。

    指定成分の指定は厚労省と共管になる。情報も消費者庁に集まる。販売禁止をする権限もくる。これまで効果の有無で景表法の問題があったが、安全性の判断もする組織になる。健食に対する消費者庁のスタンスは変わる

    食品表示部部局は業界の健全な発展を願っているが、消費者庁全体のスタンスは、健康政策の中で摂りすぎてはいけない。受診勧奨、消費者啓発という意味で健食は必ずしもウエルカムではない

    ――規制のスタンスが強くなる。

    それがもともとのスタンスだ。加えて安全性もある。推奨するという立場にはならない。将来的に健食の健康機能をうたってよいのか、という時代になるかもしれない。規制強化と言われても、持続的に発展させていくには行政が一定程度関与した方がよいのではないか。相互認証を通じて世界展開を図る上でもそのほうがよい。

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